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Klo Pelgag "L'Étoile Thoracique" (Release Date : 2016.11.04)


 クロ・ペルガグのセカンド・アルバム。邦題『あばら骨の星』

 ジャケット画は前作 "L'archimie des Monstres" のデラックス・エディションにも作品を提供していた(2曲目 La Fièvre Des Fleurs のイメージ画を担当)、バンド・デシネ B.D. (bande dessinée) 作家リュドヴィック・ドブールム Ludovic Debeurme による。『怪物たちの錬金術』が「ナマハゲ」盤ならば、こちらは「二重人格」盤とでも形容できようか。人獣二重性を表現しているものとすれば、人間の多面性/複雑さを歌ってきたこれまでのクロに相応しいジャケットだと言えよう。

 本作の大きな特徴は総勢30名を超えるオーケストラを導入していること。ファースト・アルバムの大ヒットにより潤沢な予算を投じることが可能になったからなのだろう。その成果は1曲目や3曲目に顕著だ。(新作ツアー中も同規模のオーケストラとの共演がケベックで数回?実現したらしい。)

 特別キャッチーなメロディーに満ちているわけではなく、中盤には穏やかな楽曲が続くため、聴き始めた頃にはファースト・アルバムの出来に届かなかったという印象が強かった。しかし、クロの3年間での成長が確実に感じられ、少し大人になったところを感じさせる歌とサウンドはとても好きになった。最近に至っては、完成度では前作以上と評価したくなっているほどだ。



 CDリリース後にLP2枚組も出たが、収録トラックの内容は一緒。ファースト "L'archimie des Monstres" のアナログ盤に関しては不満が大きかったのに対して、今回は CD よりも音が良いと感じる、特に中低音にアナログらしい良さがある。どうせ2枚組にするなら、45回転盤にできなかったのだろうかという贅沢な感想も浮かぶ。

 新作ツアーを観るべく 2016年11月にフランスまで駆けつけたが、カナダ以外ではまだ CD が発売になっておらず、Spotify で予習し、会場でそのカナダ盤をいち早く入手したことも懐かしい。



 以下、収録トラックに関する雑感(後日随時追記するつもり)。


(1) Samedi Soir À La Violence 凶暴サタデーナイト

 最初の曲からクロペル・ワールドが全開! 穏やかな歌とコーラスから始まって、次第に盛り上がる。終盤の壮大なオーケストレーションが圧巻だ。「私を忘れないで」「私を助けて」というリフレインが痛い。(この曲に限らずヴォーカル・トラックをダブルで使っているものが多い。本作はそういったヴォーカル処理も効果的だと思う。)

(2) Les Ferrofluides-Fleurs 磁性流体の花

 ファースト・アルバムと同様、2トラック目は花をテーマにした美しく軽やかな曲。VioleTT Pi こと Karl Gagnon との共作ナンバーだ。チャランゴ(前作でも演奏されていた)によるイントロが印象的。親しみやすいが、ややあっさりしすぎている、というのは贅沢すぎる感想か?

 → この曲はカナダの音楽賞 SOCAN 2017 に選ばれ(賞金 10000ドルを獲得)、クロはその授賞式を終えた後に日本に向かう予定。

(3) Le Sexe Des Étoiles 星々のセックス

 「首にくくりつけたロープ」「アマゾンで酒を求める」「星々のセックスを思う」、、、言葉の断片をそのまま拾っていくと何とも危ない印象だが、歌の意味はまだ理解できていない。後半の長大でダイナミックなオーケストレーションが素晴らしく、本アルバム中最高の聴きどころのひとつ。爆音快楽也! 前回も書いたことだが、「Je... avec toi(私はあなたと共に失いたい)」と行ったフレーズが自然と耳に残る。ここまでの3曲が断然、2作目の白眉。

(4) Les Instants D'équilibre 平衡の瞬間

 バスドラムのシンプルなリズムに乗って進む小品。1曲目の「ノルウェーのフィヨルド」に続いて、「スカンジナビア人の幸福」が歌われる。本作の舞台は北欧か?(そんなワケはない。)

(5) Au Bonheur d'Édelweiss エーデルワイスの幸福

 いかにもクロらしい、もの悲しげなバラッド。感傷的なストリングスも実にいい。本作中、最も美しいナンバーだ。

(6) Incendie 火事

 陶酔を誘うような優しいメロディーの曲が続く。夜のイメージが深い曲。この曲もコーラスと弦の響きがとてもいい。

(7) Les Mains d'Édelweiss エーデルワイスの手

 繊細な歌声(これもダブル、いやトリプル以上のトラックにも聴こえる)とリリカルなピアノを中心とした曲。5曲目と対照関係にあるような曲名なので、ここまでの3曲をセットで捉えられそう。エーデルワイスは一体何を恐れているのだろう?

(8) Les Animaux 動物

 暖かい日差しを受けるようなサウンド・アレンジと、シルキーさと棘が混じり合ったようなクロの声が彼女らしい。ここまでの中盤はスローで柔らかな曲が続き、ファースト・アルバムの頃に比べてグッと大人びた印象をもたらしている。

(9) Chorégraphie Des Âmes 魂のコレオグラフィー

 キャッチーで軽やかなフレーズが繰り返されるナンバー。「私の墓の上で踊りたいかい?」 コレオグラフィーは一体どんな振り付けを施したのだろう? オーケストレーションに贅沢感はあるが、コーラスワークがやや単調で(アルバム全般について言える)、そこが今後の課題になって来るかもしれない。

(10) Au Musée Grévin 蝋人形館で

 「蝋人形館は死ぬにはとても美しい場所だ」 そういえばクロは最近ポートレイトに蝋製の物体を使っていたな。情感深いピアノの弾き語り。

(11) Insomnie 不眠症

 エフェクトのかかったヴォイス、ダンスステップのようなリズム、シンセサイザーとオルガンとエレキベース、等々、アコースティック中心のサウンドが多いクロにしては、毛並みがちょっと異なった曲。プログレからの影響も感じられるトラックだ。短い曲中、早い展開で変化していく様も面白い。

(12) J'arrive En Retard 私は遅れて来る

 アルバム作品としては前曲ラストのブレイクで一旦終わっているのだろう。若干長めのインターバルの後に立ち上がるシンセのサウンドもストリングスも、リヴァーブ深めなクロの歌声もたまらなく美しい。まるで夢で浮遊するような心地に誘われる。

(13) Apparition De La Sainte-Étoile Thoracique あばら星聖女の顕現

 最後は10分を超える謎の長尺インスト(少しだけ語りが入るが)。連想するのはフランク・ザッパが晩年熱心に取り組んだシンクラビアの作品だ。こんなところにもザッパからの影響が現れていると言っても良さそうだ。



 ファースト・アルバムでは、楽曲ごとに様々な楽器を組み合わせることによって、カラフルなサウンドを生み出していたのに対して、このセカンドの大きな魅力はやはりオーケストラの導入だ。だとすると、そうした曲を小編成(6〜7人)のバンドのライブでどう聴かせるかが課題となる。

 昨年11月に観たライブは、弦3人とピアノ/キーボードを中心に艶やかで変化に富んだサウンドを聴かせていた。静寂から一気に上昇し炸裂するダイナミックな展開も見事。しかし、幾分単調に過ぎる時間もあって(ツアーのほとんど最初期だったのだから、それは当然だろう)新しいアイディアを盛り込む余地はまだまだあると感じた。数多くのライブを重ねてきた後の今度の来日公演で、クロがどこまで進化/深化させたサウンドと練りこまれたステージを披露してくれることだろう。



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(セカンドの Songbook/楽譜集も最近発売になった。35カナダドルで容易に買える。)


 5曲目 Au Bonheur d'Édelweiss はよっぽどクロのお気に入りなのだろう。これのオルゴールまで作ったほどなのだから。限定50個だったので販売開始直後に買ったが、その後、限定250に変更された。好評で売れ行き良く増産したに違いない。(日本の公演会場でも販売予定とのこと。)

