カテゴリ:音 - Africa( 230 )

 2016年も世界各地で様々なライブを観たが、それらの中で圧倒的に良かったのは、ブルース・スプリングスティーンとユッスー・ンドゥールだった。

 2015年11月13日に凄惨なテロに見舞われたパリのライブハウス、バタクラン Le Bataclan が1年振りに営業を再開し、ユッスー・ンドゥールが出演すると発表された時、即座にパリ行きを決めた。新生バタクランのステージに真っ先に立とういうユッスーの心意気に惚れてしまったのだ。

 それでも一抹の不安はあった。それは、ここ何回か観たユッスーのライブを十分には楽しめなかったからだ。2007年のシンガポールの WOMAD も、最後の東京公演も(何年前だったか?)。1999年から2000年にかけてダカールのクラブ・チョサンやニューヨークのアフリカン・ボール The Great African Ball で浴びたサウンドと比較すると、欧米でのヒットナンバーを並べたインターナショナル仕様のライブはとても見劣りするからだ。

 そんな自分を後押ししたのは、3月にアメリカで観たスプリングスティーンのライブだった。先に書いた通り、彼のステージは自分の想像を遥かに超える充実振りだった。スプリングスティーンのコンディションは正に今絶頂に達している。もしかするとユッスーも? 何か良い予感を抱いたのだった。


 バタクランでの公演は11月18日と19日の2回。よく調べると、その前の15日にも同じパリで公演が組まれている。1週間にパリで3回も? パリの人たちはいったい何を考えているのだろう?(いやベルシー体育館でのグラン・バル Grand Bal では毎年数万人の観客を集めてきたのだから、これくらいはおかしくないか?)

 11月15日も含めて3回とも観に行くかは正直迷った。(この週パリで観たいライブは他にないし、パリには最近毎年訪れているので、美術館にもしばらくは行かなくていい。)3度とも同じ内容、それもインターナショナル仕様だったら後悔するだろうと考えてしまったのだった。


DAY 1 : Philharmonie De Paris (Nov. 15)

 久々のニュー・アルバム "Africa Rekk" のリリースに合わせてパリからスタートするツアー、今日がその初日。会場は現代的な建築物としても人気の高いクラッシックホールのフィルハーモニー Philharmonie de Paris。今日はステージ前の椅子席を取り払ってスタンディングエリアを設けている。音響を考えても椅子席の方が望ましいだろうと考えていたのだが、行くかどうかもたもた迷っているうちに指定席は完売になってしまった(その後スタンディングも完売)。

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 20時前に会場に着くとサバールのグループによるセッションが続いていた。それが終わって20時半、さて始まるかと思いきや、ステージに登場したのはドゥードゥー・ンジャイ・ローズ一族(今は息子が継承)。途中から Le Super Etoile de Dakar のパーカッション奏者、ババカル・フェイも加わってたっぷり30分。2015年8月に亡くなった師ドゥードゥーへのオマージュ的な内容だった。

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 20時半、ババカルの煽るような MC を受けて待ちに待ったユッスー達が登場。1曲目は "Li Ma Weesu"。かつて自分がライナーを書いたアルバム "Nothing's in Vain" の代表曲でスタートしてくれたのは素直に嬉しかった。フロアの周りはセネガル人たちで溢れていて、最初から大歓声&大合唱。ちょっとダカールでライブを観ている気分にもなる。もうこれだけで十分。

 "Set"、"Birima"、"7 Seocnds" など馴染みのヒット曲が相次いで繰り出される中、断然良かったのは "Immigres"。独特なメロディーといいアレンジといい、この曲が持つマジカルさは全く褪せていない。"New Africa" の絶唱でいったんシメ。こうした流れは以前と変わっていないようだ。

 もう1曲印象深かったのは "Hope"。静謐な歌声がひしひしと心に染み込んでくる。さりげないこの曲にどうしてこれほど心が震えるのだろう? このときは、まだその理由には気がつかなかった。何せ曲名すら浮かばず、ホテルに戻ってから Spotify で探したほどなのだから(1992年のアルバム "Eyes Open" に入っていたはず、ということだけは思い出せたので)。

 アンコールの最後にはドゥードゥー一派が再登場してまさかの "Chimes Of Freedom"(ボブ・ディランがノーベル賞を取ったからでもないだろうが)。サバール・アンサンブルが爆裂するアルバム・ヴァージョン通りのサウンドが再現された。最後の一打で興奮がマックス!

