Readings - Africa

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2010.1.7 (Thu)

 『アフリカを食い荒らす中国』(セルジュ・ミッシェル+ミッシェル・ブーレ、河出書房新社)読了。

 面白い!「そんなことが起きているのか!」と思わせられる記述の連続。他数冊を併読しながらだったにもかかわらず、ほとんど1日で読み通してしまった。中国がアフリカを搾取する実態を詳らかにするだけの本だろうし、ならば読んでも気分が悪くなるだけで自分にとって必要な情報は少ないかと思って、買うことを躊躇していた。しかし、結果は全然逆で、近年出されたアフリカ関連のルポルタージュとしては最高の内容の本だと思う。

 まずタイトル通り、中国がアフリカ進出を成功させている状況を、歴史的、地理的(主要国はほぼ漏らさず、しっかり現地取材している)に網羅しながら、要人や関係者へのインタビューを交えて構成されている。それと同時に、アメリカが対アフリカ戦略(軍事的にも)の抜本的変更を余儀なくされていることが語られ、またかつてアフリカの広範囲を支配(植民地化)してきたフランスがその地場をほぼ完全に失っている様を再確認させるものともなっている。つまりは現代のアフリカ情勢を知る上では必読の書と言えるだろう。

 通読して理解できるのは、現在のアフリカ戦略に(特に経済的には)関しては中国が一人勝ちしているということ(中国の、したたかさと、同族意識や結束力と、金が全てでモラルなど無視するという価値観、これらには誰も敵わない)。そしてそれがアフリカ諸国と Win-Win の関係にあり、こうした状況は当面続きそうなこと。さらには、その蜜月関係の恩恵に浴しているのは、中国側もアフリカ側もごく限られた者だけだということだ。特に末端の労働者(アフリカ人も中国人も)の生き方に豊かさがもたらされることはほとんどないだろうことが伝わってくる。

 ただこうして読んだだけだと気分の滅入ることは避けられないのだが、中国のアフリカ進出が地域的にはある程度まで益するものであることも語られている。例えば、インフラ整備であり、例えば、地域紛争の緩衝であったり。もちろん実態としては、不利益を招いている例もまた多いには違いないが。また、アフリカ庶民にとっての悲観的状況を招いている原因を、中国側の姿勢に一方的に問うことは間違いで、かなりの部分までアフリカ側の為政者に責任のあることも分かる。つまりは、アフリカの現状は中国にひたすら蹂躙されているのではないため、アフリカの政治家の振る舞い次第では、アフリカが本質的な再生を可能とする余地も残されていることに、微かな希望も感じる。

 また、「やはり」と思わせられるのは、様々なレベルでアフリカ人と中国人との間の心的関係が全く良好でないことだ。予想できる通り(個人的にもアフリカ諸国で「悪口」を聞かされた通り)アフリカ人の中国人嫌いは強烈である。こうした関係がもたらす軋轢がいつか本格的に爆発するのではないか、それ以前にアフリカの国自身が自滅することによって中国からの投資や彼らの努力が灰燼に帰するのではないかという危惧も抱く。中国の「一人勝ち」は時限的なものなのではないだろうかと考えさせられるのだ。

 (読後感が予想に反してさほど悪くないのには、構成が見事で読み応えがたっぷりな著作に仕上げられていることがまずある。現地ルポは今のアフリカのトップトピックスとなっている国々を漏らさず取り上げているし、「だったら、あのことについては書かないの?」と疑問に思ったころにその話が始まるといった具合。またあちこちに散りばめられたささやかなユーモアにも、クスッとさせられた。)

 ブログで公開する文章としては、具体例を出したり引用を行ったりする方が親切なのであろうが、ここでは書評ではなく、個人的な読書メモを綴っているつもりなので、興味を持たれた方には「読んでみてください」としか言いようがない。アフリカに関するルポルタージュ/ノンフィクションとしては、『フランサフリック 〜アフリカを食いものにするフランス〜』(フランソワ=グザヴィエ・ヴェルシャヴ、緑風出版)を読んで以来の衝撃 !! そう、確かに読み始めてすぐ「この本は、中国版のフランサフリックについて語っている」と気づいたのだった。
by desertjazz | 2010-01-07 23:42

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