New Discs : Bjork & Cassandra

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 ここ数日聴いているのは、ビョークの新作 "Vulnicura" とカサンドラ・ウイルソンの新作 "Coming Forth by Day"。時々は話題作も聴きます。

 前者は恋人マシュー・バーニーとの離別から生まれたアルバム(8作目)、後者は今年生誕100周年のビリー・ホリデイのソング集。亡くした母と義父を追憶するスフィアン・スティーブンスの "Carrie & Lowell" も合わせて内省的な作品ばかり聴いていて、あまり春らしくないか?

 ビョークはファーストの "Debut" を聴いて衝撃に近いものを感じ、それ以来全アルバムを聴き続けているが、どこか本気で好きにはなりきれないでいる。でも今度の作品はナチュラルに心に染みてくるような音になっているように感じる。音作り自体は相変らず面白い。

 カサンドラもほぼ毎作買っているけれど、この新作はちょっとバランスが悪いかな(ストリングスの明るさにも違和感がある)。テーマのハードルが高過ぎたのだろうか? マイルス集の "Traveling Miles" は大傑作だったのだけれど。

 2人とも好きな女性アーティストなのに、いまだにライブを観ていないというのがひとつの共通点。積極的にならないのはどうしてなのかな?




 男性アーティストで今一番心待ちにしているのはセウ・ジョルジの新作。iTunes 版は明日 3/31に買えるようなのだが、CD の方の発売は5月になるみたい。

 そして同じブラジルからは、ヴィニシウス・カントゥアリアも新作 "Vinicius canta Antonio Carlos Jobim" をリリースするとのこと!

 ・ Song x Jazz | ヴィニシウス・カントゥアリア『Vinicius canta Antonio Carlos Jobim』


 今年は春先から、大好きになった作品や楽しみな作品ばかり。嬉しいリリースラッシュが続く。そう感じるのは、自分がかなり自然体で音楽を楽しめるまでに回復してきたからなのかもしれない…。






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by desertjazz | 2015-03-30 22:00 | 音 - Music

New Disc : "Bali 1928, Vol.II"

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 何年も待ち続けた CD がようやく完成し、アオラから国内配給になった。早速エル・スールに飛んで買いに行き、じっくり聴いている。

Bali 1928, Vol.II : Tembang Kuna, Songs From an Earlier Time, Tembang - Kidung - Kakawin


 1928年(と29年)にインドネシアのバリ島で初めての音楽録音が行われ、100枚強?の SP盤が現地で発売されたという。その音源の CD化がドイツ World Arbiter によって初めてなされたのは 1999年のこと(18トラックの現地録音に、後述するコリン・マクフィー Colin McPhee のピアノによるガムランのデモ演奏を抱き合わせた変則的なもの)。続いて CD5枚の完全版シリーズが計画され、その1枚目 "Bali 1928 : Gmalan Gong Kebyar, Belaluan - Pangkung - Busungbiu" が2009年にリリースされた。

 しかしそのプロジェクトは中断。プロデューサーが大病を患いシリーズ続行が危ぶまれていると聞いていたのだった。

 さて、突然届けられた第2集。繰り返し聴いているのだけれど、歌(独唱が多く、2人での掛け合いもある)のみの録音が中心で思いっきり地味。とにかく地味過ぎる。録音のせいなのか、SP盤に付随するものなのか、ノイズもたっぷり。でも期待に違わぬもので、その歌声に聴き惚れる。ノイズリダクションはギリギリに留めたようで、その分音が生々しいところがいい。ゆったりした歌声からは当時のバリの空気が伝わってくるかのようだ。(ただし録音自体には密室感が強い。)

 このCDには116ページもあるデジタルブックレットがついていて、各トラックの詳細の他、SP盤のラベルや当時の写真も楽しめる。またアオラの国内盤解説はかつてないほどの長さ。活字のポイントを大きくした英断も大歓迎だ。その解説によると、リリースが遅れたのは「調査プロジェクト」に時間を要したからだとのこと。大病説とどちらが本当なのだろう? いずれにしても長年待った甲斐があった。

