Louis Sarno "Song From The Forest"

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 先日のこと、ピグミーについて調べていて、ルイス・サルノ Louis Sarno の本 "Song From The Forest" がリプリントされているのに気がついた。どうして今ごろ?と思いつつさらに調べてみたところ、同タイトルの映画が 2013年に制作され、その後世界各地で話題になっていることが分かった。それを受けての再出版と思われ、映画の DVD とサントラ CD も発売にされている。

 ルイス・サルノは 1954年アメリカ、ニュー・ジャージー生まれの白人。80年代のある日、ラジオで偶然聞いたピグミーのコーラスに心を奪われ、コリン・ターンブル(参照)に連絡し協力を仰ぎなどしながら、85年に中央アフリカ、バヤカ・ピグミーの森を訪れる。やがてピグミーたちから家族として迎え入れられ、そこでの定住を続ける。

 "Song From The Forest" はルイスがピグミー音楽への愛情とピグミーの森での暮らしについて綴り、1993年に出版した本。95年には "Bayaka: The Extraordinary Music of the Babenzélé Pygmies" という CD 付きのブックレットも ellipsis arts… から出しているが、本の内容も添付 CD で聴ける音楽もとてもいい。同じ ellipsis art… からの CD ブック "Echoes of the Forest" (1995) でも彼の録音が聴ける。

 映画 "Song From The Forest" はルイス・サルノを主人公にしたドキュメンタリー作品。森で暮らすうちにルイスはピグミー女性との間に子を授かったのだが、その Samedi Mathurin Bokombe 君(土曜日に生まれたから「土曜日」君、撮影時13歳)との関係や、彼をニューヨークに連れて行くことが話の軸となっている。

 映画はバヤカの森の紹介から始まるのだが、自分がピグミーの音楽の素晴らしさを知っているだけに、彼らの歌い奏でる姿をもっと見たくなる。それでも、ポリタンクや金属鍋のふたを叩いてリズムを産み出すなど、ピグミーの音楽も更新を続けている様子が伝わってくる。

 この映画、父子の関係の描き方がいいな。シャツの中で抱き合うところ、フルートの吹き方を教え/教わるところ、ニューヨークで口論になるところ(ピグミーであることを忘れてしまい、小柄なので6歳児くらいに見えるのだけれど、意外とサムディ君の方が大人びていたり)。詳しいことは映画を観てください。

 気に入っているシーンのひとつはニューヨークの景色に森の音をつけたところ。どこかでやるんじゃないかと思いつつ観ていたら、やっぱり…。コンクリート・ビルディングが林立する都会から森を連想する人は多いだろう。「コンクリート・ジャングル」なんて言い方もあるくらいだから。アフリカの森と現代都市の森。ふたつの巨大な森の中で営まれる全く違った2つの生き方。同じ人間でありながら、それぞれは何と異なる世界なのだろう。そのことからも、いろいろ考えさせられる映画である。

(この映画にはジム・ジャームッシュ!も登場する。ルイスとジムがかつてルームメイトだったなんて初めて知った。ビックリ!)

 サントラ盤の収録トラックをチェックしてみると、既発録音はなさそうだったので買ってみた。ピグミーのレコードは全て集めているので…。

 まず最初の3トラックが素晴らしい! (1) "Yeyi-Greeting" は超絶的に美しいヨーデル。聴く度に涙が溢れそうになる。(2) "Women Sing in the Forest" は現実世界から離れたかのような響きに満ちたコーラス。(3) "Tree Drumming" はトランシーな重低音ビートが圧巻で、人間技とは思えないほど。恐らく巨大木の盤根を叩いているのだろう。

 以降も珠玉の録音が並ぶ。ルイス・サルノはピグミーの森で1000時間を超える録音を行ってきたという。この CD にはそれらの中からベストなものを選んでいることだろう。聴いていると、眼の前に音の桃源郷が広がっていく。このところ毎日夜遅く、この CD ばかり聴いている。今年のベスト・アルバムはもうこれで確定です。

 例えば、ハンティングの歌のダイナミックなサウンドだとか、静寂の後に間をとってから突然切り込む Water Drumming だとか、Earth Bow の太い音色の録音だとか、音作りの面白さも。制作者たち、そのあたりも分かっている!

(バヤカ・ピグミーの音楽をじっくり聴いて改めて驚かされたのは、その「正確さ」。リズムもピッチもハーモニーも全く乱れることがないし、弦楽器やフルートを演奏する際の運指も全く狂わない。散々言われていることだけれど、確かにクラシック音楽にも匹敵するレベルだ。それでいて、聴いているとそんなことは一切忘れて至福へと導いてくれる。)

 映画を観ていてちょっと残念だったのは、ルイスに元気がないこと(それと、見た目もずいぶん老いた印象だなぁ)。D型肝炎にかかっているそうで、その影響もある様子だった。経済的にもうまく行っていないらしい。カメルーンの学校に寄付する一方で、CD は全く売れなくなり(そもそも近頃は CD 作っていなかったのでは?)、観光客が来なくなってガイドによる収入もなくなったと語る。この CD からの収入の大半は The Bayaka Support Project なるところに寄付されるそうだ。ルイスとバヤカのピグミーを支援するためにも CD を買ってください。




関連リンク

http://songfromtheforest.com
http://www.facebook.com/songfromtheforest
http://www.facebook.com/louis.sarno.5?fref=ts
http://www.imdb.com/title/tt3003858/
http://motherboard.vice.com/read/louis-sarno-spent-30-years-in-the-rainforest-preserving-the-music-of-the-bayaka
http://www1.wdr.de/fernsehen/wdr-dok/sendungen/song-from-the-forest-100~.html

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(写真は上記リンクからの引用。)




 白状してしまうと、ピグミーについて調べ続けているのは、今年か来年にでもピグミーの森に行こうと思っているから。不思議なもので、学生時代には海外旅行などには全く興味がなかったのに、気がついてみたら行きたいところにはほぼ行き尽くしてしまっていた。会いたいと思っていた人には皆会えたし、欲がないからなのか貧しい育ちだからなのか、特別欲しいものももうない。自分はあと何をしたいのかとさんざん考えた末の答えが、ピグミーの森に行くこと。だけれど、ひとつくらい夢を実現させずに残しておかないと、これから先、生きていく理由がなくなってしまうんじゃないか、、、なんて考えも頭の片隅で疼いている。






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by desertjazz | 2016-07-25 17:00 | 音 - Africa

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