SUKIYAKI TOUR 2011 (21) : Kaushiki Interview Part IV

[4] 新しい活動(コルカタのこと、映画のこと)


ー カウシキはこれからも活動の幅を広げていくに違いない、そんな期待を込めて、サイドワーク的なものも含めた最近の活動について質問した。

 
D: 今年はご主人のパルササラティ・デシカンさんとの共演アルバムを制作されましたね。

K: (彼と歌うのは)時々ですね。いつも一緒というわけにはいきません。男性と女性では声のピッチが違うので、同じピッチに合わせようとすると、お互いに無理をすることになります。大抵は二人の中間のピッチを選ぶのですが、私にとってはいつもより少し高く、彼にとっては低い音程になります。ですから、中間地点を見つけやすい短い曲をやるようにしています。

 長いカヤールをフルで歌うには、低いところから高いところまで、自分の声が自由に動ける音階のスペースが必要です。妥協はできないのです。完全に自分のピッチで歌わなければいけません。(トゥムリなどの)短めの演目であればなんとか合わせることができます。男性と女性のデュエットは難しいですね。

 最近一緒に出した "Togetherness" というCDに入っているのは短い曲ばかりです。これらもカヤールなのですが、前半の緩やかなパートはなくて、後半のテンポの早い部分だけ。同じラーガの違う曲を別々に歌っています。「想像」が大切なのであって、私の即興を彼がそのまま引き継ぐとは限りません。完全に一緒に歌うということは、互いのイマジネーションに相手を縛り付けることになってしまうのです。バラエティのある作品にしたかったのです。同じラーガの中で、私は私の曲、彼は彼の曲を歌いましたが、歌い手の想像力によって同じラーガでも大きく変わります。その違いが音楽に幅を与えるのです。

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ー "Togetherness" を聴いた個人的な印象では、はやりカウシキの歌の魅力の方が勝っていると感じた。ちなみにこのアルバム、「嬉しいことに、インド音楽でもっとも栄誉のある、GIMA Awards (Global Indian Music Academy Awards) にノミネートされました。」と実際とても嬉しそうに語っていた。(→ 参考:http://gima.co.in/nonfilm-nominees-2011.html 今年の GIMA にはカウシキの "Rageshree" もノミネートされている。)


D: (お住まいになっている)コルカタは文化の街で、文学、詩、映画、美術などが盛んだというイメージがあります。カウシキさんは違う畑のアーティストとコラボレーションすることもあるのですか。

K: 私はまだ参加したことはありませんが、音楽家と画家のコラボレーションなどもありますね。

D: 2005年に映画 "Water" のサントラで A.R. Rahman と一緒に働きましたね。フィルム音楽に参加するのは珍しいことなのですか。

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K: そうですね、当時としては珍しかったですね。ですが、今いくつかベンガルの映画のサントラに参加しています。今年中に3本ほど予定があります。

 アーティストとしての活動を広げている最中なのです。これまではカヤールとトゥムリという北インド音楽の基本に集中してきました。けれども今は、敷居を超えて広がりたい、自由に活動してみたい、新しい挑戦と刺激に出会いたいといった気持ちが湧いてきています。音楽を通じて、人として歌い手として、新しい表現を見出したいのです。

R: サントラで歌われるのはコンテンポラリーなものですか。

K: そうですね、現代と古典の程よいバランスの音楽です。とてもよい曲なので気に入って、歌ってみたいと思いました。

 最近公開されたのは "Chaplin" というベンガル語の作品で、チャップリンに憧れる男が主人公の話です。彼はチャップリンの物まねをして稼いでいて、素晴らしいアーティストであるのに、「ただの芸人」というレッテルを貼られます。アーティストとして認められたいという野望と、一人息子のために必死に稼がなくてはならない葛藤を描いています。サントラはもうリリース済みですよ。


ー 映画 "Chaplin" (2011) は Anindo Banerjee 監督の作品で、カウシキは主題歌? 'Patton ka hai jism jaanam' を歌っている。ただしカウシキが話していたサントラ盤は見当たらない。(→ 参考:http://www.washingtonbanglaradio.com/ ほか)




D: 今日はどうもありがとうございました。スキヤキ、東京、大阪でのご公演を楽しみにしています。そしてできればいつかコルカタでもステージを拝見したいのですが、地元で歌われる機会も多いのでしょうか。

K: ええ、多いですよ。特に11月から2月の4ヶ月間は冬のお祭りシーズンですので、毎日、市内そしてインド中のどこかで演奏会が開かれています。12月、1月は選りすぐりの音楽家たちがコンサートを開いたり、大きなフェスティバルが開催されたりしています。

D: 何年か前にコルカタに行ったときの印象は、交通渋滞と排気ガスの酷さでした。カウシキさんは大切な喉をどのように守っているのですか。

K: (もうウンザリといったように笑いながら)私の声は排気ガスに馴れてしまったのじゃないかしら。大気汚染が私の声に深みを与えていたりしてね。(笑)





(参考)

◆ 全アルバム紹介 Kaushiki Chakrabarty (1)Kaushiki Chakrabarty (8)
Discography of Kaushiki Chakrabarty Desikan

 アルバム紹介の文中の誤りは後日修正するつもり。ディスコグラフィーも追って更新したいと考えています。





 人柄が分からなかったこともあって慎重な質問ばかり考えていったのだったが、実際お会いしてみると、気取ったところなど全然なく、どのような質問に対しても丁寧に答えてくださった。彼女の音楽哲学についてたっぷり伺えたのは収穫だった。

 まだライブを観る前だったので、基本的な質問が多くなって、突っ込みが足りなかったかとも思う。彼女自身とっての「音楽の意味」についてもう少し掘り下げられるとより良かったかもしれない。

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 ひと区切りつけた「カウシキの全アルバム紹介」(全8回)に続いて、とても長くなってしまった「スキヤキ・ツアー日記」(全21回)もこれにて終了。おつきあいくださった方に感謝いたします。

 歌声に心酔しているカウシキと、魅力たっぷりのスキヤキのことを紹介したくて書いてみました。拙文を読んで、カウシキの歌を聴いてみよう、来年のスキヤキに行ってみたい、そう思った人がひとりでもいらっしゃったら嬉しいです。


(来年も富山県まで行ってスキヤキに参加できるだろうか。たとえ行けたとしても、これだけ書くことはもう無理だろうなぁ。)





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by desertjazz | 2011-10-07 00:00 | 音 - Festivals

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