 でも、新作リリース・ツアーと言いながら、新曲は1曲もやらなかったな??

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DAY 2 : Le Bataclan (Nov.18)

 ロンドンに2泊だけして(ソナ・ジョバルテ Sona Jobarteh のライブを観てきた)パリにとんぼ返り。ユーロスターに初めて乗ったが、パリ〜ロンドン間を約2時間で移動できるのは便利だ(チケットも早く買ったのでとても安かったし)。

 レピュブリック Répubulique のかつての常宿にチェックイン。その後まずバタクランに向う。道行く人たちは相次いで入口前で足を止めて、それぞれが複雑な想いに浸っているらしい様子が見られた(その一方で、レピュブリック広場には飾られる花やロウソクも少なくなり、テロから1年が過ぎて街はかなり落ち着きを取り戻しているようにも感じられた)。

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 夜。19時40分、ややゆっくり目に会場に到着。チケットは完売で、手書きのカードを持って余っているチケットを求める人たちが立ち並んでいるほどだった。やはりユッスーはセネガルの同胞たちからの人気が高い。

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 場内に入ると最前列に空きスペースがあり、ここを確保。セネガルの男性たちは身長があるので、スタンディングだとステージが見えにくい。なので、これはラッキーだった。

 ユッスーとババカル・フェイとジャン・フィリップ・リキエル(長年ユッスーと共演してきた盲目のキーボード奏者)の3人だけで3曲。静謐な "Yakaar (Hope)"、優しい旋律の "Fital (Useless Weapons)"、そして新曲 "Food For All"。冒頭この並びにまずビックリ。取り分け3日前に聴いて以降頭から離れない "Hope"。こんな穏やかな曲を最初にもってくるとは予想外だ。

 続いてゲストのアンジェリーク・キジョーが登場し、レエゲ・カバーの "Get Up Stand Up" を共演。場内はもうフィルハーモニーの時以上の盛り上がりだ。"Money Money" や "Be Careful" といった新曲でも大合唱になる。セネガリーズはみんな早くも歌詞を覚えてしまっているんだね。

 いつも通りに "New Africa" の高らかな声でシメた後のアンコールは大ンバラ大会。これが凄まじかった! 特に "Senegal Rekk" は最高だね!(この曲、2016年春頃に EP でリリースされた時点では "Begg Naa Leen" というタイトルだった。)しばらく政治活動が中心で本格的な音楽活動から離れていたユッスーだけれど、ステージ・パフォーマンスに関しては完全に復活している。地元ダカールでのライブも継続(再開?)しているのだろうか?

 最後は、これも今年の新曲 "I Love You"(不思議なことにインターナショナル盤には未収録)。曲名をコールした瞬間の反応の何とも大きかったこと。それほど良い曲だとは思えないのだが、これが人気を得ているのには何か特別な理由があるのに違いない。いまだに謎なのだが…。

 およそ1時間50分のライブ。ワイワイ、ガヤガヤ、大興奮のセネガル人たちとの一体感が楽しい。3日前に観たものよりはるかに良かった。( "Immigres" をまた聴きたかったけれど…。)やっぱりンバラは凄いね!

[ Set List ]

 1. Yakaar
 2. Fital
 3. Food For All
 4. Get Up Stand Up
 5. Li Ma Weesu
 6. Set
 7. Jeggel Nu
 8. Baykat
 9. Birima
 10. Seven Seconds
 11. Song Daan
 12. Money Money
 13. Be Careful
 14. New Africa

 15. Serigne Fallou
 16. Xaajalo
 17. Senegal Rekk
 18. I Love You

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#

DAY 3 : Le Bataclan (Nov. 19)

 バタクラン2夜目もチケット完売。2ステージ観てすっかり満足したから、今夜は後方でのんびり楽しもう。そう思って開演ギリギリに行く。しかしセキュリティーの前で長蛇の列が出来ていて、これならもう少し早く来るべきだったと反省。それでもPA席の真後ろにぽっかり空きスペースがあり、迷わずここを確保。ステージが最も見やすい絶好のポジションだ。

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 演奏曲は昨日とほぼ同じ順。"Get Up Stand Up" でアンジェリークが加わったのも一緒。ただ、次は "Set" だと待ち構えていたら、それはやらずに "Jiggel Nu" へ。なぜ?と戸惑っていたら、終盤でアンジェリークが再登場し、"Set" でも共演した。煽られて彼女も踊りまくっていたが、正直なところ彼女なしの方が良かったな。