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(続く)





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by desertjazz | 2017-07-17 00:00 | 音 - Music

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Klo Pelgag "L'archimie des Monstres" (Release Date : 2013.09.24)


 この作品と出会って、私はクロ・ペルガグにすっかりハマってしまった。独特な美しさを持ったメロディー、聴く人の心を癒すような優しい歌声/エキセントリックに感情を発露するような叫び、多彩なサウンドを混ぜ合わせた絶妙なアレンジと起伏豊かなオーケストレーション、それら全てが好きだ。アルバムの発表からそろそろ4年になろうとしているのに、今でも愛聴し続けている。

 アルバムを手にした誰もの目をまず捉えるのは、赤い岩に腰掛ける怪物の姿だろう。なんだか秋田のナマハゲのような見た目ではないか。だから私はこのアルバムを『ナマハゲ』盤と勝手に呼んでいる。でも怪物と言っても、なんとも可愛らしい顔だ。

 このジャケットをデザインしたのはステイシー・ロジッチ Stacy Rozich。フリート・フォクシーズ Fleet Foxes の PV "The Shrine / An Argument" のキャラクター・デザインなどで知られる画家である。クロ・ペルガグがステイシーの絵を気に入って採用に至ったらしい。

 怪物と向かい合う一人の女性(少女か?)。彼女もお面を支え持っている。ちょうどお面を外したバリのような様子だ。彼女はクロを描いたものなのだろうか。そして『怪物たちの錬金術』とは何を意味するのだろう?

 今回、クロ・ペルガグの作品(ゲスト参加曲も含めて)の全てを繰り返し聴き直している。その間、それぞれの歌詞を日本語に訳しつつ読んでみた。まず気がつくのは、体に障害を抱えた人や心に病を持った人物ばかりが登場すること。身体の一部が失われていたり(そう妄想しているだけの人も)、白血病だったり、不眠症だったり。病名を特定できないケースでも精神の病み方は相当に重症だ。こうした歌詞についての傾向は再三指摘されている通り。

 そのことと表裏をなしているのだろう、彼女の詩には「死」のイメージが絶えずつきまとう。また、夜や星(さらには冬)を歌ったり、想起させたりするフレーズが多い。

 そして実際歌詞を読み込むことで、もうひとつ気がついたことがある。それは、「私 Je... , あなた(の)vous... 」といった関係性で歌われるパターンがとても多いことだ。「私は xxx した。あなたは xxx した。(あなたに/を xxx した。)」というフレーズ展開がかなり定式化しているように思われる。

 恐らくクロ・ペルガグは、自分以外の人間に対して強い関心を持っているのではないだろうか。不十分ながらも歌詞の意味を頭に置きながら聴き始めると、彼女が他者との深い結びつきを求める声、他者との魂の交感を切望している叫びが聞こえてくるかのようになった。

 つまりは、こういうことだ。クロ自身も含めて人間誰しもが不完全な存在である。身体に耐え難い障害を負っていたり、心のバランスを失っていたりする。だから、例えば皮を纏って他の存在に変身したくなったりもする。クロはそうした人の弱さに正面から向き合い、いたわりの心を持っている、そして魂を共振させることで支え合いたいと思っている(と書くと陳腐な助け合い精神に聞こえそうで嫌なのだが)。だからあのような歌詞が書け、それを歌うステージ上でも充実感のある笑顔を見せるのだろう。アルバム・タイトルの謎を解く鍵もそのあたりにありそうだ。

 などなどと考えている最中に、アオラ・コーポレーションから『怪物たちの錬金術』国内盤の歌詞対訳が転送されてきた(翻訳担当は粕谷雄一氏)。「なんだ、これなら無理して自分で訳さなくてもよかったじゃないか」などと独り言ちつつ、拝読してみると、、、クロの歌の意味する世界がますます分からなくなってしまった。

 けれど、意味が理解できなくてもクロ・ペルガグの音楽は最高だ。レコードで聴いてもライブで接しても、自分の心は心底満たされる。もうそれだけで十分。彼女の歌をどう解釈しどう理解するかは、聴き手それぞれの自由だろう。ここまで書いてきたことは当たっていないかもしれないが(全くの的外れとは思いたくないけれど)、それならそれでも構わない。

 フランス語に堪能な方々によると「フランス語としては分かるが、その意味の深いところまでは捉えがたい」とのこと。「歌詞内容にまでは深入りしない方がいい」といった忠告も数人から受けた。

 何れにしても、彼女の歌は、単にシュールだとか不条理だとかナンセンスだとかいった形容だけでは適当ではない。かつて自分も、歌詞とサウンドの関係がアンバランス/不整合だとか、優しく扱わないと壊れてしまいそうな繊細な音楽を自己破壊しているとかいった感想を持った。

 しかしその解釈は全く正反対だったと考えを改めつつある。重い傷を負った/治癒し難い病気に苦しむ/心に深い病を持った、そんな弱者たちとの一体化を、クロは求めている。だからこそそこから生まれる、一見不条理で不思議なクロの歌世界。それは慈愛があってのシュールさなのではないだろうか? 無慈悲と捉えられることさえあるが、あるインタビューで本人が語ったように、彼女の歌は誰かに向けたラブソングのようにも聴こえ始めている。

 ただ、本当の意味をクロ本人に問うても決して答えてくれないだろう。クロ・ペルガグの音楽には解釈の自由さが残っていた方がいいのかも知れない。



 通常盤/初期盤CD(11トラック)、曲追加盤/後発盤CD(13トラック)、LP盤(13トラック)、デラックス盤CD "Edition de luxe"(16トラック)の4種/3ヴァージョンがある。本日7月16日に発売される国内盤、邦題『怪物たちの錬金術』で、通常盤に準じた仕様のようだ。

 (一時は不可能と諦めかけられた)歌詞全訳がついているので、これから購入する方には国内盤がオススメ。それが気に入ったら、デラックス・エディションも手に入れて欲しい。追加曲はどれもが捨てがたいし、クロ本人が気に入ったアーティスト16名に依頼して、それぞれの歌をイメージして描いてもらった作品がブックレットに収まっていて、これがまたいい。アート全般に造詣の深いクロらしいアイテムになっている。なので、熱心なクロのファンなら皆さん、とうに入手済みかな?


 以下、収録トラックの簡単な紹介。

(★ : 13トラック盤とデラックス盤に収録、☆ : デラックス盤のみに収録)


(1) Le dermatologue 皮膚科のお医者さん

 幾分重苦しいムードの曲でアルバムは始まる。こんな不協和音を頭に持ってくるのは、挑戦なのか自信なのか、それとも主題のプレゼンなのか? 歌詞も「あなたの皮膚で私を覆わせて」「私をあなたで変装させて」と自己否定/自己からの逃避を求めるかのような内容。トロンボーンやクラリネット?、オーボエ?、ストリングスの細やかなアレンジが施されている。

(2) La Fièvre Des Fleurs 花々の熱

 この曲を聴いた瞬間、一発でクロ・ペルガグが気に入ってしまった。これをライブで聴きたくてパリまで飛んでいったほど。前曲から一転、楽しく弾けるような曲調がいい。しかし、こんな歌詞だったとは! 白血病の彼女(友人だろうか?)が、化学療法を受けるためにそれまでの病院を去る話(か?) 死の気配さえも漂っている。ほぼクロのエレピ弾き語りの曲。コーラスもクロひとりで重ねているようだ。PV(広島カープ・ヴァージョン)のコルセット姿も印象的。

(3) Les Corbeaux カラスたち

 とにかくメロディーもアレンジも素晴らしい。わずか3分半弱の間にメロディーもムードも演奏もどんどん激しく変化していく様が見事。最初は暗く、時に軽やかに、時にダイナミックに高みへと上り詰め、クロも力強く叫ぶ。月、睡眠薬、怪物たちが歌われる、夜のイメージの強い曲。

