カテゴリ:本 - Readings( 214 )

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 ジョージ・G・スピーロ『ケプラー予想: 四百年の難問が解けるまで』、マーカス・デュ・ソートイ『素数の音楽』、リサ・ランドール『宇宙の扉をノックする』『ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く』に続いて、5月はグレアム・ファーメロ『量子の海、ディラックの深淵 〜天才物理学者の華々しき業績と寡黙なる生涯〜』、吉田洋一 + 赤 攝也『数学序説』、シルヴィア・ナサー『ビューティフル・マインド 〜天才数学者の絶望と奇跡〜』、ロビン・ウィルソン『四色問題』の4冊に浸っていた(他には小説を少々)。

 学生時代に理論物理(光量子)を専攻しディラックの『量子力学』も原書で読んだこともあって、ディラックは自分にとってヒーローのような存在。そんな彼がこれほどの苦しみを抱えて生きていたなんて知らずにいた。そして、特殊な病を持って生まれてきたからこそ、極めて高度な能力を持ち得た可能性も指摘している。同様なことは統合失調症を克服してノーベル経済学賞を受賞したジョン・ナッシュ(『ビューティフル・マインド』)についてより顕著なのだが、オリヴァー サックス『妻を帽子とまちがえた男』などの登場人物たちと重ね合わせて読むと興味深いものがある。

 『量子の海、ディラックの深淵』の面白さは、ひとりの偉大な理論物理学者の詳細な伝記であるばかりではなく、20世紀の量子論/理論物理の展開を綴った歴史でもあり、またそれら理論に関する概説書としても機能している点にある。この本は、現時点で今年読んだ中のベストブック。

 これに比べると、ジョン・ナッシュの伝記の方はそこまでには達していない。ヒューマン・ストーリーに重きを置いており、ゲーム理論/ナッシュ均衡/リーマン多様体への埋め込み問題などについては深入りしていないのが個人的には物足りなく、全体的に筆も弱いと感じた。

 もちろん4冊とも面白く読めた(例えば『数学序説』は、ギリシャ発祥の幾何学〜ローマとインドの代数学〜アラビアでの両者の統合〜時代は飛んでデカルトやニュートンの偉業、と数学の歴史をたっぷりおさらい。そして数学とはこういうものだったのかと瞠目することに。さすがに公理主義、集合論、無矛盾性の証明あたりは、完全には理解できなかったが) 。なので、感想メモをじっくり書いておきたいところなのだが、そうした時間もないので、次の本に取りかかっている。読みたい本が溜まっているので、どんどん先に進もう。いや、そもそも今年は「書く時間」どころか「本を読む時間」すらますます取れなくなっている(それで先月はブログを1度もアップしなかった)。遅独なこともあって、読書がなかなか進まない。


 そうなってしまっている大きな要因のひとつは、日本がどんどんおかしな国になっていっているように感じられて、気持ちが落ち着かないこと。3年前、大震災に続いて原発事故が起こったとき、今度こそ日本全体が徹底的にロジカルかつ科学的に考える方向に転ずるよう期待して書いた記憶がある。しかしこれはナイーブな願いだったようだ。震災復興も原発論議も次第に非ロジカルへと進み、今度は安倍政権が恐ろしいまでの非ロジカルさを晒している。これは、彼らがロジカルに語ろうとすると即座に論理破綻するため、反対に非ロジカルに走って誤摩化すことでしか、自身の都合を押し切れなくなっている顕われなのではないだろうか?

