クロ・ペルガグの美しくも不思議な世界 〜カナダの若き鬼才が紡ぎ出す芸術〜(1)

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(画像はオフィシャル・サイト http://klopelgag.com/ より引用)


 今私が世界で一番気になるアーティスト、クロ・ペルガグの待望の初来日公演がいよいよ来月に迫ってきた。そこで、今年8月の Sukiyaki Meets The World 2017 と Sukiyaki Tokyo に出演するクロ・ペルガグについて、改めて整理してみよう。

(フランス語を解さず、カナダに行ったこともない私が、彼女を紹介するには限界もあるのですが、、、。)


 クロ・ペルガグはカナダ出身の女性ミュージシャン/シンガーソングライター。ただし「クロ・ペルガグ Klô Pelgag 」というのはアーティスト名で、本名は「クロエ・ペルティエ=ガニョン Chloé Pelletier-Gagnon 」である。

 1990年3月13日の生まれなので現在27歳。生誕地はカナダ、ケベック州サンタンヌデモン Sainte-Anne-des-Monts。サンタンヌデモンはケベックの州都モントリオールから北東に700kmほど行った先にある、セントローレンス湾に面した街で、人口は約7000。

 ケベック出身の Gagnon姓の有名人には、ヒーリング・ミュージックの作曲家/ピアニストのアンドレ・ギャニオン André Gagnon(日本でも人気があり「めぐり逢い」などはお葬式の定番曲として有名)や、クロ・ペルガグとも度々共作/共演している VioleTT PI こと Karl Gagnon などがいる。クロの兄のマチュー Mathieu Pelgag も彼女の曲のアレンジとオーケストレーションを担当し、ライブではクロのバンドメンバーとして登場することも多い。マチュー以外の面々もクロと血縁関係にあるかどうかまでは未確認だが、ケベックのガニョンは秀でた音楽家を輩出する一族なのかもしれない。

 ご存知の通り、カナダのケベックはフランス系住民が多く、他のエリアでは英語が話されるのに対して、ケベックではフランス語の方が主要言語となっている(カナダの公用語は英語とフランス語)。なので、クロ・ペルガグの歌は全てフランス語で、彼女の音楽活動もケベックとフランスが中心となっている。


 クロ・ペルガグは19歳の頃から繰り返しステージに立つようになったそう。この頃から実質的なプロ活動を始めたと言えるのかもしれない。

 そして、2012年4月17日に "EP" をリリースし、レコード・デビュー。これはタイトル通り4曲入りの作品で、ダウンロードのみでの発売(現在でもフィジカル盤の発売はない)。

 2013年9月24日にファースト・アルバム "L'alchimie des Monstres" をリリース(全11トラック)。日本で国内盤は制作されなかったが、パリ在住の音楽ライター/熱心なクロの紹介者である對馬敏彦氏(向風三郎氏)によって『怪物たちの錬金術』という素敵な邦題が与えられた。(この傑作ファースト、遂に明後日7月16日に国内盤発売が決定!)

 この "L'alchimie des Monstres" はカナダ、フランスの両国で高く評価され、大きな賞を相次いで獲得。地元カナダに限らずフランス各地でもコンサートを繰り返す。その間、2015年4月13日には曲を追加し(全16トラック)豪華なブックレットも付けたデラックス・エディション "L'alchimie des Monstres - Edition de luxe" も発表。

 次いで 2016年11月4日にセカンド・アルバム "L'etoile Thoracique" をリリース(邦題は『あばら骨の星』で、今回も對馬氏が命名)。翌17年にはフランスと日本でも発売になり、再び大きな反響を呼んだ。

 セカンド "L'etoile Thoracique" も絶大な評価を受ける中、クロ・ペルガグの初来日が決定。8月25、27日には Sukiyaki Meets The World(富山県南砺市)で、30日には東京渋谷での公演が予定されている。


 ダリ、マグリット、ドビュッシー、ジャック・ブレル、キング・クリムゾン、フランク・ザッパなどから影響を受けたと、彼女自身が明かしているらしい。時に優しく囁き、時に叫ぶ歌唱スタイルから、ケイト・ブッシュ、ビョーク、さらには同じカナダ(ノバスコシア州生まれ/アルバータ州カルガリー出身)のファイスト Fiest を連想するという声も多い。

(実際、影響を与えたアーティストの名前を耳にする前に彼女のライブを観て、ブレルやザッパを自然と連想した。しかしそれ以上に、幼少期から恵まれた環境の中で様々な芸術に接し、多様な音楽を浴びるように聴く中で構築されたのが、彼女の音楽であり、歌い方なのではないだろうか。彼女が自然と吸収してきたのは先に並べたアーティスト群には止まらない。例えばピーター・ゲイブリエルからの影響も感じる。)


 クロ・ペルガグの音楽の大きな魅力のひとつは、彼女が紡ぎ出すメロディーの美しさだ。他に似たものを思い越せないような、独特なメロディーを次々に生み出すことに驚くとともに、ひとつの曲の中で変幻自在に変化する様も面白い。

 そうした極上のメロディーと奏で合うのは、弦楽器や木管楽器などによる室内楽的なアンサンブルやストリングス中心のオーケストラだ。ライブでもバイオリン、チェロ、ビオラの三重奏が必ずクロに寄り添っているように、彼女のサウンドにはこうしたストリングスが欠かせない。ポピュラー音楽のユニットとして、これは珍しい編成だろう。

 そんな歌と演奏に耳寄せていると、心地よく、楽しく、切なく、哀しくと、何とも複雑な気持ちになってくる。

 しかし、曲名や歌詞によく目を凝らしてみると、「心疾患」だとか「統合失調症」だとか「不眠症」だとか「白血病」だとか「皮膚科医」だとか、、、。病気に限らずとも「死」をモチーフにした歌が少なくない。さらには、、、「首にくくりつけたロープ」?、「アマゾンで酒を求める」?、「櫂をあなたの頭に打ち下ろしたい」?、「私の墓の上で踊りたいかい」? 一体なんなんだ、これは???? そんなところから、彼女の歌は、シュールだとか不条理だとかと語られる。

(今回の記事を書くに際して、フランス語も読めないくせに、意を決して彼女の全曲を和訳してみた。クロが書いた歌詞を読み込むうちに、シュールと感じさせるモチーフの意味は実は反対なのであって、「誰もが不完全な存在である」、「他者と繋がり合いたい」といったメッセージが伝わってきた。だからこそ自分は、彼女の音楽を美しいと感じ、歌声に切なくなり、心が震えるほどに感動するのだろう。クロは人間という存在にとても興味があって、他者を理解したいと本気で考えている。そこに彼女のアーティスト活動の源があるように思う。これはあくまでも自分が勝手に解釈しているだけなのかもしれないが、これから数回の記事の中でそうした分析までたどり着けるといいな。)

 クロ・ペルガグはアルバムごとのアートワークも素晴らしく、PV にも独特なセンスがある。ステージ衣装は極めて個性的だし、ステージングも(これまで何度も書いているように)おもちゃ箱をひっくり返したような乱雑さに溢れた楽しさがある。


 クロ・ペルガグは稀代な総合芸術家なのだと思う。自分はそこにとても惹かれる。


 とにかくクロのライブは楽しい。楽しすぎる! 日本でのステージは一体どのようなものになるのだろう? 今から楽しみで仕方ない。クロとの再会が本当に待ち遠しい!







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by desertjazz | 2017-07-14 20:00 | 音 - Music

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