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 最近メインに読んでいるのは、グレアム・ファーメロ『量子の海、ディラックの深淵 〜天才物理学者の華々しき業績と寡黙なる生涯〜』とシルヴィア・ナサー『ビューティフル・マインド 〜天才数学者の絶望と奇跡〜』。前者は量子力学の理論を確立する上でその主役を担ったひとりディラックの、後者は長年の統合失調症との闘病の後にノーベル賞を受賞した数学者ジョン・ナッシュの伝記(ナッシュの伝記はオリヴァー・サックスの『妻を帽子とまちがえた男』などを面白く読んだ人にもお勧めかも)。ディラックは2段組み620ページ強、ナッシュは950ページ強ある大部なので、果たしていつ読み終えられるものかとも案じているのがだ、どちらもプロローグがムチャ面白くてツカミはOK! 案外一気に読めてしまうかも?



 さて、ここで突然問題。「2という数字をきっかり4回使い、さらに、一般的に知られている数学記号だけを使って、任意の整数を作る」ことはできるだろうか。(『量子の海、ディラックの深淵』P.221)

 P.222 に書かれている通り、1から4までは簡単。

  1=(2+2)/(2+2)
  2=(2/2)+(2/2)
  3=(2×2)ー(2/2)
  4=2+2+2−2

 この調子で考えれば、5と6も簡単ですね。それでは7以降は? 1929年からイギリスの誇る数学者たちがこんなゲームに夢中になったそう。

 でも、ディラックがこのゲームに終わりをもたらした。何とディラックは任意の整数を作るシンプルな方程式を発見したというのだ。まさかと思って巻末の原注(P.605:この本、原注も詳細で実に 1499項もある)を開くと、確かにこの式でどんな自然数でも作れてしまう(ゼロとマイナスの整数だとどうなるのかな? 後で計算し直してみよう)。つまり4つの2と簡単な数学記号だけで、7だって、100だって、1234だって、100000000 だって、どんな整数でも作れてしまうのだ! しかもその式はとてもシンプル(加減乗除の4つ以外の他の記号も使っている)。

 こんな答えは相当な数学の専門家でも導き出せないだろう。よっぽどの数学好きでも、一般人にはとても無理。こんなところにも、20世紀を代表する天才理論物理学者ディラックの凄さを感じる。




(追記)

 これを読んだ友人が「この数式が222ページにあるというのがオシャレ〜」と指摘。気がつかなかった!






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by desertjazz | 2014-04-25 00:00 | 本 - Readings

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 友人が Facebook にアップしたアマゾンの写真を眺めながら、「アマゾンにも行ってみたかったな」などと思いつつ、最近新潮文庫から出直した国分拓の『ヤノマミ』を読み終えた。

 これはブラジル北部、ベネズエラとの国境地帯に暮らす狩猟採集民「ヤノマミ」の村に150日間(2007〜08年)滞在した TVディレクターによる記録。

 この類の他の書物と同様、様々なことを考えさせられるが、なんと言っても、出産直後のシーンが白眉。森の中で産み落とされた赤児は、人間として受け入れられるか、あるいは精霊として天に還されるか、母親(それは時には10代前半の少女であったりする)のその瞬間下す判断に全て委ねられる。強烈であり、残酷でもあり、ドキュメタリー/ノンフィクション史上でも希有な衝撃的シーン。ほとんどそれを読むだけでも、価値ある一冊だと思う。






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by desertjazz | 2014-04-24 22:00 | 本 - Readings

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 Teranga Beat からの次なる新譜はデクスター・ジョンソン Dexter Johnson の未発表ライブだって!

Teranga Beat | Dexter Johnson & Le Super Star de Dakar "Live a L'etoile"

 デクスター・ジョンソンはナイジェリア生まれながら 50年代にセネガルのダカールに移り住む。以降、ダカールの主要バンドには常に彼がいて(Star Band にも在籍)、50年代から60年代末にかけての彼の音楽活動はそのままセネガルのポップ史と言ってもいいくらいの存在。セネガル最初のポップスターであり、彼のラテン風味のスタイルがあったからこそ、後年の Orchestre Baobab も生まれたとも言えるのではないだろうか。

 この度発掘されたのは彼がダカールを離れてアビジャンに移動する直前最後のライブ音源らしい(1969年録音)。告知を読むと CD よりも 2LP の方が1トラック多いらしく、アナログ盤を買いなさいということ?(それとも1曲だけデジタル DL できる?)