(4) Comme Des Rames 櫂のように

 "EP" 収録曲の再演。若干テンポを早め、ストリングの音に繊細さが増した印象。でも、最初のヴァージョンもいいな。

(5) Tunnel トンネル

 トンネルからの出口を見出せないまま、血の苦しみ、死の苦しみをストレートに絶叫し続けるような歌。声の力強さが一番の魅力。しかし、楽しさや喜びが微かながら次第に漂い浮かんでくるような不気味な不思議さもある。

(6) Le Silence Épouvantail 脅しの沈黙

 これもクロのピアノ弾き語りに近い曲。「棺にするには小さすぎる脅しの木」とは? 静かな悲しみに満ちたピアノの調べと可憐な歌にただただ聴き入るのみ。

(7) Le soleil incontinent ★

 (抑えの効かない?)太陽のことを歌いながら、悲しみが深まっていくような雰囲気に包まれる。ギター/アレンジ担当の Sylvain Deschamps と二人で作りあけげた曲。ヴォーカルはクロのダブル・トラック。古典的手法だが、効果的だ。

(8) Rayon X エックス線

 暗いムードを断ち切るかのように、早口言葉っぽい歌い回しで始まる。スピード感溢れる爽快なメロディーが最高で、これはクロの代表曲と言っていいだろう。後半テンポが落ちて、10名ほどによる怪しげなコーラス(+インタールード)が重なり、まるで別の曲を繋いだかのようだ。

(9) Nicaragua ニカラグア

 これもメロディーがとても美しく、歌い口は切ない。途中から加わるリコーダー3本の音も心地良さも大きな魅力だ。しかしなぜにニカラグア?

(10) Taxidermie 剥製術

 ハルモニウム、ピアノ、鉄琴(かな?)などの折り重なり合いが美しい。獣の皮を剥ぐと「あなた」だったり、「私を剥製にして」だとかして、皮膚をテーマにしているのは冒頭曲のリフレインかのようだ。このヴォーカルもダブル・トラック。

(11) Les mariages d'oiseaux 鳥たちの結婚

 憂と悲しみに満ちたような歌声と、楽器群のアンサンブルが絶品。ピアノはなぜか兄のマチューが弾いている。

(12) Le tronc トランク ★

 「足を折ったので足はありません。家に火を放ったので家はありません。髪はありません。目は見えません。、、、」この喪失感はなんなのだろう。そして終盤に向かって明るくなっていく、ほのかな怪しさ。この曲でもクロは歌だけに集中している。

(13) Pégase 天馬 ☆

 パリのシンガー、トマ・フェルセン Thomas Fersen の曲のカバー。クロのヴァージョンも楽しげで大好き!

(14) Maladies de cœur ☆

 "EP" 収録曲の再演。La Fièvre Des Fleurs などと並ぶクロの書いた名曲のひとつだと思う。

(15) Tremblements ☆

 "EP" 収録曲の再演。先のヴァージョンはアコースティック・ギターのバッキングだったが、今回はクロのエレキギターを楽しめる。

(16) La neige tombe sans se faire mal 痛みをおぼえず雪は降る

 クロによる全くのピアノ弾き語り。アルバムの幕を閉じるのに相応しい、美しく優しい調べのナンバーだ。



 兄マチューら仲間たちの力添えもあったにせよ、こんな作品を23歳にして完成させるとは。クロ自身が今後これを超えられるのかと思わせるほどの快作(傑作という褒め言葉は、これからの成長に期待して残しておこう)。

 このデビュー・アルバムは、カナダ、フランスなど各国で大絶賛された。そしてその後のツアーも公演を重ねるごとに内容を深めて行ったと伝え聞く。自分も一度だけだがパリで観ることができ、アフターパーティーにも招かれてクロとたっぷり話しをできたことはとても幸せだった。(コンサート・リポート → パリ滞在記2015 (14) )

 驚きの連続だった『怪物たちの錬金術』ツアー、その最大のサプライズは最終公演で行った断髪式だろう。なんとクロはステージ上で長い髪をバッサリ切り落とし、スキンヘッドにしてしまった。そこには病に苦しむ弱者への暖かい気持ちが込められていたのだと、後日で知ることに。やはり他者を思いやる視線と共感こそが、クロ・ペルガグのアーティスト活動の基盤にあるのだと確信したのだった。(この話、続く。)




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(クロちゃんに会った時、発売になったばかりのデラックス盤にサインをいただいた。読むと「日本に行って刺身を食べたい」と書いているような気がするなぁ?)







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by desertjazz | 2017-07-16 00:00 | 音 - Music

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Klo Pelgag "EP" (Release Date : 2012.04.17)

 クロ・ペルガグのデビュー作(4曲収録の EP で、ダウンロード販売のみ)。

 クロはヴォーカル、ピアノ、ギター、ハルモニウムを担当。他に、ドラム、バイオリン、チェロ、コントラバス、バスーン、クラリネットという7人編成。今後も続く室内楽的な基本編成がこの時点で固まっている。


(1) Ariane(アリアン)

 アリアンとは誰なのだろうか? バイオリン、バスーン、クラリネットなどによるイントロが印象的。歌詞は正直理解が難しい。星や死といったその後も繰り返されるモチーフがすでに登場している。この曲だけからも、クロが文学作品にも興味を持っていて、相当読み込んでいることが推測される。

(2) Comme des rames(櫂のように)

 曲調と歌い方とが次々と変化していく複雑さは、正にクロの真骨頂。途中明るいテンポにも転じるが、「櫂をあなたの頭に打ち下ろしたい」などなど、歌詞には少々怖いものがある。ファースト・アルバムにも再収録された、クロ最初期の代表曲。

(3) Les Maladies de Coeur(心疾患)

 リリカルで軽やかなピアノも力強い歌い口も印象的なダイナミックな曲。「自ら足を折りました」「キャベツは見つけられませんでしたが、キュウリはありました」「医者は好きじゃない」「私はあなたと成長し続けている」等々、やっぱり歌詞は意味不明? 確かにシュールなのだが、'avec toi'(あなたと共に)というリフレインが切々と心に響いてくる。他者を理解したい、一緒に生きていきたいという気持ちが痛切に伝わってくる1曲。

(4) Tremblements(皮膚の震え)

 とても穏やかで優しい曲。アコギ中心の静かなサウンドがとてもいい。「統合失調症の夢」「私は頭をオーブンに置く」「星々は私の太陽」、、、歌詞内容はなかなか難解。


 "Ariane" を除く3曲はファースト・アルバム "L'archimie des Monstres" (のデラックス・エディション)に再収録されたが、いずれも別ヴァージョン。個人的にはこちらの初期ヴァージョンの方が好きなトラックもある。キーもアレンジも異なっており、(2)と(3)はライブでの重要レパートリーになってもいるので、クロ・ペルガグを知るには必聴。

ここから 500円弱で買えます。)







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by desertjazz | 2017-07-15 00:00 | 音 - Music

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(画像はオフィシャル・サイト http://klopelgag.com/ より引用)


 今私が世界で一番気になるアーティスト、クロ・ペルガグの待望の初来日公演がいよいよ来月に迫ってきた。そこで、今年8月の Sukiyaki Meets The World 2017 と Sukiyaki Tokyo に出演するクロ・ペルガグについて、改めて整理してみよう。

(フランス語を解さず、カナダに行ったこともない私が、彼女を紹介するには限界もあるのですが、、、。)


 クロ・ペルガグはカナダ出身の女性ミュージシャン/シンガーソングライター。ただし「クロ・ペルガグ Klô Pelgag 」というのはアーティスト名で、本名は「クロエ・ペルティエ=ガニョン Chloé Pelletier-Gagnon 」である。

 1990年3月13日の生まれなので現在27歳。生誕地はカナダ、ケベック州サンタンヌデモン Sainte-Anne-des-Monts。サンタンヌデモンはケベックの州都モントリオールから北東に700kmほど行った先にある、セントローレンス湾に面した街で、人口は約7000。