 まあ、ここでこの類の話は止めておこう。自分の周囲を見渡すと、友人たちは全員が原発推進に反対だし、今安倍たちがやっていることがまともだと思っている人などひとりもいない(と思う)。恐らく、このブログの読み手も同様のはず。仲間たちとこうしたやり取りをしても「そうだよね」ということで話が終わってしまう。批判ばかり繰り返すことで留まっているのは時間の無駄。簡単には変えられない世の中なのだろうが、まずは自分のできることにコツコツ取り組むしかない。

 そのためには、まずあらゆる情報の中から有益なものをすくいとって、何が正しいのかの判断材料を集めることが必要で、その上で考え続けることが誰にとっても必須の時代になっている。こんなこと日々繰り返していると、瞬く間に時間が過ぎて行く(実際音楽を聴く時間も失われていくし、音楽を聴いている場合ではないといった気分にもなる)。原発問題や政治、国際情勢に関して読み考える時間があるならば、その分、小説や美術や音楽などをのんびり楽しんだ方が有意義だとも思うのだが。それにしても、政治家や御用学者や原発推進派の発言には、耳を疑うほどに非ロジカルなものがあまりに多くてウンザリしてしまう。

 そのような妄論とは反対に、数学や理論物理の世界はロジカルの極地。そうした本を読んでいると本当に気持ちがすっきりする。非ロジカルな世の中で生きて行かなくてはならないけれど、その分ロジカルな本を読むことで、バランスが取れているのかも知れない。


(まとまりなく長くなってきたので、一旦終了。)




 ところで、この問題の答えについてまだ書いていなかった。どなたからも問合せがなかったので、まあいいか。。。






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by desertjazz | 2014-06-10 00:00 | 本 - Readings

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 最近メインに読んでいるのは、グレアム・ファーメロ『量子の海、ディラックの深淵 〜天才物理学者の華々しき業績と寡黙なる生涯〜』とシルヴィア・ナサー『ビューティフル・マインド 〜天才数学者の絶望と奇跡〜』。前者は量子力学の理論を確立する上でその主役を担ったひとりディラックの、後者は長年の統合失調症との闘病の後にノーベル賞を受賞した数学者ジョン・ナッシュの伝記(ナッシュの伝記はオリヴァー・サックスの『妻を帽子とまちがえた男』などを面白く読んだ人にもお勧めかも)。ディラックは2段組み620ページ強、ナッシュは950ページ強ある大部なので、果たしていつ読み終えられるものかとも案じているのがだ、どちらもプロローグがムチャ面白くてツカミはOK! 案外一気に読めてしまうかも?



 さて、ここで突然問題。「2という数字をきっかり4回使い、さらに、一般的に知られている数学記号だけを使って、任意の整数を作る」ことはできるだろうか。(『量子の海、ディラックの深淵』P.221)

 P.222 に書かれている通り、1から4までは簡単。

  1=(2+2)/(2+2)
  2=(2/2)+(2/2)
  3=(2×2)ー(2/2)
  4=2+2+2−2

 この調子で考えれば、5と6も簡単ですね。それでは7以降は? 1929年からイギリスの誇る数学者たちがこんなゲームに夢中になったそう。

 でも、ディラックがこのゲームに終わりをもたらした。何とディラックは任意の整数を作るシンプルな方程式を発見したというのだ。まさかと思って巻末の原注(P.605:この本、原注も詳細で実に 1499項もある)を開くと、確かにこの式でどんな自然数でも作れてしまう(ゼロとマイナスの整数だとどうなるのかな? 後で計算し直してみよう)。つまり4つの2と簡単な数学記号だけで、7だって、100だって、1234だって、100000000 だって、どんな整数でも作れてしまうのだ! しかもその式はとてもシンプル(加減乗除の4つ以外の他の記号も使っている)。

 こんな答えは相当な数学の専門家でも導き出せないだろう。よっぽどの数学好きでも、一般人にはとても無理。こんなところにも、20世紀を代表する天才理論物理学者ディラックの凄さを感じる。




(追記)

 これを読んだ友人が「この数式が222ページにあるというのがオシャレ〜」と指摘。気がつかなかった!