 セネガリーズ・ポップの黎明期には関心があって、彼のレコードもダカールでずいぶん探したので、これは楽しみなリリースだ。6/2 に発売予定。






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by desertjazz | 2014-04-23 20:40 | 音 - Africa

New Disc : V.A. "African Gems"

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 オランダの SWP Records (Sharp Wood Productions) から新譜 "African Gems : recordings by Charles Duvelle, Jos Gansemans, Benoit Quersin, David Fanshawe" が送られて来て、早速聴いているところ。

 SWP といえば、ご存知の通り 20世紀最高のアフリカ音楽研究家だったヒュー・トレイシーの残した膨大なフィールド・レコーディングを整理し復刻した "Historical Recordings by Hugh Tracey" で知られるレーベル。トレイシーの録音は40〜50年代のものが中心だった。さてその後はどうだったか? このアルバムはそこに焦点を当てた内容と言えるだろう。

 1957年にフランスでワールド・ミュージックのレーベル、オコラ Ocora を設立した Charles Duvelle ほか4人の Recordists たちが、60〜80年代に中部アフリカ7ヶ国(カメルーン、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、アンゴラ、チャド、ウガンダ、中央アフリカ共和国、以上全て現在の国名)でフィールド・レコーディングを行った音源を SWP を主宰するマイケル・ベアード Michael Baird がマスタリングしている。

 内容は期待していた以上にいい。アフリカの村々でトレイシー時代と変わらない音楽が続いていた様子が伝わってくるのと同時に、現代の音楽かと思わされるモダンな響きにも驚かされる。7トラック目、ウガンダで録音された7本のホーンによる爆裂サウンドなんて相当にヤバイよな!

 トレイシー時代とそれ以降の録音テクノロジーなどについても書きたくなってくる。このアルバムはじっくり聴き込んで、改めて解説を書きたい。





(若干手直し 5/3)




 トリビア・ネタをひとつ

 この CD 中でベストとも言えるトラック7 "Alur Horns" を録音したデヴィッド・ファンショー David Fanshawe、昔どこかで名前を見たなと思って調べたら、やはりあった。昔、ミュージック・マガジン増刊号『アフリカの音が聞こえてくる』(1984年)で中村とうようさんから死刑宣告を受けた男だった。でもこれで彼も日本で名誉回復?

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(追記 5/4)





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by desertjazz | 2014-04-21 00:00 | 音 - Africa

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 昨日4月19日は年に一度の Record Store Day。それに合わせてブルース・スプリングスティーンがリリースした「新譜」を聴いていた。

 その "American Beauty" は、4トラック収録の 12インチ EP で、全曲未発表だったもの。Record Store Day 用にアナログのみで 7500枚限定でプレスされた。

 五十嵐正さんが書かれたこれを読むと、近年のアルバムから漏れた曲が主体なようだ。A面冒頭のタイトル曲 "American Beauty " はいかにもデモといった痩せた音質だし、B面の "Hurry Up Sundown" も、アルバム "Working On A Dream" や "Magic" のような飽和した音が好きでない。一番良いのは E Street Band が参加した "Hey Blue Eyes"。できればこうしたすっきりしたミックス・サウンドで揃えて欲しかった。でも、彼のファンンにとっては嬉しいプレゼントです(待っていればデジタル配信なども始まるだろう)。

 4/19 に全世界で一斉に発売なのかと思ったら、日本では SONY のサイトで事前に購入可能だった。何故?(Record Store Day の主旨はパスされてしまったのかな?)それと、7500枚中何枚が日本に入ってきたのだろうか?






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by desertjazz | 2014-04-20 00:00 | 音 - Music

Sukiyaki Meets The World 2014

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 今年のスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド(8/22〜8/24)、本日12時に出演アーティストのラインナップが発表になった。さて、これから予習。やっぱり一番楽しみなのは Jupiter & Okwess International だな!

