パリ滞在記 2015(14)

〈5日目〉4月15日(水)Part 3


■クロ姫の美しく不思議な世界 - Klo Pelgag Live


 今夜はクロ・ペルガグ Klo Pelgag のコンサート。ファーダ・フレディ 〜 デュパン 〜 クロ・ペルガグと、何とも贅沢なパリ3連夜だ。会場は一昨日の La Cigale からちょっとだけ東に進んだところにある ル・トリアノン Le Trianon。なのでここもホテルから歩いてすぐ(Barbes から Pigale/St. George にかけてのエリアには、楽器店、レコード店、音楽資料館などが集中おり、もう少し西に行けばムーランルージュなどがある)。

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 クロ・ペルガグはカナダ・ケベック在住の若手アーティスト(現在25歳?)。彼女のことを知ったのは、毎度のごとく、昨年カストール爺さんによる紹介記事を読んでのこと。PV で視聴/試聴して、CD を買って聴いて、たちまち虜になってしまった。

 何て美しいメロディーばかりなのだろう。変化に富んで弾むような旋律も、時おり見せるもの悲しさもたまらない。こうした曲を生み出す泉は彼女のどこからわき上がっているのだろう。アコースティック楽器を主体とする室内楽的な演奏も、清廉なコーラスも、彼女の可憐かつ力の籠った歌声を引き立てている。

 それでいながら、アルバム・タイトルは『怪物たちの錬金術(L'Alchimie des Monstres)』。ジャケットもそのモンスターと思しき生き物のイラスト画となっている。PV 数本を観てさらに驚くことに。曲の美しさにはまるでそぐわないような衣装やメイクアップや小物の数々。玉手箱をひっくり返したかのようなハチャメチャ振り。そっと優しく扱ってあげないと簡単に壊れてしまいそうな繊細な音楽を、自ら破壊しているかのような印象さえ受ける。

 カストール爺さんの指摘によると、彼女の書く歌詞はとてもシュールであるとのこと。これはとても重要なポイント。曲の美しさと辛辣で理解の難しい歌詞とのミスマッチ振りも、彼女への評価に繋がっているようだ。

 こうした独特な世界感は、彼女の内面の狂気を映しているのか、次々と思いつくアイディアをまとめて放り込んだものなのか、何か明確な狙いがあってのことなのか。Alice in Wonderland ならぬ Klo Pelgag in Wonderland、「クロ姫の不思議世界」に彷徨いこんだ気分になってくる。

 どうやら自分は、ジャック・ブレル Jacques Brel からイグナトゥス Ignatus に至るまで、一癖も二癖もあるような仏語ポップスが好きなようだ。

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 カストール爺さん、Ovni 誌の編集長氏と待ち合わせ。3人揃ったところで場内へ。

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 ここ Le Trianon の内部も歴史を感じさせる美しさだ。

 前座が始まったところで、すでに1階の席は埋まっており、2階に上がってステージの見やすい席を探す。

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 日本出発前に撮影申請を依頼してみたら許可が下りた。そこで前座が終わったところで撮影ポジションを探して歩いたのだけれど、撮れる位置はないと判断。今日も無理はしないことにする。その合間にもステージの上の様子を観察。トランポリン、車いす、電球、子供用プール、パイナップル !? 謎の物体が散らばっている。

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 さあ、ショーの始まり。クロちゃんはお洒落っ気ない格好?で登場。演奏が始まる中、座り込んで会場を見回す。(フロアは真っ暗で身動き取れず、脇から数カット。暗くてクロ・ペルガグの様子がよく分からない。)

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 クロちゃんはまずギターを演奏しながら聴き慣れた曲を披露。その後はギターとピアノの間を行ったり来たり。彼女はこんなに小柄だったのか。まるで小さな子供が大きなギターを抱えているかのよう。

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 目をクシャッと閉じ込んで歌う姿は昔ライブを観た Souad Massi の仕草とそっくり(なんてことも思い出す)。

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 クロ・ペルガグの他に、キーボード(実の兄でアレンジも担当)、ドラム、ベース、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという7人編成。クロちゃんは骸骨模様のツナギ、ベース奏者は真っ白なランニングシャツに水泳キャップ?にマント。キーボード(クロ・ペルガグの実の兄)はばかでかい時計を首からぶら下げている。ストリングスの女性3人も変なものをかぶっている?