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by desertjazz | 2014-04-25 00:00 | 本 - Readings

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 友人が Facebook にアップしたアマゾンの写真を眺めながら、「アマゾンにも行ってみたかったな」などと思いつつ、最近新潮文庫から出直した国分拓の『ヤノマミ』を読み終えた。

 これはブラジル北部、ベネズエラとの国境地帯に暮らす狩猟採集民「ヤノマミ」の村に150日間(2007〜08年)滞在した TVディレクターによる記録。

 この類の他の書物と同様、様々なことを考えさせられるが、なんと言っても、出産直後のシーンが白眉。森の中で産み落とされた赤児は、人間として受け入れられるか、あるいは精霊として天に還されるか、母親(それは時には10代前半の少女であったりする)のその瞬間下す判断に全て委ねられる。強烈であり、残酷でもあり、ドキュメタリー/ノンフィクション史上でも希有な衝撃的シーン。ほとんどそれを読むだけでも、価値ある一冊だと思う。






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by desertjazz | 2014-04-24 22:00 | 本 - Readings

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 昨日18日に発売になった村上春樹9年ぶりの短編小説集『女のいない男たち』を読了。

 これまでの村上新作のときと同様、直後の具体的感想はしばらく保留(これから読む人の迷惑とならないように…)。

 村上の小説を読むとき、主人公がまるで自分であるかのように感じられて重ね合わせてしまうことがある。それも村上小説の優れている点、そして自分が彼を愛読している理由のひとつでもあるのだと思う。そして今回のタイトルは「女のいない男たち」。予想に反して、意外と自身を同化して読むことにはならず。

 個人的には全く受け付けられなかった昨年の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』よりはずっと楽しめた。でも短編集としては『東京奇譚集』(と『神の子どもたちはみな踊る』)の方がいいかな。最後の表題作は埋め草と感じられたし。いかにも村上らしいパーツ(巧妙なたとえ、なじみある地名、命名センスなども含めて)が並ぶのだけれど、全体的にはいつもの村上らしさを我慢して抑えた印象もある。

 村上の小説は、性や女性の描写の仕方を理由に好まない女性も多くいると聞く。さて世の女性たち、今回はどのように読むのだろうか? そんなことも思いながらの一気読みだった。





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by desertjazz | 2014-04-19 11:00 | 本 - Readings

G. Garcia Marquez R.I.P.

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 ガブリエル・ガルシア=マルケスが亡くなったのか(昨夜は飲み会で南米話でも盛り上がったところだった)。

 ガルシア=マルケスは、30年くらい昔に映画『予告された殺人の記録』を観て興味を持ってその小説を、さらに『百年の孤独』を読んだ。いや逆で、『百年の孤独』の後に『予告された殺人の記録』を読んだんだったか? はっきり記憶がないが『百年の孤独』が奇想天外すぎて、ナイジェリアのエイモス・チュツオーラを連想したことは覚えている。

 『百年の孤独』は数年前に買い直して(持っていたけれど文字のポイントが小さいので)再読し圧倒された。『族長の秋』なども楽しめたな。

 実は今年はガルシア=マルケスの「全小説」を揃えて、読み直そうかと思い続けていたところだった。


R.I.P.





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by desertjazz | 2014-04-18 13:00 | 本 - Readings

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 ジョディー・フォスター似(と敢えて書く)の理論物理学者リサ・ランドール『ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く』を読了。延々 600ページ、相対性理論と量子力学と最先端の理論物理/宇宙論が続くので、この後に書かれた『宇宙の扉をノックする』よりもずっと難解だった。10次元宇宙と11次元宇宙とは一緒? 反ド・ジッター空間の双対性? カルツァ - クライン粒子が余剰次元を移動してエネルギー量が変化する? さすがにフラフラです。

 余剰次元理論が「極小」をその都度都合良く解釈した一種の思考ゲームにも思えるけれど、そのトップダウン手法とボトムアップ手法(LHCでの実験など)とが合い支える関係に興味を覚える。

 それにしても、『ワープする宇宙』から『宇宙の扉をノックする』までの数年間での理論物理の進化って早いなとも思う。




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 続いてマーカス・デュ・ソートイ『素数の音楽』を読了。ゼータ関数とそこから生まれたリーマン予想を巡る物語。これも面白かった!

