◆ 初春の芸術鑑賞

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 今度の正月は北海道の実家で過ごすつもりだったが、調べてみると交通費が異常に高い(航空券だけで往復9万円近い)ので断念。帰省は飛行機代が4割程度の割引料金になる月末にずらし、おとなしく自宅で年越しすることにした。

 その代わり、浮かせた予算を使って、昼のお弁当がお気に入りになっている料亭のおせちをいただいてみることにした。この店のおせちが美味しいという話を耳にしたこと、関西での年越しは最後になるかも知れない、等々、無理した理由は様々ある。昨年は客人が来たときを除いて、ほとんど毎日3食自炊を続けた自分への褒美という気持ちもあった(昼は弁当を作ったので、会社の食堂はもう1年半利用していない)。料理は不得手なので、毎食つましい食事で我慢。その方が健康にいいと思ってのこととは言え、さすがに疲れてきたし、自分の味にも飽きてきたので、正月くらいは楽をしたい。

 店主から「12月25日で店を閉めてお節料理作りに専念」「お客さまに喜んでいただけたら」と伺い、とても楽しみにしていたその料理、31日にお店で受け取ってきた。すぐに中味を見たい気持ちを一晩我慢して、元旦の昼に包みを開く。一見色味は地味なのだけれど、一品一品の手の加え方が細やかであり、そして味の素晴らしいこと。特に、ここの料理は出汁が豊かで絶妙、決してしつこくはなく、そして食材に合わせて様々使い分けているように感じる。

 最初これは自分にとっては単なる贅沢かとも思った。しかし、いただいているうちに、そうした考えはすっかり消し飛んでしまった。これだけ美味しい日本料理はほとんど初めての経験で、職人の仕事に心底感動した。その感動の質は、素晴らしい音楽や絵画に接しているときと全く一緒。思わず涙で目頭が潤みかけた。2日間ゆっくりと行った「食べる」という行為は、ひとつの芸術鑑賞だったのだと思う。他の出費を我慢しただけの価値は十分あった。

 思い返すと、何年かに一度くらいは、旅していて感動的な景色を眼にしたり、感動的に美味いスコッチやワインに出会ったりする。それは例えば、昔から大好きだった美術作品の実物を初めて見るときの、心震える感覚にも匹敵する。

 年を重ねるごとに、好奇心が摩耗していくこと、何に対しても評価のハードルが高くなることを感じる。けれども、たまには心から凄い、素晴らしいと思えるものに出会わないと、生きていて楽しくない。今年はまたそうしたものに巡り会えるように過ごしたいものだ。


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 一重目: 伊勢海老、数の子、ウニ、イクラ、カニとオレンジ?のジュレ、カラスミ、平貝、クルミ、昆布巻き、ニシン?、魚?の大根巻き、レンコン、等々。

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 二重目: 黒豆(こんなに美味いのは初めて)、ホタテ(その下にはホヤの酢の物)、しめたタイとサバ(その下にも…)、牛肉、等々。

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 三重目: アワビ、焼き魚3種、干し魚の煮物、くわい、野菜の焚き物、鶏肉、等々。

 全部でおよそ40品。好物の高級食材がずらり。やっぱり一生に一度の贅沢だったか…?

 酒は黒龍あたりにしようかと思ったのだが、買いに行けなかったので、久保田の中で一番ドライであろう碧寿に。料理の味がかなり強いので、この選択は正解だった。




 追記

 今年も、読む、聴く、観る、食べる、呑む、旅する、走るなど、いろいろなことをバランスよく楽しむのが2011年の目標。そのためには、作る料理のレパートリーも増やしたい。

 ということで、3日から自炊生活再開。買い出しして、出汁を取って、おかずを作り置きして。出汁は昆布と鰹節で取り、魚は自分でさばき、漬物もなるべく自分で漬けているので、それなりに時間がかかるし、時々面倒くさくもなる。音楽を聴いたり読書したりする時間も減ってしまうので、今年は少し外食を増やそうかなぁ。

(1/3 21:00)





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by desertjazz | 2011-01-03 00:00 | 食 - Eat & Drink

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