 これでプロジェクトは無事再開ということなのだろうか? Vol.3 〜 Vol.5 も早く聴きたい!(あくまで個人的感想。本シリーズの録音はどれも大好きですが、"Vol.II" はさすがに万人向けではありません。)



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 1928年バリ最初期録音のリイシュー最初の1枚 "The Roots of Gamelan" は、発売直後にその情報を掴み、1999年12月14日にシンガポールのHMVで購入(自宅のデータベースで確認した)。それを日本の雑誌でレビューしたのが、恐らく日本での初紹介のはず。ちょっと懐かしく、その分このシリーズには愛着もある。



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 "Bali 1928" と深い繋がりのある Colin McPhee の著書 "A House in Bali" は、大竹昭子さんの訳書『熱帯の旅人 バリ島音楽紀行』でもちろん持っているし、英語版もバリで買って持っている。今度は英語版で読んでみようかな?

 それより、この本の写真を眺めていると、またバリでまったりしたくなる。それは古の空気感へのノスタルジーなのかも知れないけれど…。






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by desertjazz | 2015-03-29 00:00 | 音 - Music

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 ガブリエル・ガルシア=マルケスの初期作品集『落葉 他12篇』を読了。彼の最初の長編小説『落葉』に12の小篇を加えたもの。同時期を回顧した自伝『生きて、語り伝える』を読み終えたばかりで、その印象が鮮やかなうちにと思ってのこと。

 初めの2篇『三度目の諦め』『エバは猫の中に』は余り奥行きがない分読みやすいのだが、正直なところ段々辛くもなってくる。当然ながらまだまだ習作の域で、『落葉』の文章もすっと頭に入ってこない(それとも、疲れた頭で読んでいるからか?)

 それでも後年の傑作群へと繋がる助走がすでに始まっていることは伝わってくる。何よりずっしとした文章の重量感がいい。

 ちなみに「ガルシア=マルケス全小説」シリーズの第1巻として刊行されたこの『落葉』は 1980年版とは収録作品も訳もほとんど違うのですね。買い直したことは正解だった。

 さて次は『悪い時 他9篇』だ。でもその次はどうしよう? 『百年の孤独』『族長の秋』『予告された殺人の記録』『コレラの時代の愛』はすでに読み終えているので、まだ未読の晩年の3作品に飛ぶか、それともこれらの長編も順に再読するか? 年内には「ガルシア=マルケス全小説」を読み切りたい。




 今週は他に、西牟田靖『本で床は抜けるのか』と高野秀行『イスラム飲酒紀行』も読了。それらに関してはまた改めて。






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by desertjazz | 2015-03-28 23:00 | 本 - Readings

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 レコード店に行く時間が全く取れないので、ここ最近はネットで新譜をいくつか試聴する程度。

 今月末にリリース予定のスティファン・スティーブンスの新作 "Carrie & Lowell" がフル試聴可能になったので繰り返し聴いている。これがとてもいい。暖かくてノスタルジックで。スフィアンの過剰なポップさも好きだけれど、本当に好きな彼らしいサウンドがやっと戻ってきた感じ。

 ・ The Guardian | Sufjan Stevens – Carrie & Lowell: album stream




 今年はまだ3月なのに、年間ベスト級のアルバムが相次いでいる。

 ・ Dupain "Sòrga"
 ・ Sufjan Stevens "Carrie & Lowell"
 ・ Seu Jorge "Musicas Para Churrasco 2"
 ・ Faada Freddy "Gospel Journey"
 ・ Akoya Afrobeat "Under The Tree"
 ・ M.anifest "Apae: The Price of Free EP"
 ・ Tigran Hamasyan "Mockroot"
 ・ D'Angelo and The Vanguard "Black Messiah"
 ・ Keith Jarrett + Charlie Haden + Paul Motian "Hamburg '72"
 ・ E. T. Mensah & The Tempos "King of Highlife Anthology"

 …と、まだリリース前の3作含めてすでに10枚。「世界一気の早い年間ベスト・アルバム」が確定か??






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by desertjazz | 2015-03-24 23:00 | 音 - Music

New Disc : Siska EP

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 マルセイユの Siska の新譜が 4/5 に出るようだ。これはヴァイナルで欲しいなぁ!

