カテゴリ:音 - Africa( 228 )

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 ファーダ・フレディ Faada Freddy のソロ・アルバム "Gospel Journey" の関することは断片的にばかり書いてきた。そろそろアルバム・レビューとライブ・レポートもある程度まとまったものを書いておこう。まずはファーダと彼のアルバムについて。




 ファーダ・フレディはセネガルのヒップホップ・トリオ、ダーラ・ジェイ(ダーラ・ジー)Daara J のメンバーのひとり。アフリカン・ヒップホップにもギャングスタ系が多い中、彼らはポップで爽やかなサウンドが特徴とする。そもそもグループ名が「School of Life」を意味するくらいだから「健全なサウンド」なのも自然なことだろう。ラップと歌ものとのバランスも良く、ラテン風味の "Esperanza" などは名チューンだ。

 そんな彼らはセネガルのトップ・グループに登り詰め、海外にも進出。私も過去、フランス(アングレーム)、イギリス(ロンドン)、東京、シンガポールの4カ所で彼らのステージを観ている。アルバムのサウンドと同様、心と身体が自然と弾むものだった。

 これまでカセットとCD合わせて10作ほどリリースしてきたが、その後アラジマン Lord Alajiman が脱退(理由は不明)。現在はファーダとンドンゴ D Ndongo D の2人組として Daara J Family の名前で活動。アルバムも1枚リリースしている。

 ・ DISCOGRAPHY OF DAARA J(未更新版)




 Daara J も2人になってしまって、ちょっと勢いが落ちたかなぁと思っていた。ところが、昨年くらいからファーダのソロ・ライブがフランス各地で大受けであることを偶然知った。そして今年の春、待望のアルバム "Gospel Journey" をリリースすると発表し、話題を集めることに。

 CD が発売になる前からネットを通じて繰り返し試聴。すっかり気に入ってしまったものの、日本には一向に入ってこない。フランスのサイトから購入しても高くなるので、フランス旅行まで少しの間だけ待ってパリで購入することにしたのだった。




 "Gospel Journey" のコンセプトは "Only Voice and Bodies, No Instruments"。つまりメンバー6名(男5、女1)は、楽器は一切使わず、声と身体だけで音楽を構成している。声の要素としては、歌とコーラス、ビートボックス以外に、口笛を吹いたり、カズーを模したり、ホーミー風に歌ったり。ボディー・パーカッションも数パターンのハンドクラップ(手拍子)、フィンガースナップ、胸打ち、膝打ち、足踏み、等々と多彩。胸打ちは胸にマイクを仕込んでキックっぽい音に加工している。

 ゴスペルと謳いながらも、本格的なゴスペルというよりは、ゴスペル風ポップ・ミュージック。ほぼ全て英語で歌っており(一部でウォロフ語も)、1曲 "Slow Down" で総勢20名ほどの大コーラスも加わるが。

 このアルバム、とにかく曲が良くて(クレジットを見るとファーダが関わった曲は少なく、書き下ろしが多いのか、それともスタンダードも含まれているのか分からなかった)、楽器レスとは思えないほどにサウンドが豊かで、そしてとことん楽しい。そのことは、言葉を通じた説明を読むより、実際の曲を聴いてもらった方が早いだろう。まずはアルバムでもライブでもハイライト・ナンバーの "We Sing In Time""Slow Down" からどうぞ!

 この作品、アフリカ出身のアーティストがユニバーサルな極上ポップスを作り上げたという点では、自分の中で、ソマリア出身の K'Naan や南アの Nakhane Toure やガーナの M.anifest などと同列に位置している。




 ところで、パリでは通常盤 CD より先に 10インチ・ジャケット仕様の限定版を先に手に入れた(トップの写真)。その中味はこんな感じ。

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 CD と DVD の2枚セットになっている。DVD では "We Sing In Time" などのクリップが収められているのだけれど、PV はパソコンの画面で観るよりも大画面のモニターで観た方がいいね。生憎ブックレットがついていなかったので、後で CD 版も買うことにしたけれど。

 10インチ版と一緒に EP ボックス "Untitled EP" もゲット。中にはこんな具合にオマケがいろいろ入っている(1曲エディットされた3曲入り。iTunes でも音だけは買えて、そちらは4曲収録。)

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 ちなみに、価格は 10インチ版が25ユーロで、EP ボックスは5ユーロ。全部買い取ってこれば良かったかな?




