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107) トマス・ピンチョン『V.』(下巻)
108) 辺見 庸『水の透視画法』
109) トマス・ピンチョン『競売ナンバー49の叫び』
110) 中山康樹『ジャズ・ヒップホップ・マイルス』
111) サルバドール・プラセンシア『紙の民』
112) アガサ・クリスティー『そして誰もいなくなった』(早川・新訳版)
113) ウラジミール・ナボコフ『ロリータ』(若島正 新訳版)
114) 長谷川町蔵+大和田俊之『文化系のためのヒップホップ入門』
115) 山村 修『増補 遅読のすすめ』
116) ジョナサン・サフラン・フォア『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』
117) 日本香辛料研究会『スパイスなんでも小事典 おいしくて体によい使い方』


 今月読了した11冊。先月までとは一転して、なぜか海外小説の名作や話題作が多くなった。読み始めた専門書や資料本の類がどれも思うように進まないものだから、小説に逃れる気持ちが強かったのだろうか。

 そうした資料性の強い本や今月読んだ小説(もちろんクリスティーだけは除く)はじっくり読まなくては分からないものばかりなので、毎夜、音楽は聴かず、酒もなるべく控えて読む時間が長くなった。そのおかげで外呑みする機会がいよいよ少なくなってしまったことは反省点。

 じっくり読んだとは言え、ピンチョンなどは時間をかけても理解できないだろう部分が多く、そのようなところは割合普通のスピードで読み進めた(とは、すでに書いたかな?)。107) 109) 111) 113) 116) は繰り返し読まないと分からない作品なのだろうと思う。また 112) は読み終えて種明かしが済んだ途端に最初から読み返したくなるところも、名作たらせているのだろう。

 読後感をまだ書いていない 116) は英語版と日本版で図版を比較して「そうするか」と面白く感じたり、少し疑問に思ったりした箇所がいくつか。117) で初めて知ったスパイスの基本的ことがらも多かった。


 (2011.11.05 記)





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by desertjazz | 2011-10-31 23:59 | 本 - Readings

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 夕方、ジュンク堂で新刊のチェック。トマス・ピンチョン『ヴァインランド』、今福龍太『薄墨色の文法 物質言語の修辞学』の2冊を購入。

(今日の ROVO+System 7 のライブ(京都・ 京大西部講堂)は週明けから上京する予定なので、体調など諸事情を鑑みて断念。後悔しそうだけれど、全部は無理なのでしかたがない。誘いのあった AfroTokyo - Senegal - Super Deluxe に行けなかったことも無念。)

 新潮社の「トマス・ピンチョン全小説」はこれで9冊目(6作目)。毎度発売と同時に買い続けている。その大きな理由は、装丁がたいへん美しいからで、自然と奇麗な状態の本を持っていたくなる。カバーの絵は毎回魅力的だし、本体もとても上品な造り。こうした書物が書棚に並んでいるだけで生活が潤ってくる気分だ。

 本は、言うまでもなく読む楽しみが一番なのだけれど、読み始める前や読み終えた後に、カバーを眺めて、あるいは帯やカバーを外して本体を愛でるひとときも楽しい。先日読み終えたサルバドール・プラセンシア『紙の民』は、カバーと帯に幾つか工夫が施されていることを、「解体」して初めて気がついたりもした。

 それにしてもピンチョン、面白い。もちろん大部分がチンプンカンプンなんだけれど、彼の脳内ワールドの広さには圧倒されるし、どこまでまじめなのか分からなくなるユーモアにも笑わされる。今月上旬に『V.』と『競売ナンバー49の叫び』を読み終えたのだけれど、小説を読んでいて吹き出し、それがしばらく止まらなくなったのは久し振りのことだった。20代で書いた『V.』と50代で書いた『M&D』とでは31年の隔たりがあるのに、まるで一緒な印象だったのには凄いの一言しか出てこなかったな。

 本心ではもっと買いたいし、もっと読みたいと思うのだけれど、そうさせる本ほど自分にとって難解なものが多いので、なるべくガマンするようにしている。今福龍太は『クレオール主義』も最近また読み始めたのだけれど、やっぱり冴えない自分の頭にはすんなり入ってこない(ピンチョンは読み始めてしばらくすると波に乗ってどんどん進んでしまう。じっくり読んでも全て理解できる作家ではないので、その波にまかせて読んでいるのだけれど…)。



