可愛い赤鬼(仮題) Klo Pelgag in Japan 2017(1)

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 比類ない音楽的才能と独特な芸術性に惚れ込んで、3年間追い続けたカナダの奇才クロ・ペルガグ Klô Pelgag が、ついに日本にやって来た。彼女自身「日本に来ることが夢だった」と繰り返し語っていたが、日本で彼女と再会し、素晴らしいライブ・ステージを堪能できた私にとっても、正に夢のような時間が続くこととなった。

 まずは、今回日本での3回のステージについて簡単に振り返っておこう。

 来日メンバー(と主な担当楽器)は以下の6人。クロ・ペルガグ(ヴォーカル、ギター、キーボード)、ファニ・フレサル Fany Fresard(ヴァイオリン、キーボード、リコーダー)、ラナ・トムラン Lana Tomlim(ビオラ、リコーダー)、マリアン・ウレ Maianne Houle(チェロ、キーボード)、フランソワ・ゼダン François Zaidan(ベース、ギター、チャランゴ、キーボード)、マルク=アンドレ・ペテル Marc-André Pételle(ドラム、パッド、パーカション)。コーラスは全員が担当。


□ 8月25日(金)Sukiyaki Meets the World 初日(富山県南砺市福野)

 スキヤキ初日、無料解放された屋外のオープニング・ステージに最後に登場。まずステージ上でインタビューを受けた。その最中からクロ・ペルガグは超ゴキゲン! カナダのケベック州出身であることが紹介された後、「ケベックにはリルといった伝統音楽がありますが、私の音楽はそうした要素は取り入れていません。私は自分の中から沸き立つものを音楽にしており、そうした私の音楽がいつかケベックの新しい伝統音楽のような存在になれたら嬉しいです。」といったことを語っていた。爆笑しならが毛糸の玉で蹴鞠をして見せたりも。


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(中央のピンク&クリーンが毛玉。キャプチャー画像なので分かりにくいかな?)


 その後軽く3曲披露。1曲目はセカンド・アルバム "L'Étoile Thoracique" の中で最もダイナミックなナンバー "Le Sexe des Etoiles"、3曲目はチャランゴのイントロが印象的な "Les Ferrofluides-Fleurs"。まあご挨拶程度のパフォーマンスといったところ。ステージ上を駆け回る姿と毛糸をあしらった可愛らしい衣装が受けていた。


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□ 8月26日(土)Sukiyaki Meets the World 2日目

 日中、『クロ・ペルガグの美しくも不思議な世界 ~カナダの若き鬼才が語る自身の芸術~ 』と題してワークショップ(公開インタビュー)を開催。1時間の内容を全て録画/録音したので、別途詳しく紹介したい。


□ 8月27日(日)Sukiyaki Meets the World 3日目

 ヘリオスの屋内ステージでの80分。オープニングは "Insomnie"。フランソワのキーボードとストリングス3人のドローンっぽいサウンドが空間を埋めていき、それが高まったところでドラムがイン(タムの重いビートがますます気分を高揚させる)。そしていよいよクロ・ペルガグが登場。この妖艶な雰囲気のオープニングで、誰もが一気にクロ・ワールドに持って行かれたはず。クロがハモンドを弾きながら歌い出すまでの長い(数分間続く)ラウドなイントロはとても効果的だった。

 2曲目の "Le Sexe des Etoiles"。セカンド・アルバムでハイライトをなすこの曲、レコーディングではフルオーケストラが大々的にフューチャーされていたので、それをライブでどう再現するかが課題かと思っていた。しかし、アルバムのサウンドと比べても遜色ない迫力だった。真っ赤な衣装のクロが抱える純白のギターが眩しい。ヘリオスのホールはとにかく音が良いため、各楽器の分離と響きがクリアで、サウンドの作りまでじっくり観察できる。クロのギターもこれまで観た中で最もしっかり味わえた。

