読書メモ: 田中優子『布のちから 江戸から現在へ』

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 一昨日27日に読み終えた田中優子の『布のちから 江戸から現在へ』について反芻し続けている。以下、雑感。

 日本やアジアの布に関してはこれまでも、類別、分布、製作技法、用途、等々について書かれた研究書は数多あったことだろうが、この本のように布が生まれた意味合いや社会の中で担ってきた役割について深く考察したものは少ないかもしれない(専門外なのではっきりしたことは分からないが。また、ここまで掘り下げた考察ができたのは、著者が布(だけ)の専門家ではない?からだろうか)。著者が言うところの布の「メディア」としての「力」に関する指摘は重要だ。布は見た目の美しさや触感だけで語り尽くせるものではないのだ。

 読んでいて、布つくりがいかに微妙で繊細で困難な作業かということが伝わってくる。また実際に身につけ続け馴染むことで大量生産品との大きな違いを感じ取っているのは、まるで著者が布と対話しているかのよう。とにかく布への愛情が隅々まで溢れている。一旦消滅した布が各地で復活したことは奇跡だし、これからも長く作られ続けて欲しいと願う気持ちが自分にも乗り移ってくる。

 中盤の種々の考察は自分の基礎知識が足りなく図版もないためやや難解。後半部「日本の織物紀行」は、澤地久枝の『琉球布紀行』などで読んだのとほぼ同内容。沖縄/先島諸島での布つくりのキーパーソンは限られているということか。

 沖縄に行けば芭蕉布を見に行き、バリではアンティークの布の店で一日過ごしたりもする。先月は石垣と西表でも少しばかり布を探し見て歩いた。だが、それらの行為はほとんど表面的なものに過ぎないのだろう。単に見る/使うという次元を超えた理解があれば、もっと布に親しめるはず。そのうちたっぷり時間をとって取り組みたい、とは思うもののなかなか難しい。それだけの奥深さに総合芸術としての布の面白さと楽しみがあるとも言えるのだろう。





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by desertjazz | 2011-06-29 00:00 | 布 - Ikat and

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