 パリで観て来たライブはアルバムに勝ってさらに素晴らしかった。オーディエンスがあそこまで熱狂したライブも個人的にはほとんど記憶にないほどだったし。(詳細後日 → 日にちを遡ってアップしました。

 このファーダのショーは来年あたり日本のどこかのフェスに招いたらきっと盛り上がるのではないだろうか。 いやそれ以前に悩ましいことは、"Gospel Journey" のリリース元がどうやら日本との取引がないらしく、未だに CD が日本に入ってこないこと。こうなったら自分でライナーノートも書いて配給したいくらい。まっ、時間の問題で、そろそろどこかが日本に輸入してくれることでしょう。





 さてさて、絶好調のファーダ・フレディーなのだけれど、Daara J Family のセカンド・アルバム "Fundation" を間もなくリリースすると発表。こちらも楽しみです!

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by desertjazz | 2015-05-04 20:00 | 音 - Africa

(帰国して以降、ブログをじっくり書く時間がありません。せめてもと思い、パリでの入手盤を聴いて少しずつでも紹介していくことにしましょう。)




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 今回のパリ滞在中にも18区シャトールージュ界隈にあるセネガリーズ・ショップを巡って最新CDをチェック。一番に探したのは Youssou N'Dour の "Grand Bal 2013"。Youssou の作品は一応コンプリートに集めようと思っているので…。パリ・ベルシー体育館でのライブ盤、2013年版もCDとDVDで絶対にリリースされている。そう確信して訪ね歩いたものの、全く見つからない。不思議だ。

 その代わりに見つけたのが "Fatteliku" という2013年にリリースされた4曲入りCD。「未発表曲集」とも書かれている。これが結構良かった。

 1曲目はハラム風の弦楽器が主旋律を奏でるセンチメンタルなナンバー。2曲目はサバールが快活なンバラ。3曲目はシンセの音と弾むビートがいかにも Super Etoile de Dakar らしいンバラ。4曲目はウォロフの伝統曲をベースにしたスタンダードのリメイク。

 ・ Youssou Ndour - "Souvenirs"(2トラック目の PV)


 Youssou のヴォーカルは快調で、全体的にセネガルの弦楽器の音色が印象的で、名作 "Nothing's In Vain" のサウンドを連想させ、そのアウトテイク集といった趣も。

 Super Etoile のメンバーとしてクレジットされているのは総勢16名。その中にバンマスの Habib Faye の名前もリードギターの Jimmy Mbaye の名前もないので、アルバム・リリースを念頭にしてのレコーディングではなかったのだろう。

 Youssou はこの春、オーストラリアの WOMAD に出演したが、Neneh Cherry と "7 Seconds" をデュエットした映像を見て正直萎えてしまった。けれども、手癖レベルでまだまだこれくらいの作品は軽く作ってしまうようだ。ならば本気勝負した新作も聴いてみたいものだ。


(これは若干数、渋谷 El Sur Records にお届けしました。どなたかお買いになりましたか?)






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by desertjazz | 2015-04-29 22:00 | 音 - Africa

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 ファーダ・フレディ Faada Freddy のソロ新作 "Gospel Journey"、ホントにいいなぁ。

 コンセプトはヴォイスとボディ・パーカッションのみによるサウンド。シンギング、ラップ、コーラス、シャウト、口笛、肉声ビートボックス、そしてハンドクラップとフィンガースナップ、など。胸を叩く音はキック/ベース的なビートを生み出す。それらが重なって生まれるヒューマン・サウンドは実に音楽的。楽器レスとはとても思えない。もうペンタトニックス Pentatonix 対抗馬筆頭と断言してもいいくらい。

 なぜフランス語ではなく英語なのだろうかと思ったが、それは「ゴスペル」だからなのだろうか?

 ファーダの Gospel Journey はフランスで人気沸騰しているらしい。今年夏のフェスにも軒並みブッキングされている。うーん、どこかの会場で直に聴いてみたい。けれど、チケット取るのは至難かも知れないなぁ。


 ところで、アルバム・ジャケットの2人は男の子だと思い込んでいたのだけれど、双子の姉妹で、似た所のない2人はアルバムの音楽の「二面性」を象徴しているらしい。そのことをこのインタビューを読んで知った(しっかり読んで記事を書きたいところなのだが、全然その時間がない)。

Interview FAADA FREDDY « l’Afro- péanisme c'est maintenant » !


 今週中には CD を入手できそうなので、しばらくはこれを聴いて我慢かな?

 ・ Faada Freddy "We Sing In Time"






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by desertjazz | 2015-04-04 22:00 | 音 - Africa

 最近は読書している時が一番満ち足りた気分になれるような気がする。どうするものかと迷ったものの、ガルシア=マルケスの全小説も読んでみることにした。まずは初期短編集『落葉』と『悪い時』を買って、寸暇を惜しんで読みふけっている。




 本のことばかり書いているようなので、少しは音楽のことも。

 このところ気に入っているのは、セネガルのヒップホップ・シンガー(Daara J のメンバー)、ファーダ・フレディ Faada Freddy のソロ新作 "Gospel Journey"。"Reality Cuts Me Like a Knife" は70年代のスティヴィー・ワンダーを思わせるソウル・チューンだし、"We Sing in Time" のポップさも最高! その CD はまだ入手できていないので、ネットを使って聴いている。このライブ動画もいいね!