(頭撮りだけして2階に移動。後はのんびりステージを眺めながら、時々客席の背後から撮影。
 その際、階段を登って行こうとしたら警備員から「ダメだ」と止められる。しかしそれに続けて「冗談だよ」と。今日は昼間の美術館のオバンといい、ここの警備員といい、冗談がキツい。と思っていると、その直後にやってきたカメラマンはパスを持っていなかったので本当に止められていた。そういえば、一昨日も La Cigale でコーラス隊のひとりがパスを持たずに楽屋に入ろうとして大騒ぎになった。警備員らはきっちり自分たちの仕事をしているのだな。)


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 よく見るとベース奏者は鼻に巨大な安全ピン?を刺している。クロちゃんがトランポリンに乗っているのは、少しでも大きく見せる工夫かと思ったりも。この姿勢でよくバランス取って演奏できるな。

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 演奏の完成度も見事で、グループのひとりひとりが芸達者なだけでなくスキルも高いことが伝わってくる。

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 時おり曲間で MC。これが猛烈に早口のケベック訛りのフランス語。結構受けていたが、フランス人でも聞き取れない人は多いそう。

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 手品を披露したり、パイナップルをピンに見立ててボーリングをしたり。こうした出し物には個人的には特段意味を感じなかった。

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 最後は "La Neige Tombe Sans Se Faire Mal" でしっとりしめてくれた。自分はやっぱりこうした物悲しい雰囲気の曲が好きだなぁ。


 あっと言う間の2時間のステージ、終わって一番印象に残ったのは、やはり圧倒的に曲が素晴らしいこと。ほとんど歌詞も訳詞も読んでいないので、彼女の曲には繊細なイメージばかりを持っていたが、意外と力強い歌いぶりであることに今さらながら気がつかされた。

 ステージ上に乱雑に置かれた様々なものの役割は、進行とともに徐々に明かされていった。それぞれについて自分が面白いと思うようなことは特になかったが、意味不明なブツが散らばるステージ全体を眼にした瞬間から「クロ姫の不思議世界」に一気に迷い込んだ気分にさせる役割は大きかったかとも思う。

 奇抜な衣装もふくめて、そうしたはみ出しぶり/弾け方を観ていて連想したのはフランク・ザッパだった。音楽そのものは極めて高いレベルに達している一方で、その周辺(衣装、写真、ビデオ、ライブパフォーマンス、等々)はことごとくエロで下品で下世話でダサイ。そんな感想を漏らしたところ、実際彼女もザッパから多大な影響を受けていることを教えられた。やっぱりね!

 クロ・ペルガグは今世界で一番美しい曲を書くひとりだと思う。これから10年20年の活動が本当に楽しみだ。もしかしたら彼女は大化けするかもしれない。そんな予感すらする。クロ・ペルガグは天才だと実感したステージだった。


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 ステージ終盤からアンコールにかけての映像が YouTube にアップされていた。兄がパイナップルをちぎって妹に放り続けるシーンなど懐かしい。

 ・ Klô Pelgag au Trianon, 15 avril 2015
 ・ Klô Pelgag - Les Maladies de cœur & Tremblements (Trianon, 2015)
 ・ Klo Pelgag - La Neige Tombe sans se faire mal (Trianon, 2015)




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 終演後のパーティーにもご招待いただいた。シャンパンで乾杯! このエリアだけでも70人くらい? 数々の賞を獲得するなど活動が好調なだけあって、関係者らによるプロモーションにも力が入っているようだ。長かったフランス・ツアーがこれでひと区切りとなったことも大きいのだろう。

 この混みようではクロ・ペルガグに会えるのは一体いつになることやら、と思っていると関係者に「すぐ連れてくる」と言われ、本当に彼女が現れた。目の前のクロちゃんは想像とは違って(?)まるで少女のような可愛らしさ。もう抱きしめたくなるくらいに。気難しいところもあるのかと思ったのだけれど、そんなところは全くなくて、楽しく話をさせていただいた。調子に乗ってサインをお願いしたり、一緒に写真を撮ったりまで。

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 左隣に立っているのは彼女のもう一人の兄(いや弟だったかな?)。和光大学に留学していたそうで、日本語がペラペラ。クロ・ペルガグの PV に着物を着たダンサーや寿司職人が登場したり、彼女が広島カープのユニフォームを着てエレピを弾き語りしたりしているのには、もしかすると兄(弟)からの影響もあるのかも知れない。

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 人に預けたカメラの中にこんなショットがあった。眼にも独特な意志の強さのようなものが潜んでいる。




 クロ・ペルガグは今年の夏、某フェス(スキヤキじゃないよ)で日本に呼びたいという話もあったようだが、それは実現しなかった。残念。彼女のライブもいつか日本でも観たいものです!






 クロ・ペルガグについてはもっと書いてみたいけれど、まずは以下が必読です。

 ・クロ・ペルガグの奇天烈な世界・1
 ・クロ・ペルガグの奇天烈な世界・2
 ・クロ・ペルガグの奇天烈な世界・3







 24時、ビールを買ってからホテルに戻る。26:30 就寝。今日も充実した1日だった。


 (1ヶ月遅れの 5/15 に完成/公開:続く)






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by desertjazz | 2015-04-15 23:03 | 旅 - Abroad

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