 ケベック出身の Gagnon姓の有名人には、ヒーリング・ミュージックの作曲家/ピアニストのアンドレ・ギャニオン André Gagnon(日本でも人気があり「めぐり逢い」などはお葬式の定番曲として有名)や、クロ・ペルガグとも度々共作/共演している VioleTT PI こと Karl Gagnon などがいる。クロの兄のマチュー Mathieu Pelgag も彼女の曲のアレンジとオーケストレーションを担当し、ライブではクロのバンドメンバーとして登場することも多い。マチュー以外の面々もクロと血縁関係にあるかどうかまでは未確認だが、ケベックのガニョンは秀でた音楽家を輩出する一族なのかもしれない。

 ご存知の通り、カナダのケベックはフランス系住民が多く、他のエリアでは英語が話されるのに対して、ケベックではフランス語の方が主要言語となっている(カナダの公用語は英語とフランス語)。なので、クロ・ペルガグの歌は全てフランス語で、彼女の音楽活動もケベックとフランスが中心となっている。


 クロ・ペルガグは19歳の頃から繰り返しステージに立つようになったそう。この頃から実質的なプロ活動を始めたと言えるのかもしれない。

 そして、2012年4月17日に "EP" をリリースし、レコード・デビュー。これはタイトル通り4曲入りの作品で、ダウンロードのみでの発売(現在でもフィジカル盤の発売はない)。

 2013年9月24日にファースト・アルバム "L'alchimie des Monstres" をリリース(全11トラック)。日本で国内盤は制作されなかったが、パリ在住の音楽ライター/熱心なクロの紹介者である對馬敏彦氏(向風三郎氏)によって『怪物たちの錬金術』という素敵な邦題が与えられた。(この傑作ファースト、遂に明後日7月16日に国内盤発売が決定!)

 この "L'alchimie des Monstres" はカナダ、フランスの両国で高く評価され、大きな賞を相次いで獲得。地元カナダに限らずフランス各地でもコンサートを繰り返す。その間、2015年4月13日には曲を追加し(全16トラック)豪華なブックレットも付けたデラックス・エディション "L'alchimie des Monstres - Edition de luxe" も発表。

 次いで 2016年11月4日にセカンド・アルバム "L'etoile Thoracique" をリリース(邦題は『あばら骨の星』で、今回も對馬氏が命名)。翌17年にはフランスと日本でも発売になり、再び大きな反響を呼んだ。

 セカンド "L'etoile Thoracique" も絶大な評価を受ける中、クロ・ペルガグの初来日が決定。8月25、27日には Sukiyaki Meets The World(富山県南砺市)で、30日には東京渋谷での公演が予定されている。


 ダリ、マグリット、ドビュッシー、ジャック・ブレル、キング・クリムゾン、フランク・ザッパなどから影響を受けたと、彼女自身が明かしているらしい。時に優しく囁き、時に叫ぶ歌唱スタイルから、ケイト・ブッシュ、ビョーク、さらには同じカナダ(ノバスコシア州生まれ/アルバータ州カルガリー出身)のファイスト Fiest を連想するという声も多い。

(実際、影響を与えたアーティストの名前を耳にする前に彼女のライブを観て、ブレルやザッパを自然と連想した。しかしそれ以上に、幼少期から恵まれた環境の中で様々な芸術に接し、多様な音楽を浴びるように聴く中で構築されたのが、彼女の音楽であり、歌い方なのではないだろうか。彼女が自然と吸収してきたのは先に並べたアーティスト群には止まらない。例えばピーター・ゲイブリエルからの影響も感じる。)


 クロ・ペルガグの音楽の大きな魅力のひとつは、彼女が紡ぎ出すメロディーの美しさだ。他に似たものを思い越せないような、独特なメロディーを次々に生み出すことに驚くとともに、ひとつの曲の中で変幻自在に変化する様も面白い。

 そうした極上のメロディーと奏で合うのは、弦楽器や木管楽器などによる室内楽的なアンサンブルやストリングス中心のオーケストラだ。ライブでもバイオリン、チェロ、ビオラの三重奏が必ずクロに寄り添っているように、彼女のサウンドにはこうしたストリングスが欠かせない。ポピュラー音楽のユニットとして、これは珍しい編成だろう。

 そんな歌と演奏に耳寄せていると、心地よく、楽しく、切なく、哀しくと、何とも複雑な気持ちになってくる。

 しかし、曲名や歌詞によく目を凝らしてみると、「心疾患」だとか「統合失調症」だとか「不眠症」だとか「白血病」だとか「皮膚科医」だとか、、、。病気に限らずとも「死」をモチーフにした歌が少なくない。さらには、、、「首にくくりつけたロープ」?、「アマゾンで酒を求める」?、「櫂をあなたの頭に打ち下ろしたい」?、「私の墓の上で踊りたいかい」? 一体なんなんだ、これは???? そんなところから、彼女の歌は、シュールだとか不条理だとかと語られる。

(今回の記事を書くに際して、フランス語も読めないくせに、意を決して彼女の全曲を和訳してみた。クロが書いた歌詞を読み込むうちに、シュールと感じさせるモチーフの意味は実は反対なのであって、「誰もが不完全な存在である」、「他者と繋がり合いたい」といったメッセージが伝わってきた。だからこそ自分は、彼女の音楽を美しいと感じ、歌声に切なくなり、心が震えるほどに感動するのだろう。クロは人間という存在にとても興味があって、他者を理解したいと本気で考えている。そこに彼女のアーティスト活動の源があるように思う。これはあくまでも自分が勝手に解釈しているだけなのかもしれないが、これから数回の記事の中でそうした分析までたどり着けるといいな。)

 クロ・ペルガグはアルバムごとのアートワークも素晴らしく、PV にも独特なセンスがある。ステージ衣装は極めて個性的だし、ステージングも(これまで何度も書いているように)おもちゃ箱をひっくり返したような乱雑さに溢れた楽しさがある。


 クロ・ペルガグは稀代な総合芸術家なのだと思う。自分はそこにとても惹かれる。


 とにかくクロのライブは楽しい。楽しすぎる! 日本でのステージは一体どのようなものになるのだろう? 今から楽しみで仕方ない。クロとの再会が本当に待ち遠しい!







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by desertjazz | 2017-07-14 20:00 | 音 - Music


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 2016年11月、アムステルダム&デン・ハーグ、パリ、ロンドン、マルセイユ&ラ・シオタと巡ってきた旅もいよいよ最終盤。コンサートは、ユッスー・ンドゥール、ソナ・ジョバルテ、インディ・ザーラを観てきた。そしてそのラストは、フランス系カナダ人のクロ・ペルガグのライブだ。今回のヨーロッパの旅、後半にはイスタンブールに飛ぶ計画だったが、フランス北西部2都市で行われるクロ・ペルガグのコンサートを見つけて予定変更。ラ・シオタでタトゥーたちと過ごし、マルセイユではマグレブ人エリアなど思い出の場所を歩きながらアルジェリア盤を買い付けた後に、ナントへ移動してきたのだった。

 クロ・ペルガグの音楽を知ったのは、例えばトコ・ブラーズやストロマエと同様に、パリ在住の音楽ジャーナリスト、向風三郎さんのブログを読んでのこと。ファースト・アルバム "L'alchimie des monstres"(2013)が素晴らしくて、2015年4月パリでのコンサートを観に行き、彼女とも会って直接話して来るほど惚れ込んでしまった。

 そのクロ姫がセカンド・アルバム "L'Etoile Thoracique" 発表のタイミングに合わせてツアー開始。これは観逃せないと思ってナントまで飛んできた。会場は Salle Paul Fort という小さ目の箱。当然スタンディングなのだろうと思い込んでいたら、何と昨日のインディ・ザーラに続いてシート席。前でしっかり観るか?後方でじっくり聴くか? 少し迷ったが、幾分か音の面を犠牲にしても、彼女のパフォーマンスを食い入って観たいので、最前列中央の席を選んだ。

