読書メモ:ロジカルであることの気持ち良さ(数学と物理を読む)

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 ジョージ・G・スピーロ『ケプラー予想: 四百年の難問が解けるまで』、マーカス・デュ・ソートイ『素数の音楽』、リサ・ランドール『宇宙の扉をノックする』『ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く』に続いて、5月はグレアム・ファーメロ『量子の海、ディラックの深淵 〜天才物理学者の華々しき業績と寡黙なる生涯〜』、吉田洋一 + 赤 攝也『数学序説』、シルヴィア・ナサー『ビューティフル・マインド 〜天才数学者の絶望と奇跡〜』、ロビン・ウィルソン『四色問題』の4冊に浸っていた(他には小説を少々)。

 学生時代に理論物理(光量子)を専攻しディラックの『量子力学』も原書で読んだこともあって、ディラックは自分にとってヒーローのような存在。そんな彼がこれほどの苦しみを抱えて生きていたなんて知らずにいた。そして、特殊な病を持って生まれてきたからこそ、極めて高度な能力を持ち得た可能性も指摘している。同様なことは統合失調症を克服してノーベル経済学賞を受賞したジョン・ナッシュ(『ビューティフル・マインド』)についてより顕著なのだが、オリヴァー サックス『妻を帽子とまちがえた男』などの登場人物たちと重ね合わせて読むと興味深いものがある。

 『量子の海、ディラックの深淵』の面白さは、ひとりの偉大な理論物理学者の詳細な伝記であるばかりではなく、20世紀の量子論/理論物理の展開を綴った歴史でもあり、またそれら理論に関する概説書としても機能している点にある。この本は、現時点で今年読んだ中のベストブック。

 これに比べると、ジョン・ナッシュの伝記の方はそこまでには達していない。ヒューマン・ストーリーに重きを置いており、ゲーム理論/ナッシュ均衡/リーマン多様体への埋め込み問題などについては深入りしていないのが個人的には物足りなく、全体的に筆も弱いと感じた。

 もちろん4冊とも面白く読めた(例えば『数学序説』は、ギリシャ発祥の幾何学〜ローマとインドの代数学〜アラビアでの両者の統合〜時代は飛んでデカルトやニュートンの偉業、と数学の歴史をたっぷりおさらい。そして数学とはこういうものだったのかと瞠目することに。さすがに公理主義、集合論、無矛盾性の証明あたりは、完全には理解できなかったが) 。なので、感想メモをじっくり書いておきたいところなのだが、そうした時間もないので、次の本に取りかかっている。読みたい本が溜まっているので、どんどん先に進もう。いや、そもそも今年は「書く時間」どころか「本を読む時間」すらますます取れなくなっている(それで先月はブログを1度もアップしなかった)。遅独なこともあって、読書がなかなか進まない。


 そうなってしまっている大きな要因のひとつは、日本がどんどんおかしな国になっていっているように感じられて、気持ちが落ち着かないこと。3年前、大震災に続いて原発事故が起こったとき、今度こそ日本全体が徹底的にロジカルかつ科学的に考える方向に転ずるよう期待して書いた記憶がある。しかしこれはナイーブな願いだったようだ。震災復興も原発論議も次第に非ロジカルへと進み、今度は安倍政権が恐ろしいまでの非ロジカルさを晒している。これは、彼らがロジカルに語ろうとすると即座に論理破綻するため、反対に非ロジカルに走って誤摩化すことでしか、自身の都合を押し切れなくなっている顕われなのではないだろうか?

 まあ、ここでこの類の話は止めておこう。自分の周囲を見渡すと、友人たちは全員が原発推進に反対だし、今安倍たちがやっていることがまともだと思っている人などひとりもいない(と思う)。恐らく、このブログの読み手も同様のはず。仲間たちとこうしたやり取りをしても「そうだよね」ということで話が終わってしまう。批判ばかり繰り返すことで留まっているのは時間の無駄。簡単には変えられない世の中なのだろうが、まずは自分のできることにコツコツ取り組むしかない。

 そのためには、まずあらゆる情報の中から有益なものをすくいとって、何が正しいのかの判断材料を集めることが必要で、その上で考え続けることが誰にとっても必須の時代になっている。こんなこと日々繰り返していると、瞬く間に時間が過ぎて行く(実際音楽を聴く時間も失われていくし、音楽を聴いている場合ではないといった気分にもなる)。原発問題や政治、国際情勢に関して読み考える時間があるならば、その分、小説や美術や音楽などをのんびり楽しんだ方が有意義だとも思うのだが。それにしても、政治家や御用学者や原発推進派の発言には、耳を疑うほどに非ロジカルなものがあまりに多くてウンザリしてしまう。

 そのような妄論とは反対に、数学や理論物理の世界はロジカルの極地。そうした本を読んでいると本当に気持ちがすっきりする。非ロジカルな世の中で生きて行かなくてはならないけれど、その分ロジカルな本を読むことで、バランスが取れているのかも知れない。


(まとまりなく長くなってきたので、一旦終了。)




 ところで、この問題の答えについてまだ書いていなかった。どなたからも問合せがなかったので、まあいいか。。。






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by desertjazz | 2014-06-10 00:00 | 本 - Readings

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