 どちらも解答まで辿りついていない。もしかするとリーマン予想には実際答えがないのかも知れない(読んでそう思った)。リサ・ランドールたちの理論はあくまでも数多い仮説のひとつで、現実を映すものではないのかも知れない(読んでいて当っている可能性のあることも感じられた)。それでいて、これほどまでに読ませる。数学も物理も本当に面白い。

(その一方で、人類はどちらの答えも見つけられないで終わるだろうという思いも強い。そのことを再び考えている。)

 グリゴリー・ペレルマンが遂に解決したポアンカレ予想の場合にしてもそうだったのだが、数学の未解決問題を証明する道具として物理が必須となっている現状は驚くべきことだし、とてもエキサイティングなことでもある。数学と物理が表裏一体となっているのは、2000年以上昔に戻ったかのようでもあるが、それは本来あるべき姿なのかも知れない。『ワープする宇宙』と『素数の音楽』も、終盤に至ってまるで双子関係のようだった。





 これら2冊を読んで多々思ったが、印象に残ったひとつは「人間模様」。リーマン予想も余剰宇宙論も正しいか/証明されるか保障がないのに、それでもそこに挑む人間たちの力強さと不安、同じ研究者同志の協力関係が生々しかった。

 同時に現在の素粒子論/宇宙物理はどこかでボタンのかけかえが起きてはいなだろうか、といった素人考えも浮かんだ。どういった学会/研究分野でも、不可抗力的に、あるいは一部の人間の発言力が強すぎて、そうしたことが繰り返されてきたし、今後も起こりうる。

 それは現在の STAP 細胞騒動(日本にはそれ以上の大問題が多くて、個人的には興味が湧かず)にも通じる面があるように思う。

 リサ・ランドールは時々「女性研究者が…」といったように枕を置いて語るが、彼女自身、女性故に発言を抑えられたり、反対に余りに美人すぎるのでもてはやされた体験を重ねてきたのだろう。

 音楽研究や美術評論などに関しても誰か有力者の発言が定説になる危険性が常にあると思う。なので「自分が好き/最高」と「普遍的/歴史的に良い・重要」との見極めが書き手にも読み手にも求められる。(書き手がそれを意図的にやっていると感じることもある。)

 でもそれを完璧にできる人などいない。時にはその混同具合が面白かったりもする。芸にまで高めている凄い書き手だっている。ただ、自分はそうした文章を読みたいと思わない。それで、雑誌もライナーもブログもほとんど読まなくなってしまったのかも知れない。





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 数論や理論物理を読みふけっている間に、ポーランドの小説家オルガ・トカルチュクの邦訳2冊目『逃亡派』と、チリのロベルト・ボラーニョ集2冊目『鼻持ちならないガウチョ』が出た。読みたい本がたまるばかり…。






 以上、取り急ぎ Twitter / Facebook からほぼ引用。

(少し追記しました。・・・いくつものテーマが折り重なっていて、考え出すと止まらない。4/11)






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by desertjazz | 2014-04-11 00:00 | 本 - Readings

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 リサ・ランドール『宇宙の扉をノックする』を読了。面白かったー! ここで軽く紹介してからも、また小説ばかりにどっぷり浸かってしまって、最初の方だけ読んでツンドク状態(以前に書いたことのいくつかは当っていないな)。それが読書再開後は一気にゴール。

 前著『ワープする宇宙』が余剰次元宇宙(3次元を超える多次元宇宙)の可能性に焦点を当てていたのに対して、今回の舞台は CERN / LHC、大型ハドロン衝突型加速器が解き明かそうとする素粒子と宇宙のありようについて紹介している。

