Adriana Calcanhotto を聴く休日

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 縁あって出会い、いくつかのアルバムを聴いて特に気に入ったミュージシャンの作品は、全て聴いてみたくなって買い集めるし、それで本当に惚れてしまったらそれ以降の新作もずっと買い続けてしまう。若い頃に聴いたロックならば Randy Newman と Bruce Springsteen と Joni Mitchell。ジャズなら John Coltrane と John Surman、と言いたいところだけれど、彼らは作品数が多すぎて最近は諦めている。(他にもたくさんいるが、今は Bugge Wesseltoft が一番かな?)

 全作品を聴いてみると、そのキャリアを俯瞰することによって分かってくることが多いし、互いの作品や他のアーティストの音楽との関連性も見えてくる。もちろんそんな考察めいたこと以上に、好きな音楽を聴いているのだという素直な楽しみが大きい。集めた作品を繰り返し聴いていると、どれもをほとんど等しく愛でるようになったり、たくさんあるうちの数作ばかりを聴くようになったりと、ミュージシャンごとに付き合い方が違ってくるのも面白い。

 自分の場合は好きになった作家の著作は全部一気に買って読んでしまう衝動が抑えられない。映画はあまり観ないのだが、映画ファンの感覚も同様なのではないだろうか?

 間もなく来日するブラジルのアドリアーナ・カルカニョット Adriana Calcanhotto もそんな「全部聴くミュージシャン」のひとりだ(ブラジル音楽をあまり熱心に聴く人間ではないので、現役のブラジルの女性シンガーでずっと聴き続けているのは、マリーザ・モンチ Marisa Monte とフェルナンダ・アブレウ Fernanda Abreu くらいだろうか。ロベルタ・サー Roberta Sá も全部持っているかも知れない)。



 土曜日の今日は生憎の天候。なので、週末旅行もイベントに行くことも諦め、そのかわりにアドリアーナ・カルカニョットの全アルバムを繰り返し聴いてみた。Blog Latina も参考にさせてもらったのだけれど、これで自分の耳もかなりアドリアーナ・モードになっただろうか。

 以下、久し振りにまとめ聴きした簡単な感想。

 デビュー作 "ENGUIÇO" (1990) は今じゃ考えられないジャケットの色合いが気恥ずかしい。歌もまだまだ不安定。けれど、悪い作品じゃないと思う。ひとりのアーティストの資質はその第1作目に全て詰め込まれている、といったことはしばしば語られるが、彼女の場合もある程度それが当たっているかも知れない。つまりは、現代風のサンバであったり、カエターノ風であったり(そうした点では、Celso Fonseca が参加しアドリアーナをサポートしているというのは幸せなことだと思う)。ラストに収録された声色を激しく変えて早口で歌われるライブ録音なんかは、後年の Partimpim にも通じるサービス精神豊かなエンターテインメント性も感じさせる。

 セカンド・アルバム "SENHAS" (1992) は正直褒めるところが少ない過渡期の作品ではないだろうか。3曲目くらいまではいいなと思うのだけれど、それ以降は如何せん音が古い。

 けれども、続く3作目 "A FÁBRICA DO POEMA" (1994) で彼女の才能が一気に開花する。ノスタルジックでメランコリックな独特なメロディー。母性的なヴォイス。サウンドも隅から隅まで全て好き。今日も1曲目でウキウキし、7曲目でウルウルしてしまった。アートワークもセンス良くて、これは本当に素晴らしい作品だと思う。実に爆発的クリエイティビティーに溢れた傑作だ。個人的にはこのアルバムでアドリアーナに出会ってノックアウトされた。以降はリリースされた瞬間に買い続けているので、持っているのは全て輸入盤。

 ライブ録音+スタジオ録音の5作目 "PÚBLICO" (2000) も感動的なまでの作品。一部やりすぎの実験性も感じるけれど(オーディエンスの音の加工など)、傑作ライブだと思う。Manu Chao 'Clandestino' のカバーもいい感じです。

 6作目 "CANTADA"、7作目 "MARE"、そして最新作の "o microbio do samba" と安心して聴けるアルバムが続く。安定飛行期に入った印象の作品たちかな。

 ということで、これからアドリアーナを聴いてみようという人にお勧めしたいのは "A FÁBRICA DO POEMA" と "PÚBLICO"。来日公演の予習のために "o microbio do samba" (邦題:『サンバの微生物』)も必聴でしょう。


 ・・・と書き終えたところで、「4作目の "MARITMO" (1998) を飛ばしているじゃないか」と指摘を受けることだろう。飽きるほど聴いたこのCD、どこに行っちゃったのかいくら探しても出てこない。ブラジル音楽のCDはそれほど多く持っていないので不思議なことなのだけれど、多分他のところに間違って紛れ込んでしまったのではないだろうか。なので、明日はこのCDを探しながら、アドリアーナの変名プロジェクト Adriana Partipim の作品を聴き直したり、DVD作品を観かえしたりすることにしようか。




 余談を少々。

 今回の来日公演、高い新幹線代を払ってまで東京と大阪の両方を観に行くというのは無駄じゃないだろうか。カウシキの3公演を観に行ったのは正解だったけれど、アドリアーナでそこまでするのはどうかと、我ながら迷った。けれど、今日一日アドリアーナを聴き続けて、彼女の歌声をとことん愛していることを再確認。あと何日かを期待を大にして待つことにしよう。

 前回の『+3ライブ』は盛況だったので、さほど大きくない箱での今度の2公演、チケット即完売かと思ったら、まだ若干数残っている様子。もし行くかどうか迷っている方がいるなら、おこしになって欲しいです。私はブラジル音楽にも疎いので、ブラジル音楽愛好家の方々、そしてアドリアーナのファンの皆さんと、お会いすること、お話できることも楽しみしています。





by desertjazz | 2011-10-22 22:22 | 音 - Music

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