Sukiyaki Meets The World 2014


 そして今年も Sukiyaki Tokyo の開催が決定。8/26〜8/28 渋谷WWW にて3日間とのこと。






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by desertjazz | 2014-04-19 12:00 | 音 - Festivals

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 昨日18日に発売になった村上春樹9年ぶりの短編小説集『女のいない男たち』を読了。

 これまでの村上新作のときと同様、直後の具体的感想はしばらく保留(これから読む人の迷惑とならないように…)。

 村上の小説を読むとき、主人公がまるで自分であるかのように感じられて重ね合わせてしまうことがある。それも村上小説の優れている点、そして自分が彼を愛読している理由のひとつでもあるのだと思う。そして今回のタイトルは「女のいない男たち」。予想に反して、意外と自身を同化して読むことにはならず。

 個人的には全く受け付けられなかった昨年の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』よりはずっと楽しめた。でも短編集としては『東京奇譚集』(と『神の子どもたちはみな踊る』)の方がいいかな。最後の表題作は埋め草と感じられたし。いかにも村上らしいパーツ(巧妙なたとえ、なじみある地名、命名センスなども含めて)が並ぶのだけれど、全体的にはいつもの村上らしさを我慢して抑えた印象もある。

 村上の小説は、性や女性の描写の仕方を理由に好まない女性も多くいると聞く。さて世の女性たち、今回はどのように読むのだろうか? そんなことも思いながらの一気読みだった。





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by desertjazz | 2014-04-19 11:00 | 本 - Readings

G. Garcia Marquez R.I.P.

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 ガブリエル・ガルシア=マルケスが亡くなったのか(昨夜は飲み会で南米話でも盛り上がったところだった)。

 ガルシア=マルケスは、30年くらい昔に映画『予告された殺人の記録』を観て興味を持ってその小説を、さらに『百年の孤独』を読んだ。いや逆で、『百年の孤独』の後に『予告された殺人の記録』を読んだんだったか? はっきり記憶がないが『百年の孤独』が奇想天外すぎて、ナイジェリアのエイモス・チュツオーラを連想したことは覚えている。

 『百年の孤独』は数年前に買い直して(持っていたけれど文字のポイントが小さいので)再読し圧倒された。『族長の秋』なども楽しめたな。

 実は今年はガルシア=マルケスの「全小説」を揃えて、読み直そうかと思い続けていたところだった。


R.I.P.





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by desertjazz | 2014-04-18 13:00 | 本 - Readings

African Reissue 2 : Mali Kunkan

 かつて「Kunkan のアルバムは全部リイシューして欲しい」といったことを書いた記憶があるが、それが実現しつつある。

 マリのクンカン Kunkan は1977年に何枚かのレコードをリリースし、そしてほとんどそれだけで消え去ったレーベル。70年代のマリは隣国ギニアの政策を見習って、国策かのように国内各地方の有力バンドに対して支援が施され、そして彼らのレコーディングもなされた(んだったかな?)。そうした動きが最初に結実したのは 1970年にドイツのレーベル Bareneiter からリリースされた一連の作品群だった。77年の Kunkan から出た一連のアルバムはそうした地方バンド隆盛の第2波だった(という説明で正しい?)。

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 個人的に Kunkan を知ったのは 1999年にバマコの博物館で2枚のアルバムを見つけたことに始まる。前者は豪勢なオーケストレーションを味わえ、有名になる前の Coumba Sidiba が歌っていることでも知られるアルバム。どちらも良質な内容で、それで Kunkan 盤を全部聴いてみたくなったのだった。

・ "L'ensemble Instrumental National du Mali" (KO 77.04.12)
・ L'orchestre "Le National Badema" (KO 77.07.07)

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 そう思いながらも、Kunkan 盤にはなかなか出会えずにいた。そんな最中、数年前に突然オランダの Kindred Spirits から4枚のアルバムがリイシューされ、随分と話題を集めた。Sory Bamba をリーダーに、サイケなエレピが耳を捉える "Kanaga de Mopti" はお気に入り!(Super Biton は編集盤 CD しかまだ買っていなかった。)