 LHC と密接な関係にある最先端の物理学/宇宙論と、科学的思考法にまつわる興味深い話とが半々。数学/物理にとって極めて重要なスケールの概念、科学と宗教とが共存しうる関係性、などなどの論旨展開はさすが。フランスとスイスの国境域に建設された CERN の施設が運転を始める時、小さなブラックホールが生まれて地球(と宇宙)が呑み込まれると騒ぎになり訴訟まで起こされたことはまだ記憶に新しいが、そのようなブラックホールが生まれる可能性のないことの説明もとても分かりやすい。

 著者は、難解な最先端の理論の説明などは高速で駆け抜け(初出のキーワードを説明抜きで使うことも度々)、難しい内容ほど詳細な説明は省いているが、それが成功している。半端に語っても専門家以外にはどうせ分からないだろうし、それなら分かった気にさせた方がいい、と考えたのだろうか。でも、さすがにプランク長やブレーンという言葉に馴染みがない人にはチンプンカンプンな箇所もあるかな?

 繰り返し力説される「科学的思考」の効力、「スケールを意識すること」、そしてそれらを「政治、経済、政策などの各方面の指導者」たちにも求めるリサ・ランドールの言葉がとても響いた。(P.570 など)




 感想をもっと綴っておきたいところだけれど、遡って『ワープする宇宙』を再読し始めたり、『素数の音楽』などの数学に関する本をいろいろ読み始めているので、それは後回し。純粋な論理概念である数学と、極小を扱う素粒子論と、極大を扱う宇宙論とが、閾なく一体化していることを思い出してワクワクしている。

 それにしても、物理や数学という超リアル(現実)を読んでいる時に最も現実逃避できるというのは、何と言う皮肉なのだろう。





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by desertjazz | 2014-03-30 23:00 | 本 - Readings

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 消費増税直前、今買っておく本があるかなどと思いながら書店へ。塚田健一『アフリカ音楽学の挑戦 〜伝統と変容の音楽民族誌〜』、グレアム・ファーメロ『量子の海、ディラックの深淵 〜天才物理学者の華々しき業績と寡黙なる生涯〜』、ピーター・エイムズ・カーリン『ブルース・スプリングスティーン 〜アメリカの夢と失望を照らし続けた男〜』などを購入。

 まず『アフリカ音楽学の挑戦』 にざっと目を通してみた。ガーナとザンビアのフィールドワークに基づいた研究書のようで、ハイライフはダンスバンド・ハイライフでもギターバンド・ハイライフでもなく、宮廷音楽としてのハイライフが取り上げられている。ザンビアは大型ベースのカリンドゥラが紹介されていて(P.311)マイケル・ベアードによるフィールド・レコーディングとの関連も見られそうだ。じっくり読んでみることにしよう。


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 最近読み終えたのは、イギリス人トム・マッカーシーの『もう一度』とジョージ・G・スピーロの『ケプラー予想: 四百年の難問が解けるまで』。

 『もう一度』はとてもヘンテコな小説。主人公は謎の記憶喪失者で、昨年読んだヴォルフガング・ヘルンドルフ『砂』と同様なものを期待した。ゼイディー・スミスが絶賛していたこともあって読んでみたのだったが、その主人公の感覚を全く共有できず、気持ちいい部分がどこにもなくて、期待外れ。

 最近文庫化された『ケプラー予想』は数学をさほど理解できていなくても楽しめるつくり(難解な証明は全て巻末の付録にまわしている)。ケプラー予想に付随する数学史の大きな流れも、それに関わる数学者たち(登場するのは約150人!)の人間臭さも楽しめる。終盤に近づくにつれ「終わらないで欲しい」と思いながら読んだ本は久し振り。やっぱり理数系ノンフィクションは面白い!