 それと、写真をどうするか? 事前にバックステージパスを申請していて写真撮影の許可は得ており、会場の受け付けでも撮影に問題なしと確認ができたのだが、こうしたシート席では撮りにくい。場内を前後に移動するのは全く難しくないのだけれど、他のお客さんたちには少しの邪魔もしたくない。一眼レフだとシャッター音も気になる。写真はこれからのコンサートでプロショットがたっぷり見られるだろうから、自分が撮る必要はないだろう。そう思って今日はステージに集中することにした(なので、音がマックスになった瞬間やトークの最中に10枚弱撮っただけ。照明が一番フォトジェニックになるのは静かに歌っている時ばかりで、美しい写真が撮れなかったことは、やっぱり少々残念だったが)。

 ステージの上を眺めると、中央に小型のエレピとキーボード。1年半前にパリで観た時にはグランドピアノと車椅子が置かれ、周りにはトランポリンなど意味不明な様々なブツが散乱していたのだが、それに比べると今日はずいぶんすっきりした印象だ。

 さて、公演がスタート。メンバーは下手に女性3人。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロというストリングス隊。上手にはドラムとベース。基本ユニットに変化はないが、ウッドベースを使わないなど、やはり今回は幾分コンパクトな印象だ。まだツアーが始まったばかり、しかも地方都市でのライブとあって(チケットは20ユーロ以下という信じられない安さ)、物量的にも工夫が加わっていくのはまだまだこれから先なのだろう。

 しかし、クロ姫の格好はなんなんだ?? 全身マジックテープが施され、フェルトでできた骨やら METALLICA のロゴやらマイケル・ジョーダン人形やらを貼付けて演奏。身体を動かず度に、それらがガサガサ音を立てたり、はがれ落ちたりで、一体何をやりたいのか。ステージ上に寝っころがったりといった破天荒なパフォーマンスも相変らず。中盤からはメンバーたちが透明な衣装を身につけ内部の電飾が光り、その色を様々に変化させる。こうした奇天烈さは変わっていない。

 ・・・といった具合なのだが、彼らの奏でる音楽はどこまでも美しい。

 新作 "L'Etoile Thoracique" の中の曲を次々披露していくコンサートだったのだが、ファースト・アルバムの楽曲群と同様に、とても独創的で美しいメロディー、繊細なピアノとストリングス、優しくかつ力のこもった歌声が素晴らしい。そう、今回は何よりクロ姫の歌が良かった。時に切なく時に心に染み入るような歌をじっくり聴かせる構成で、彼女はずい分大人になったという印象を受けた。これは、新作には大編成のストリングスを加えた曲が多いのだが、小さな会場でのライブではそれをそのまま再現できない分、歌を中心とするものになったからなのかもしれない。

 それにしても、彼女の音楽をどう文章で伝えたらよいのかいまだに分からない。本当にオリジナルな音楽だ。CDがリリースされる前だったので(フランスでのコンサート時点で新譜はカナダ盤しか出ていなかった)、Spotify でアルバムを毎日聴いていたのに、それでもなかなか曲を聴き分けられないのも不思議だ。どの曲もが美し過ぎるからなのか、タイトルも歌詞も馴染みのないフランス語だからなのか。本人が明かしている通り、フランク・ザッパからの影響も多々かいま見られるが、美と大胆さと狂気?とが同居する様には、最近はスフィアン・スティーヴンスやカニエ・ウエストにも似た捉えどころのなささえ感じている。

 そうした資質の最たる面が歌詞なのだろう。これも向風さんによると、相当シュールで変な歌詞らしい(ファースト、セカンドともに、ジャケット画もかなり異様だが)。だからフランス語が分かれば彼女の音楽をより楽しめるのかも知れない。(そう言えば、1年半前のライブでも今回もMCが爆笑を誘って大いに盛り上がっていた。やっぱりフランス語を聞き取れないのは辛い。)この新作、何と来月に日本盤が発売になるそうだ(2/12 予定で、邦題は『あばら骨の星』 )。これを買って日本語訳詞もじっくり読んでみる必要がありそうだ。

(セカンド・アルバム "L'Etoile Thoracique" は昨年1位に選んだが、ファースト "L'alchimie des monstres" の出来は超えられなかったように思っている。例えば切迫感に溢れるオープニング・ナンバー "Samedi soir à la violence" などはとても良い曲なのだが、デビューEP の "Les maladies de coeur" やファーストの "La Fièvre Des Fleurs" (←これは広島カープ・ヴァージョン。オフィシャルPV もあり。)のような弾けるような極上ポップ・レベルの曲がアルバムには欠けているのだ。また、ファーストと比べるとセカンドの歌い口はずいぶん落ち着いて聴こえる。そうした声の変化も、今回ナントで聴いた歌声が大人びて感じた理由のひとつだったのかも知れない。もはやあの弾けるような歌声が懐かしい。)

 ナントでのコンサートはファーストからの曲も交えながら、瞬く間の1時間半だった。誰もが聴き惚れ、アンコールの後も拍手が鳴り止まず。クロちゃんがひとり再々登場し、ピアノを弾き語り。これがまた心を打つ美しさだった。でもまだまだ聴き足りない。あー、彼女のライブがまた観たい。

 何でもカナダでは30人編成のストリングスと一緒のコンサートも計画されているそうだ。(これも向風さん情報。その公演はもう終わった?)さすがにそんなコンサートまではなかなか観られないだろうけれど、今度の国内盤発売をきっかけにクロ・ペルガグの日本公演が実現することに大いに期待している。

 クロ・ペルガグは変化を繰り返し、アーティストとして成長し続けることだろう。これからも彼女を追い続け、その姿をずっと見つめていたい。


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by desertjazz | 2017-01-29 17:00 | 音 - Music


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 インディ・ザーラのセカンド・アルバム "Homeland" は実に素晴らしかった。2015年のベストにも迷わず選んだ。ジャケット写真通りの陰りのあるアーシーな空気感と、ダークで妖艶な音世界が圧倒的だった。

 彼女を知ったのはファースト・アルバム "Hand Made" を通じてのこと。どことなくオリエンタルな雰囲気を感じさせる彼女の顔にまず惹かれた。ヒットした "Beautiful Tango" も勿論好きになった。しかし、"Homeland" はファーストを遥かに超える作品。まるで別人のアルバムかのように聴こえたほどだった。

 それ以来、これはライブでも体験すべきと思い続けることに。

 しかしその後、彼女のライブとはニアミス続き。昨年11月の旅行でもパリのアラブ研究所でのライブを見つけたものの、なんとそれはちょうどパリから日本に帰る日。彼女とはとことん縁がないのだろうか。

 今回の旅の後半は、イスタンブールに行こうか、モロッコに飛ぼうか、プラハとウィーンにしようかなどと散々迷う。それでも 24日ナントでのクロ・ペルガグをどうしても観たくて、南仏〜ナントを廻るスケジュールで確定。その前日23日はマルセイユでベニンのポリリズモ Le Tout-Puissant Orchestre Poly-Rythmo を観に行くことに。

 ところが同じ23日にナントの隣町レゼでインディ・ザラのライブがあることに気がついた。慌てて予定変更。正に粘り勝ちだ!(ポリリズモの新作 "Madjafalao" 一応買って聴いてみたけれど、退屈、、、いや物足りなかったなぁ。ネットで動画を観た限りではライブは盛り上がったようだけれど。)

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(短い旅行記)

 20日朝、パリ出発。ユッスー・ンドゥールのライブに興奮した余韻を残しながら。ラ・シオタに住むタトゥーと奥さんのマニュさんが泊まりにおいでとかねてから誘ってくれていたので、マルセイユ経由で3度目のラ・シオタ訪問。タトゥーは父親のかつての持ち家を旅行者に貸し出していて、ここに2泊。(とっても素敵な家だった。南仏旅行する方にお薦めしたい!)

