読書メモ:小川さやか『都市を生きぬくための狡知―タンザニアの零細商人マチンガの民族誌―』

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 タンザニアのある地域における古着売りについてのフィールドワークに基づく研究書。昨年12月に読了。

 タンザニアの古着売買には独特な商取引(「ウジャンジャ」と呼ばれる一種のインフォーマルセクター)が存在する。外国から古着を大量に買い付ける「卸売商」。そこから仕入れる「中間卸売商」。中間卸売商からランク付けされて質の異なる古着を振り分けられる「露天商」と「路上販売商」(「マチンガ」たち)。この3階層の底辺にある路上販売商に成り済ました日本人女性の実体験に基づく報告が面白い。

 最も印象に残ったのは、彼らの人間臭さだ。中間卸売商がマチンガの懐事情を察して仕入れ値以下で卸したり、全く売れなかったマチンガに飯代を与えたり、持ち逃げしたマチンガが平然と元の関係に戻ったり、巧妙なウソを交えて消費者に売る手練手管を発揮したり、親族との協業にメリットとデミリットとがあったり。特に面白く読めたのは微妙な駆け引き関係だった。全く才のなかった少年もそんな現場で学び逞しく育っていく。

 この本の主題をある意味象徴しているのは荻野昌弘の著作からの引用かも知れない。

「友情と敵意、詐欺と贈与が明白に分かれていない。詐欺への行為と贈与への意思は未分化で、どちらにも転びうるし、ある状況が詐欺のようにも、贈与にようにも見えるときさえある。この詐欺であるか純粋な贈与であるか判別さえつかない原初的な世界」(P.326)

 類似した関係性が他の地域でも滋養されてきたことだろう。そんなウジャンジャの複雑さに学ぶところは多い。この世界には「先進国」が見失ってしまった健全な人間関係が息づいている。


 惜しむらくは研究書(博士論文の単行本化?)のために、価格がかなり高いことと、一般人が読むには冗長すぎること。エピソードを集めてコンパクトにまとめ新書などにリメイクしても面白いかも(そうツイッターで提案したら、「難しい」とあっさり著者に否定されてしまった)。






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by desertjazz | 2013-03-08 00:00 | 本 - Readings

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