2017年 01月 29日 ( 1 )


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 2016年11月、アムステルダム&デン・ハーグ、パリ、ロンドン、マルセイユ&ラ・シオタと巡ってきた旅もいよいよ最終盤。コンサートは、ユッスー・ンドゥール、ソナ・ジョバルテ、インディ・ザーラを観てきた。そしてそのラストは、フランス系カナダ人のクロ・ペルガグのライブだ。今回のヨーロッパの旅、後半にはイスタンブールに飛ぶ計画だったが、フランス北西部2都市で行われるクロ・ペルガグのコンサートを見つけて予定変更。ラ・シオタでタトゥーたちと過ごし、マルセイユではマグレブ人エリアなど思い出の場所を歩きながらアルジェリア盤を買い付けた後に、ナントへ移動してきたのだった。

 クロ・ペルガグの音楽を知ったのは、例えばトコ・ブラーズやストロマエと同様に、パリ在住の音楽ジャーナリスト、向風三郎さんのブログを読んでのこと。ファースト・アルバム "L'alchimie des monstres"(2013)が素晴らしくて、2015年4月パリでのコンサートを観に行き、彼女とも会って直接話して来るほど惚れ込んでしまった。

 そのクロ姫がセカンド・アルバム "L'Etoile Thoracique" 発表のタイミングに合わせてツアー開始。これは観逃せないと思ってナントまで飛んできた。会場は Salle Paul Fort という小さ目の箱。当然スタンディングなのだろうと思い込んでいたら、何と昨日のインディ・ザーラに続いてシート席。前でしっかり観るか?後方でじっくり聴くか? 少し迷ったが、幾分か音の面を犠牲にしても、彼女のパフォーマンスを食い入って観たいので、最前列中央の席を選んだ。

 それと、写真をどうするか? 事前にバックステージパスを申請していて写真撮影の許可は得ており、会場の受け付けでも撮影に問題なしと確認ができたのだが、こうしたシート席では撮りにくい。場内を前後に移動するのは全く難しくないのだけれど、他のお客さんたちには少しの邪魔もしたくない。一眼レフだとシャッター音も気になる。写真はこれからのコンサートでプロショットがたっぷり見られるだろうから、自分が撮る必要はないだろう。そう思って今日はステージに集中することにした(なので、音がマックスになった瞬間やトークの最中に10枚弱撮っただけ。照明が一番フォトジェニックになるのは静かに歌っている時ばかりで、美しい写真が撮れなかったことは、やっぱり少々残念だったが)。

 ステージの上を眺めると、中央に小型のエレピとキーボード。1年半前にパリで観た時にはグランドピアノと車椅子が置かれ、周りにはトランポリンなど意味不明な様々なブツが散乱していたのだが、それに比べると今日はずいぶんすっきりした印象だ。

 さて、公演がスタート。メンバーは下手に女性3人。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロというストリングス隊。上手にはドラムとベース。基本ユニットに変化はないが、ウッドベースを使わないなど、やはり今回は幾分コンパクトな印象だ。まだツアーが始まったばかり、しかも地方都市でのライブとあって(チケットは20ユーロ以下という信じられない安さ)、物量的にも工夫が加わっていくのはまだまだこれから先なのだろう。

 しかし、クロ姫の格好はなんなんだ?? 全身マジックテープが施され、フェルトでできた骨やら METALLICA のロゴやらマイケル・ジョーダン人形やらを貼付けて演奏。身体を動かず度に、それらがガサガサ音を立てたり、はがれ落ちたりで、一体何をやりたいのか。ステージ上に寝っころがったりといった破天荒なパフォーマンスも相変らず。中盤からはメンバーたちが透明な衣装を身につけ内部の電飾が光り、その色を様々に変化させる。こうした奇天烈さは変わっていない。

 ・・・といった具合なのだが、彼らの奏でる音楽はどこまでも美しい。

 新作 "L'Etoile Thoracique" の中の曲を次々披露していくコンサートだったのだが、ファースト・アルバムの楽曲群と同様に、とても独創的で美しいメロディー、繊細なピアノとストリングス、優しくかつ力のこもった歌声が素晴らしい。そう、今回は何よりクロ姫の歌が良かった。時に切なく時に心に染み入るような歌をじっくり聴かせる構成で、彼女はずい分大人になったという印象を受けた。これは、新作には大編成のストリングスを加えた曲が多いのだが、小さな会場でのライブではそれをそのまま再現できない分、歌を中心とするものになったからなのかもしれない。

 それにしても、彼女の音楽をどう文章で伝えたらよいのかいまだに分からない。本当にオリジナルな音楽だ。CDがリリースされる前だったので(フランスでのコンサート時点で新譜はカナダ盤しか出ていなかった)、Spotify でアルバムを毎日聴いていたのに、それでもなかなか曲を聴き分けられないのも不思議だ。どの曲もが美し過ぎるからなのか、タイトルも歌詞も馴染みのないフランス語だからなのか。本人が明かしている通り、フランク・ザッパからの影響も多々かいま見られるが、美と大胆さと狂気?とが同居する様には、最近はスフィアン・スティーヴンスやカニエ・ウエストにも似た捉えどころのなささえ感じている。

 そうした資質の最たる面が歌詞なのだろう。これも向風さんによると、相当シュールで変な歌詞らしい(ファースト、セカンドともに、ジャケット画もかなり異様だが)。だからフランス語が分かれば彼女の音楽をより楽しめるのかも知れない。(そう言えば、1年半前のライブでも今回もMCが爆笑を誘って大いに盛り上がっていた。やっぱりフランス語を聞き取れないのは辛い。)この新作、何と来月に日本盤が発売になるそうだ(2/12 予定で、邦題は『あばら骨の星』 )。これを買って日本語訳詞もじっくり読んでみる必要がありそうだ。

(セカンド・アルバム "L'Etoile Thoracique" は昨年1位に選んだが、ファースト "L'alchimie des monstres" の出来は超えられなかったように思っている。例えば切迫感に溢れるオープニング・ナンバー "Samedi soir à la violence" などはとても良い曲なのだが、デビューEP の "Les maladies de coeur" やファーストの "La Fièvre Des Fleurs" (←これは広島カープ・ヴァージョン。オフィシャルPV もあり。)のような弾けるような極上ポップ・レベルの曲がアルバムには欠けているのだ。また、ファーストと比べるとセカンドの歌い口はずいぶん落ち着いて聴こえる。そうした声の変化も、今回ナントで聴いた歌声が大人びて感じた理由のひとつだったのかも知れない。もはやあの弾けるような歌声が懐かしい。)

 ナントでのコンサートはファーストからの曲も交えながら、瞬く間の1時間半だった。誰もが聴き惚れ、アンコールの後も拍手が鳴り止まず。クロちゃんがひとり再々登場し、ピアノを弾き語り。これがまた心を打つ美しさだった。でもまだまだ聴き足りない。あー、彼女のライブがまた観たい。

 何でもカナダでは30人編成のストリングスと一緒のコンサートも計画されているそうだ。(これも向風さん情報。その公演はもう終わった?)さすがにそんなコンサートまではなかなか観られないだろうけれど、今度の国内盤発売をきっかけにクロ・ペルガグの日本公演が実現することに大いに期待している。

 クロ・ペルガグは変化を繰り返し、アーティストとして成長し続けることだろう。これからも彼女を追い続け、その姿をずっと見つめていたい。


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by desertjazz | 2017-01-29 17:00 | 音 - Music

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