カテゴリ:音 - Music( 248 )


 凄い!と噂されながらも幻だった Haruna Ishola の息子 Musiliu Haruna Ishola。"Soyoyo" を2005年ナイジェリアでやっと見つけ出し、彼の強烈/驚愕なアパラを遂に聴くことができた。しかしその後、何故だか続作には出会わない。そんな Musiliu Haruna Ishola、12年振りに訪れたロンドンのペッカム Peckham でこのアルバムを発見。ネットでもエル・スールでも見たことないぞ。オープニングがまるでジュジュのようなバックサウンドで軟化したかとも思ったが、その後は76分24秒ノンストップの怒濤のアパラ。高級プレイヤーだとさすがに終わりの方はまともに再生しなかったのもナイジェリアらしい?

 Musiliu Haruna Ishola の CD は他に4〜5タイトルほど出ていることは分かっているが、未入手/未聴。"Soyoyo" を超える作品があるかどうか、ちょっとばかり気にはなる。


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by desertjazz | 2016-12-01 00:00 | 音 - Music


 今回ヨーロッパ旅行を決めたのは(3ヶ国8ヶ所に滞在)、昨年11月13日に凄惨なテロに見舞われ90名が命を落としたパリのバタクラン Le Bataclan が約1年振りに再開し、その早々に Youssou N'Dour の出演が発表になったから。そんな Youssou の心意気に惚れ、また久し振りに彼の歌声を聴きたかったので(それには今年3月にオークランドで Bruce Springsteen のライブを観たことも大きく影響している)、11月18日と19日のバタクラン公演を軸に日程を組んだ。大仰な言い方になるが、テロと生きる時代について旅を通じて少し考えてみたくもなったのだった。

 パリでは、帰国最終日のギリギリで Youssou の最新作セネガル盤2タイトルをようやく入手できた。

・ "#Senegal Rekk" / Youssou N'Dour e Le Super Etoile
・ "Africa Rekk" / Youssou N'Dour

 "#Senegal Rekk" は5曲収録のミニアルバム。目玉トラックは Akon と共作/共演した "Song Daan" だろう。"Begg Na Leen" も素晴らしい。躍動感あるンバラで Le Super Etoile de Dakar 躍如たるナンバーだ。

 そして今月ソニーからインターナショナル・リリースされた "Africa Rekk"。"Goree"、"Be Careful"、"Exodus"、"Food For All"、"Money Money" と収録タイトルを見るだけでメッセージ性の高さが伝わってくるアルバムだ("Food For All" は「餡子、餡子、餡子、餡子」と連呼する食い物ソング・・・ってのはウソ)。実際の歌詞はどのようなものなのだろう。このアルバム "#Segegal Rekk" に曲を追加して世界配給したものかと思ったら、違っていた。"Conquer The World" は "Song Daan" と同一曲なのだが、英語詩を増やしてアレンジもかなり変えている。この曲も含めて久々の(8年振り?)インターナショナル盤、21世紀に入ってからの数枚と同様、ポップなナンバーが並んだ良作だろうと思う。

 その同じ "Africa Rekk" のセネガル盤まで何故買ったか? それは同じじゃなかったから。

 バタクラン2公演ではオーラスに聴き覚えのない曲を歌った。ライブが終わった後、PAミキサーにトラックリストを見せてもらうと "I Love You" と書かれている。確かに Youssou は "I Love You" と曲紹介していた。でもこの曲、どのアルバムに入っていただろう?

 パリ滞在最終日、シャトールージュで立ち寄ったセネガル・ショップでその謎が解けた。セネガル盤 "Africa Rekk" にはインターナショナル盤に1曲 "I Love You" が追加されているんだね。Youssou が曲紹介した瞬間の大歓声、それに続いて起こった大合唱。この曲が人気なのにはもっと別の理由があるに違いない。

 "Africa Rekk" はよいポップ・アルバムだとは思うのだけれど、"#Senegal Rekk" の方がずっと良いと感じた。"Song Daan" と "Conquer The World" を比べてもそうだし、全体的にサウンドに切れがありスピード感にも満ちている。これはもしかすると Le Super Etoile がクレジットされているかいないかの違いなのかもしれない。

