読書メモ:池谷和信『人間にとってスイカとは何か』

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 池谷和信『人間にとってスイカとは何か カラハリ狩猟民と考える』(臨川書店)を読了。

 四半世紀以上にわたって、ボツワナ共和国のカラハリ砂漠に暮らすサン(ブッシュマン)をフィールド調査してきた研究者(現在 国立民族学博物館教授)による新著(今年6月に出ていたのを見逃していた)。一説ではスイカの原産地ともされるカラハリの人々の姿を、そのスイカとの共生関係を中心に活き活きと描いている。ここ数十年間のサンの生活の激変振りを知るには最上の本だろう(そうした環境変化はピグミー以上とさえいえる。自動車を買ってビジネスを始めたサンや、飛行機で世界中を飛び回って政治活動するサンすら登場したのだから)。

 池谷さんから直接あるいは私信を通じて既に知ったことがらが多いが、個人的には親指ピアノに関する部分が興味深かった。私がプライベートな録音を所有しているサンの演奏者たちに関しての記述もある。

「ウレーホさんやカリチュバさんは、エナーテと呼ばれる古いタイプの楽器を演奏していて、ドレミとは異なる音階にあわせている。彼らは、村から150キロメートル離れたラコプスにてカランガの人から習得したのだという。カランガは、ジンバブエの中心的な民族であるショナに近い人びとである。」(P.136)


 また、親指ピアノの土台となる木材を生きた木から切り出す写真は初めて見た。(P.137)こうした親指ピアノの紹介をもっと読んでみたかったが、今度の本はメインテーマがスイカなので無理だったことだろう。

 それより、親指ピアノを研究されている方々から大学での論文の類を時々頂戴しているけれど、どれもじっくり読めないでいる。まずはそれらを読む方が先か。そのうちまとめて読む時間を作れるといいのだが。


 ところで、この本で紹介されているモラポ村のサンらは、自分たちの親指ピアノを「デング」と呼んでいた(サンの親指ピアノは一般的には「ダンゴ Dango」と表記されることが多い)。デング・フィーヴァーが話題になっている今、自分が「デング・コレクター」であるとはなかなか言い出しにくい。






by desertjazz | 2014-09-12 00:00 | 本 - Readings

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