 3曲目は "Tunnel"。グランドピアノによる弾き語りが中心。こうした強い発声がビョークとも比較される一つの理由なのだろう(小柄な体型もビュークを連想させるだろう)。女性たちの声が重なり合う終盤のコーラスまで実に美しかった。

 ここでクロ、照れながら「ありがとうございます」と日本語で一言。その後英語に切り替え「英語も得意じゃないので、私は音楽で表現する、、、」と(言いかけて詰まり、笑ってごまかす)。

 4曲目はデビュー EP にも収録されていた(その後、ファースト・アルバム "L'archimie des Monstres" で再録音/再収録)"Comme des Rames"。とても軽やなクロ流チェンバーポップ。ストリングスとピアノとのコンビネーションもとてもいい。


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 5曲目 "Les Instants d'Eqilibre" で、ファニとマリアンヌがキーボードに移動。リズミックなサウンドに乗ってクロの小気味な動きも増えてくる。彼女はライブ間、片足を上げたまま演奏したり、脚を揺すったりする仕草をしばしば繰り返した。


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 続く6曲目の "J'arrive En Retard"。この日はやや離れたところからステージを観ていたのだが(彼女の音楽に集中し酔っていたかったので、写真もそれほど撮らず、動画を中心に撮影していた)、事前にセットリストを見て、どれか1曲だけフロア最前に移動して録画する気になり、この曲を選んだ。静謐なイントロが流れる中、クロはピアノの前で目をつむり精神統一しているかのよう。それから歌い出したのだが、その切々とした哀しい声が心を打つ。ピアノとストリングスとが一体となった美しさが、とにかく素晴らしかった。来日中の全ステージを通して、この歌と演奏が断然印象深く残っている。セカンド・アルバムでは実質最後に前曲 "Insomnie" からやや長めのインターバルを置いて収録されたし、最近この曲のオルゴールも作られた。きっとクロにとって何か思い入れの強い曲なのだろう。クロの書く曲は名曲ばかりだが、中でもこれは白眉だと思う。


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 その後 "J'arrive En Retard" の余韻に浸りつつ、穏やかな "Au Bohner d'Edelweiss"、ダイナミックな "Samedi Soir a la Violence"、弾むような "Rayon X"、リコーダーをフューチャーした "Nicaragua" など、聴き親しんだ曲の数々を無心で楽しむ。

 ステージ終盤の "Taxidermix" がもう一つのハイライトだった。アルバム・ヴァージョンとはかなりアレンジを変えてヒップな印象。後半に繋げられた長いインプロビゼーションでは、クロのハモンドを中心としたサウンドが場内に響き渡る。キング・クリムゾンに影響を受けたというクロのプログレ好きが垣間見られる大胆な演奏だった。この曲でクロは赤鬼のお面を被ってパフォーマンス。来場した子供にも受けていたようだった。(この赤鬼のことについても別途書く予定。)


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 ラストは一昨日のオープニングステージでも披露した "Les Ferrofluides-Fleurs"。フランソワが弾くチャランゴのイントロが可愛らしいナンバー。


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 アンコールは "Incendies" と "La Fièvre des Fleurs" の2曲。クロ一番の代表曲である後者は、最後の最後にソロでピアノ弾き語りを聞かせると思っていたが、その予想は外れメンバー全員での演奏だった。


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 終演後のサイン会は長蛇の列。クロ・ペルガグが一人一人の名前を聞いてサインに入れ、一緒の撮影にも応じ、会話も楽しんでいたので、何と最大1時間待ち! 初めて聴く人さえ虜にする彼女の音楽と可愛らしい動きは、今日もオーディエンスたちの心をしっかり捉えたようだった。



 翌日28日にスキヤキ一行は大型バスで東京へ移動。クロ・ペルガグは、8月30日(水)Sukiyaki Tokyo 2日目(東京渋谷 WWW X)に出演。そうした話は次回に。


♪♪♪


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(日付間違いは気にせずに、、、。)



(続く)







by desertjazz | 2017-09-03 14:00 | 音 - Festivals

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