 そんなワケで、アフリカ音楽ファンならセネガル盤2枚も入手する理由があるのです。


 ・・・それにしてもパリで売られているセネガル盤、どうしてこんなにバカ高いんだろう。


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by desertjazz | 2016-11-29 21:44 | 音 - Music


 12年振りに訪れたロンドンではこの都市最大のナイジェリア人街ペッカム Peckham も再訪問。CD屋で最近の若手のアルバムの中で一番はどれ?と訊ねたところ、差し出されたのが Flavour "Thankful"。ナイジャン R&B をベースに、スークースあり、ハイライフあり、カリビアンあり。全21曲のトゥーマッチな大作。早速 El Sur Records にも届いたらしく、これは自分用に1枚だけ買ってきて正解だったようだ。


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by desertjazz | 2016-11-29 00:00 | 音 - Music


 Ibrahim Maalouf の "10 ans de Live"、通常盤(1CD + 1DVD)とは別にボックスセットもリリースされた。これがその中身。Best CD + Best DVD + 5 Live DVD の他に USB も!ここにも映像が2時間収められているらしい。ひと通り観るだけでも大変そうだ。(日本にはまだ入荷していない?・・・と書いたら、昨日出荷したとパリからメッセージがあったので、間もなく El Sur Records にも届くでしょう。)


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by desertjazz | 2016-11-27 00:00 | 音 - Music

New Discs in this Fall


 秋は新作リリースのシーズン。Youssou N'Dour の他にも、Randy Newman、Moussu T e Lei Jovents、Oai Star、Bugge Wesseltoft、そして Klo Pelgag といったように、自分の好きなアーティストたちが新作を発表し、多くがそれに合わせたツアーを開始する(そんなことが、自分がしばしば秋に外国を旅行する理由ともなっている)。Madyed Cherfi は「新著」を出したし、オクシタン・ディスクガイドという気になる本も出た。あと他には何があったかな? 買い漏らしのないようにメモしておかないと忘れそう。

 こうして並べてみると、長年自分が好きな音楽ばかり。今年は猛烈に忙しくて、昔から好きなものを聴くだけで精一杯(いや、それだけの時間すら取れない)。新しいものに関心を拡げるだけの余裕がない。それでも、もう生活の一部となっているような音楽を聴いているだけで十分幸せなのだけれど。

 その一方で、今一番心待ちにしているのは、やっぱりフランス系カナダ人 Klo Pelgag の新作。今度はどんな作品になっているのだろう。とても楽しみだ!

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by desertjazz | 2016-10-14 04:58 | 音 - Music

Live Music Week


 先週はライブ・ウイーク。1〜4日は、Chinese Man、Suar Agung、Bugge Wesseltoft、Les Innocents と4連夜。そして9日は Caetano Veloso!

 11年振りに観たカエターノ・ヴェローゾ(前回は池袋と有楽町東京フォーラムに行った)、ただただ素晴らしかった。声とギターだけであれだけの世界を構築するとは。テレーザ・クリスチーナも含めるとたっぷり2時間。結構前方でゆったり観られたし、音も心配したほどでなかったし。今回のライブ、本当に行って良かった!(カルリーニョス・セッチ・コルダスの7弦ギターのまるでオーケストラのような重なり具合も印象的だった。)

 今週は Brad Mehldau と Joshua Redman のデュオを聴きに行きたかったのだけれど断念。さすがに時間も体力も懐ももたない。






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by desertjazz | 2016-10-13 23:00 | 音 - Music

BEST ALBUMs 2015


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1. DUPAIN / SORGA (France)
2. FAADA FREDDY / GOSPEL JOURNEY (Senegal)
3. IBRAHIM MAALOUF / ILLUSIONS (Lebanon, 2013)
4. ADIOUZA / LI MA DOON (Senegal, 2013)
5. SUFJAN STEVENS / CARRIE & LOWELL (USA)
6. BEIRUT / NO NO NO (USA)
7. THE DO / SHAKE SHOOK SHAKEN (France & Finland)
8. HINDI ZAHRA / HOMELAND (Morocco)
9. TIGANA SANTANA / TEMPO & MAGMA (Brasil)
10. SEU JORGE / MUSICAS PARA CHURRASCO II (Brasil)


 終わってみたら、デュパンとファーダ・フレディとクロ・ペルガグに興奮しっぱなしの1年。なので、今年の4月に彼ら3組のライブを観たパリ3連夜は自分にとっては正に奇跡だった(デュパンのリーダー、サム・カルピーニャやファーダと再会し、クロ姫とも直接話ができたし)。