 夜、ジョナサン・サフラン・フォア『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』読了。9.11/WTCビルで父を亡くした9歳の少年(主人公)ら登場人物たちの彷徨い悩む姿に、3.11 後の日本人の心情が反映しているといった書評もあって話題になっているらしい。読んでいて感じたのはサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』みたいだなということ(そう思ったら、解説にも同様なことが書かれていた)。それと、サルバドール・プラセンシアよりもこっちの方が「紙の民」たちなんじゃないかなんてことも思った。実験性に富んだ本なので、『紙の民』と同様、英語版も時々参照しながら読んでみた。500ページ近くあるけれど、2晩で読み終えられる程度の軽さ(内容は重いけれど)だったので、今度は英語版にもトライしてみようかな?(詳しい読後感はまた時間ができた時に…。)





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by desertjazz | 2011-10-29 23:00 | 本 - Readings

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 今話題の本、長谷川町蔵+大和田俊之『文化系のためのヒップホップ入門』(アルテスパブリッシング)を読んでみた(10/26 に読了)。

 両人の対話は、いきなり「ヒップホップは音楽じゃない」で始まる。これでつかみはOK! まあこれは極端な表現だとしても、ヒップホップのゲーム性を見事に捉えた言い回しで、終始このスタンスをベースに論じ合っていく。他にも秀逸な喩えが散らばっていて、アーティスト名などの固有名詞を知らなくても、ヒップホップ・シーンの全体状況と歴史がすんなり頭に入ってくる。そう解釈すればいいのか、と膝を打つこともしばしば。

 ヒップホップも歴史の見直しが重ねられている印象を受けた。ソウルやR&Bを支流として捉えるなど、正史/傍流が逆転していくような感覚は、大和田俊之の『アメリカ音楽史 ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで』中山康樹『ジャズ・ヒップホップ・マイルス』とも相通じる。実際、振り返って頭に残っている論述が、どの本に書かれていたのか分からなくなっていることも多く、これら3者はある部分シンクロしていると思った。

 なるべくCDなどの音を聴いて、少なくとも YouTube を参照しながら読めば理解が進んだだろうとも思う。だがそこまではやらなかった。それは、このジャンルには自分が積極的に聴く音楽は少ないことを改めて気づかされたから。その証拠に、第7部で「ヒップホップ的な楽しみ方をしているエンターテインメント」として例をあげられている3つとも苦手に(ほとんど拒絶)しているから。自分がヒップホップ/ラップをあまり聴かない理由を説明された気分だ。

 最近の傾向で興味深く思ったのは、ヒップホップが内向化/フォーク化しているという指摘。自分は近年(マーケット向けのポピュラー音楽と共存する形での)コミュニティー・ミュージックやローカル・ミュージックの意味や、その延長上で生まれるパーソナル・ミュージックの様々なあり方(広がり方)に関心を持って考え続けているが、ヒップホップでも内向化しパーソナルなスタンスをもった作品が増えているというのは驚きだった(もちろん両者は同等なものではない)。しかもそれが、マーケット上でも成功しているという現象は面白い。

『アメリカ音楽史』、『ジャズ・ヒップホップ・マイルス』、『文化系のためのヒップホップ入門』の3冊はクロスさせながら再読してみると新たな発見もありそうだ。今度は少し批判的に読んでみたいとも思う。




 それにしても、アルテスパブリッシング/鈴木 茂さん、ヒットを連発していますねぇ。




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by desertjazz | 2011-10-28 00:00 | 本 - Readings

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 今年の夏は『スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド』にほとんど没頭していたので、今年前半〜7月までに買ったCDがきちんと聴けていない。スキヤキが終わってやっとそうしたCDを聴く時間が生まれ、このごろはそれらを少しずつ聴いている。

 昨日紹介した The The の OST "TONY" は、それらの中でも特に気に入ったアルバムだったので取り上げてみた。The The について今頃ちょっと書く気が起きたもうひとつの理由は、彼の公式サイト、特にディスコグラフィーの充実振りをメモしておきたかったから。アルバムもシングルも全てのヴァージョンのデータを列記しているのは驚きである。The The のファンなら一見の価値あり。


 このディスコグラフィーをざっと見てみて、自分も結構集めてきたことが確認できた。それ以外に気づいたことがいくつかあったので、軽くメモしておこう。

1) 音源としては全アルバム持っているつもりだったが、"SEE WITHOUT BEING SEEN" (Lazarus - very limited cassette release - 1978) という作品がリストの冒頭にある。どうやらこれがファースト・アルバムらしいのだけれど、さすがに持っていない。しかし、'very limited cassette release' なんじゃ手に入れようがないな。

2) 手元にある最初期のシングル盤を確認すると、ファーストが1枚、セカンドが3枚あった(↑写真)。それらのうちの2ヴァージョンはリストに載っていないので、やはりブートだったか?