 ・ Faada Freddy - Le Ring - Live

(これを観ていて気がついたのだけれど、完全に肉声だけでやっているんだね。Pentatonix みたい? 来月の新作披露ライブもこんな感じになるのかな?)


 早く CD で聴きたいのだけれど、発売直後だからなのか、まだ日本に入ってくる気配もない。フランスのショップで手に入れるしかないかな?


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 ファーダが(コクヨの測量手帳に)書いてくれたメモも出てきた。"Gospel Journey" を聴いて嬉しくなったので、ファーダに電話してみようかとふと思ったり。(でも12年前の番号なので、多分もう繋がらないだろうと思う。)




 今月は Steve Stevens の新作も Seu Jorge の新作( "Musicas Para Churrasco" の第2弾 !!)出るし、Toko Blaze の新作情報も入ってきた。楽しみなリリースばかりです!






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by desertjazz | 2015-03-23 00:00 | 音 - Africa

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 Dupain の新作 "Sòrga" は昨日16日に予定通りリリースされた模様。

 同じ16日に Daara J / Daara J Family のファーダ・フレディ Faada Freddy 初のソロ・アルバム "Gospel Journey" もリリースされた。試聴してみたら結構いい。Daara J Family のアルバムよりはずっといいかも? これは買って聴いてみようかな?

 ・ Faada Freddy - Gospel Journey (Sampler)


 ファーダとは、アングレーム(フランス)、ロンドン、東京、シンガポールと、これまで4度も会っている。これはちょっと珍しいかも。初めて会った時には、「ダカールに来たら連絡くれよ」とケータイ番号まで教えてくれた。気さくなナイスガイ。

 4月13日にパリの La Cigale でレコ発ライブが予定されている。






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by desertjazz | 2015-03-17 23:00 | 音 - Africa

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 ジンバブウェのトーマス・マプフーモが新作 "Danger Zone" をリリースしていたことを見逃していた。昨年にシングル "Music" を発表したのに続いて、今年2月17日にジンバブウェで自身のレーベルからリリースしたようだ。

Official Site | Thomas Mapfumo

Facebook | Thomas Mampfumo


 今回も長尺曲が多くて(最長で 10分)、12曲で計77分。従来のレパートリーと同じタイトルの曲もいくつか見受けられるが、どれも新曲だと思う。ネットで数度試聴したのだけれど、かなり良さそう。歌もサウンドもとても若々しくて、一時期健康不安も囁かれたマプフーモは健康面でもかなり改善しているのではないだろうかなんてことも想像させられる。チムレンガをベースに、いつものコロコロ転がるようなンビーラあり、レゲエ風あり、Tuku Music風あり、バラードあり。ブラスのサウンドは心地よく、スチールギターやヴォコーダーも使っていて、女性シンガーが参加したトラックもある。

 うーん、これは CD で欲しいな。でも、これまで使っていた南アのネットショップがなぜか消えている。それで Oliver Mtukudzi の新作(ライブ盤)もまだ入手できていない。そういえば何度か利用したワシントンのエチオピア音楽のショップも消滅した?

 相変らず音楽を聴く時間があまりなくて、最近も St. Vincent や Dupain ばかり繰り返し聴いている状態なので、まあそのうち手に入れられればいいかな。






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by desertjazz | 2015-03-06 20:00 | 音 - Africa

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 E. T. メンサーのハイライフは本当にいいね! 半世紀以上昔とは思えないほどにモダンで洗練されたサウンド、とりわけ柔らかく芳醇で艶やかなトランペットとサックスのアンサンブルに耳をそばだてていると心がトロケそうになる。至福の境地也!