・ L'orchestre "Kanaga de Mopti"
・ "Le Mystère Jazz de Tombouctou"
・ "Le Super Biton National De Segou" (Red)
・ "Le Super Biton National De Segou" (Blue)

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 そして最近新たに2タイトル、リイシューされたので、早速入手して聴いている。

・ "L'Orchestre Sidi Yassa de Kayes" (KS-MALI-04, 2014)
・ "Le Kéné-Star de Sikasso" (KS-MALI-05, 2014)

 どちらもまずまずのマンディング・ポップ。その中で "Kayes" の "Sidi Yasa" と "Sebe Te Myola" はかなりイケテるアフロファンク(とりわけ後者のドライブ感たっぷりのグルーヴは最高で、もろに好み)。フロア・ユースにもばっちりでしょう。"Sikasso" の "Lala" は B面全てを費やす長尺ナンバー。男と女(?)の対話が延々続き、まるでバリ島のガムランかトペンの寸劇を聞いているかのようで、これにはちょっとずっこける。(500枚限定の 180g重量盤)


 Kindred Spirits の各レコードには新たな書き下ろしの解説が添えられているが、じっくり読めていない。なので、以上ざっくりとメモ。

 Kunkan は、リリース枚数は少ないものの、結構聴きごたえのある、マリを代表するレーベルなのではないだろうか。




 ネット検索すると Kunkan のディスコグラフィーもあった。これによるとわずかアルバム11枚しかリリースしていないようだ。ならばコンプリート・リイシュー目前か?

Radio Africa | Mali Kunkan discography

(これを見て、77.04は77年4月の、77.07は77年7月の発売と推測。分かりやすい。)






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by desertjazz | 2014-04-17 00:00 | 音 - Africa

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 ここ数年、Continental Records、Academy Lps、Kindred Spirits など主にアメリカのレーベルによって、西アフリカの70年代のアルバムのストレート・リイシューが盛んに行われている。例えば最近だと Zani Diabaté の Super Djata Band などもリイシューされて、熱心なアフロファンもいるものだと驚き半ばに感心しているところ。

 それら全部にはとても手がまわらないし、聴く必要も感じていない。でも、Super Mama Djombo のセカンド "Festival" までもリイシューされたことに気がついて、ふと思い出した。確か彼らのレコードは1枚か2枚もっていたはずだなと。早速レコード棚を漁ると3枚出て来た。

 Super Mama Djombo は70年代の終わり頃に活躍した、西アフリカはギニア-ビサウのトップバンド。久し振りに聴いてみると、マンディングポップにコンゴのルンバや当時西アフリカを席巻したアフロキューバンなどが合い混じった、何ともヴィンテージな懐かしいサウンドだった。Orchestre Baobab の往年のサウンドをちょっと緩めたような感じもして、ますますレトロ感たっぷり。

 "Festival" がアルバム丸ごとリイシューされたのには、未発表トラックを6つも含むコンピレーション CD "Super Mama Djombo" (Cobiana COB-02, 2003) のリリースや、バンド再結成とライブ活動再開の影響もあったのだろうか? ウチにあった LP 3枚を聴いてもそれほど魅力は感じなかったのだけれど、セカンド収録のトラック "Sociedade de Malandros" は結構カッコいいアフロファンクだな。

 ネット検索すると Super Mama Djombo のバイオ&ディスコが見つかった。

SELECT DISCOGRAPHY OF SUPER MAMA DJOMBO

 1) NA CAMBANÇA (SMD 001) 1978
 2) FESTIVAL (SMD002) 1978
 3) SOL MAIOR PARA COMANDANTE (SMD 003) 1979
 4) MANDJUANA (SMD004) 1979
 5) A MEMORIA DE FAMARA MANE (SMD005) 1979


 自分が持っているのは、ファースト、セカンド、サードの3枚だった(4枚目と5枚目はさすがに持っていないし、見たこともない)。3枚とも10数年前にダカールで見つけたものだったはず。よくこんなものまで買い取ってきたなと思うが、それだけこれらのレコードが雰囲気を放っていて(サードは何と見開きジャケット!)、自分のカンも働いたということなのだろう。


(続く)






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by desertjazz | 2014-04-16 00:00 | 音 - Africa

DJ