3) Matt の実弟 Andy が描いたイラストのインパクトが強くて、7インチ/12インチのヴァージョン違いもかなり集めたが(写真中、Andy画なのは右下の1枚のみ?)、"Soul Minig" 関連のレコードに限ってはあまり揃えられなかったみたいだ。熱心にコレクトされたファンのどなたかがスリーブのイラスト全てを公開しているなら見てみたい。


 "Infected" に代表される Andy Johnson のイラストが The The のカラーを印象づけていたと思うし、そうしたイラストの数々を集めることも楽しみだった。なので、リマスター盤が Matt の顔写真に変更されてしまったのは残念。Andy が亡くなったことも影響しているのだろうか?





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by desertjazz | 2011-10-27 00:30 | 音 - Music

New Disc : OST "The The / TONY"

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 The The (Matt Johnson) も全ての作品を集めていたミュージシャンのひとり。1986年にリリースした "Infected" とそのビデオ(全8曲とも制作された)が素晴らしかったものだから、一気に好きになり、The The / Matt Johnson の作品を探しまわった。その甲斐あって、LP/CDアルバム以外に、7インチ、10インチ、12インチ、ビデオ作品の大半も蒐集できたように思う。

 その彼も 2000年の "Naked Self" を最後に、ベスト盤やリマスター盤を稀に出す程度で、新作を発表していない。なので、すっかりリタイアしたものと思っていた。ところが、昨年10年振りに新作 "Cineola Volume I: Tony A Soundtrack By The The" を出していたことを知った。タイトル通り映画 "TONY" のオリジナル・サウンドトラックで 32 トラックを収録(うち 8トラックが映画中の会話のサンプル)。このCDのパッケージは、68ページのブックレット(ロンドンを写した写真集)付きという体裁になっている。

 本作のサウンドの方は完全に Matt Johnson のソロ・ワークで、ピアノ、メロディカ、モーグ、アコースティックベース、テープループの全てを自身でプレイしている。短い挿入曲が並ぶこの作品が結構気に入っていて、ここ数ヶ月聴き続けている。ホラー映画の音楽らしく極めてダークなトーンなのだけれど、独特な哀切さが伝わってきて、どこかポップさも感じさせる音の起伏。いかにも Matt Johnson 節といった感じだ。

 これはサントラという変則的な新作なのだけれど、彼がまだ引退した訳ではなく、今後オリジナル・アルバムもリリースする可能性があると解釈して構わないだろう。そのことを知っただけでも、ファンとしては嬉しい。


(続く)





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by desertjazz | 2011-10-26 17:00 | 音 - Music

夢の共演

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 OKI のライブを観るとき、サカキマンゴーのライブを観るとき、その度に自分は日本に生まれて良かったなと思う。このふたりの音楽に直に触れる機会が多いのは実に幸せなことだと思っている。本当に何度聴きに行っても楽しめる音楽なのだ。両者とも、トンコリ/親指ピアノでソロ・ライブもやるし、自身のバンドでのライブもやるのだが、どちらもがいいものだから、ライブに行く回数がついつい増えてしまう。彼らの生演奏には一体どれくらい接してきたことだろうか。

 考えてみると、ソロ・ライブ、バンドでのライブの双方とも優れていること以外にも、両者には似たところや共通点がある。まず、どちらもロック出身(確かふたりともエレキギターを弾いていたはず)。それがひょんなことから民族楽器と出会い、その縁があってプロのミュージシャンになってしまう。また、片や日本の極北アイヌの言葉で歌い、片や日本のディープサウス鹿児島弁で歌うという特徴も類似したことのひとつだろう。樺太、あるいはアフリカの田舎まで調査に出かけたり、ほとんど絶滅しかけた楽器を復活させた熱意にも相通じるものがある。話が抜群に面白いのも共通しているか。

 そんなふたりが共演したらどうなるのだろうと、時々想像することがある。難しいかも知れないとは思うが、機会があればいつか聴いてみたいものだ。

 思いついて OKI さんの写真とサカキマンゴーさんの写真を並べてみたら、、、ほら、何だか一緒に視力検査をしているみたいになった。いや、音の背後にあるものを冷静に見つめる眼だろうか。ふたりの相性は、きっといいに違いない。





