映像人類学者・分藤大翼の『アフリカ、森の民の音楽と食事』展

d0010432_074095.jpg


 馬喰町ART+EATで開催されている『アフリカ、森の民の音楽と食事』展の第3夜「あかるい森」に行ってきた。カメルーン東部、バカ・ピグミーたちが暮らす森をフィールド研究されている映像人類学者・分藤大翼(信州大学)によるイベント。今夜は 2005年に制作した作品『Wo a bele』(30min)を観た後、管啓次郎(詩人、比較文学者)と対談するといった内容。

 会場に展示されている写真も映像作品もクローズアップとデフォーカスを多用。カメラの限界を意識しているのかもしれないが、それ以前に分藤さんはこうした表現が気に入っているように感じた。EOS 60D でここまで撮れるのかとも(考えてみると自分の写真は Mac 上でしか見ていないので、大判に引き延ばしてみる必要ありだな)。

 写真を見て頭に浮かんだのは、ピグミーと結婚した白人 Louis Sarno のこと。ピグミーの顔は写真を通して見ても愛くるしく、彼の気持ちがわからないでもない。

(『Wo a bele』に対して、あるシーンへの質問が最も多かったそう。何故? これほど解りやすいものはないかとも思ったのだが。そんなことよりも、人類各所の死生観や撮影論/モラルについてもう一度考えささせられた。)


d0010432_074897.jpg

 会が始まると同時に配られたアフリカンプレート。これが美味かった! カメルーンで5年ほど生活したという日本人女性の手料理で、フーフー(ウガリ)もスープも牛肉も本格的な味でありながら、日本人向けにまろやかな味付けにされていた。これは何度でも食べたいけれど、このスペースにまた来れば希望は叶えられるのだろうか。

 メインの対談、分藤大翼 x 管啓次郎 は、管さんの質問に分藤さんが答える形で進行。この分藤さんの話がとても良かった。的確で聞きやすく、面白くて(笑いをとるという意味ではなく)分かりやすい。語る内容が深く、日頃から考え、語り慣れているらしいことが伝わってきた。

 記憶に残ったことば(正確な引用ではない)。

・「1950年代に定住化政策が施されたが上手くいかない面もあり、一部森に戻った人々もいた」(1990年代のボツワナの対ブッシュマン政策を思い起こさせる。)

・「バカには『肉が食べたい』というフレーズがある」「ゾウが捕れたときは『食べ放題』。仲間たちとの分け方を考える必要がない」(キリンを見て「美味そう」と言うブッシュマンを思い出す。)

・「魚獲りのときに水をかき出す音は、動作を皆で合わせて、音楽的になる」

・バカの弾き語りについて「彼のギターは自分で木を切り倒すことから始まる。弦は釣りに使うワイヤーやラジオの中の銅線をほどいて太さを調整して縒り直したもの。演奏法も自己流」「バカの人たちも今はラジオを聴いているので、そうした影響もある」(紹介された演奏は明らかにコンゴ風の音楽だった。)

・「懸念しているのは中国産バイクが入ってきていること。以前は数10キロでも100キロ以上の距離でも歩いて親族のいることろまで行っていたのに、中国産のバイクが輸入されるようになってからは、『バイクに乗せてもらう金がないから』という理由で行かない人が増えている」

・「精霊が来て儀式を行っていても『疲れているから』という理由で参加しない人もいる。とても当たり前の話」

・「撮影したビデオは彼らに見せる。写真は静止画(止まっている)ので不自然。動いている動画(ビデオ)の方が自然なので彼らに受けとめられ易いのではないだろうか」

 ・・・と書き出すと切りがない。理路整然と分かりやすく面白く(笑いを取るという意味ではない)語りかけるトークイベントに接したのは実に久し振り。遠く離れたピグミーと日本人とがどう理解しあえるか、森の生活を知ることがどのように生かされうるのかについて真剣に考えていることが伝わってくるものだった。


d0010432_08096.jpg

 会場では分藤さんの文献のコレクションも並べられていた。ピグミーに関する洋書(画集/写真集)で個人的に気に入っているのはこの2冊なのだけれど、ここでも "Mbuti Design" が紹介されていた。ピグミーに関する文献で持っていないものはどれも気になったので、これから注文することにしよう。

 この記事、分藤さんが録音した CD『夜明けの森 Dawn in the rainforest 』を聴きながら書いている。熱帯の森の音は本当に気持ちがいい。これまで何度も書いてきたので、しつこいようなのだが。ザイール(コンゴ)の森、ナイジェリアのデルタの森、スラウェシやバリの森、そんな濃密な森の空間での実体験/記憶を蘇らせる。この森の音にずっと包まれていたい、この音に包まれたまま生を終えたい、そのように自然と思う。


 1999年にスタートさせた自分のウェブサイトに Forest Beat / Desert Jazz と名前を付けた。Forest Beat はピグミーの音を、Desert Jazz はブッシュマンの音を意味している。ピグミーとブッシュマンには心底惚れ込んでいる。ピグミーとブッシュマンの音楽とその音環境は、自分にとって一生のテーマなのかもしれない。



(取り急ぎのメモ。酒が回ってきたので、あとで書き加えます。→ 2/24 若干修正&追記)






[PR]
by desertjazz | 2013-02-23 00:00 | 音 - Africa

DJ
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31