Moroccan Music in 50/60s (3) : Koutoubiaphone -1

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 1960年代のモロッコにおいて、ルワイェ(ルワイス)のレコード・レーベルのうち最も大きかったクトゥビアフォン Koutoubiaphone は、アガジール Agazir の Amzal ファミリーがカサブランカに設立したもの。本来は長いルワイェの演奏を45回転盤に収まる長さに縮め、大量のレコードを制作した。そして、70年代に入ってカセットが普及し始めると Tickhaphone として再スタートしカセットのリリースに転じていったらしい。

 El Sur Records 制作の CD-R "Koutoubiaphone" とその "Vol.II" を聴くと、ベルベル音楽のバラエティー豊かさが伝わってくる。つまりこのレーベルは、決してルワイェだけに特化してレコーディングしていたわけではなく、またルワイェ自体もある程度までスタイルの幅をもった音楽だったということなのだろう。

 最近1950/60年代のベルベル音楽について調べているのには、1940年代に Houcine Slaoui が基本スタイルを確立したとされるシャービが、その後どのように受け継がれ、やがては Senhaji や Daoudi といった現代シャービへいかにして繋がっていったのかに興味を持ってのこと。これら2枚のコンピレーションを聴いて、そのヒントを掴みかけている。

 収録曲は玉石混淆といったところだが、それらの中で気を惹かれたのは次のようなトラック。

 まず "Vol.II" から(これは LP の15曲とシングル7曲を合わせたもの。つまりクトゥビアフォンは45回転盤だけをリリースしていたのではなかったことになる)。Tr.3 はウードや歌のスタイルが Houcine Slaoui にとても近い。Tr.4 はウードの強い音が素晴らしい。Tr.13 も Houcine Slaoui 直系のスタイル。Tr.14 は見事な大道芸的な語りもの。Houcine Slaoui も同様の録音をいくつか残しているが、20世紀中頃にはシャービ奏者とルワイェ奏者の間には厳密な境界はなかったのだろう。Tr.20, 21 の笛はまるで日本の神楽の様に聴こえ、Tr.22 は義太夫の演奏のようで面白い。

 "Vol.I" の方は、まず Tr.3 はルバーブとロタールのコンビによるルワイェの典型的な演奏例。Tr.9 はストリート感強い他の録音に比べるとアンダルース音楽的な要素が入りこんでいてモダンな印象を受ける。何と言っても最高なのが Tr.10 の語り芸。コミカルで非常に早口のこの語りは、歌舞伎や文楽の演目中にもある最も派手な謡がずっと長く続いているような面白さがある。Tr.15 の演奏もなかなかいいと思う。




(追記)

 「大道芸的な語り物」(浪曲のようなクセの強い発声、激しく上下する節回し、猛烈な早口、意味が分からなくても伝わってくるユーモラスさ、といった特徴をもっている)って、どうやらジャマ・エル・フナ広場などで繰り広げられる「ハルカ」によるパフォーマンスのことのよう。ハルカ(halqa: 物語の語り手)は地方の民話や自作の物語を語って聞かせる存在だったが、今はほとんどいなくなってしまったらしい。

 「シャービの父」ホースゥィン・スラウィ Houcine Slaoui が子供の頃、まずラバトの halqas に夢中になったと書かれた記事があるのだが、この halqas が何なのか今まで分からなかいままだった。

 うーん、3年かかってやっと大きな謎がひとつ解けかけてきた!(でも、マラケシュの大道芸に詳しい人に訊いたら一発で分かったのかも知れないな。)


(2013/11/04 21:00)


(つづく)






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by desertjazz | 2013-11-04 00:00 | 音 - Africa

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