 今回リリースされた E. T. Mensah & The Tempos の 4CD には Retroafric 旧盤2枚のトラックも全て再収録されている("All For You" の20曲と "Day By Day" の15曲)。そこに新たに 34曲追加されて全 69トラック。これでメンサーの Decca 録音の全貌はほぼ明らかになったのだろうか? それについて調べ始めたところなのだが、そもそも録音マトリクスのリストは持っていないし、SP が何枚発売されたのかも不明なので、明確な答えは簡単には出せない。

 1952年の初レコーディングでは "Odofo Nuapa"、"Tiemansem"、"Tea Samba"、"Shemi-ni-oya"、"All For You" などが録音された。メンサーの最初の 10インチ盤はこの時の録音を集めたものなのだろう。

 53年の2回目の録音では "St. Peter's Calypso"、"Nkebo"、"Baaya"、"Donkey"、"Calypso"、"Wiadzi"、"Tro Va Phe" などを録音。2枚目の 10インチ盤はこの時の録音が中心なのかも知れない。

 今回の 4CD にはこれらの曲が全て収録されているわけではない。また "Tempos on the Beat" (Decca WAL 1009, 1959) という10インチ盤の曲もごっそり落とされている(いいアルバムなのに、選ばれたのは 10曲中の1曲のみ)。

 それでも 50/60年代の録音の相当部分は今回リイシューされたのではないかと考えている。


♪ 追記 ♪
 
 ・・・と以下、かなり当てずっぽうで書いてみたのですが、全くのハズレでした。失礼しました。深沢美樹さんの Facebook にメンサーのディスコグラフィが掲載されていると聞いて早速拝見。やっぱり大量に録音していたのですねぇ。例えば世代の近い E. K. Nyame のバンドが 400枚ものレコードを作っているらしいので(*)、メンサーも同程度の録音を残している可能性も考えました。どうやら SP だけでもまだ半数以下しか CD 化されていないようです。深沢さんがお書きになった記事、大変参考になります。レコードのリストを見ているだけでもワクワク。

(*)'E. K.'s band made four hundreds records which were not only popular in Ghana but in Nigeria as well.' (John Collins "Highlife Time" P.xi )

(2015.03.03 / 03.10)


♪ ♪


 というのは、John Collins の解説を読んで、E. T. Mensah の全盛期が案外短かったようだったことを知ったから。どうやら彼のピークはほぼ50年代の約10年間と見なしてよさそうだ。

 40年代は、メンサーたちが、駐留英米軍の楽団やクラブにやってくる白人たちとの交流を通じて、またガイ・ウォーレンがもたらしたロンドンのカリビアン・コミュニティーの音(アフロキューバンやカリプソ)を聴いて、スモール・コンボによるダンスバンド・ハイライフを模索していた時期だった。この時期は第二次世界大戦の影響で Decca などによるレコーディングも長らく停止していたという。

 メンサーが自身のハイライフを完成させ、初のレコーディングを経験するのは 1952年なので、彼が 33歳の頃。少々遅咲きだろうか。若い頃に白人がもたらしたジャズやスウィングと出会ったことで、ハイライフ・ミュージックを発展させることができたが、その反面 20代でレコーディングする機会は失ってしまった。そして50年代末になると、すでに後進たちとの世代交代も始まって、レコーディングどころか演奏する機会も激減していった。

 ピークだった 50年代にしても、人気が高かった分クラブやコンサートでの演奏が多く、またバンドを経済的に維持するためにも数多くの公演をこなす必要があり、レコーディングどころではなかったのかも知れない。契約条件が不利なレコーディングを数多くこなしても、さほど利益には繋がらなかったことだろうし(それで、60年代に音楽家ユニオンの結成に注力することになったのだろう)。

 なので 50/60年代の録音曲は膨大な数にはなっていないと想像する。80年代以降、やや懐古的に2枚のアルバムが制作されたものの、Decca 録音からコンパイルした今度の Retroafrica 盤 4CDは、メンサーのキャリア全盛期を伝えるに十分なものとなっているのではないだろうか。





 今日は他の資料を読んだり、関連音源をあれこれ聴いたりもしている。

 "All For You" と "Day By Day" の日本語解説は、John Collins が執筆したメンサーの生涯をコンパクトにまとめたものになっていて役に立つ。これらの CD がリリースされた時点でここまで整理されているのは、John Collins の本を参照されたからなのかも知れない。

 ジョン・コリンズ「西アフリカのポピュラー音楽 ハイライフ、パームワイン・ミュージックの歴史」(『季刊ノイズ 1』P.131〜15)も再度読み直してみた。やはりこれは日本語で読めるハイライフの資料としては最高のものだと思う。19世紀後半、西アフリカの沿岸諸国でローカルな音楽とアメリカから還流した音楽とが混じり合って新たに誕生した数々の音楽、とりわけ重要だったパームワイン・ミュージック、そこから流れ進んだ3つのタイプのハイライフ、英米駐留軍のオーケストラがもたらした多大な影響などについて実に詳しく綴られている。

 E. T. Mensah 4CD のブックレット解説の基となった John Collins "E. T. Mensah, King of Highlife" からも多数引用されており、それらを日本語訳で読めたので、英文ブックレットで読みのがした部分をきちんと理解できたことは良かった。特に 40年以降、Tempos 誕生までの経緯に関する主要部分が訳されているのは有り難い。

