読書メモ:アゴタ・クリストフ『昨日』

 アゴタ・クリストフの小説4作目『昨日』もこの機会に読んでみた。第2次世界大戦下、隣国に亡命した自身の体験に基づく著作ということで『悪童日記』3部作と関連づけて語られているものの、その『悪童日記』と比較すると思念するところが深く、抽象的な描写もあって、一読しただけではどうにも咀嚼しきれなかった。

 なので、これが優れた作品なのかどうかよく分からない。『悪童日記』でもそうだったが、殺人が安直になされているような気もする。心にドッと重いものが落ちてくるのは確かなのだが。

 もうひとつ疑問だったのは、『悪童日記』と似た文体(翻訳)で良かったのかどうかだ。著者がフランス語に長けていないという弱点を逆手に取った文体が『悪童日記』では生きていた。だが『昨日』ではそれが効果的だったのだろうか? 『悪童日記』の稚拙な文体に印象が引きずられてしまったみたいだ。

 先日書いた別の疑問。女性作家がなぜ男性(少年)を主人公に据えたか。巻末の解説でそのことが語られている。それが的を得ているのかどうかは分からない。




 自分のように読解力の足りない読み手の場合、どういった速度で読むのが望ましいのか、いつも迷い続けている。「遅読」に意味はあると思う。その一方で、ゆっくり読んでいると既に読んだ部分をどんどん忘れてしまう。特にしばらく出て来なかった人物の名前はすっかり飛んでいってしまうし、構造の複雑な作品になると、じっくりよむほど混乱を招きがちである。ある程度の早さでさっと一度読むことによって全体の構造を捉え、その上で再読し、吟味、鑑賞を深めるというのが理想的な読み方なのではないか思う。

 この『昨日』も前半を読んでいる途中で最初の方の記憶が消えてしまい(もの忘れが本当に酷くなっている)、再読する必要を早々に感じたのだった。





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by desertjazz | 2011-11-10 23:00 | 本 - Readings

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