 ユッスー、基本的には昔と大きく違わない。特別新しい試みもなかった。しかし、もうベテランの域なのでそれで構わないと思う。懐メロ大会に陥ることなく、活き活きしたサウンドで誰もを楽しませてくれたのだから。

 フィルハーモニーが欧米向けヒット曲のオンパレードだったのに対して、バタクランは "Senegaal Rekk" と "Africa Rekk" の新曲を折り込みながらのセネガル人たちをより煽るステージ。それぞれ良さがあったので、両方を観られて良かった。トラックリストを改めて見ると、メッセージ性の強い曲が多く並んでいるとも思った。

 フランスは相次いで悲惨なテロに襲われた。そのことで、観光業も飲食店もライブハウスも軒並み大打撃を受けた。エッフェル塔やルーブル美術館の周辺でさえ閑散としているという話すら耳にした。しかし、バタクランという最悪の悲劇を被った場にも、たくさんの人々が集い、笑顔に溢れているのを見られたのはとても良かった。人々は音楽を求めてまた集まり、そして勇気と活力を得ている。これが今回の3公演を通じて一番強く感じたことだった。

 (ただし、これが和解の象徴だという風に安直に考えることはできない。話が複雑になるので、今日は触れないでおく。)

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 ユッスー・ンドゥールのライブを観たのはそろそろ20回になるだろうか。記憶しているのは、ダカール4回、ニューヨーク1回、シンガポール1回、東京6回?、横浜1回。あとどこで観ただろうか? セネガル人が多く暮らすパリでもセネガル人たちに取り囲まれて観てみたいと思い続けてきたが、今回それがようやく叶った。

 "Immigres" のもつ独特なムード、"Set" での大盛り上がり、"Senegal Rekk" の熱いンバラ。どれもをたっぷり堪能したが、中でも一番だったのは "Yakaar (Hope)" と "Fital (Useless Weapons)" だった。とにかく素晴らしかった。

 過去観たユッスーのライブの中で最高だったのは 1999年ダカールのチョサンでのもの。Le Super Etoile de Dakar がインプロビゼーションを徹底的に追求している印象で、そのインタープレイが長いものだから、確か2時間で8曲くらいしか演奏しなかったはず(翌年もチョサンで観たが、今度はポールダンス風のダンスなどエロチックな要素が多く、随分ユルい雰囲気だった)。次いで(もしかするとただ一度だけ行われた?)2000年11月ニューヨークでのグラン・バル。何と3部構成3時間半に及ぶ大パーティーだった(そういえばこの時も最前列で観ることができたのだった。2時間過ぎた頃にはさすがに辛くなって、3階席に移動して遠くからのんびりステージを眺めていたが)。

 そして3番目は 2003年の Tokyo Jazz。日中炎天下行われたユッスーたちによるステージはヒット曲を並べたもので、まあいつも通り。持ち時間も約1時間と短く、特別な印象も残っていない。このステージの後、ミュージックマガジンとワーナーミュージックから依頼を受けて、ユッスーに20分間だけインタビュー。それをどうまとめようかと思案しながら、夕方のスーパーセッションを観て、、、ぶっ飛んだ! この手の顔合わせはとかく企画倒れになりがち。事前情報を何も持っていなかったので、観ないで帰る気でいた。危なかった!

 ハービー・ハンコック Harbie Hancock を中心にスピーチ Speech などが絡むのだろうとてっきり思っていたら、ユッスーが歌いだしたのだ。1曲目は "Fital"。続いて "Yakaar"。どちらも 1992年のアルバム "Eyes Open" に収録されたナンバーだが、スタジオ録音とはあまりに印象が異なるものだから、しばらくどの曲なのか浮かばないほどだった。

 "Eyes Open" はサウンドが穏やか過ぎて滅多に聴かないアルバム。その中でもこれらの2曲はさほど目立たない。それがライブではこれほど素晴らしいとは。Joshua Redman とのバトルも凄まじくて、ユッスーにとってのベスト・アクトのひとつに挙げたいくらいだ。ユッスーの歌声は正しく絶唱。歌っている時間が短いのと、スピーチたちがハマっていないのが残念だが、この映像は入手して繰り返し観てきた。

 それをもう一度(いや二度?三度?)パリで観られた。オーバープロデュースだった "Eyes Open" から時を経て、"Fital" と "Yakaar" は熟成され完璧な音楽として生まれ変わった。パリでは、シンプルな伴奏はこの上なく美しく、ユッスーの歌は気合い入りまくりで正しく入魂の絶唱。音塊から伝わってくる説得力が凄まじい。"New Africa" のラスト・フレーズ、あるいは "No More" と同レベルと言えば幾分想像がつくだろうか。