 タトゥーたちと二晩呑んで語り合って、それから22日にマルセイユに移動。港やベルザンスを散歩。マルセイユは6度目か7度目になるけれど、何度来てもいいな! できれば住みたいくらい好きだ。(シャウイのレア盤もどっさり買えたし。)

 翌23日、早起きして午前8時のフライトでナントへ。ホテルでひと休みしてから、街中を散策。

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 夜、路面電車でレゼまで出かける。ナント滞在は初めてだったが、切符は簡単に買えたし、会場も難なく見つけられた。

 ライブは当然スタンディングなのだろうと思っていたら、箱はまるで映画館のような造りで全席指定席。Le Théatre Municipal という名前の建物なので、昔は映画館だったのだろうか? さて席はどこにしようと迷う。最前列に空きがあったのでそこを確保。中央列くらいの方が音的には良いのだろうけれど、折角なら間近で彼女のパフォーマンスを目に焼き付けたい。

(ブログ用の写真を撮りたくて、事前に彼女のマネージメントや仏ワーナーにコンタクトを取ろうとしたのが上手くいかず。しかし、ここなら許可など必要なさそう。一眼レフを持ってこれば良かったと思いつつも、隣の人の邪魔になってはいけないと考えて、コンパクトカメラでほんの数葉だけ。撮った写真は以下がほぼ全て。)


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 バックバンドは、ギター2人、ベース、ドラム、キーボード&トランペットの5人編成。ライブでも "Homeland" のあの独特なムードをじっくり醸し出すのだろうと思いきや、意外とロック寄りのサウンド。そのセカンド・アルバムにあったヘビーな要素を拡大した、結構ラウドな演奏が多い。とにかく、時折ジャジーになりながらもグイグイ押しまくるバックと蠱惑的なインディの歌声とのコンビネーションが印象的だった。(ギター2本のコンビネーションも良かったが、若い頃のエルビス・コステロみたいな風貌のベース奏者の自己陶酔的なプレイはちょっと…だな。)

 なので中盤で歌った "Beautiful Tango" は今の流れに沿わないと感じたほど。こんなアグレッシブなライブをやっているなら、もう "Beautiful Tango" を歌う必要はない? いや "Any Story" の暖かな歌も良かったけれど。

 さらにパワーアップしたのは、モロッコ風衣装を纏ってからの終盤〜アンコール。ほとんど歌わず、デザート・ブルース/デザート・ロック風の重いビートに合わせて、長髪を左右に振り乱してトランス状態を演出。これが一番忘れがたい。あくまでもステージ・パフォーマンスなのだろうが、煽られて熱くなるものがあった。歌ってもいないのに、サウンドの中心にあり続ける彼女の求心力は見事。さすがは 400回におよぶライブをこなしてきただけのことはある。

 "Hand Made" のポートレイトは何だかお嬢さんっぽく澄ました表情で、彼女には「隣のお姉さん」的な親近感のようなものを持っていた(よく見ると違うのだが)。しかし、これは全然勘違いだったな。ステージ上のインディは、気性の荒いじゃじゃ馬だ。

 今回フランスのレゼで遂に観たインディ・ザーラのライブは、想像とは全く異なっていた。けれども、よい意味で裏切られた。モロッコの女性ポップシンガーの中では、ウム Oum とインディ・ザラが2トップだろうと思って推してきたが、音楽的にはウムよりインディの方がずっと実力あると視た。

 インディ・ザーラ、ホントに凄い。誰か絶対日本に呼んだ方がいいよ!(プロモーションでの来日経験はあるようだが、本格的なライブを日本でもう一度観たい!)


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by desertjazz | 2017-01-10 00:00 | 音 - Music


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 至高、緊張、寛容、温和、静寂、慈しみ、安らぎ、愛。なんと静謐な対話なのだろう。

 "Adana" は、2016年のベストに入れるかどうか迷った作品。調べてみると発売は2015年だった。しかしこれは、昨年巡り会った最高のアルバムの中の1枚。

 アルメニアのドゥドゥク Duduk 奏者ヴァルダン・ホヴァニッシアン? Vardan Hovanissian とトルコのサズ saz 奏者エムレ・ギュルテキン? Emre Gültekin が10年にわたる交友の末に、美しく結実させた成果。彼ら初のデュオ・アルバムは、まるで互いの魂を交感し合う会話のようだ。実際には多くのトラックがダブルベースやダルブッカなどの打楽器を含むカルテット編成であり、さらには数人のゲストも加わりもするのだが、ヴァルタンとエレム(彼は数曲で歌ってもいる)2人の対話のようにしか聴こえない。

 CD ブックレットの最後にはトルコの小説家オルハン・パムクの代表作『雪』の一節が引用されている。これはパムクの描く世界と通じ合う音なのだろうか。アルメニアのピアニスト、ティグラン・ハマシアン Tigran Hamasyan が奏でる音も連想させる幽玄さだ。

 
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 (2015年作ならば、New Disc と題するのはおかしいかな? でも、この作品は自分がこれまでに聴いた中で最高のトルコ圏/アルメニア圏の音楽です。)






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by desertjazz | 2017-01-09 00:00 | 音 - Music

巻頭言 2017

 新年明けましておめでとうございます。気まぐれに時々個人メモをアップする拙ブログですが、よろしければ本年もどうぞおつきあいください。

 昨年の反省点のひとつは、アウトプットが少なかったことです。幸いなことに本業の方では、1年を通して評判作/話題作ばかりでした(『シン・ゴジラ』には関わっていないよ)。でも音楽に関する発信はあまり出来ませんでした。書きたいことが次々浮かんだものの、ほとんどどれも完成にまで辿り着けず。頭の中で最終形のイメージができていても文章にできなかったり、実際書き始めるとどんどん長くなって書き上げられなかったり、余りにパーソナルな内容だったり。必ず公にすると決めている論考もいろいろあるので、それらを今年こそはきちんと書き上げてブログなどで公開できればと思っています。

 新春なので、酒の勢いで?それらの中からひとつを紹介。呑みながら書いているうちに(酒が入らないと文章を書けないのです)収拾がつかなくなった予稿。なので、前半と後半で文体が違っているのです。全く知り切れトンボだし、自伝 "Born To Run" を読んでの感想も加えるべきなのですが、取りあえずは未完成のまま公開することにします。


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Bruce Springsteen 2007/2016(極め付きの個人メモ)


 今年3月、ブルース・スプリングスティーンの "The River" Tour がどうしても観たくてアメリカに飛んだ。そこでは予想もしなかった大きな感動が待っていた。"Stolen Car" を聴いて、どうしてあれほど感動したのだろう。その理由をずっと考え続けている。



 スプリングスティーンのライブを前回観たのは 2007年11月のワシントン。この時はフランスを旅行中で、オーケストラ・バオバブ Orchestra Baobab、マジッド・シェルフィ Magyd Cherfi (Zebda)、マッシリア・サウンド・システム Massilia Sound System、レユニオンのゾング Zong などのライブを観るべくフランス各地を駆け回っていた。(バオバブは新作 "Made In Dakar" の発表ライブで、メンバー達と再会。こっそりサウンドチェックを観ていたら、サックス奏者のイッサが私の存在に気がつき、サウンドチェックを中断し歩み寄ってハグしてくれたり、バルテレミのギターを運ぶ役目を任されたり。彼らに楽屋で聞いた話も交えて、ライブを観た直後の深夜に新作CDのライナーを書き上げてメールで日本に入稿。マッシリアのライブではパスティス・ガールのサポートを頼まれ、気がついたらステージの上。打ち上げにも参加し、タトゥーたちと語り合う。そんな日々で、とても充実したフランス滞在だった。懐かしい。)その合間にスプリングスティーンのワシントン公演のチケットが取れたので、3泊の強行日程で仏〜米を往復することにし、ワシントンの Verizon Arena へ。