 デュパン12年振りの新作と、今回会うのが5回目!となったファーダの初ソロ、どちらを1位にするか迷って何度も何度も入れ替えた。結局、12年間待ちこがれた思いとアルバムの完成度を優先して "Sorga" を1位に。ライブの素晴らしさなども加味すると "Gospel Journey" が1位でも全くおかしくない。実際聴いた回数は "Gospel Journey" の方が遥かに多かったことだし。デュパンは終盤の頂点に向かって濃密さを増して行くインプロビゼーションが圧巻。ただ前作 "Les Vivants" のキレまくったポップさの方が好きだというは正直なところ。"Gospel Journey" は声とボディだけで思いっきり楽しい音楽を産み出せることを示したポップの傑作。アルバムのサウンドをよりゴスペル風に壮大なものにしたライブも最高だった。なぜこれが日本で話題にならなかった??

 次ぐ3位は今年4月にリリースされた Klo Pelgag "L'Alchimie des Monstres - Edition de Luxe - " にしたいところだが、これの元アルバムは昨年1位にしたのでガマン(彼女の日本公演がキャンセルされたのは残念)。代わりに選んだのはレバノンのジャズ・トランペッター、イブラヒム・マールフの "Illusions"。今年リリースした新作2枚"Kaltuoum" と "Red & Black Light"も充実していたが、2年前のこのアルバムの方がずっといい。対位するトランペット・アンサンブルを筆頭に、自分が音楽に求めるあらゆる興奮要素が詰まっていて、21世紀のベスト10に入り得るレベルの大傑作。2013年作でなければ1位でもおかしくない(彼はシェイク・ローの新作にも、間もなく出るナターシャ・アトラスの新作にも参加している。どうしてこれまで彼をスルーしてきたのだろう。今一番ライブで聴きたいひとり)。

 アフロ・ポップは新作もリイシューも熱心に聴いたものがあまり思い浮かばない。そんな中ほとんど唯一の例外と言えるのは、これまたパリで見つけたアディウーザ嬢のアルバム。年末の今でも冒頭2曲だけ繰り返し聴いている。2015年のベスト PV もアディウーザの "Ndaanane" です。

 スフィアン・スティーブンスは久々の快作。でもアルバム出す前に全曲無料で配信した音を聴き過ぎてしまったためか、CD の音で聴いた印象が希薄。ベイルートはタイトル曲の朴訥とした雰囲気がなんともいい。スフィアンとベイルートのメランコリックな暖かさに惹かれた。

 結構な豊作年の印象だったのに、7位以下は大迷い。The Dø は10月にライブを観てからヘビロテ中。モロッコの歌姫はライブを観たウムの "Zarabi" よりもインディ・ザラの新作の方が良かった。ウムのマネージメントからは「日本でライブをやりたい」と連絡があり、インディ・ザラの関係者からは「日本盤を出したい」と相談を受けたが、どちらも話が進まず。でも来年以降もフォローし続けます。

 残る2枠はブラジル勢の争いに。最後に落としたのは Celso Fonseca "Like Nice"。最初は5位に入れたのだが、入手できたのが年末で聴き込みがまだ足りない。今年のスキヤキ組の中では9位に入れたティガナ・サンタナ(チガナ・サンタナ)が良かった。セウ・ジョルジの美味しいアルバム第2弾も最高!(でもどうしてこれが10位なんだ? セウ・ジョルジもライブを観たいな。)


 ・・・ということで、時代を象徴するとか、歴史に残るとか、未来を予見するとかいったことは一切抜きに、今年自分が好きでよく聴いたアルバム10枚です。


 次点を挙げるなら、こんなところかなぁ。

・CELSO FONSECA / LIKE NICE (Brasil)
・JALAL EL HAMDAOUI / REGGADIATES 2013 (Morocco, 2013)
・TIGRAN HAMASYAN / YEREVAN STATE CHAMBER CHOIR/HARUTYUN TOPIKYAN (Armenia)
・REDA TALIANI / BLADI (Algeria)
・D'ANGELO AND THE VANGUARD / BLACK MESSIAH (USA)
・COUMBA GAWLO / 23ANS DE SUCCESS (Senegal)


 ここで、「あれっ? "Bladi" がベスト10に入っていない」と思う方がいるかも知れない(いや、いるはずないか。"Bladi" は確かに良い作品だけれど、自分のベスト10には入らないなぁ)。

 私がフランスで見つけてきて、渋谷のエル・スール・レコーズに紹介したレダ・タリアニの "Bladi" とファーダの "Gospel Journey" が『ミュージック・マガジン』ベスト・アルバム 2015 のワールド・ミュージック部門で1位と5位だって!