 2003年にも2016年にもこの2曲を続けて歌った(順は逆だが)。この組合せは自分が知らなかっただけで、ユッスーにとっては定型化されたものなのだろうか? ライブ映像をネットで探しても見つからないので、これは久々のパフォーマンスだったのだろうか? "Yakaar (Hope)" は 2002年の "Live at Union Chapel" でも歌い、DVD化されているが、全然次元が違う。パリでのパフォーマンスは Tokyo Jazz と比べても数倍感動的だった。この連曲ライブは是非とも正式な形で映像作品を残して欲しいと願う。

 アフガン紛争からほどなく来日したユッスーは Tokyo Jazz で "Yakaar (Hope)" と "Fital (Useless Weapons)" を歌った。今また世界中至る場所で対立が激しくなるこの時代、ユッスーは再びこの2曲を歌う。優しく語りかけるように歌い始める "Yakaar"、湾岸戦争やベトナム戦争を折り込みながら戦争と武器に異を唱える "Fital"。そこにユッスーからの特別なメッセージを読み取ろうとするのは間違いだろうか?

 自分が体験した中で最高クラスのユッスーの絶唱がいつまでも脳内から離れない。ユッスーの歌声が毎日毎日頭の中で響き続けている。自分にとってこれはとても幸せなことだ。

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(補足)

1.
 当初バタクランに取材申請することを考えたが、一切受け付けないという。プロ用カメラの持ち込みも禁止だが、コンパクトカメラやスマートフォンはOKとのこと。なので一眼レフとレンズはホテルの部屋に置いていき、コンパクトカメラで少しだけ撮ったが、やっぱり限界がある。でも雰囲気くらいは伝わるかな?

2.
 11月18日も19日もオフィシャル・カメラマンはひとりも入っていなかった。なぜなのだろう?

3.
 11月18日には6カメ収録を行っていた。探してみたところ1曲分だけ公開されているのを見つけた。バタクラン再開最初のステージとなったスティングはフルで公開されたので、ユッスーのビデオも全編公開して欲しい。

 ・ Youssou Ndour & Angelique Kidjo - Get Up, Stand Up - Bataclan 2016 LIVE HD

4.
 11月19日の公演はほぼ全編 YouTube にアップされている。(特に 1h08m33sからの、スピード感に溢れエキサイティングな "Senegal Rekk" は必見!)ただ冒頭3人で演奏した3曲は撮っていなかったようで挙っていない。なので "Yakaar" も "Fital" もなし。残念。


5.
 Tokyo Jazz の映像は "Fital" から "Yakaar" の途中まで YouTube で観ることが出来る。


6.
 Le Super Etoile de Dakar と E Street Band はよく似ていると改めて思った。中央にとてつもないスーパースターがいて、それを支えるバンドは大人数で強者揃い。そしてそのリーダー格にはちょっとひょうきんなところがある(ババカル・フェイとマイアミ・スティーブのこと)。おまけに今 Etoile de Dakar には、ESB の Jake に似た若いサックス奏者もいるし。

7.
 Youssou N'Dour et Le Super Etoile de Dakar の Singapore Jazz Festival への参加が決定。出演するのは 4月1日。観に行きたいなぁ。でも無理だろうなぁ。


8.
 書き漏らしたので追記するが、ユッスーの喉の調子がとてもいい。ライブでこれだけ艶やかに響く声を聴いたのは記憶にないくらい。しばらく政界にいた分、喉を休めることができたのだろうか?



 (若干記憶に自信がないところもあるので、後日、一部追記/微修正するかも知れない。)






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by desertjazz | 2017-01-03 17:00 | 音 - Africa

Youssou N'Dour "Africa Rekk"


 Youssou N'Dour が今年放った最高の曲は、セネガル盤EP "Senegal Rekk" 収録の "Begg Na Leen"。

 しかし、これのオフィシャル PV は "Senegal Rekk" で、先月のパリ公演のトラックリストでも "Senegal Rek" 表記。そして、なぜかインターナショナル盤 "Africa Rekk" には未収録。ややこしい。

 この曲、パリのライブではスタジオ録音より数倍凄まじかった。何度でも観てしまい、その度に興奮させられる。


(ユッスーのライブについても書きたいことが多過ぎて、全然まとめられない。)