 しかしこのライブ、正直なところ、かなり期待はずれのものだった。スプリングスティーンをアメリカで観たら、それは素晴らしい体験で、きっと興奮を抑えられなくなるだろうとえ想像していたのだが。スタジアムの音が悪いからなのか、半数ほどの曲は楽しめた一方で、残りの半数は乗り切れない。どうにもサウンドが重くて、次第に心が冷めて行ってしまったのだった。それでも、ファースト・アルバムとセカンド・アルバムが特に好きな自分としては、"Growin' Up" (tour debut!) と "Kitty's Back"、それに "American Land" を聴けただけでもフランスから飛んで来て良かったと思ったのだった。


 余談になるが、このワシントンで一番強く印象に残っているのはライブが終わった後のこと。幾分余韻に浸りながらスタジアムの裏手をブラブラ歩いていると、前方からパトカーのサイレンが聞こえてきた。もしやと閃いて車道に駆け出すと(後で気がついたのだが、交通は完全に遮断されていた)すぐ目の前をパトカー数台が通り過ぎ、その後から、、、スプリングスティーンの乗った車が。彼は笑みを浮かべ手を振りながら瞬く間に通り過ぎて行った。その距離数メートル。咄嗟に車道に駆け出したので、自分の周りには誰もいない。こんな幸運ってあるのだろうかという信じられない思いを抱く。それと同時に、パトカーの一群に先導される「スーパースター」という余りにも巨大な存在。リアルさを感じない不思議な感覚。同じ人間でありながらも自分との違いの余りの大きさに圧倒されもしたのだった。

(さらに余談になるが、しばらく歩いて行くと、今度は全米ツアー中のイスラエルのイダン・ライヒェル Idan Raichel と路上でばったり。前年パリで会いインタビューしたことを憶えていてくれたようで「次のニューヨーク公演に招待するよ」と誘われる。皆から度々言われるが、自分が出かけると、ホント何かが起こる!!)


 ワシントンで観た2公演、不満が大きかったので、スプリングスティーンのライブはもういいかなとずっと思っていた

 けれども、今回心変わりしてスプリングスティーンを観に行こうと決めたのは、"The River" のフルセット20曲が聴きたかったから。The River Tour が始まって以降、毎ステージのセットリストをチェックすると、必ず前半はアルバム "The River" の全曲(レコード2枚分)をアルバムの曲順に演奏している。

 スプリングスティーンのアルバムの中で自分が好きなのは、ファースト "Greetings…"、セカンド "The Wild,…"、サード "Born to Run"、その次が5作目の "The River" だ。もう一枚選ぶとすれば、"The Rising" よりも "Nebraska" だろうな(4作目の "Darkness…" は個人的にはある意味過渡期の作品と捉えていて滅多に聴かない)。とにかく、"The River" は猛烈に好きなアルバムだ。その全曲を、今年アメリカに行けば生で聴ける!

 しかし、そんな時間があるのだろうか? 1月はブラジル取材(マンゲイラなど)と北海道旅行、2月は中国取材とインドネシア旅行。そんなことで他の面倒な仕事が溜まりに溜まり、3月はとても身動きの取れる状況にはならないはず。・・・だったのだが、奇跡が起きた。3月中旬に数日なら休みが取れそう。しかも、サンフランシスコで重要な打合せも持ち上がった。

 思い返せば、昨年のこと。スプリングスティーンの "The River Tour" のチケット発売日、一応チケット購入にトライしてみようかと考えたのだった。ところが肝心のその日、急病にかかり、仕事も休んで寝込んでしまった。発売開始時刻が日本時間の未明だったので、当然ネットで手配することなどできず。結果チケットは瞬く間に完売。スプリングスティーンのライブにはやっぱり縁がないのかと諦めていた。

 しかし、サンフランシスコに行けば、ロス公演は無理でもオークランドならば可能性がある。これはもしかすると、アメリカが、スプリングスティーンが呼んでいる? そう勝手に信じ込んでサンフランシスコへ。3月にして今年5回目の旅行(出張含めて)。会社に申告したら「また行くの !?」などと、さすがに周囲からは呆れられたが…。


 そんなワケで?気がついたらサンフランシスコ。そして3月13日、サンフランの隣町、オークランドへ。音楽ファンには Tower Of Power で知られるこの街に来るのも3度目かな。会場の Oracle Arena まで往復する交通手段が心配だったのだが、サンフランとを繋ぐ鉄道駅が隣接することが分かりひと安心。終電時間もチェック。(でも終演ギリギリになりそう。乗れるのか?)サンフランシスコで公演がないのは、スプリングスティーンが演奏できるような大きな会場がないからなのだろうか?なんとことも考えながら。

 公演当日までチケットは未入手。アメリカまで来ながらも「まあ観られなくても仕方ないや」と思っていた。実のところ、そんな手抜き状態だった。それでも夕方に正式なチケットをネットで購入。なので、さすがに GA のチケットは取れなかった。残念。(そう言えば、2007年ワシントンの2日目は当日に GA を定価以下で買ったな。チケット発売時点で完売でも、後々買う方法はいろいろあるのです。)


 前置きがとっても長くなった。さてそのオークランド公演。

 お馴染みの「ぶる〜〜〜す」の大歓声による呼びかけを受けて、スプリングスティーンとメンバー達がほぼ定刻通りにユルユル登場し、3時間半ノンストップで全35曲。


 その前半21曲は待望の "The River" Set。さすがにレコード2枚分の曲の演奏を通して聴くと、アルバム後半には地味な曲も多いので、少しは飽きがくるかなとも覚悟していたのだが。それがどうして、全くもって素晴らしい絵巻物語りを見せてもらった。

 名曲揃いのアルバムの中でも特に好きな "The Ties That Bind" や "Ramrod" といったロックンロール・チューンは最高だった(勿論一番はタイトル曲の "The River" なのだが、ライブを観終えた夜に Facebook に書いた通り、こねくり回すような歌い方がどうしても好きになれない。この1曲に満足を得られなかったことは悔しい)。

 最後の "Wreck on the Highway" を演奏し終えた後、スプリングスティーンの深々と頭を下げる姿がとても印象的だった。ひとつの物語を真剣に聴いてくれてありがとうと感謝を伝えるかのようだった(そしてこれがもうひとつのショーをスタートさせる区切り)

 しかし、振り返ってみると、この夜、最も感動したのは "Stolen Car" だった。
 ロイ・ビタンのピアノとスプリングスティーンの歌とギター。
 美しく、切なく、圧倒的な説得力。
 完璧な名曲だ。
 そのことにこれまで気がつかないできた。
 これまで約40年間、自分は一体何を聴いてきたのだろう?


 そう思って、帰国後スプリングスティーン関連の文献を読み返し続けている。
 読みまくることで、彼のことをいろいろ思い違いしていたこと、誤解していたことも分かってきた。
 彼のキャリアを振り返る時、まだまだ凄い作品を残せたはずという忸怩たる思いも抱く。
 彼はずいぶん勿体ない道を歩んできてしまったようにも思っていた。
 しかし、今ではスーパースターの彼も、あくまで弱さをもった一人の人間であることを理解できた。

 幾多の文献を振り返って一番の収穫は、デビュー前の面白さだ。
 キャスティールズ、スティール・ミル、スプリングスティーン・バンド、等々。
 片っ端から音源を探して聴きまくった。
 The Who や Led Zeppelin のようなハードなロック・バンド/ギタリストになる可能性も持っていた。
 しかし、スプリングスティーンはそれを捨てた。
 そのことは、デビュー以来続き繰り返される変化の予兆でもある。

 ここ半年ほど、彼の作品群を聴き直している。
 聴いても聴いても彼の全貌を捉え切れない。


 "The River" Tour のセットリストを時々チェックしている。
 欧州〜全米2周目は "The River" 全曲の括りを外し、目玉であるはずの "The River" や "Hungry Heart" を演奏しなかった日もあるようだ。
 地元ニュージャージーでは4時間に及ぶ驚愕のセット。
 "Rosalita (Come Out Tonight)"、"New York City Serenade"、"Jungleland" という3大名曲/長曲が並ぶセットなんてあり得ない!
「あー、今年もう一度観に行くべきだった」と後悔。
 しかし、自分としては "The River" のフルセットをライブで聴けたことの方に満足している。

 ツアー終盤になって、ステージの始めの方にファーストとセカンドの曲をずらっと並べている。
 自身のキャリアを振り返るかのごとく、どんどん回顧的になってきている印象がする。
 これは今の自分とシンクロしている?(と勝手な一言。)
 そんなことを思っていたら、今度は新譜 "Chapter and Verse" と自伝 "Born to Run" を発表。
 これにはさすがに驚いた。
 自伝の内容に沿った選曲のアルバムには、デビュー前に録音された未発表曲が5曲。
 これらはここ半年狂ったように聴き続けてきたもの。
 やっぱりシンクロしているなー!