「イギリスとアメリカの軍隊の音楽といえば、スウィング。彼らによって、西アフリカにこのダンス音楽を演奏するバンドがいくつか作られた。アクラにおける最初期のそうしたバンドのひとつが、1940年にスコットランド人のサックス奏者によって結成されている。彼は芸名をサージェント・ジャック・レパードといった。軍隊から募集した白人ミュージシャンだけではスウィング・バンドを組むことができなかったので、彼は地元のダンス・オーケストラから、楽譜の読めるアフリカ人ミュージシャンたちを引入れたのだった。そしてできたのが、レバーズ・ブラック・アンド・ホワイト・スポッツである。」(P.142)

「アクラでブラック・アンド・ホワイト・スポッツと同じ年に結成されたもうひとつのバンドが、テンポスである。これはガーナ人のピアニスト、アドルフ・ドクと、イギリス人のエンジニアでサックス奏者のアーサー・レナード・ハリマンによって創設された」(P.143)

「テンポスは初め、テナー・サックス奏者、ジョー・ケリーをリーダーとしていたが、1947年以降、E・T(サックスとトランペットの二役)が引き継いだ。」(P.144)

「このバンドが西アフリカで非常な成功をおさめるに至った決定的な要因としては、その他に、バンドのドラマー、コフィ・ガナーバ Kofi Ghanaba(当時、ガイ・ウォーレンとして知られた)によるところが大き。彼は以前ロンドンにいて(…)ガーナに戻ると、彼はテンポスにカリプソ独特のホーンのうねりと、アフロ=キューバ的なパーカッションを導入したのである。」(P.144)


 こんな具合なので、西アフリカの音楽の歴史やハイライフ・ミュージックに深い関心のある方は、この雑誌を古本ででも探す価値は大きいと思う。




 いろいろ読み直して、忘れていたことが結構あることに気がついた。メンサーのキャリアとハイライフが成熟していくのに白人たちがなした役割も再確認。そして、ガイ・ウォーレンの存在がいかに大きかったことか。

 ジョン・コリンズのブックレットには、ファースト・レコーディングの中の1曲 "All For You" は "Sly Mongoose" をベースにしていると書かれている。 "Sly Mongoose" はトリニダード・トバゴのカーニバル用に書かれた有名曲。そうだったかな?と思って(ハイライフは大好きなくせに、何故かカリプソは滅多に聴かない)、Lord Invader "Calypso in New York" を引っ張り出し、彼の 46年録音を聴き直してみた。確かにサビが全く一緒だね。ウォーレンがインベーダーのレコードを聴いたことで "All For You" が生まれたのか、それとも "Sly Mongoose" のレコードはすでにガーナに輸入されていて、メンサーたちはそれを聴いたのか。




 毎度のことながら、関連レコードや資料が次々と自宅から発掘されていて、それらをチェックし直すだけでも時間が足りない。なので E. T. Mensah のアルバムの紹介に全然なっていないかな?

(渋谷 El Sur Records に世界一早く?入荷したその 4CD は瞬く間に売り切れたようです。まあ、そのうちまた日本に入ってくることでしょう。)


(続く)


(言葉足らずだった部分を若干追記しました。2015.03.02)






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by desertjazz | 2015-03-01 22:00 | 音 - Africa

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 来月3月6日にイギリスでリリース予定の "E. T. Mensah & The Tempos : King of Highlife Anthology" (Retroafric RETRO24CD) 4CD が何故か渋谷の El Sur Records に先行入荷。一昨日26日に購入し、早速4枚のディスク(全69曲、194分)を繰り返し聴いている。

 一昨晩に4枚通し聴きした後には、メンサーの他のレコードも取り出して聴き始めた。気が向いたので、その次いでにダラダラ呑みながら E. T. Mensah のディスクグラフィーも作り始めてみた(随時更新中)。

 この CD セットにはジョン・コリンズ John Collins が執筆した "E. T. Mensah - King of Highlife" に、そのコリンズによる前文を加えた全66ページのブックレットがついている。ジョン・コリンズの著作は先日紹介したが、彼にはもう1冊 "E. T. Mensah, King of Highlife" という本(小冊子)がある。これも長年探しているのだが、どうしても入手できなかった。

 本盤の解説によるとその本は、1974年に行ったメンサーらへのインタビューに基づいて執筆したものの、ガーナ国内では出版社がなかなか見つからず、86年になってやっと Ronnie Graham の Off The Record Press から(イギリスのみで?)限定出版したという。そしてガーナでの出版(Anansesem Press)に至ったのは 1996年7月にメンサーが亡くなった直後だったそう。この本のガーナ版はすでに品切れだとも書かれている。

