Oc Fav Disc (1) : "Port de Bocan All Stars 22/01/00"

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"Port de Bocan All Stars 22/01/00" (Poulpasso Production POULP 051, 2000)

 ムッスーT・エ・レイ・ジューヴァン Moussu T e lei Jovents の来日公演以来、オクシタン音楽熱が再燃し、昔買い集めた CD を聴き直し始めている。2000年6月?に発表されたこのライブ・アルバム "Port de Bocan All Stars 22/01/00" もその1枚。

 このライブが行われた 2000年はデュパン Dupain のファースト "Dupain" がリリースされた年。Port de Bocan は、そのデュパンのリーダー、サム・カルピーニャ Samuel Karpienia (マンドーラ、ヴォーカル)を中心に特別編成されたバンド。他の参加メンバーは、同じくデュパンのヴィエル・ア・ル(ハーディ・ガーディ)奏者ピエール Pierlo Bertolino、数年後にデュパンに加入するベース奏者ノエル Noel Baille、マッシリア・サウンド・システム Massilia Sound System の MC リュクス B Lux B、ガリ Gari、タトゥー Tatou 3人、我が最愛!のトコ・ブラーズ Toko Blaze、サムとともにガシャ・エンペガ Gacha Empega を結成し現在ロ・コール・デ・ラ・プラーニャ Lo Cor de la Plana を率いるマニュ・テロン Manu Théron、マルセイユでトロピカルなサウンドを紡ぎ続ける Jagdish & Kreol Konexyon のジャグディシュ、ラガ&マグレブ風味の汎地中海的女性4人組コーラスのレ・モウニネス Les Mounines、さらには Babel Med Music/Fiesta des Suds のブレインのひとりであるオリヴァー・レイまでもが名前を連ねること総勢19名。まさにオック系マルセイユを代表するミュージシャンたちが勢揃いしたスーパーユニットだ。

(余談になるが、Fiesta des Suds のオリヴァー・レイとメールのやり取りを始めた時、「Port de Bocan でトロンボーンをプレイしていたよね」と書いて送ると「どうしてそんなことまで知っているだい?」とすぐに返事をよこした。彼は日本からそんなメールをもらって相当驚いたんじゃないかな。それで意気投合したのだけれど、そんなこともあって私がマルセイユに行く度に歓迎してくれるのだろうと思う。)

 インストのみのトラックが結構多いのだが(全19トラック中11が歌なし)、その中でサウンドの中核をなすのはサムとピエールとノエルのデュパン組3人。サムの作品はどれもが傑作レベルだけれど、このアルバムもそう。まずは彼の激情マンドーラをたっぷり楽しめる。ベースの録音状態がいいのもこの作品の特長で、その創造的プレイが気持ち良いサウンド展開を生み出している。ヴィエル・ア・ルが通奏低音ならぬ通奏高音とでもいった響きをなしている分、ベースの音がなおさら効果的だ。

 もちろんサムの声も最高! マルセイユの歌い手の中で純然たるテノールの艶やかさでは、マッシリアのパペットJ Papet J が一番だと思うが、声の魅力では美しさと力強さを兼ね備えたマニュ・テロンと酒枯れ?したタトゥーに惹かれる。そしてその2人に勝る最高の歌手こそサムだと思う。彼の声には惚れ込むばかりで、比較対象が思い浮かばない。

 そんな空気が一変するのは Tr.16 "Marseille" でトコ・ブラーズが登場した瞬間。ほんと彼のヴォイスは希有な存在だ。この曲はマルセイユ・アンセムの中でも特に有名なもので、マルセイユにまつわるナンバーばかりを集めたあるコンピレーション・アルバムでも1曲目に収録されていた。

 録音が安定しているので、どこかのフェスで収録されたのかと思ったら、なんとバルザザール Balthazar での録音じゃない。バルザザールはマルセイユの街中にあった小さなバーで、オクシタン音楽の重要な拠点。Mic Mac のオフィスからもすぐ近くで、私もマルセイユに行く度に通っていた。寒い夜にホットワインを味わいながら聴いた女性8人のポリフォニーコーラス、オリジナル・オクシターナ Original'Occitana のライブも懐かしいな。

(昨年10月にもバルザザールを訪ねて行ったのだが、すでに閉店し、そこは違う店になっていた。残念。)

 …といった風に、これはオクシタン/マルセイユ音楽の隠れた名盤。そして、デュパンのもうひとりのサム Sam De Agostini のドラムが入れば、まさしくデュパンそのもの。リミックス盤含めてアルバム4枚しか作らなかったデュパンにとっての「裏アルバム」とさえ言える。なので、デュパンのファンにとっては必聴盤だ。

 オクシタンのグループとしては、ゼブダ Zebda も、マッシリア・サウンド・システムも、ワイスター Oaistar も好きだけれど、一番好きで一番聴いたのはデュパン(今はムッスーTかと思うけれど)。2009年10月の台湾公演でサムに会ったときに「再結成しないの?」と訊ねたら、答えを濁していたが、最近遂にデュパンが活動再開! ムッスーTのライブを日本で存分に堪能し、来年2月にはロ・コール・デ・ラ・プラーニャも来日予定なので、マニュ・テロンとも久し振りに会えそう。そこでもうひとつ贅沢な願いを書いてしまうと、今度はデュパンを日本で観たい!!




 オクシタン必聴盤のひとつながら、今これを入手するのはハードルがかなり高いだろう。もし聴きたい人が多いようなら、リイシューについてサムたちに直接かけあってみようかな?

 それと、オクシタンのアルバムは現地に通ってかなり集められたので、オクシタン・ミュージックの傑作紹介をシリーズ化しようかなどとも、ふと邪念が浮かぶ。





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by desertjazz | 2013-10-11 00:00 | 音 - Music

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