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by desertjazz | 2016-12-28 01:30 | 音 - Africa


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 バーバ・マール Baaba Maal の新作 "The Traveller" がなかなかの力作だ。ロックでブルージーでポエティックでダンサブル。ここ数日聴き狂っている。

 「新作」とは言っても、今年1月15日にとっくリリース済みのアルバム。「年明けに新作を出す」と昨年アナウンスがあったことをすっかり忘れていた。それを先月の旅の終盤、ナントのフナック fnac で目にして買ったのだった。

 Johan Hugo(誰だ?)と供に、ロンドン(Abbey Road Studios 含む)とダカールの様々なスタジオで録音し、入念に作り上げた作品。重低音を強調したダイナミックなサウンドが際立ち、ロックビートと柔らかなエレクトリック・サウンドと西アフリカ伝統楽器との交配振りが印象的だ。大名盤 "Djam Leelii" を思い起こさせるアコースティック・ギターを中心とする静謐な調べは切々と心を打つ。若い頃の刺々しさがなくなり包容力豊かに聴こえるバーバ・マールの歌声もとてもいい。

 そうしたエッセンスが詰まった1曲目 "Fulani Rock" がまずカッコいい。バーバ・マール自身によるデザート・ブルース調なエレキギターとドライブするリズム。正にフラニ・ロックだ! 前半3曲はパワフルなロック調ナンバーが続き、のっけから圧倒される。

 中盤3曲は、旅人でありノマドである(自身が属する)フラニ人を見つめ、旅人であった漁師一家の出自を振り返るようなテーマが続く。穏やかに始まり幾分地味なトラックで中休みかと思いきや、途中からは躍動感溢れるポップなダンス・チューンへと展開。タイトル曲 "The Traveller" の高揚感が最高だ!

 終盤3曲は力強い「ポエム」。最後の2曲 "War" と "Peace" は、ペル Peul の笛(ペル=フラニ=フルベ=プール)とコラ Kora をバックに、コラボレイター Lemn Sissay(誰だ?)の入魂のライム/ラップがフローする(バーバ・マール、歌では脇に回る)。

 ユッスー・ンドゥールといい、ダーラJといい、セネガルのミュージシャンたちは(他の多くのアフリカのアーティストもそうだが)歌にメッセージを込める。バーバ・マールは近年欧州のメディアに出演して様々なメッセージを発してきた。今回 "War" と "Peace" の2曲は、それらの対称的なテーマの取り上げ方もさることながら、両者の歌詞を自身のウェブサイトに掲載している。そんなところにもより良い世界を追い求める彼の姿勢と発信者たるアーティストとしての矜持を感じる。



(バーバ・マール、これが最新作かと思いきや、8月にも新作を発表していた。早速今聴いているところ…。)







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by desertjazz | 2016-12-12 19:00 | 音 - Africa

Youssou N'Dour a Paris

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by desertjazz | 2016-11-23 08:29 | 音 - Africa

Introduction to Sona Jobarteh


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 今年巡り会ったミュージシャンの中で特に気に入っているひとりは、ガンビアの若手コラ奏者/シンガーの Sona Jobarteh(日本語標記すると「ソナ・ジョバルテ」になるのだろうか?)。

 まずは最新シングル "Gambia" の PV をご覧あれ。


+ Sona Jobarteh - GAMBIA (Official Video)


 この曲は、西アフリカ/マンディングの伝統音楽とモダンなポップミュージックとの良質なブレンドだと思う。ほのかに切なく、それでいて心地よいメロディー。なにより、ソナ姫の清々しい歌声と
笑顔に魅入られてしまった。自分にとっては、現時点でこれが今年のベスト・ビデオだ!



 ソナ・ジョバテは、西アフリカの伝統的弦楽器コラを演奏する5大一族のひとつの家系に属するのだそう。ただし生まれはロンドン(1983年)であり、冒頭で「ガンビアの」と書いたが、そのガンビアでの実生活はあまり長くないのかも知れない。と言うのも、顔や肌の色を見る限り白人の血も混じっていそうだから(実際、ロンドンの学校を出てもいる)。しかし文献をあちこち探しても、そのような記述は見つからず、この推測が正しいかどうかは分からない。