 ひとりの音楽ファンが趣味で探してきた CD がベスト5に2枚も入るなんて、それだけワールド・ミュージックのマーケットが縮小しているのかだとか、日本に入るべきアイテムが届いていないのだろうかだとか、マガジン内輪関係の限界が露呈しただけか、などなどいろいろ考えるところ多い。まあ誰もが言っている通り、合議制に無理があるのだろう。

 今年は音楽を聴く時間がさらに少なくなり、レコードの入手枚数もまた減った(過去30年間で最低かも)。実際、音楽を聴くより、本を読んでいる時間の方がずっと長い。ブログで音楽について語る余裕もほとんどない。それでも自分の感性にひっかかる音楽が確実に捉えられているし、その感覚を誰かと共有できていることは嬉しく思う。自分が日本に紹介した2枚がマガジンでこうして取り上げられたことについても、取りあえずは自分のやっていることもわずかながら世間の役に立っているのだろうと考えることにしよう。


(2016.01.02 07:50 追記修正)









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by desertjazz | 2015-12-31 12:01 | 音 - Music


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 なんて柔らかく暖かくて繊細な調べなのだろう。今回イダン・ライヒェル・プロジェクトの日本公演を聴いてとりわけ印象に残ったのはイダンが紡ぎ出すピアノの音の美しさだった。

 全国8都市を巡ったイダン・ライヒェル・プロジェクト The Idan Raichel Project(IRP)の日本ツアー、その最後の2公演を観てきた。

 2015年12月14日(月) 横浜・神奈川県民ホール
 2015年12月15日(火) 東京・中野サンプラザ

 両公演とも会場がコンサートホールだったため、これまでに観た IRP のライブよりもずっと腰を落ち着けて、個々の音と音の構造をじっくり確認しながら聴くことができた。

 まず舞台下手からイダンが登場しソロで1曲。ピアノの一音目からもう耳が虜になってしまった。イダンは俯き目を閉じてプレイ。よくみると小声で何かを呟きながら演奏している。自己の世界に入り込んむことで、珠玉の美しさを持ったメロディーを完成させる作業に没入しているかのよう。

 2曲目はピアノ弾き語り。イダンの歌声はいつ聴いてもいい。もの悲しい曲調に呼応するかのように、会場が瞬く間に静まりかえっていった。今度の日本公演はイダンの歌を存分に聴けたこともよかった。

 3曲目でドラム奏者とベース奏者(ヴァイオリンとアコースティック・ギターも兼務)が登場。さらにカマンチェ奏者(ベースも兼務)が加わる。時おり短めの MC を挟みつつトリオ〜カルテットでの演奏が続く。来年1月にリリース予定のイダン・ライヒェルのソロ・アルバム収録曲も交えながら進行。どの曲も短く、もう少し聴きたいと思ったところで終わってしまう。このあたりまでは IRP のライブというよりも、「演奏会」といった雰囲気だ。ステージのスクリーンには歌詞の抄訳や MC の内容が映し出され、イダンのことを知らずに来た聴衆に対しては親切な工夫だったと思う。

 7曲ほど終えたところで笛のマエストロ、エヤル・セラが登場。超絶パフォーマンスを披露。一気に美味しい所を持っていった感じなのだが、彼のパフォーマンスは昨年よりも控え目。(それだけエヤルが凄過ぎるということなのだろうか?)"Im Telech" などの2曲でバンド全体で長尺演奏を展開。イダンのリリカルなピアノと他のプレイヤーたちとの間のインタープレイをたっぷり楽しめた。ホント、イダンのピアノには一段と磨きがかかっている印象を受ける。

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(例えば4日前に公開された "UNITED PIANOS | World's first 22 hands piano piece" を観ても、イダンが重要な役割を担っているなど、ピアニストとして注目され続けていることに納得が行く。)

 ここまで聴いて、それぞれの曲が独特かつこの上もなく美しいメロディーを持っていることや(哀感や寂寥感の究極点)、イスラエルはもとより、エチオピアなどの周辺国、モロッコ、東欧、等々、さらには欧米ポップまでもを巧みに取り込んだ、汎地中海/汎ワールド的なミクスチャー・ミュージックになっていことを再確認。ただ今回は高域の音に寄り過ぎで音量が控え目なこともあって、軽い音に聴こえたことはやや不満。もっと重低音を強調しても良かったのではないだろうか?