 新潮文庫の理数系フィクションは、サイモン・シンの『フェルマーの最終定理』を筆頭に、同著者の『暗号解読』『宇宙創成』なども夢中にさせる面白さだった。そのことを思い出して、未読だったM・デュ・ソートイ『素数の音楽』、S・ナサー『ビューティフル・マインド』、R・ウィルソン『四色問題』なども購入。大変な大部なので見送っていたディラックの伝記もその勢いで買ってしまったのだった。

 (その他にも洋書含めて何冊か購入。いつ読むんだ?)






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by desertjazz | 2014-03-25 23:00 | 本 - Readings

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 フランスの小説家ミシェル・ウエルベック、『地図と領土』に続いて『素粒子』を読了。

 『地図と領土』を読んでも感じたが、相当な博学ぶりと頭の明晰さが伝わってくる。それと同時に、巷の評判通りにとことん嫌な奴って感じも漂ってくる(顔写真からはそんな印象を受けないのだが)。

 主人公(のひとり)が専門域を代表する天才、彼に寄り添う絶世の美女、近未来にまで及ぶSF的な一代記なども『地図と領土』と共通する。これがウエルベックの作品のテンプレートなのだろうか。

 余りに過剰な性描写の連続に辟易しながらも、中盤からグイグイを引き込まれて行った。人間として生まれてきたこと、人間として生きて行くことの悲しみを、ギュッと凝縮していく。考えつく限りの悲哀のパターンを寄せ集めただけなのか、それとも現代の傑作なのか。とにかく切ない。

 時おりハッとする明晰な表現が頻出して、ウエルベックは深い次元で物事を捉えていることが分かる。ただ、生きる哀しみと、最先端の科学技術と、セクシャリズムとがどう結びつくのか、(文学音痴の自分には)理解しきれなかった。そうした意味でも、これも再読必至の一冊(レユニオンで生まれて以降の自身の人生体験を色濃く反照していることは間違いない)。

 現在いずれも絶版だが、『プラットフォーム』、『闘争領域の拡大』 、『ある島の可能性』も読んでみようと思う。


(続いて読んでいるのは、トム・マッカーシーの『もう一度』で終盤に至っているところ。なので『素粒子』をまだ冷静に反芻できていない。)






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by desertjazz | 2014-03-20 00:00 | 本 - Readings

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 今回の旅行中に読んだ中の1冊(以下、FB から転載)。

 北極圏からコペンハーゲンに戻る機内で、高野秀行『西南シルクロードは密林に消える』の残りを一気に読了。傑作!

 高野の最新作『謎の独立国家ソマリランド』がとてつもない本だったのと、『《空白の五マイル》~チベット世界最大のツアンボー峡谷に挑む~』の著者である角幡唯介が「私の人生を決めた一冊」と絶賛していたことから、11年前のこの本も読んでみようと思った。

 旅の途中で旅行記の類いを読むのはある種タブーとされ、実際自分もそうしてきているが、今回は全く問題なし。互いに旅の質が違いすぎるので。

 それにしても、中国四川省からビルマを経由してインドのコルカタへと「西南シルクロード」を辿る旅のスケールが圧倒的。そもそも全ての国境越えが不法入国なのだから。

 話は終盤どんどんドラマチックになっていき、後日談に至って爆発する。映画的というか、長編小説1冊くらい簡単に書けてしまいそうなほどのストーリー。いや、その辺のサスペンス/ハードボイルド小説を凌駕している。

 ルポルタージュとしては『謎の独立国家ソマリランド』の方が上だが、紀行もの的な読み物としては『西南シルクロードは密林に消える』が勝っているかも知れない。

 これまでたくさん読んだ旅行記の中で特に好きなのは、ウォーレス『マレー諸島』、ポール・セロー『ダーク・スター・サファリ』などあるが、10冊選ぶとすれば高野の2冊も入るかも(書中で度々言及されている吉田敏浩『森の回廊』も名著だと思う)。

 実際に旅行することは楽しいが、旅行記を読んで得られる楽しみも大きい。





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by desertjazz | 2014-03-19 06:20 | 本 - Readings

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