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by desertjazz | 2011-10-25 20:00 | 音 - Music

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 Peter Gabriel も新作が出れば聴き続けているミュージシャンのひとり。彼の新作ビデオが届いたので、今夜はこれをじっくり観るつもり。なので、ブログも読書もお休みです。


 観終えて感想を書き出したら、また長くなりそうだ。それにしても安い。162min 収録された Blu-ray が ¥1612 なのだから (amazon.co.jp)。





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by desertjazz | 2011-10-24 22:00 | 音 - Music

「遅読のすすめ」

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 この週末もアマゾンに注文していた本が3冊届いた。今月は結構なペースで本を買い続けている。<読書の秋>ということで、たまにはこんな月があってもいいだろう。おまけに私が読書好きと知ってか、いろいろな人が「この本読んでみて」と言って持ってくるものだから、読んでみようと思う本が溜まるばかり。

 こう面白そうな本が目の前に積み重なってくると、今読みかけの何冊かを早く済ませてしまいたいとついつい思ってしまう。けれど、それができない。私は読むスピードがかなり遅い方だし、かと言って飛ばし読みするのも好きではない。そのため、小説を解禁して読書量が幾分増えた昨年あたりからは読書に相当な時間を費やすことになっている。結果、音楽を聴く時間が減り(「ながら」もあまりしない)、外で呑むことも稀になってしまってもいる。

 もっとたくさん読みたいという、はやる気持ちを落ち着かせるために、今日は山村修の『増補 遅読のすすめ』(ちくま文庫)をゆっくり読んでいた。この本、ゆっくり読むこと、通読することの意味や重要性について丹念に語っている。そして、自分は決して間違ってはいないのだということを確認できた。まあマイペースで楽しむのがベストだろう。

 いやもっとゆっくり読んだ方がいいのかも知れない。理想的には普通のスピードで一度読んで、それからじっくり再読、再々読することかと思うのだけれど、さすがにそこまでは難しいかな。考えていたカズオ・イシグロの再読も、その前に気になる本が多すぎて、ずっと先送りになっている。

 時間をかける読み方は今さら変えようがないから、やはり読む本の選択が重要になってくるのだろうな。それがきちんとできているとは思えないけれど、余生(自分に残された時間)を思うとそのことを考えざるを得ない。



 同様のことは聴く音楽についても言えることだろう。昔はたくさんのレコードを聴きたかった、何でも聴いてみたかったけれど、今はもう無理。昨年だったら買っていただろうけれど、今なら買わない、というCDが毎年増えている。と言うことは、5年前、10年前だったら迷うことなく買っていたディスクの相当数をスルーしていることになる。

 過去にも書いた記憶があるが、レコード店を漁るよりも、自宅の棚をチェックする方が、楽しいし興奮もする。新しい音楽を探すよりも、長年愛聴してきた音楽をより深く楽しむ方が相応しい年齢になったようにも思う。昨日、アドリアーナ・カルカニョットの "A FÁBRICA DO POEMA" を4度ほど繰り返して聴いて、やっぱりいい作品だなと思ったし、こうした時間をもっと大切にしたいと改めて感じもしたのだった。



 また余談になるが、かつて書評に関わっていた知人が、「2週間に新刊20冊読むのがノルマで、これがキツイ」と語っていた。某音楽ライターに買ったCD全部聴いているのと訊ねた際、「ほとんどどれも一回ずつしか聴かないですね」と答えてくれた。「プロ」は大変だなと思う反面、これでは作品をしっかり味わうことは無理だろうとも思った。自分が書評やディスク評をほとんど読まず信用している書き手が少ない理由のひとつもここにあるようだ。



 使える時間は有限なので、最近はこのブログも気分転換程度になるべくさらっと書いて終わらせているし、書き上がらなかったものは「個人メモ」として非公開のままにしている。




 夜は過日 WOWOW の放送を録画しておいた映画『瞳の奥の秘密』を観た。確かによく出来ているし、面白かった。重層するいくつかのテーマ、細やかなプロットの構成。まあエンターテインメントなんだろうけれど、感じるところは多く、映画ももっと観たいと思ってしまった次第。





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by desertjazz | 2011-10-23 23:00 | 本 - Readings

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 縁あって出会い、いくつかのアルバムを聴いて特に気に入ったミュージシャンの作品は、全て聴いてみたくなって買い集めるし、それで本当に惚れてしまったらそれ以降の新作もずっと買い続けてしまう。若い頃に聴いたロックならば Randy Newman と Bruce Springsteen と Joni Mitchell。ジャズなら John Coltrane と John Surman、と言いたいところだけれど、彼らは作品数が多すぎて最近は諦めている。(他にもたくさんいるが、今は Bugge Wesseltoft が一番かな?)

