15 Years

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 Phyno、2 Face Idibia、King Robert Ebizimor、Barrister S. Smooth、そして Pereama Freetown と、日本で知っている人はまずいないであろうナイジェリアのミュージシャンたちを最近続けて取り上げてみた。拙ブログを読まれた方の中には「日本では CD が手に入らない音楽を紹介しても意味はないだろう」と思われた人もいるかも知れない。しかし、実はそうとも限らないのである。その辺りについて、たまには少し真面目に本音のところを書いてみたい。






 ここの冒頭に掲げた CD "Evergreen Hits of 20 Music Masters of Our Country Nigeria" (The Evergreen Musical Company HRS 005) をお持ちの方はいらっしゃるだろうか。この CD は私が2005年にナイジェリアに滞在した際、レゴスの CD ショップで見つけたもので、自身のサイト(かブログ?)で紹介した。それに続いて雑誌『レコードコレクターズ』の海外盤紹介ページでも取り上げてレビューを書いた。

 正直なところ、日本で入手不可能な CD を紹介することに少なからず迷いはあった。だがこれは、ナイジェリアン・ポップの大名曲 Bobby Benson の "Taxi Driver" が初 CD 化されているだけでも特筆ものなのに、加えて Victor Olaiya、Rex Lawson、Adeolu Akisanya、Roy Chicago、Fela Kuti、J. O. Araba、Ayinde Bakare、Tunde nightingale、Fatai Rolling Dollar などなど日本で有名無名なナイジェリアを代表するミュージシャンたちのヒット曲やレア曲がずらりと並ぶ圧巻のコンピレーション。ならば是非多くの人たちに聴いて欲しいと思って紹介することを決めたのだった。

 予想された通り入手困難な状況が長年続いたのだが、やがて渋谷 El Sur Records の原田店主の尽力あって日本への大量入荷が実現。同店ではベストセラーになったと聞く。そして今年、先日出版された『Afro Pop Disc Guide』(監修・吉本秀純、シンコーミュージック)でもこの CD を取り上げて下さった。(P.079)

 私は自分が興味を持ったり好きになったものについてばかり書いてきた。たとえそれが身近なところになくても、もしそれが本当に価値あるならば、やがて他の誰かも興味を持って下さるようになり、いつかはそれがそうした人たちまで届くことになるのかも知れない。



 今年は自身のウェブサイトを開設して15年になる。その機会にこれまでやってきたことを振り返ってみた。ネットを活用して最優先に続けてきたのは、自分が好きになったもの/深い関心を抱いたもののうち、まだ誰もその存在すら知らないだろうものの紹介だったと思う。

 その最たるものは Fela Kuti のファースト・アルバムだった。2000年頃にニューヨークである音楽書を買った。それはほとんど自費出版に近いナイジェリア音楽に関する研究書で、中に Fela Kuti のファースト LP のジャケットが掲載されていた。それを目にした瞬間、身体に衝撃が走った! 当時は60年代の Fela Kuti についてまだほとんど分かっていなくて、Koola Lobitos を率いてなされた録音作品についても不明なことばかり。もちろん60年代半ばにフェラが LP を出したことを日本で知っていた人は皆無のはずだ(欧米でもまずいなかったことだろう)。

 この「再発見」がひとつのきっかけとなって、そのファースト・アルバムを含む形で Fela Kuti & Koola Lobitos のリイシューが実現したことは、すでに多くの方がご存知の通り。ファースト・アルバムの音源はニューヨークで見つけた本の著者から提供されたもので、私が聴いた限りでは、その後の他のリイシュー盤でも同じ音源が使用されている(それは除去し切れなかったノイズを聴けば明らか)。もしかすると、私がこれまでアフリカ音楽と関わってきた中で、Fela Kuti のファースト・アルバムを発見したことが一番意義あることだったかも知れない。



 アフリカ音楽のリイシューとしては、Hugh Tracey のフィールド・レコーディングをリイシューした SWP Records や個性的なリイシューを連発している Analogue Africa を日本に紹介したのも私が最初だった。当時はどちらもレーベル・オーナーと個人的にやり取りをして CD を送ってもらう段階だったが、今では両レーベルの CD や LP も日本で何ら難なく買えるようになっている。

 アフリカ以外で記憶に残っているのはイダン・レイヒェル Idan Raichel。2003年、イスラエルに滞在中、出たばかりの彼のファースト・アルバムを聴いて、その斬新で素晴らしいサウンドの虜になってしまい、その後も「イダンは凄い」と言い続けた。そんな声はなかなか認められなかったが、2006年に彼の世界デビュー公演をパリまで観に行ってインタビューもし、翌年にはワシントンでも会ってきた。彼の魅力について語り続けているうちに、彼の CD が日本でも売られるようになり、遂に初の日本公演も行われることが決まった(10/7 Billboard Live Tokyo)。

 知られざる音楽を紹介してきた例はまだまだある。例えば Jalal のレッガーダ Reggada に注目して日本に紹介したのも多分私が最初だろう。



 こうした音楽やレコードが世に知られるようになるのは、単なる時間の問題だったのか、あるいは私からの情報発信が功を奏したのかは、ケースバイケースだろう。それでも、多少珍しいものでも自分が本当に好きになったものは、語り続けていればいつかは他の音楽ファンにも届くということを実感できた。そして、そのことを自分自身が楽しんでもいる。(これは凄い!と宣言だけしておきながら、時間がなく、その後のことについては他人に丸投げ、具体的紹介は他力本願になってばかりだったが。)

 そうしたことを根拠に、2 Face や Pereama Freetown もいつか日本で知られる日が来るのではないかと思いながら書いていた。

 多分自分には、まだ誰も知らない面白い音楽やレコードを見つけてくる嗅覚のようなものが備わっているのだろう。実際その点に関してはかなり自信を持っている。他では取り上げられていない魅力的な音楽を探し出し語ってきた、そこにこれまで私が情報発信を続けて来た一番の意味があったように思う。反対の言い方をすれば、多くのメディアやブログで紹介される音楽についてまで私が書く必要は少ないと思っている。他でも読めるものについて書いても、それは情報過多な世界の中ではノイズにしかなり得ない危険性がある(例えば音楽シーンや歴史軸の中に位置づけしながら論考するのであれば、また話は別だが)。

 だからと言って、マニアックなものを推薦するとか、重箱の隅をつつくようなことをするとか、自分の趣味を押し付けるとかいったことをする気は毛頭ないし、興味も全くない。なるべくなら多くの音楽ファンから同意や共感を得られる音楽だけを紹介したいと思っている。

 ただここ何年かはそのような音楽との出会いが本当に少ない。それで、やや欲求不満気味なのだが、まだ誰も気がついていない凄い音楽と出会うなんて簡単でないことは当然だろう。なので、数年にひとつでもそんな音楽を見つけて紹介し少しでも多くの人たちと一緒に楽しむことができたら嬉しいと思っている。

 とにかくするべきことが多すぎて、新しい音楽を探索する時間がない日々。そんな最中、先日ナイジェリアの CD をプレセントしていただいたとことをきっかけに、愛聴していながらもまだきちんと紹介していなかったものが沢山あることを思い出した。そこで、まずはナイジェリアのカセット作品についてから書き始めたところである。


 ・・・という訳で、次は、個人的に21世紀最大の衝撃だったニジェール・デルタの「カラバリ・ミュージック」について書いてみようと思っている。






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by desertjazz | 2014-09-13 00:00 | 音 - Africa

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