 彼女の一族はマリからガンビアに移住してきた歴史をもち、祖父はコラ奏者の大家 Amadu Bansang Jobarteh とのこと。驚いたことに、現代最高峰のコラ奏者トゥマニ・ジャバテ Toumani Diabate は彼女のいとこだという。3歳の時に兄 Tunde Jegede からコラの奏法を習い、若干4歳にしてステージに立つ。その後は父 Sanjally Jobarteh からも教えを請い、ロンドンで過ごした学生時代はどうやらクラシック方面の勉強もしていたようだ。コラ、ギター以外にチェロも演奏するという。

 彼女が注目されている大きな理由は、女性にも関わらずコラを演奏するから。コラの演奏法は、限られた一族の間で、父から息子へと代々受け継がれてきた。その長い歴史の中に初めて登場した女性がソナ。コラを演奏する主要一族で初のプロのコラ奏者なのだそうだ。



 ソナは最近出てきた新人なのかと思っていたのだが、調べて見るとすでに様々な活動を重ねていることは分かった。意外と経験豊富(その辺りの詳細については改めて紹介してみたい)。例えば、カサンドラ・ウイルソン Cassandra Wilson、デイモン・アルバーン Damon Albarn、ウム・サンガレ Oumou Sangaré などとも仕事をしている。ロンドンのオーケストラと共演したり、ポーランドの音楽祭に招聘されて中心的役割を果たしたり、ガンビア政府の後援を受けてワークショップを開いたり。映画のサントラを書き、CDにもなっている(未聴)。

 自身の作品としては、2011年にはソロ・アルバム "Fasiya" をリリースしている。収録トラックを聴くと、基本はマンディング系の節回しながらも、そこに他の様々なエッセンスが混ぜ込まれているのが感じられる。軽やかなポップに仕上がった、なかななの好盤だ。


(余談になるが、この CD は El Sur Records の原田店主が資料用に取り寄せて未開封だったのを「略奪」したもの。日本でも彼女に注目している人は私以外にもいるということです。Thanks to El Sur Records。)


 彼女のサウンド、これがライブになると一段とグルーヴが増してくる様子。YouTube であれこれ視聴して、こんなライブを直に観たいなと思ったら、昨年は、マレーシアのボルネオ島(サワラク)で毎年開催されている Rainforest World Music Festival に出演していた。このフェスも毎年チェックしていたのに、、、。情報収集がまだまだ甘いね。

 現在、新曲 "Gambia" を含めたニューアルバムを準備中とのこと。アルバム "Fasiya" ではまだ突き抜けたところに欠ける印象もあるが、"Gambia" 1曲聴いただけでもその後一気に成長した姿が感じられる。なので、これはとても楽しみな新作だ!

 ソナ・ジョバルテを聴いていると、大いなる可能性を感じる。来月11月にはイギリスで2公演予定されていて、恐らくニューアルバムからの曲もたっぷり演奏されることだろう。それをきっかけにブレイクする予感も。実際最近 Songlines 誌でも彼女が紹介されたようだ。

 コラの演奏も歌声もとても気持ちいいので、きっとライブも楽しいことだろう。新作のリリースに合わせて、スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドあたりが呼んでくれないかなぁ?


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(9/22 記 / 10/17 加筆 / 11/1 修正)








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by desertjazz | 2016-10-17 23:33 | 音 - Africa


 Youssou N'Dour の新作 "Africa Rekk" はソニー系列の Jive Epic から 11/4 にリリース。コンセプトは、アフリカの様々な文化を横断し、アフリカの現代と伝統を行き来する旅。新作リリースに合わせて 11月15日からフランス/世界ツアーが始まる。日本にも来ないかなぁ〜?


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by desertjazz | 2016-10-12 23:56 | 音 - Africa

Issa Bagayogo R.I.P.


 マリの Issa Bagayogo が、昨日、故郷の Wassoulou で亡くなったとのことです。大好きだったのでショック。

 彼について教えてくれたのも El Sur Records でした。深夜に原田店主から、Cobalt からの最初のアルバム "Sya" を紹介され、冒頭の雷鳴に続くミニマルですっとぼけたような音にしばし絶句。しかしこれが聴くごとにクセになっていったのでした。

 2003年にアングレームの Le Festival Musiques Métisses に行ったのは彼の出演も予定されていたから(しかしそれはキャンセルとなり、結局イッサのライブは一度も観ることができず仕舞いになってしまった。同様にお目当てだった Orchestra Baobab も本番前に照明が崩れてキャンセル。あれこれ散々な目にも遭ったけれど、Zebda、Dupain、Tiken Jah Fakley、Rail Band、Bembeya Jazz などを一度に観られて最高のフェスでした)。

 Cobalt を離れて six degrees からCDが出るようになって以降は、日本を含めて世界的に知られるようになっただけに、とても残念です。

 Issa Bagayogo (1961 - 2016) R.I.P.


