Guide to Moussu T e Lei Jovents (3) : Disc Review

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 ムッスーTのアルバムを数えてみたら、9年間ですでに7枚も出ていた。ほぼ1年に1枚に近いかなりのハイペースぶり。今日は1日かけて(久し振りの休日だったが、大型台風到来で外出不可能)、これら7枚をじっくり聴き直し。簡単なアルバム・レビューも書いてみた。


1. "Mademoiselle Marseille" (MR 01, 2005)
2. "Forever Polida" (MR 02, 2006)
3. "Inventé a la Ciotat" (MR 03, 2007)
4. "Home Sweet Home" (MR 04, 2008)
5. "Putan De Cancon" (MR 06, 2010)
6. "Empeche-Nous!" (MR 07, 2012)
7. "Artemis" (MR 08, 2013)




1. "Mademoiselle Marseille" (MR 01, 2005)

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 青いチャイナ服を着た黒人労働者と、隅から顔をのぞかせるマドモアゼル。そんな 1930年代のマルセイユを連想させる写真をあしらったジャケットが印象的な1枚目。そのイメージのせいと、派手でにぎやかな Massilia Sound System のサウンドが頭にあったためか、最初聴いたときにはずいぶん地味な印象を受けた。しかし繰り返し聴く度にどんどん良くなっていく「味の深い」名盤。

 バンジョー、アコギ、エレキの多彩なコンビネーション、タトゥーの渋い歌声、それらを中心軸に据えたサウンドスタイルは、この時点ですでに完成している。基本3人ながら、様々なパーカッションに加えて、ジャミルソンのビリンバウ、オクシタン音楽界の盟友ダニエル・ロッドーの弾くアコーディオン、子供たちのコーラスなども交えることで、曲ごと全く異なる色合いのサウンドにしているのも魅力的("Maluros..." のポリリズム感も面白い)。

 タイトル曲や "Pour de Bon..." などのハードさ、"Lo Gabian"、"As-ti Percat..." のようなほのぼの感、"Me'n Garci" のようなセンチメンタルさ、"Le Cul Sur..."、"Au Boui-boui..." のような追憶的メロディーといった具合に、曲が変わる度に雰囲気ががらっと変わる。数え歌のような "Pour de Bon..." やポップな "Bolega Banjo" あたりはライブで一緒に踊りたい。

 ほぼ全てが、作詞・タトゥー、作曲・タトゥー+ブルーなのだが、実質的にアルバムを締める役目の "A La Ciotat" の作詞にはブルーも加わっている。これは毎度ライブのフィナーレで会場が大合唱になるお決まりの曲。日本のライブでもきっとそうなるのだろうなぁ。



2. "Forever Polida" (MR 02, 2006)

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 ブルーの描いたカラフルなイラスト、音数の少なさといった点から、最もポップでサウンドもシンプルに聴こえる作品集。なのにファーストと兄弟関係のようなものを感じる。前作の時点で浮かんだアイデアをそのファーストから時間を待たずに吐き出した、あるいはほとんど同時に録音したのではないか?(それでもサウンドはずいぶんすっきりしているが)。

 イラストが描くのはタトゥーやブルーが暮らすシオタ La Ciotat の港の景色。ここの穏やかな暮らしが頭に浮かぶような楽しい曲、優しい曲ばかり。日本ではこのセカンドが一番好き!という方が結構多いみたい。私自身も、このアルバムをリリースした後のライブをマルセイユで観たこと、日本盤解説を書くために歌詞までじっくり調べたこともあって、これまでの7枚中一番多く聴いた作品であり、一番愛着のある作品でもある。

 切ないのか陽気なのか分からない "Sur la Rive"、バンジョーが小気味良い "Forever Polida"、哀感たっぷりの "Sus l'autura"、ダンサブルな "Les Plaisirs de la Pêche"、ハードな "Quand Tu N'as Que des Bons Amis"、ビデオクリップを見る度になぜか懐かしさを抱く "Boulevard Bertolucci" などなど、どれもまた日本で聴きたい曲ばかり。

 昔風の言い方をすれば、全曲シングルカット候補、捨て曲なしの名盤です!



3. "Inventé a la Ciotat" (MR 03, 2007)

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 1枚のディスクの片面が CD、もう片面が DVD という Dual Disc という変則盤。CD サイドは前半5曲はファーストとセカンドから選曲した「ベスト盤」で、割合ポップな曲が選ばれている。

 興味をそそられるのは後半5曲の方で、"Ob La Di, Ob La Da" のカバー、ロック調の "Les Formigues de la Vida"、アコーディオンと La Mal Coiffee らによるコーラス中心の "Sur la Rive" の純アコースティック・ヴァージョン、Los Piratas による "De Matin Revilhat"、まるでクラブミックス調の "Sur la Rive (Barseloneta Version)" と、内容も相当変則的。

 DVD はタトゥーがナビゲートするラ・シオタ案内(この町は1895年にリュミエール兄弟が『ラ・シオタ駅への列車の到着』を撮影したことから「映画発祥の地」としても知られ、有名な町の映画館も冒頭に登場する)、ライブ映像など、たっぷり120分。ファンには見逃せないものばかり。