 スプリングスティーンがなぜ今 "The River" 全曲をライブで演奏したのだろう?
 自分がなぜ "Stolen Car" という曲にあれほどまでに感動したのだろう?
 その理由についてずっと考えて続けている。
 恐らくその答えにもう辿り着いているのではないだろうか。
 一言でまとめると、それは "The River" という作品が大人への分岐点だったから。
 その意味合いを象徴する1曲が "Stolen Car" だったのだろうと思う。

 ブルース・スプリングスティーンの自伝がいよいよ世界同時発売。
 自分がここ半年ずっと考え続けてきたことへの答えも明かされているに違いない。

 ブルース・スプリングスティーンを聴き続けたくて、ここ半年間 CD はほとんど買わず。
 この偉大なミュージシャンと同時代に生きてこられたことを心底幸せだと思う。
 彼は2016年をフルスロットで走り続けている。
 そのスプリングスティーンのライブをもう一度観たいと願う。


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(以上が、3月に頭の中にメモしたことへ10月に書き加えた未完成原稿。その後、自伝を読んで「やっぱりそうだったんだな」と思ったのでした。)







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by desertjazz | 2017-01-03 00:00 | 音 - Music

BEST LIVES 2016


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Mangeira (Rio de Janeiro, Brazil in Jan.)


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Bruce Springsteen & The E Street Band (Orakland, USA in March)


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Vaudou Game et al. (Sukiyaki Meets the World, Nanto in Aug.)


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Super Session (Sukiyaki Meets the World, Nanto in Aug.)


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Sona Jobarteh (London in Nov.)


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Youssou N'Dour et Le Super Etoile de Dakar (Paris 3 Days in Nov.)


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Hindi Zahra (Rezé, France in Nov.)


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Klo Pelgag (Nantes, France in Nov.)




… and Oki Dub Ainu Band, A. R. Rahman, Caetano Veloso too (but no photos).






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by desertjazz | 2016-12-31 16:00 | 音 - Music

BEST ALBUMS 2016

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 1. KLO PELGAG / L'ETOILE THORACIQUE
 2. KADER JAPONAIS / HKAYA
 3. SLAWEK JASKULKE / SEA
 4. ANOHNI / HOPELESSNESS
 5. SOUNDTRACK "SONG FROM THE FOREST"



 例年だと10枚だが、今年は5枚だけ。購入盤リストを何度見返しても10枚に足りない。今年は1年中旅を繰り返していたので、レコードを聴く時間はここ数年と比べても少なかった。新譜の購入枚数もさらに激減。毎年500枚程度買っていたピーク時の何分の1かに落ち込んだ。

 以下、選考基準は例年と同様「自分が気に入ってよく聴いた作品」。

 1位はカナダの奇才娘クロ・ペルガグによる待望のセカンド・アルバム。前作は2年前に2位に選んだが、今回は迷わずトップ。毎度書いているが、美しく哀しい独特なメロディー、切ない優しい歌声、ザッパ風味も感じさせる卓越したアレンジと、どれもが好きでたまらない。奇天烈なステージングも含めて、近年特に気になっているアーティストのひとりだ。ただ、現時点ではファーストの出来を超えていないという印象も持っている。それでも今回も(2年前にもパリで観た)新作ツアー・ライブを先月早々にナントで観ることができたのは幸運だった。カナダではアルバム通り、30人編成のオーケストラを従えた公演も予定されているとのこと。観たい!(11月にカナダ盤が出たばかりで、フランスでのリリースは来年2月の予定とのこと。)

 2位はアルジェリアン・ライの歴史に残り得るレベルの超力作。カデール・ジャポネの気合いの籠った声とライ王道と言えるサウンドがとにかく素晴らしい。11月にバルベスで見つけて渋谷某店にひとやま届けたら、たった1日で完売したとのこと。そりゃそうでしょう!(アルジェリアでストックが見つかり、年明け早々日本に届くそう。なので未入手の方々はご安心を?)

 3位と4位は日本でも各所で話題になったアルバム。"SEA" のソロ・ピアノは密室で奏でられる極めてパーソナルな現代版 "Koln Concert" といった雰囲気も(?) くすんだ音からふわっと沸き立つ寂寥感が心地よい。4位もパーソナルな叫びが伝わってくるようで、その独特なサウンドに圧倒された。近付き難い世界観でありながら、そこに包まれてしまいたいとも思わせる魔力を持っている。

 さてあと1枚。ところがこれら4枚に匹敵するアルバムが思い浮かばない。特に最初に2枚、クロ・ペルガグとカデール・ジャポネが素晴らし過ぎて、「かなり良い」作品でも一緒に並べる気にまでならなかった。そこで、2013年リリースながら、今年自分が日本に紹介し聴いた多くの方々が絶賛したピグミー映画のサントラを5位に。バーニー・クラウス『野生のオーケストラが聴こえる―― サウンドスケープ生態学と音楽の起源』とも響き合う音。



 今年レコードを余り買わなかったもうひとつの理由は、ブルース・スプリングスティーン体験があったから。3月に観たEストリート・バンドとのライブが想像していた以上に素晴らしくて、放心状態を引きずり続けている。中でも、彼の人生を集約しているかのように感じさせられた "Stolen Car" の美しさ。いまだに耳に焼き付いて離れない。そんなことから、彼の音楽をまだまだきちんと理解していない気になり、ピーター・エイムズ・カーリン『ブルース・スプリングスティーン アメリカの夢と失望を照らし続けた男』などをガイドに、スプリングスティーンを聴き直し。特に彼のデビュー前の音源を片っ端から探して聴いていったところ、その魅力に圧倒された(おかげで秋で出たベスト盤 "Chapter and Verse" 収録のデビュー前の未発表音源5トラックは、公式発売前に聴き過ぎていて全く新鮮味がなかったほど)。3月以降はスプリングスティーンさえ聴いていれば満ち足りた日々だった。

 そして11月にパリで観たユッスー・ンドゥール。昔と変わらないンバラの躍動感。久々にライブで聴いた "Yakaar (Hope) " と "Fital (Useless Weapons) " の素晴らしさ。特に "Fital" の入魂の絶唱の凄まじかったこと。("Eyes Open" の穏やかなスタジオ・ヴァージョンとは大違いなので、ユッスーは21世紀以降のヴァージョンこそきちんとレコーディングしておくべきだ。)

 年末に至ってもまだ "Stolen Car" と "Fital" が頭の中で響き続けている。なので、他の音楽はなかなか受け付けなくなってしまったまま。

 自由になる時間が限られる中、際限なく新しい音楽を求めるよりも、自分が本当に好きな音/音楽に集中した方が、充実した時を過ごせるし、思わぬ発見や体験も相次ぐ。今年もそんな1年だった。







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by desertjazz | 2016-12-31 08:01 | 音 - Music

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