 そろそろ2部構成の第1部が終わるのかと思ったところで、女性ヴォーカルが登場。今回はひとりだけ。いつもと違って2人じゃないのはちょっと残念。そして最後に男性ヴォーカルが加わってメンバー7人が揃う。ここで突然ハンドクラップとスタンディングも求めてきて、何とも強引だなぁと思いつつも、いつもの IRP ライブの楽しいダンス・パーティーへとなだれ込んでいった。(ヴォーカルの3人は IRP 結成以来不変の布陣のようだ。)



 ここまで約1時間20分演奏を披露したところで、15分間の小休止。これは主催が民音であるため、年配のお客さんが多いことへの配慮なのだろうか、それとも民音にとって譲れない公演スタイルなのだうか。

 第2部はのっけからイダンのくだけた調子のMCでスタート。ストイックなインプロヴィゼーションが続いた前半からは雰囲気が一転。"Mi'ma'amakim (Out Of The Depths)" や "Bo'ee (Come With Me)" といった傑作ヒット曲を連発してダンス・パーティーが再開("Bo'ee" はアレンジを変えて披露)。自らカメラを持って撮影したり、カメラマンをステージに上げたり、ピアノ演奏とダンスを往復したりと、イダン本人も気持ちを開放して楽しんでいる様子だった。

 ただひとつ残念だったのは、この後にやったアンコール1曲目のこと。日本語の歌を歌ったのだが、事情を知らないイダンのファンたちを困惑させたりしていた。(まあ、この件に関しては多くは語らないでおこう。)


☆☆

 自分がイダン・ライヒェルの音楽と出会ったのはいつのことだっただろう。そう思い、改めて調べてみた。

 12年前にイスラエルに1ヶ月近く滞在した。この間、2003年10月27日にテルアビブの Tower Records で彼のデビュー・アルバム "The Idan Raichel Project" (2002) を買っている。これが全ての始まり。2006年1月29日にはパリ、エトワールの Virgin Megastore でセカンド・アルバム "Out Of The Depths" (2005) 購入。今でもファーストこそがイダンの最高傑作だと思っているし、セカンドもそれに匹敵する作品だ。そのいずれもをリリースほどなくして聴けたのは大きな幸運だった。

 イスラエルからとんでもないアーティストが現れた! そう感じ取って、2006年10月23日にパリ18区の Divan Du Monde で行われた世界デビューお披露目ライブに駆けつけた。その直前には彼への単独インタビューにも成功。この頃が一番熱心にイダンの音楽を聴いていたかも知れない。

 ファースト・アルバムは今でも素晴らしいと思い続けている。もちろんファーストとセカンドからベスト・トラックを集めた初のインターナショナル盤 "The Idan Raichel Project" を聴くだけでも、彼の素晴らしさは十分に知ることができる。

 でも彼独特な世界観はイスラエル盤を聴いてこそ伝わってくるし、そこにはその後の作品にはない不思議な統一感がある。だから昔 El Sur Records にイスラエル盤を入れるように勧めたりもしたのだった。その一方で、個性的なメロディー、独特なミクスチャー感覚、そして宅録的な実験性から、当時はそれほど一般向けの音楽とは思えず、ちょっと自分に自信を持てないでもいたのだった。

 ところが、今回の日本公演は聴衆の大半が彼の音楽を初めて聴くのにも関わらず、前半では全ての耳を釘付けにし、後半では熱狂的に踊らせたのだから、大したものである。イダンの楽曲が元々それだけの普遍性を持っていたということだし、彼自身も経験を積んで大きく成長してきたということなのだろう(休憩時間と終演後のCDの売れ方も尋常じゃなかった。CD物販であんな人だかりを目にしたのは初めて。「久し振りにCDかったわ」なんて声も聞こえてきた)。