 全作品を聴いてみると、そのキャリアを俯瞰することによって分かってくることが多いし、互いの作品や他のアーティストの音楽との関連性も見えてくる。もちろんそんな考察めいたこと以上に、好きな音楽を聴いているのだという素直な楽しみが大きい。集めた作品を繰り返し聴いていると、どれもをほとんど等しく愛でるようになったり、たくさんあるうちの数作ばかりを聴くようになったりと、ミュージシャンごとに付き合い方が違ってくるのも面白い。

 自分の場合は好きになった作家の著作は全部一気に買って読んでしまう衝動が抑えられない。映画はあまり観ないのだが、映画ファンの感覚も同様なのではないだろうか?

 間もなく来日するブラジルのアドリアーナ・カルカニョット Adriana Calcanhotto もそんな「全部聴くミュージシャン」のひとりだ(ブラジル音楽をあまり熱心に聴く人間ではないので、現役のブラジルの女性シンガーでずっと聴き続けているのは、マリーザ・モンチ Marisa Monte とフェルナンダ・アブレウ Fernanda Abreu くらいだろうか。ロベルタ・サー Roberta Sá も全部持っているかも知れない)。



 土曜日の今日は生憎の天候。なので、週末旅行もイベントに行くことも諦め、そのかわりにアドリアーナ・カルカニョットの全アルバムを繰り返し聴いてみた。Blog Latina も参考にさせてもらったのだけれど、これで自分の耳もかなりアドリアーナ・モードになっただろうか。

 以下、久し振りにまとめ聴きした簡単な感想。

 デビュー作 "ENGUIÇO" (1990) は今じゃ考えられないジャケットの色合いが気恥ずかしい。歌もまだまだ不安定。けれど、悪い作品じゃないと思う。ひとりのアーティストの資質はその第1作目に全て詰め込まれている、といったことはしばしば語られるが、彼女の場合もある程度それが当たっているかも知れない。つまりは、現代風のサンバであったり、カエターノ風であったり(そうした点では、Celso Fonseca が参加しアドリアーナをサポートしているというのは幸せなことだと思う)。ラストに収録された声色を激しく変えて早口で歌われるライブ録音なんかは、後年の Partimpim にも通じるサービス精神豊かなエンターテインメント性も感じさせる。

 セカンド・アルバム "SENHAS" (1992) は正直褒めるところが少ない過渡期の作品ではないだろうか。3曲目くらいまではいいなと思うのだけれど、それ以降は如何せん音が古い。

 けれども、続く3作目 "A FÁBRICA DO POEMA" (1994) で彼女の才能が一気に開花する。ノスタルジックでメランコリックな独特なメロディー。母性的なヴォイス。サウンドも隅から隅まで全て好き。今日も1曲目でウキウキし、7曲目でウルウルしてしまった。アートワークもセンス良くて、これは本当に素晴らしい作品だと思う。実に爆発的クリエイティビティーに溢れた傑作だ。個人的にはこのアルバムでアドリアーナに出会ってノックアウトされた。以降はリリースされた瞬間に買い続けているので、持っているのは全て輸入盤。

 ライブ録音+スタジオ録音の5作目 "PÚBLICO" (2000) も感動的なまでの作品。一部やりすぎの実験性も感じるけれど(オーディエンスの音の加工など)、傑作ライブだと思う。Manu Chao 'Clandestino' のカバーもいい感じです。

 6作目 "CANTADA"、7作目 "MARE"、そして最新作の "o microbio do samba" と安心して聴けるアルバムが続く。安定飛行期に入った印象の作品たちかな。

 ということで、これからアドリアーナを聴いてみようという人にお勧めしたいのは "A FÁBRICA DO POEMA" と "PÚBLICO"。来日公演の予習のために "o microbio do samba" (邦題:『サンバの微生物』)も必聴でしょう。


 ・・・と書き終えたところで、「4作目の "MARITMO" (1998) を飛ばしているじゃないか」と指摘を受けることだろう。飽きるほど聴いたこのCD、どこに行っちゃったのかいくら探しても出てこない。ブラジル音楽のCDはそれほど多く持っていないので不思議なことなのだけれど、多分他のところに間違って紛れ込んでしまったのではないだろうか。なので、明日はこのCDを探しながら、アドリアーナの変名プロジェクト Adriana Partipim の作品を聴き直したり、DVD作品を観かえしたりすることにしようか。




