読書メモ:J・M・クッツェー

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 J・M・クッツェーの自伝3部作『少年時代』『青年時代』『サマータイム』を読了(邦訳は「辺境からの三つの〈自伝〉」と副題をつけて1冊に)。

 『少年時代』では南アの土地や母へのノスタルジックな思い出が重なる。書き出しから心を捉えられる。『青年時代』では南アからイギリスに移っていつもの?ダメ男モードが膨らむ。その一方で事実とフィクションの境目が曖昧になっていく。そして『サマータイム』は、自伝をベースにして作り上げたひとつの小説へと大きくシフト。自身を小説の主人公にしてしまう辺りは最近読んだウエルベックも連想させるが、途中でクッツェーが故人であると明かす驚きも含めて先の2部とはモードがかなり異なる。その上で自身の思想や主義も織り込んでいるのだから、どこまでが自伝なのかどこからがフィクションなのか、ますます怪しくなる。しかし、そこがこの作品の構造の面白いところ。

 クッツェーは一作ごと異なるものを書こうという意欲が強い。『サマータイム』にもそれが端的に現れている。誰にも書けないような独特な作品を生み出し続けているのには、彼が南アで生まれ育ったという条件が影響していることも確かだろう。だが、読んでいて、一体どのように共感したらよいのか毎作分からない。それでも、一気に読み終えてしまうのは、太陽の熱で焦がされるような、心をナイフで抉られるような、あのヒリヒリする感覚に魅入られているせいなのかも知れない。

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 J・M・クッツェーを読んだのはこれが6冊目。アフリカの小説家なので日本では地味な存在なのかと思ったら、デビュー作からほぼ全て邦訳がある。初期の『ダスクランド』と『石の女』も読んでおこうかな?



 (うーん、J・M・クッツェーの小説はやっぱりよく分からないな。)






by desertjazz | 2014-09-08 08:00 | 本 - Readings

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