 イダン・ライヒェルというミュージシャンは、恐らく自分が考えたいたよりもずっと大きな存在だったのだろう。



 全く夢のようなことだが、昨年と今年、IRP のステージを日本で4回も観ることが出来た。それでもまだ物足りない。大きな不満というか、最も違和感を覚えたことは、ヒット曲のサビ部分でも大合唱が起こらないことだ。

 その点、いまでも懐かしく思い出すのは、2006年に初めて観たライブである。パリ在住のユダヤ人たちが集まってチケット完売札止めとなった中、大盛り上がり。今回は素晴らしい音環境の中でイダンのピアノをたっぷり味わえたけれど、次回は踊れる箱かオープンスペースで、キーボードやアコーディオンもプレイするイダンの弾ける姿を楽しみたい。ならば、今度観たいのはアメリカかどこかのユダヤ人コミュニティーを相手にしたライブか、テルアビブあたりでのステージだろうか。

 今年の日本公演で、イダン・ライヒェルが現在世界を代表する偉大なコンポーザー/ソングライターの一人であり、卓越したピアニストであり、心に響く歌い手であり、超一流のサウンド・クリエイターであると改めて実感した。そんなミュージシャンと巡り会えたことにもう一度感謝!

 これからイダンはどこへ向かっていくのだろう。まずは完成したと伝えられる新作を聴くことが楽しみだ。そして彼のライブをまた楽しみたい。2006年にパリで初めて会い、2007年に米ワシントンのストリートでばったり再会。昨年と今年は日本でも会えた。きっとまた世界のどこかで彼の音楽に触れる機会もあることだろう。そのとき彼はさらに大きくなった姿を見せてくれるに違いない。


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(写真は 2014年に Billboard 東京と 2006年 パリ Divan Du Monde で撮影したもの。横浜も中野も撮影禁止だったので。その分、音楽を聴くことに集中できたのは良かった。)










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by desertjazz | 2015-12-16 17:00 | 音 - Music


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 レダ・タリアニ Reda Taliani の時代到来か? レダ・タリアニの人気が今日本でも高騰中? 今年10月にフランスのパリとマルセイユで買付けてきたライ・シンガーの新作が、評判を呼んで奪い合いに??

 彼の CD が El Sur Records など随所で紹介されたものだから「欲しい」と直接ご連絡いただいたりしている。そして『ミュージック・マガジン』最新号(12月号)の輸入盤紹介ページにも取り上げられた(P.183)。うーん、これならパリとマルセイユで彼の CD をあるだけ全部買い占めてくるんだったかな。

 そんなことを思いながら、マルセイユのベルザンスで買ってきたレダ・タリアニの最新作 "Bladi" をじっくり聴き返してみた。

Reda Taliani "Bladi" (Dounia Production 931, 2015)

(いや正確に書くと、この CD はただでもらってきたんだった。今秋のフランス旅行でもアラブ/マグレブの CD ショップを巡ったのだが、店に入る度に「やあ、また来たか!」「おお、モナミ!」と大歓迎。毎度爆買いするものだから、たっぷり安くしてくれるし、店主のお気に入りはおまけとしてプレゼントしてくれるし、会計終えた後で目に留まった CD は「いいよ、もってけ!」と一言。ありがたや! これもそんな1枚。)

 (1) "Mardi L'Amour" は切迫感溢れる軽快なチューン。絶頂期の Cheb Mami さえ連想させる。(2) "Yachaba" はトランペットやハイトーンの笛も響くライ・ナンバーで、ノリがさらに加速する。(3) "Soirée H'Bel" はゲンブリやカルカベっぽいサウンドのイントロに続いて、まるで Ibrahim Maalouf のようなトランペット・アンサンブルが加わる濃厚/芳醇さ。至福を約束するビッグ・チューン。(4) "Alguitha Fi L'Arret" は往年の Khaled かのよう。「おい〜」の一声で "La Camel" の世界に誘われる。この曲もトランペットが耳に響くが、プレイヤーは誰なのだろう? (5) "Chayef Au Aayef" は典型的な今風のライだな。(6) "Miya More" はピアノによるイントロとオーケストレーションが印象的な感涙バラード。ストリングス、アラビック・パーカッション、サックスなどによるインタープレイもいい。(7) "Redatini Man Nes Wache" もピアノとストリングスに導かれる濃密なバラード。(8) " Essemaani" はレダのしっとりした歌が実にいい。曲の流れもよく考えられていて、何とも贅沢な作品だなぁ。