 しかし、今回リリースされたメンサーの 4CD のライナーはこの "King of Highlife" という本に追記・編集したものだという。これでもうガーナで出た本を探す必要はなくなったことは有り難い。


 さてそのブックレット解説、今日読み始めたら面白くて止まらない。英語は苦手なのに一気に読み通してしまった。

 個人的には興味深いことがたくさん書かれていたので、以下にその概要を整理してみた(ほぼ Tweet からのコピー)。よろしければ、ご参考まで…。




・Emmanuel Tetteh Mensah は 1919年5月31日、アクラの Asere quarter of Ussher Town の生まれ/ガ人 Ga tribe/7人兄弟?、父の妻は2人/父はギタリストで彼らから最初の音楽的影響を受けたと思われる

・兄 Yebuah とともに、教師 Joe Lamptey (Agra) が1924年に結成したスクール・オーケストラに参加、担当はフルート/ストリートを練り歩く

・1932年、スクール・オーケストラは Accra Orchestra に発展/'Gungadin'(P.7)

・1936年、Accra Orchestra → Accra Rhytmic Orchestra

・40年駐留軍人 Jack Leopard の元でバンドが組まれる Leopard and His Black and White Spots

・第二次大戦時で白人との交流が音楽面で与えた影響大/42年頃からトランペットの練習も始めた

・1947年 アクラに戻り Rhythmic Orchestra に(再)加入?/その後 Tempos に、メンサーはサックスを担当/Joe Kelly、Leonard Harriman との出会い、Tempos 結成の経緯(P.11)

・48年に自分の薬局を持つことで経済的に安定し、楽器を購入/近所の少年たちに教え始めたが、その中に Jerry Hansen(後に Ramblers を結成)もいて彼にサックスを教え始める

・初期のドラマー Guy Warren は店で白人と喧嘩となり問題化/48年頃 Warren がイギリスに滞在、それでアフロ・キューバンやカリプソなどの影響が強まった(〜P.15)

・メンサーは40年代末にはステージで喝采を浴びるまでに/50年ナイジェリア・ツアーで Bobby Benson に会う、彼はまだハイライフはやっていなかった

・帰国後バンド分裂/自身が中心に再編、密かに楽器を準備していたためにそれが可能だった/打楽器編成に工夫/52年初録音(5曲?)/ 'King of highlife' 名を拝するようになる

・クラブとの契約で意見が合わず再分裂/53年再編、若手起用、女性シンガーや Zeal Onyia が加入/同年2度目のレコーディング/同じ53年に自身もバンドもプロ化(〜P.20)

・54年またまた分裂/バンド分裂はレバノン人に騙されたから?/メンサー含む4人以外は Rhythm Aces へ(さらに→Rakers→Stargazers)/バンド維持のためにナイジェリア公演を繰り返す

・55年3ヶ月ロンドン、ステージでの客演多数、Ambrose Campbellとも共演/ロンドンでは Decca と HMV で録音。後者のために6曲作曲(P.21-22)

・パリ、マルセイユ、アビジャン経由で帰国/ロンドンの音楽ビジネスに感化され、クラブ経営を思い立つ → 自身のクラブ Paramount

・56年 Satchmo 来訪、空港で All Fo You を演奏して歓迎/コンサートとクラブでの共演は大混乱、映画撮影はどうなった?/問題多発の中(ガーナの聴衆はサッチモのジャズを理解せず)、影響を交わし合う、St. Louis Bluesもレパートリーに(〜P.29)

・ガーナ独立目前、ダンスバンド林立/57年ガーナ独立、彼のクラブ経営に悪影響/独立を祝して Ghana Freedom Highlife を録音、事前に聴いた大統領側からクレーム、すでに英国で1枚プレスし船積み直前だったが名前2人を消して再プレス/大統領に歓迎されたが、その後もガタガタ大問題(このあたりが面白い)

・ナイジェリア公演の連続で経済的に安定 → 53年にプロ化/54年?の第2バンド Star Rockets 結成はガーナ不在を埋める目的だった

・ナイジェリア公演の影響でナイジェリアで初めてダンスバンド・ハイライフのバンドが誕生 → Victor Olayia の Cool Cats、Rex Lawson のシンガー Dan Acquaye は元テンポス、等々影響大/反対にメンサーもヨルバのハイライフをレパートリーに加えることも(〜P.35)

・58年、かつてはハイライフを演奏していなかった Bobby Benson がナイジェリアでライバルに、ライブ中止、経済的に苦しくなり出す

・58/59年西アフリカ・ツアー Grand Tour、階級意識の強いシエラレオネではフロアを二分、価格も別に/ギニアでは脱仏の影響を観察(〜P.42)