 余談を少々。

 今回の来日公演、高い新幹線代を払ってまで東京と大阪の両方を観に行くというのは無駄じゃないだろうか。カウシキの3公演を観に行ったのは正解だったけれど、アドリアーナでそこまでするのはどうかと、我ながら迷った。けれど、今日一日アドリアーナを聴き続けて、彼女の歌声をとことん愛していることを再確認。あと何日かを期待を大にして待つことにしよう。

 前回の『+3ライブ』は盛況だったので、さほど大きくない箱での今度の2公演、チケット即完売かと思ったら、まだ若干数残っている様子。もし行くかどうか迷っている方がいるなら、おこしになって欲しいです。私はブラジル音楽にも疎いので、ブラジル音楽愛好家の方々、そしてアドリアーナのファンの皆さんと、お会いすること、お話できることも楽しみしています。





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by desertjazz | 2011-10-22 22:22 | 音 - Music

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 昨夜綴った通り Miles Davis は無理して全作品を聴こうとしなかったのに対して、Frank Zappa は全部を聴いてみたいと思ってしまうミュージシャンのひとりだ。なので、しばらく前に彼の最新作 "Feeding The Monkies At Ma Maison" (2011.09.01発売)について調べていた際、それに続いて "Carnegie Hall" がリリースされることを知った時にも迷わずプレオーダーしてしまった。いやそれどころか、まだ買っていなかったアルバムも全部(「演説もの」など特殊な作品を除いて)まとめてオーダーした。今は超円高なので海外から買うにはいい時期だし。とにかく "Carnegie Hall" の届く日が待ち遠しい。

Frank Zappa Official Site(CD の購入も可能)


(今度の新作は1971年のカーネギー・ホールのライブ2セットを4CDに収録したもののようなのだけれど、同年(72年だったかな?)のカーネギー4枚組といえばシカゴ Chicago の4作目を思い出す。)


(追記)

 これを書いた直後に1ドルが75円台になった。"Carnegie Hall" は$42なので、単純計算すると約3200円。ほとんど国内盤CD1枚分の値段じゃないか。

 ただ FZ はほとんど全ての音源を自分で管理し、ライブも長年にわたって全てマルチ録音してきたので、こうした作品は今後も延々出し続けることだって可能。それにつきあって買い続けることは、喜びのようでもあり、ちょっとキツイなと感じたり…。




 これからしばらくは他にも楽しみなことが続く。まずはアドリアーナ・カルカニョット Adriana Calcanhotto の来日(東京 11/2、大阪 11/4)。彼女の日本公演がいよいよ迫ってきた。自分のスケジュール調整もほぼ済み、どうやら東京と大阪の両ステージを観ることができそうだ。

Blog Latina(ディスコグラフィー、インタビューなど)




 フレンチ・ラップのユニット 113 のモコベ Mokobe の新作 "Africa Forever" が 10/24 にリリースされる。これも既にオーダー済みで、来月初旬には届く予定。前作 "Mon Afrique" (2007) は、Youssou N'Dour、Salif Keita、Manu Chao、Amadou et Mariam、Tiken Jah Fakoly、Sekouba Bambino Diabate、Vivian N'Dour らがゲスト参加するという豪華版、内容も良かったので、今度の新作も期待大だ("Mon Afrique" がリリースされた直後の DJ Party では、まだ日本に入ってきていない?この CD を複数の仲間が持ち寄って盛り上げたことがあった)。

Mokobe(facebook)(面白いプロモが観られる)




 11/20(日)は大阪市中央公会堂で開催される『アイヌミュージアムフェア in 大阪』に行きたいと考えている。その前夜には STANDARD BOOKSTORE でプレイベントがあるのだが、こちらも面白そう。

アイヌミュージアムフェア in 大阪
STANDARD BOOKSTORE




 これらに加えて、来月11日からは名古屋で Jackson Pollock 展が始まるし(来年には東京でも開催されるが、ゆっくり観たいので取りあえずまず名古屋に行く予定)、どこかに紅葉も観に行きたし、それから…。あと、忘年会も考えなくてはいけないな。

 その前に、明日のモレーノ・ヴェローゾ Moreno Veloso のソロ・ライブ(大阪)、どうしよう?

Moreno Veloso Solo Tour





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by desertjazz | 2011-10-21 23:00 | 音 - Music

DJ