 ちなみにマガジンでレビューされたのは、このアルジェリア Dounia Production からのオリジナル盤(多分)ではなく、Mogador Editon から出た粗製盤の方だ。

Reda Taliani "Mardi L'Amour" (Mogador Edition, 2015)

 これは編集盤(多分)で、"Bladi" から (4) と (8) を除いた6曲に別の5曲を追加した内容になっている。なので、「ジャケ違いで "Bladi" と題したCDも出ているが、内容は本作と同じようだ」との記述は厳密には正確じゃない。まあ、どちらか1枚持っていれば十分なワケで、どうでもいい次元の話なのですが。



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 以前にも書いたが、レダ・タリアニを気に入って聴いているのは今年4月からのこと。パリのバルベスにある馴染みの CD ショップで「今一番のライ・シンガーは誰?」と訊ねて奨められたのがレダだった。そのとき買ったベスト盤、ホントにいいね。曲良し、歌良し。とても陽気でダンサブル。往年のライのエッセンスが詰まった華やかさを感じる。先日誘われてお邪魔したアルジェリアン・パーティー(Cheb Hasni の21回忌)でも、この CD のトラックがガンガン回されて、皆踊りまくっていた。

 すっかり忘れていたが、レダはもっと昔から聴いていた。例えば 2009年にマルセイユで "El Djazair" を買って(いや、これももらって)聴いている。だけど当時はなんだかピンとこなくてそれっきりに。音よりも「このヘア・スタイルは何じゃこりゃ!?」と感じて、キワモノ扱いしてしまった面もあったかも知れない。



 レダ・タリアニのレコーディングとして有名なのは 2005年にヒットした 113 との共演曲 "Partir Loin" 。また意外なことに Grand Corp Malade とも共演していて、2011年に2人連名でシングル "Inch'Allah" を発表している。この曲は Grand Corps Malade にとって初めてチャートインした曲になったのだそう。彼のアルバムをチェックし直してみたが、どれにも収録されていないので、シングルのみでのリリースだったのだろう。確かにこのダンサブルなナンバーを Grand Corps のアルバムに入れたとしたら、他のトラックとは馴染まず無理がありそうだ。

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Grand Corps Malade, Reda Taliani - Inch'Allah - Clip officiel

 ・・・このビデオ、のっぽと小太りの対比にも笑える。




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 1980年アルジェ生まれのレダ・タリアニ。ただ歌えるライ・シンガーというだけではなく、シャービやモロッコ伝統音楽なども吸収消化し、年々プロダクションが充実してきている様子も感じられる。今年はハレドの甥っ子 Madjid Hadj Brahim や Kader Japonais、Bibal らも良い作品をリリースした。最近のライ、なかなか好調じゃないか!

 レダのアルバムを遡ってもっと聴いてみたいと思い調べてみたら、Dounia Production からの CD だけでもまだこれだけ出ていた。またマルセイユまで探しに行かなきゃ。いや、それよりアルジェに行きたいぜ!










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by desertjazz | 2015-12-13 14:00 | 音 - Music

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☆2015年10月13日(火)

 今年2度目となったパリ滞在4日目、夜はモロッコのソウル・ディーヴァ、ウム OUM の新作(4作目)"Zarabi" のお披露目ライブへ。ウムはインディ・ザラ Hindi Zara と並んで特に好きなモロッコの女性シンガー。この日は同じパリで Souljazz Orchestra のライブも組まれていて、どちらに行くかちょっと迷ったものの、やっぱりウムが観てみたかった。


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 会場は Café de la Dance。まあ当日券でも十分入れるのだろうと余裕でいたら、、、なんと数日前にチケット完売。彼女人気あるんだなぁ。確かに Tinariwen とコンサートで共演するほどだから、それも不思議じゃないか。日本からネットでチケットを買っておいて正解だった。


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 少し早めに行ったのにこの長蛇の列。これがこの先、角を曲がった通りの先までずっと続いていた。やっとこさ場内に入るとフロアはすでにファンで埋まっている。ステージ前にはモロッコ系と思わしき若き美女ばかり。事前にマネージメントから写真撮影の承諾を得ていたもの、これではステージ最前まで行けない。まあ、良い写真を撮ることは諦めて(それでも遠目から少しだけ撮影したけれど)、ライブを楽しむことにしよう。


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 ステージ上一面を埋め尽くす生花。アドリアーナ・カルカニョットの日本公演を思い出すな。いつもスタイリッシュで美しいウム、今夜は思ったよりも質素な衣装で登場。ステージ袖でサンダルを脱ぎ、裸足になってステージ中央へ。まずお供え物にお祈り?