・イギリスとフランスによる統治の差について延々語られる、そのために英語圏西アフリカで先に音楽が発達した、ギニアでは白人バンドばかりだった、等々(筆者 John Collins は英系)

・コンゴ音楽を初めてライブで聴いたのは57年/50年末にコンゴ音楽のレコードがガーナに流入、それを初めて演奏したのはダオメー人 Ignace de Souza 率いる Shambros(〜P.45)

・国営バンドが続々誕生し苦境に、国外公演も激減/多くのメンバーがバンドを離れ、第2バンドを解散しそこからメンバー補充/残ったのは息子の Nii-Noi (Chris Mensah) など20歳以下ばかり、音楽の好みが対立、若者たちはハイライフよりコンゴ/メンバーの勝手な振る舞いに対する諦め

・69年渡英、10週の予定が14週に、また金の問題/LP "African Ryhthms" 録音/ロンドンではレゲエも覚えて演奏/帰国後はレゲエやアフロビートも演奏、ガーナで初めてレゲエを演奏したバンドだが、国民はすでにレコードで聴いて知っている(〜P.52)

・後年の問題(P.53から):金で引き抜かれるメンバーを引き止められないバンド・リーダー、音楽家ユニオンの結成と頓挫、Highlifeという名は英語なので Osibisaba?に変更しようという動きが → 当然失敗、新しい音楽への挑戦 → ライブでは聴衆たちから(演奏が間違っているから)レコード通り演奏するよう求められる(ローカル音楽、ハイライフ、コンゴ音楽などではそのようなことはない)/

・80年代には表舞台からほぼ消える/ユニオンの重鎮として活動/78年と82年にレゴスでLP録音/86年Retroafricaによるリイシューの際、UKとアムスでプロモーション&ライブ(知らなかった!)(〜P.60)

・長患いの後、1996年7月19日没(本文中では語られず)




 この解説、内容は音楽分析よりも伝記。詳細で、バンド・パーソネルの変遷も時系列に紹介されている。強調されているのは、ハイライフの父と呼ばれる所以(ナイジェリアでも基礎を築いた)、音楽面でも挑戦者だったこと、苦労の絶えなかったこと。


 肝心の CD の内容紹介はまた改めて。





♪ 追記 ♪

 ブックレットには E. T. メンサーの生涯についてとても詳しく書かれていますが、最も重要なポイントは・・・


 地元に古くからある音楽(フレームドラムなどを使っていた)、19世紀後半から受け継がれてきた(ギター中心の)パームワイン・ミュージック、20世紀初頭に軍楽隊を通じて入ってきたブラスバンド・オーケストラのサウンド、40年代に(駐留軍など)白人たちがもたらした西洋音楽(スウィングやジャズなど)、(主にガイ・ウォーレンによるロンドン仕込みの)アフロ=キューバンやカリプソ、これらをメンサーがブレンドしてダンスバンド・ハイライフを完成させたこと、そしてそのサウンドがガーナやナイジェリアで大人気を博したこと、さらにはガーナだけでなく周辺諸国に同様なハイライフ・バンドの誕生を促し影響を与え続けたことです。だからこそメンサーは「キング・オブ・ハイライフ」と賞賛されたのでしょう。


(2015.03.03)






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by desertjazz | 2015-02-28 21:00 | 音 - Africa

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- 78rpm -

1) Nkebo Baaya / The Donkey Calypso (Decca WA.701)
2) All For You / St. Peter's Calypso (Decca WA.703)
3) Munsuro / Essie Nana (Decca WA.704)
4) Odofo / The John B Calypso (Decca WA.705)
5) Wiadzi / ? (Decca WA. 726)
6) Agriculture / ? (Decca WA. 727)
7) Fomfom / ? (Decca WA. 737)
8) Club Girl / Akpanga "Volture" (Decca WA. 768)
9) The Tree and The Monkey / ? (Decca WA. 805)
10) Sambra / ? (Decca WA. 806)
11) Kwame Nkrumah / ? (Decca WA. 899)


 and more?


- 7inch EP -

1) "Ghana Rhythms" Hweyie / Menye Wo Bowu / Ngele Wae Wae / Auntie B (Decca WAX 101)
2) "Mensah Melodies" unknown 4 tracks ? (Decca WAX 104)
3) "Ghana High Life" Bashia / Novinye / Calabar O / Nyeme Gale Dzio (Decca WAX 106)


 and more?


- 10inch LP -

1) "Decca Presents E. T. Mensah and his Tempo's Band" (Decca WAL 1001, 1952)
2) "Decca Presents E. T. Mensah and his Tempo's Band - No.2 : More Tempos" (Decca WAL 1002, 1956)
3) "A Star of Africa" (Decca WAL 1003, ? )
4) V.A. "Ghana Festival" (Decca WAL 1004, ? )
5) "Tempos on the Beat" (Decca WAL 1009, 1959)
6) "A Saturday Night" (Decca WAL 1013, ? )
7) "Tempos Melodies" (Decca WAL 1022, ? )


 and more?


