マレウレウ 〜 アイヌの蝶の子守唄(1)

 マレウレウ Marewrew のファースト・ミニアルバム "Marewrew" (Chikar Studio CKR-0115) は昨年とりわけ愛聴した CD だった。自宅のモニター(相変わらず PMC の OB-1 を使用している)でフルレンジ鳴らして聴いていると、その素晴らしいコーラスに陶酔していく。また割合小さな音で聴いても心が暖まって、まるで子守唄を語りかけられているような気分になる。どちらかと言うと、こうした子守唄のような味わいを楽しむことが多くなっていった。

 しかし、実際にライブで聴いたマレウレウは、子守唄に留まらず、様々な面でその次元を超えた素晴らしさだった。



 マレウレウ(アイヌ語で「蝶」を意味する)は北海道アイヌ出身の女性コーラス。現在のメンバーは、レクポ、マイ、ヒサエ、リエの4人。レクポとマイ(マイマイ、マユン、マユンキキ、とも自称)は姉妹で、ヒサエはその二人の若い叔母。これら3人が旭川出身であるのに対して、最年少のリエだけは阿寒湖出身だ(直接本人に確認したところ、湖の底から生まれたマリモちゃんではないという)。

 ちなみに、土地勘のない方のために書いておくと、旭川は北海道の真ん中から少し上、阿寒湖はかなり右。白老や二風谷は道央の太平洋沿い。OKI DUB AINU BAND の居壁太(いかべふとし)さんの出身地・浦河は道南Vゾーンのほぼ最南端、森進一が歌った『襟裳岬』の隣町である。もうひとつついでに書くと、私の生誕地(のひとつ)も浦河町。




 昨年からずっと心待ちにしていた3月12日の京都・東本願寺での OKI DUB AINU BAND とのステージ、残念ながら「3.11」のために中止になってしまった(関係者の心痛ぶりが痛ましかった)。それでも翌13日の大阪での「マレウレウ祭り」は、無事に開催(こちらも実施するか相当に悩まれたそうだ)。2月に UA をゲストに開催された東京での「マレウレウ祭り」に行くのは結局断念したのだったが、今度の大阪はかなり小さな箱でのライブだった分、彼女たちの歌声を間近で楽しめた。そればかりでなく、そのマジカルなコーラスを分析したり、メンバー4人から話を伺えたりしたことでも、とても貴重な時間となった。

 マレウレウのコーラスはアイヌの歌・ウポポを基本としており、レパートリーの多くはウコウク(輪唱)、つまりはアイヌ版「カエルの歌」である。とは言っても、従来3人で歌っていたものを4パートに増やしたり、各人の節回しや音程が微妙に違っていたりしていて単純ではない。一聴シンプルなようでいて複雑。度々指摘される通り、4人の声がモワレ状に広がっていって、カオティックな響きが脳内にトランシーな快楽を招く。

 生で聴いた歌声は、CD "Marewrew" よりも格段に良かった。当初ライブ会場での販売目的に制作されたというこの CD がレコーディングされてからも、彼女たちは進化し続けているのだろう。それぞれが個性を持った声だと彼女たちは語っていた。それでいて強く通じ合うものも感じる。だからだろうか、最初柔らかく始まった歌がハイライトに達すると、4人の声が強烈に共鳴し合い(これには固いPAも寄与していたと思う)、ギラギラした倍音が放たれた瞬間には思わずゾクゾクしてしまった。咄嗟に連想したのはブルガリアン・ヴォイスだった。

 マレウレウの魅力は、単なるアイヌ文化の継承者に留まらないところにもあると思う(ただし、この点については今日はまだ書かない)。伝統歌を模倣するのに留まらず、数々の実験も試みていることを彼女たちは語っていた。その良い例が、旭川と阿寒を対比させた 'sa yo' だ。他の3人とは幾分違った、阿寒湖のリエの少しだけ高く、少しだけ軽く、そして微妙な節回しの歌声(本気で惚れた!)に、旭川組3人の唱和が重なっていく面白さ。

  'aroro' は完全にバラバラの4パートが重なるユーモラスな小品。"Marewrew" だけ聴いた人からはレパートリーの幅を心配する声もあったけれど、そのような危惧は全く不要。ライブでは独唱やムックリなども含めた懐の深さを示し、全く飽きない。けれども、マレウレウの一番の魅力はやっぱりウコウク。エンドレスで続いて欲しいと思わせる「子守唄」的なところにどこまでも惹かれる。

 ライブで飽きさせないあとひとつの魅力として、MC の楽しさは絶対外せない。特にマユン。日頃から楽しませていただいている Tweet と変わらぬ面白さ。姉レクポとの掛け合いにも思わず頬が緩む。

 マユンさん「歌とのギャップが激しいので黙っていた方がいいと言われます。」
 レクポさん「アイヌのネーネーズと言われます。」
 私「アイヌ版のかしまし娘を目指しているんでしょ?」

 いや、本当に楽しかった。フルアルバム出す時には、特典DVDとしてノーカットのライブ映像を付けたら?と思わず言ってしまったほど。失礼。

 そんな彼女たちの人柄に触れさせていただいたのは、打ち上げでのこと。客演したサカキマンゴーさん、マネージャー役で同行していた「公認パスティスガール」のおきよしさん、関西ワールドミュージック界のドン吉本さんらと共に、震災ストレスを一旦忘れて深夜25時過ぎまで飲んでしまった。

 いろいろ話を伺えたが、印象深かったのは、お店の万華鏡を発見して、それを愛でるように楽しむレクポさんの姿。ライブの緊張から解き放されたこともあったのだろうけれど、万華鏡に夢中になっていた。その姿が可愛くて、思わず抱きしめたくなるほど。考えてみると、マレウレウのモワレ状に展開していくコーラスは、万華鏡の摩訶不思議な変化(へんげ)を連想させる。彼女たちの中では、アイヌのウポポと万華鏡とが通じ合っているのかも知れない。




 長くなってきたし、酒も回ってきたので、続きはまた今度。

(レクポさん、やっぱり可愛くて抱きしめちゃいました。OKI さん、ゴメンナサイ。)


(多分、続く。写真も後で…。)

(少し修正。3/23 07:55)




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by desertjazz | 2011-03-22 22:22 | 音 - Music

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