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 予想通り、新作 "Zarabi" の曲を中心に進行(CD "Zarabi" はパリ到着後に買ったものの、ライブ前に聴けなかったので、このことは後で確認)。新作に関して意外だったのは、これまでからはレコーディング・メンバーを一新したこと。ベース、ウード、パーカッション、トランペットという4人編成のバンドのアコースティックな演奏は、ジャジーでとても穏やかなものだ。ウムの歌も抑えめな印象で、ぐっと大人めいた雰囲気。全体に柔らかいナチュラルなサウンドを楽しめたものの、ライブで聴いていると音量がやや物足りなく感じるところもあった。

(翌日観たナターシャ・アトラスのライブもトランペット奏者を従えたジャズ路線で、2人とも模索している時期なのかな?とも思ったのだった。)


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   Damian Nueva (Contrabase)


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   Yacir Rami (Oud)


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   Rhani Krija (Percussions)


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   Yelfris Valdes (Trumpet)



 中盤からは、もう一人のトランペット奏者、パワフルな女性シンガー、サックス奏者、キューバン・パーカッション奏者が次々登場。モロッコとソウルの枠を超えて、ジャズ、カリブ、南米、ブラック・アフリカまでもを取り込んだ汎ワールド的なステージを展開。ただゲスト・プレイヤーに繰り返しソロ演奏の機会を与えるものだから、ステージングがどんどん冗長になっていく。新作を作ったコアの5人だけでライブを完結させた方がずっと良かったのではないだろうか。そこが個人的には残念。

 それでも終盤に "Taragalte" を聴けて良かった(これも、ソロ回しが長過ぎ)。この曲が現時点で彼女の代表曲だと思う。ウーレーション(ユーユー)含む絶唱を聴いてやっと満足できた。他のお客さんも似た気分だったのかな?「Lik やって!」なんて声もかかっていた。ファースト・アルバムのこのタイトル曲、今でも好かれているようだ。


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 Camera : Canon EOS 7D Mark II
 Lense : EF-S17-55mm F2.8 IS USM

 ステージからやや離れて、なおかつ移動できないポジションからの撮影は厳しいな。ましてやまだ新品カメラを試用中。でも、ブログにアップして見ると、何とか見るに絶えるレベル。このレンズ、ワイドなのに優秀だな。

 最初ステージ下手(左側)でスタンバイしていたのだが、公演前に上手(右側)に移動。この決断は正解だった(ウードの手元は見えなくなったが)。良い音を聴く、良い画を撮るには、カンと観察力とその結果のポジション取りが重要。




 当日のステージから1曲 "Mansit" が昨日5日に公開された。

 OUM - MANSIT Live @ Café de La Danse




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 (1) Oum "Lik'Oum" (2009)
 (2) Oum "Sweerty" (2012)
 (3) Oum "Soul of Morocco" (2012)
 (4) Oum "Zarabi" (2015)

 (1) はモロッコ・オンリー(?)でリリースされたファースト・アルバム。Fassiphone や AMD も配給したようなので、欧州でもある程度流通していたかも知れない。欲しいという人がいるので、デッドストックの有無をマネージメントに問い合わせてみる予定。(2) は主に仏グルノーブルでの録音。ウムは一部の曲でキーボードやギターも担当している。ボーナス・トラックの "Oum Song" はマヌ・ディバンゴが演奏とプロデュースで参加。(3) は (1) の5曲と (2) の2曲に "Haylala" と "Taragalte" を加えたベスト盤。ただし "Lik" はファースト収録とは異なるアコースティック・ヴァージョン。

 新作 "Zarabi" もとても良い作品だ。しかしこれらを順に聴いていくと、ファーストとセカンドにあったポップさや快活さが抑えられた分、彼女本来の魅力が幾分薄れてしまったような気もする。










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by desertjazz | 2015-12-05 22:00 | 音 - Music

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