France 2017 - Day 7 (Part 1)



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パリ7日目。

Seun Kuti & Egypt 80 (Cabaret Sauvage)

 シェウン・クティのアフロビートを久々堪能。でも、渋谷クアトロでの心臓を揺さぶるような強靭なサウンドからはかなり後退したようにも聴こえた。

(詳しいレポートは後で。→ 下にアップしました。





【 Live Report : Seun Kuti & Egypt 80 】

 今思い返してみても、2012年11月に渋谷クアトロで観たシェウン・クティ(セウン・クティ)Seun Kuti のライブは凄かった。あの凶暴とも言える重層的な音はこれまで体験したことのないものだった。凄まじい音の密度に圧倒され、Fela Kuti のアフロビートを超越したサウンドがとうとう生まれたと思ったほどだった。

 それ以後、こんなライブをもう一度観たいと願い続けることに。数年前にスウェーデンで彼のライブを観たパートナーの言によると、その時も相当に良かったらしい。シェウンを観たいという2人の意見が一致したことがきっかけで、今回のフランス旅行を決めたのだった。ただ、最近の録音作品を聴いて、期待ほどには良くならないのではといった予感も浮かんだのだが。

 会場は Zenith や昨年 Youssou N'Dour を観たフィルハーモニー Philharmonie de Pari からも近い Cabaret Sauvage。ここのオープン20周年イベントのひとつとして Seun Kuti が選ばれた。400人程度入れば窮屈になりそうなテント小屋のような箱なのだが、いつまで経っても入りが悪いままなので(完売にはほど遠い)、一抹の不安を抱くことになった。6日前の Les Ogres de Barback は完売だったのに。

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 ライブは定刻通りにスタート。まずはバンマス、レカン・アニマシャウン Lekan Animashuan の呼び込みでメンバーが一人ずつ登壇し、トランペッターをセンターに1曲演奏(いつものオープニングですね)。

 それが終わって、いよいよ Seun 登場。衣装は靴まで共布のおしゃれさだ。歌、サックス、キーボード、そして激しいパフォーマンスと、全力でのステージング。彼を間近で観られて、パリまで来てよかった!

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 今夜は何を演奏するのかと心待ちにしていたのだが、Fela Kuti が後年に録音した "Pansa Pansa" を除くと、どうしても曲名が浮かばない。今頃(これを書いている 12/23)になって当日のセットリストを確認すると、、、

  Kuku Ki Me
  Pansa Pansa
  Last Revolutionary
  CPCD
  BML
  African Dreams
  Struggle Sounds
  Black Times
  Theory

 "Pansa Pansa" 以外は、来年3月2日リリース予定の新作(第4作目)"Black Times" の全8曲ではないか。これでは演奏している曲が分からないはずだ。

 ずらっと並べられた新曲、アフロビートを基調にしつつ、そこにわずかにポップさを加味した雰囲気。曲調に Fela ぽっさを大いに感じるが、後半に行くほど耳を捉えるフレーズが失われ、地味だという印象も持った。バンドは Fela のサウンドを継承し続ける Egypt 80 だけあって、さすがに王道のアフロビートとしては申し分ないのだが。

 極め付きだったのは、お茶目なTシャツ着たシェケレの親父オコン・イヤンバ Okon Iyamba。曲芸師のごとく動き回りながらシェケレを自由自在に扱う様はなかなか見もの。軽やかなパフォーマンスとポージングがもう最高。主役の Seun よりも目立っていると思ったくらいだ。

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 しかし、聴いていてなかなか気分が乗ってこない。渋谷クアトロでのあの感動が蘇らないのだ。最初はステージ真ん前で観ていたのだが、Seun のヴォーカルがよく聴こえない(ステージが近すぎだし、Seun たちの動きも早すぎて、コンパクトカメラ SONY RX100 V ではまともな写真が全く撮れない、、、ということは全然構わないのだが)。それも影響しているのだろうかと思い移動。客の入りの悪さもあって、ステージ袖からも最後方からもフロア最隅の椅子席からもよく見えるじゃないか。なので、あちこち移動しながらライブを楽しむことに。

 凄いライブをやっているなと唸る一方で、それでも何かが足りなくて、高揚感に満たされない。ポップさの加わったアフロビートを Seun Kuti がやることに幾分か中途半端さを認めてしまうのだ。なので、Fela を思い起こさせる激しいダンスや、上半身裸になってのパフォーマンス、ポリティカルなアジテーションが、Fela のイミテーションのようにさえ映ってしまう。

 そうした課題はスタジオ録音でより感じていた。長年ライブでは定評があったのに、過去のスタジオ・アルバムではその壮絶なサウンドが閉じ込められていない。あのサウンドをパッケージすることは困難なのだろうか。Robert Glasper と組んだ前作 "A Long Way To The Beginnig" にしても、一部では大傑作との評価もあったが、反論覚悟で書くと、Glasper と組んだことも敗因の失敗作、、、とまでは言わないまでも、自分にとっては不満の残る一作だった。決して悪い作品ではないのだが、如何せん線が細すぎ。自分が彼に期待するのはこんなサウンドではない。

 ダイナミックでマジカルなアフロビートのライブ・サウンドを録音作品で再現するのは不可能なのかもしれない。かと言って、キャッチーな曲を書くスキルでは兄 Femi の方が上だ。今回のステージを観ていて、Seun の積年の迷いがライブにも及んでしまい、どことなく吹っ切れていないままのようにも受け止められた。

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 少し彼を弁護しておくと、いろいろ条件が伴わなかった面もあっただろうと思う。まずステージが余りに狭すぎた。そのためかバンドはフルメンバーではなかったようだし、この人数でも十分に動き回ってのステージングは難しい。女性ダンサーがわずかに一人だったのも物足りない。こんなアフロビートのライブを観たのは初めてだ(昔 Femi Kuti をナイジェリアのシラインで観た時、女性ダンサー4人が鳥かごの中で踊っていたことを思い出す。それもあって、さしたる理由もなくダンサーは最低4人がデフォルトだと思っている)。客が意外と少なかったのも疑問で、それも何らかの作用をはたらかせたのかも知れない。新曲ばかりのため、ライブ・サウンドが十分には固まっていないということも想像される。

 Seun Kuti は終始エネルギッシュで、全く手抜きなしのステージを見せてくれた。本当に元気そうだ。なので、彼は再び真価を見せつけてくれるに違いない。新作リリースを受けてのツアー(イギリス、フランス)が来年3月から始まる。その時には、新曲をブラッシュアップしたフルスロットのライブが展開されることに期待したい。

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(2017/12/24 記)



by desertjazz | 2017-11-22 23:59 | 旅 - Abroad

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