Majemite Jaboro "The Ikoyi Prison Narratives"

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Majemite Jaboro "The Ikoyi Prison Narratives: The Spiritualism and Political Philosophy of Fela Kuti" (Lulu, 2009)


 昨年見つけてから気になっていたフェラ・クティに関する書籍。Amazon.com にオーダーしていたものが、11/30 に Bruce Springsteen "The Promise" セットと一緒に届き、パラパラ捲っているうちに4日でさっと一読。英語ができる人ならば1日かからずに読めるだろう。以下、簡単な雑感メモ。


 表題からは一体どんな本か掴みかねたのだが、読んでみたらフェラ・クティの新しい伝記本だった。フェラの側近(Priest)としてカラクタ共和国で長く過ごした著者が、1993年にフェラと一緒に逮捕拘留された際、留置所でフェラが著者に語った内容をベースに書かれている。そのため、これまで聞き及んだ記憶のないことがらやちょっとしたエピソードが多いように感じられた。ただし、どれだけ新事実が紹介されているかまでは自信がない。


△ 幼少時から死に至るまで編年体でフェラの生涯を辿っている。時代ごとに国内/国際政治動向や社会状況を概観し、それらがフェラ・クティの思考や音楽にどういった影響を与えたかを解説している。

△ 若い頃はタバコを嫌っていた。一時はヘロインやマリファナなどあらゆるものに手を染めていたが、後年、性的能力に悪影響を与えるのでマリファナとタバコを除く一切を止めた。

△ ヨルバ語とブロークンイングリッシュのミックスで歌うのは、サンドラ・スミス Sandra Smith からのアドバイスによる。

△ 大きな転機となったのは1981年。エジプト神話などに関連する文献から影響を受け、音楽的にも新たなフェイズに移行。そのことを明らかにさせるために、バンド名を Africa 70 から Egypt 80 に変更した。その直前、行き詰まって自殺を考えたことも書かれている。

△ 80年代以降は歌詞分析が細かくなされている。このことは、マイケル・ヴィール Michael Veal の著作 "Fela: The Life and Times of an African Musical Icon" と共通している。

△ フェラの独特なおしゃれ感覚も紹介。700本以上のぴっちりしたパンツと500足以上の靴を持っていたという。

△ カラクタ共和国とシラインでの1週間について、非常にこと細かく書かれている。特にナイジェリア/ヨルバの民族宗教やエジプト神話に由来する信仰に基づいた生み出された仕来りや生活振りが興味深い。

△ 1993年、フェラがむち打ちを指示したために死者が出たこと、その後に警察に連行されたこと、いかにして解放されたか、そうした事件の顛末についても詳述している。この事件の当事者のひとりである著者がフェラとともに勾留された経験がこの本が生まれるきかっけとなった。


 最も印象に残ったのは、フェラがスピリチュアリズムに傾倒していった様子である。最初、表紙がエジプトのピラミッドとスフィンクスであるのを不思議に思ったが、これは著者がフェラへのエジプト思想の影響を重視した顕われなのだろう。実際この本は、ヨルバの出自がエジプトにあるという考えを紹介することから始めている。

 しかし、スペルに共通部分のある無関係な言葉を関連づけてしまう強引さでもって、事件や世相を解釈していたのは、果たしてどうなのだろう。かなり危ない思想に思えるのだが…。



 この本と並行して、カプシチンスキの『黒檀』(河出書房新社)を読んでいた。その中の一編「ぼくの横町、一九六七年(ナイジェリア編)」。ラゴスの自宅の部屋荒らしに悩む著者(ポーランド人記者)が、地元民の勧めで魔除けをほどこした(雄鶏の白い羽の一束を買って、戸口の上に結びつけただけ)。すると、「物取りは、ぴたりと止まった。」という。ナイジェリア人が信じる民間信仰を疑ってはいけないのかも知れない。




(続く)





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by desertjazz | 2010-12-10 19:00 | 本 - Readings

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