- 12inch LP -

1) V.A. "Stars of West Africa : High Life Hits!" (Decca WAP 20, 1961)
2) V.A. "Stars of West Africa : High life Hits! Volume 2" (Decca WAP 23, 1963)
3) "Mensah's African Rhythms" (Decca WAPS 27, 1969)
4) "E. T. Mensah" (Decca WAP 283, ? )
5) "E. T. Mensah Back Again" (Afrodisia DWAPS 2013, 1976)
6) E. T. Mensah & Dr. Victor Olaiye "Highlife Souvenir Vol.1 : Highlife Giants of Africa" (PolyGram ROLP 102, 1984)

7) "All For You" (Retroafric RETRO 1, 1986)


 and more?


- CD -

1) "All For You : Classic Highlife Recordings From the 1950's" (Retroafric RETRO1CD, 1990)
2) "Day By Day : Classic Highlife Recordings From the 1950's and 1960's" (Retroafric RETRO3CD, 1991)
3) "All For You : Classic Highlife Recordings From the 1950's" (Retroafric RETRO1XCD, 1998)
4) "E. T. Mensah & The Tempos : King of Highlife Anthology" (Retroafrica RETRO24CD, 2005)

5) V.A. "Giants of Danceband Highlife" (Original Music OMCD001, 1990)
6) V.A. "Telephone Lobi/Telephone Lover" (Original Music OMCD033, 1995)
7) V.A. "Highlife - High Up's : La Musique du Gold Coast des Annees 60" (Original Music NDCD025, 1996)
8) V.A. "Highlife Time Vol.2" (Vampisoul, 2011)


 and more?






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by desertjazz | 2015-02-27 23:00 | 音 - Africa

M.anifest & Obrafour from Ghana

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 ガーナ出身のラッパー、マニフェストのアルバム2枚を繰り返し聴いている。

m.anifest
wiki | M.anifest
The sound of Africa in 2015


 第3作 "Immigrant Chronicles: Coming to America" (2011) の方は、特段耳に残るトラックは少ないかな。後半の何曲かは気に入ったけれど。

 やっぱり第4作 "Apae: The Price of Free EP" (2013) の方がいい(「アパイ」と発音するらしい)。"Someway Bi" や "Mind Games" などキャッチーでコンテンポラリーなグッド・トラックが揃っている。

 その中で突出した出来なのが "No Shortcut to Heaven (feat. Obrafour)"。正しくキラー・チューンで、もう涙が溢れそうになるくらいに美しい。「今年の1曲」はもうこれで決定かも?

 先日も取り上げたけれど、この曲のビデオ・クリップが実にいいんだよな。毎晩繰り返し観ているので、一体これまで何回観たことか。多分ダンスをリードしているのだと思う女性ダンサーの身のこなしがとても魅力的。ハイスピード・カメラを多用した撮影と編集も効果的で計算し尽している。

M.anifest - No Shortcut to Heaven ft. Obrafour (Official Video)

 このトラックはガーナのヒップ・ライフ・シンガー Obrafour との共演で、このコンビによる "Odasani" も気に入っている。ビデオもあって、クレーン・ショットなんかは贅沢な使い方。このコンビ、今後も要チェック!

Obrafour - Odasani ft. M.anifest (Official Video)

 調べてみると、マニフェストはガーナのアクラとミネアポリスを往復する生活をしており、南アのヒップホップとも関係を持っているらしい。ガーナ以外にアメリカなどにも拠点を置いてネットワークを構築し、資金面でも豊かな分、従来のアフリカものビデオより遥かにクオリティー高い作品を造れる環境にあるのだろう。

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 今夜?ガーナではマニフェスト主催の Madina Block Party なるイベントも行われるらしい。うーん、ガーナが俄然気になり出した。

Madina Block Party Hosted by M.anifest. 1st Edition


(マニフェストの代表曲はどれも YouTube で聴けるので、ほとんどの人はそれで十分だと思います。)




 ガーナと言えば、最近キング・アイソバ King Ayisoba が日本で評価され、人気もあるようだ。彼は3月にフランス公演が4カ所で予定されていて、うち 3/7 の Le Blanc-Mesnil は Sally Nyolo と共演。

 マニフェストが来日することなんて考えられないけれど、キング・アイソバならいつか日本でも観られるかも?(特段根拠なし。)






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by desertjazz | 2015-02-22 00:00 | 音 - Africa

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