4. "Home Sweet Home" (MR 04, 2008)

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 20世紀初頭のマルセイユに誘ってくれそうな、ちょっぴりエロティックな写真をジャケットに使ったスタジオ録音3作目。セカンド "Forever Polida" の路線を継承するようなサウンド(いや、彼らのアルバムはどれも同傾向で、だから全部いいんだけれど)。それでも、ますますシンプルだと言うか、全体的にあっさりした印象で、ブルーの演奏をバックにシンプルに歌っているトラックが多い(例えば "Le Divan" やタイトル曲 "Home Sweet Home" など)。

 アルバム・タイトル通り、小部屋で歌っているかのような「室内楽」的なトラックが多く、強く印象に残る曲がない。"A La Ciotat" の第2ヴァージョンも今ひとつ。それらの中で、英語詩交えて歌う "Labour Song" のチャッチーさは好きだ(コーラスのディレクションでマニュ・テロンも参加している様子)。



5. "Putan De Cancon" (MR 06, 2010)

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 リズム隊(ドラム、パーカッション)が3名に増え5人編成となってのスタジオ録音4作目。よりバンド・サウンドを探求する方向が感じられる。その分、これまでのアルバムよりはゲスト・ミュージシャンの参加は少なくなっている。

 ジャケットは再びブルーによりイラスト画を採用。しかし、過去4枚に共通していた「MOUSSU R」のフォントも、コンガとバンジョーとマリンブラのアイコンも止めてしまった。やや過渡期的サウンドだった前作 "Home Sweet Home" から心機一転といったところか?

 それにしてもジャケットが地味すぎる。矢継ぎ早に新作がリリースされる中、このデザインには惹かれず(個人的にほとんど音楽から離れていた時期とも重なって)、じっくり聴いた記憶がなかった。でも久しぶりに聴いてみたら、すでに耳タコになっている曲ばかり。それなりに聴いていたのだろうか?

 多くの曲を覚えていたのには、メロディーの良さがある。本作もまたいい曲が揃っている。冒頭のタイトルナンバー、ブルーの歌にタトゥーが掛け合うところから、すっかり気分が持っていかれる。以降も、アップ、ハード、ハッピー、ブルー、ノスタルジック、等々と雰囲気の異なるナンバーを連ねているのは変わっていない。"Lo Dintre"、"Alba 7"、"Bons Baisers ..." あたりは今度のライブでも聴きたい。

 アルバム・コンセプトは "Les Frères du Port"(港の兄弟?)に由来しているとのこと。どういうことかな? ジャケットデザインとも関連していそうなので、調べてみよう。



6. "Empeche-Nous!" (MR 07, 2012)

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 グループ初の公式ライブ盤。2011年6月に Miramas の Festival Nuits Métis で収録。残念ながらドラムのゼルビーノは脱退し、4人編成に戻っている。この時点での新作 "Putan De Cancon" の曲に初期の代表曲などを交えた構成。

 これもジャケットが好きでなくて(もっと良い写真はなかったのだろうか?)、ほとんど聴いていなかった。それが最近聴き直したらなかなか良くて、すっかりお気に入りに。ベスト盤的内容なので(最新作 "Artemis" の曲はないが)、目前に迫ったライブへの予習には最適。



7. "Artemis" (MR 08, 2013)

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 ラ・シオタのドックのクレーン?を背景にチャイナ・ブルーを着た少女が微笑むジャケットがいいよね。この娘、誰なのかな?

 メンバーは再び5人に戻っていて、彼らがスタジオで丹念に音を積み重ねていって「作品」を作った様子が伺える音の質感。仲間内でノリ良く録音していた感じもあった初期の仕上げ方が懐かしいほど(1枚目からずっと関わってきた、トゥールーズのダニエル・ロッドーは今回も参加している)。

 やっぱりジャケがいいときは中味もいい。完成度が高く、ファースト、セカンドに次ぐ彼らの代表作になるかも(と言いたいが、"Putan De Cancon" はもっといいかな)。もちろん今度のライブもこのアルバムの曲が中心になるでしょう。

 この最新作に関しては、これ以上なし!という解説があるので、ここでこれ以上は語りません。
 → カストール爺の生活と意見「手を打って、ムッスー・テ」


(明後日 9月18日に日本語解説付き盤も発売予定。)




 ムッスーTの曲は大半が3分前後。中には1分台といった曲もある。なので、音楽のスタイルは違っているが、例えば初期のビートルズのアルバムのように、昔のロックやソウルのレコードを聴くのに似た良さもあるなぁ。「いい曲だなぁ」と思っている間にテンポ良く次に進む、その繰り返しです。

 どれか1枚推薦盤を選ぶとすると、ファースト "Mademoiselle Marseille" とセカンド "Forever Polida" のいずれか。次は "Putan De Cancon"。ライブに行かれる人は最新作 "Artemis" が必聴です(でも会場で買ってサインもらった方がいいかな?)




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by desertjazz | 2013-09-16 17:00 | 音 - Music

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