(追記)

 長らく病気だったのですね。


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by desertjazz | 2016-10-11 23:53 | 音 - Africa

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 先日のこと、ピグミーについて調べていて、ルイス・サルノ Louis Sarno の本 "Song From The Forest" がリプリントされているのに気がついた。どうして今ごろ?と思いつつさらに調べてみたところ、同タイトルの映画が 2013年に制作され、その後世界各地で話題になっていることが分かった。それを受けての再出版と思われ、映画の DVD とサントラ CD も発売にされている。

 ルイス・サルノは 1954年アメリカ、ニュー・ジャージー生まれの白人。80年代のある日、ラジオで偶然聞いたピグミーのコーラスに心を奪われ、コリン・ターンブル(参照)に連絡し協力を仰ぎなどしながら、85年に中央アフリカ、バヤカ・ピグミーの森を訪れる。やがてピグミーたちから家族として迎え入れられ、そこでの定住を続ける。

 "Song From The Forest" はルイスがピグミー音楽への愛情とピグミーの森での暮らしについて綴り、1993年に出版した本。95年には "Bayaka: The Extraordinary Music of the Babenzélé Pygmies" という CD 付きのブックレットも ellipsis arts… から出しているが、本の内容も添付 CD で聴ける音楽もとてもいい。同じ ellipsis art… からの CD ブック "Echoes of the Forest" (1995) でも彼の録音が聴ける。

 映画 "Song From The Forest" はルイス・サルノを主人公にしたドキュメンタリー作品。森で暮らすうちにルイスはピグミー女性との間に子を授かったのだが、その Samedi Mathurin Bokombe 君(土曜日に生まれたから「土曜日」君、撮影時13歳)との関係や、彼をニューヨークに連れて行くことが話の軸となっている。

 映画はバヤカの森の紹介から始まるのだが、自分がピグミーの音楽の素晴らしさを知っているだけに、彼らの歌い奏でる姿をもっと見たくなる。それでも、ポリタンクや金属鍋のふたを叩いてリズムを産み出すなど、ピグミーの音楽も更新を続けている様子が伝わってくる。

 この映画、父子の関係の描き方がいいな。シャツの中で抱き合うところ、フルートの吹き方を教え/教わるところ、ニューヨークで口論になるところ(ピグミーであることを忘れてしまい、小柄なので6歳児くらいに見えるのだけれど、意外とサムディ君の方が大人びていたり)。詳しいことは映画を観てください。

 気に入っているシーンのひとつはニューヨークの景色に森の音をつけたところ。どこかでやるんじゃないかと思いつつ観ていたら、やっぱり…。コンクリート・ビルディングが林立する都会から森を連想する人は多いだろう。「コンクリート・ジャングル」なんて言い方もあるくらいだから。アフリカの森と現代都市の森。ふたつの巨大な森の中で営まれる全く違った2つの生き方。同じ人間でありながら、それぞれは何と異なる世界なのだろう。そのことからも、いろいろ考えさせられる映画である。

(この映画にはジム・ジャームッシュ!も登場する。ルイスとジムがかつてルームメイトだったなんて初めて知った。ビックリ!)

 サントラ盤の収録トラックをチェックしてみると、既発録音はなさそうだったので買ってみた。ピグミーのレコードは全て集めているので…。

 まず最初の3トラックが素晴らしい! (1) "Yeyi-Greeting" は超絶的に美しいヨーデル。聴く度に涙が溢れそうになる。(2) "Women Sing in the Forest" は現実世界から離れたかのような響きに満ちたコーラス。(3) "Tree Drumming" はトランシーな重低音ビートが圧巻で、人間技とは思えないほど。恐らく巨大木の盤根を叩いているのだろう。

 以降も珠玉の録音が並ぶ。ルイス・サルノはピグミーの森で1000時間を超える録音を行ってきたという。この CD にはそれらの中からベストなものを選んでいることだろう。聴いていると、眼の前に音の桃源郷が広がっていく。このところ毎日夜遅く、この CD ばかり聴いている。今年のベスト・アルバムはもうこれで確定です。

 例えば、ハンティングの歌のダイナミックなサウンドだとか、静寂の後に間をとってから突然切り込む Water Drumming だとか、Earth Bow の太い音色の録音だとか、音作りの面白さも。制作者たち、そのあたりも分かっている!

(バヤカ・ピグミーの音楽をじっくり聴いて改めて驚かされたのは、その「正確さ」。リズムもピッチもハーモニーも全く乱れることがないし、弦楽器やフルートを演奏する際の運指も全く狂わない。散々言われていることだけれど、確かにクラシック音楽にも匹敵するレベルだ。それでいて、聴いているとそんなことは一切忘れて至福へと導いてくれる。)

 映画を観ていてちょっと残念だったのは、ルイスに元気がないこと(それと、見た目もずいぶん老いた印象だなぁ)。D型肝炎にかかっているそうで、その影響もある様子だった。経済的にもうまく行っていないらしい。カメルーンの学校に寄付する一方で、CD は全く売れなくなり(そもそも近頃は CD 作っていなかったのでは?)、観光客が来なくなってガイドによる収入もなくなったと語る。この CD からの収入の大半は The Bayaka Support Project なるところに寄付されるそうだ。ルイスとバヤカのピグミーを支援するためにも CD を買ってください。




関連リンク

http://songfromtheforest.com
http://www.facebook.com/songfromtheforest
http://www.facebook.com/louis.sarno.5?fref=ts
http://www.imdb.com/title/tt3003858/
http://motherboard.vice.com/read/louis-sarno-spent-30-years-in-the-rainforest-preserving-the-music-of-the-bayaka
http://www1.wdr.de/fernsehen/wdr-dok/sendungen/song-from-the-forest-100~.html

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(写真は上記リンクからの引用。)




 白状してしまうと、ピグミーについて調べ続けているのは、今年か来年にでもピグミーの森に行こうと思っているから。不思議なもので、学生時代には海外旅行などには全く興味がなかったのに、気がついてみたら行きたいところにはほぼ行き尽くしてしまっていた。会いたいと思っていた人には皆会えたし、欲がないからなのか貧しい育ちだからなのか、特別欲しいものももうない。自分はあと何をしたいのかとさんざん考えた末の答えが、ピグミーの森に行くこと。だけれど、ひとつくらい夢を実現させずに残しておかないと、これから先、生きていく理由がなくなってしまうんじゃないか、、、なんて考えも頭の片隅で疼いている。






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by desertjazz | 2016-07-25 17:00 | 音 - Africa

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 Akoya Afrobeat の新作 "Under The Tree" が本日正式リリース。2007年に発表した "P.D.P." 以来なので実に9年ぶり。早速 Wav version と MP3 をダウンロードして CD-R に焼き、大音量で聴いている。

 本作はスタジオライブ形式で一発録りした長尺2曲を収録。アナログ12インチと DL だけでのリリースで、CD盤はなしとのこと。ヴァイナル両面1トラックずつというのは、フェラのアルバムを意識してのことか?(CDが売れないという現実もあるのだろう)ジャケのデザインも "P.D.P." に引き続いて、今回もフェラ・クティのアートワークの多くを手がけた Lemi が担当している。

 肝心のサウンドもフェラのアフロビート直系と言え、そこに NYC ベースのバンドらしい都会性も感じる。

 "Jena Tree" は20分近いナンバー。フェラの曲から選べば、例えば "Go Slow" あたりを連想させる。しかし雰囲気はぐっとクール。

 "Taking It Back" は、切れよく柔らかなホーンズに導かれ、女声がとにかく印象的。ジャジーでブルージーな曲だ。それにしても、エンディングの女声コーラスがまるでジャガタラだなぁ。

 レコーディングから約1年半を費やしてミックス/マスタリングを重ねた待望の作品。その間、何度か完成前/途中経過の音を聴かせてもらった。当初感じたバランスの悪さは消えたが、その分他に気になる部分も浮かんできたような。一発録りで覚悟して臨んだ結果をどこまで詰め込めるかという点では成功していると評価したい(新鮮味が幾分薄れたようにも感じたが、もう何十回も聴いているからね)。

 大好きなバンドが素晴らしい新作を完成させてくれただけで嬉しい。ヴァイナル盤で聴くのも今から楽しみです!



(続く)






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by desertjazz | 2016-05-27 19:00 | 音 - Africa

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 3/10 にユッスー・ンドゥールの新作がリリースされたようです。 "Serin Fallu"、"Doylou"、"Song Daan" がネットで試聴できます。(相変らず日々忙殺されていて、ブログが書けません。)






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by desertjazz | 2016-05-11 21:00 | 音 - Africa

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