 ・ Facebook | Siska






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by desertjazz | 2015-03-23 00:15 | 音 - Music

 最近は読書している時が一番満ち足りた気分になれるような気がする。どうするものかと迷ったものの、ガルシア=マルケスの全小説も読んでみることにした。まずは初期短編集『落葉』と『悪い時』を買って、寸暇を惜しんで読みふけっている。




 本のことばかり書いているようなので、少しは音楽のことも。

 このところ気に入っているのは、セネガルのヒップホップ・シンガー(Daara J のメンバー)、ファーダ・フレディ Faada Freddy のソロ新作 "Gospel Journey"。"Reality Cuts Me Like a Knife" は70年代のスティヴィー・ワンダーを思わせるソウル・チューンだし、"We Sing in Time" のポップさも最高! その CD はまだ入手できていないので、ネットを使って聴いている。このライブ動画もいいね!

 ・ Faada Freddy - Le Ring - Live

(これを観ていて気がついたのだけれど、完全に肉声だけでやっているんだね。Pentatonix みたい? 来月の新作披露ライブもこんな感じになるのかな?)


 早く CD で聴きたいのだけれど、発売直後だからなのか、まだ日本に入ってくる気配もない。フランスのショップで手に入れるしかないかな?


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 ファーダが(コクヨの測量手帳に)書いてくれたメモも出てきた。"Gospel Journey" を聴いて嬉しくなったので、ファーダに電話してみようかとふと思ったり。(でも12年前の番号なので、多分もう繋がらないだろうと思う。)




 今月は Steve Stevens の新作も Seu Jorge の新作( "Musicas Para Churrasco" の第2弾 !!)出るし、Toko Blaze の新作情報も入ってきた。楽しみなリリースばかりです!






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by desertjazz | 2015-03-23 00:00 | 音 - Africa

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 アルフレッド・R. ウォーレス『マレー諸島 オランウータンと極楽鳥の土地』を巡る雑記


・『マレー諸島』は、新思索社からの単行本『マレー諸島―オランウータンと極楽鳥の国』で読み直すことにしようかとも思った。けれどもすでに絶版で安い古本も見つけられなかった。それで昔読んだ文庫で再読することに。しかし、新思索社版の訳者は新妻昭夫ではなかった(宮田彬 訳)。ならば同じ文庫本にして正解だった? 「新装版」という語に惑わされてしまったな。20年ほど前ほぼ同時にこの2冊が刊行されたことを今頃思い出した。

・『マレー諸島』を読んでウォーレス熱が高まり、その後に出た翻訳も続けざまに読んだのだった。『熱帯の自然』だとか、『アマゾン河探検記』だとか。アーノルド・C・ブラックマン『ダーウィンに消された男』や新妻昭夫『種の起原をもとめて ウォーレスの「マレー諸島」探検』なども出てすぐに読んだ。後者は『マレー諸島』の膨大な訳注を整理したような内容。もう一度読み返したくなったけれど、これは理由あって処分したのだった。

・ウォーレスに関して個人的関心の範囲のものはほぼ読み尽くしている。ただひとつ例外があって、 御茶の水書房から出た『アマゾン河・ネグロ河紀行』が気になっている。しかし、1万円以上する本なのでとてもじゃないが手が出ない。図書館にもないだろうな。

・『マレー諸島』の解題の冒頭に並べられている通り(下巻 P.535)、ウォーレスの『マレー諸島』とチャールズ・ダーウィンの『ビーグル号航海記』とH. W. ベイツの『アマゾン河の博物学者』は、生物学者が書いた3大旅行記と言ってもいいほどの名著だろう。自宅の書棚を漁ったら、ベイツがウォーレスとともにアマゾンを探検した時の記録を含む『アマゾン河の博物学者』の完訳版も出て来た。よくぞこんな重厚な本を読み切ったものだ。ミシェル・レリスの『幻のアフリカ』くらいの長さがある。いや、実はまだ読んでいなかったか?

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・ダーウィンの著書は『ビーグル号航海記』も『種の起源』も持っているが全く読んでいない。ウォーレスは夢中に読むのに、ダーウィンには気乗りしないのはどうしてなのだろう? 進化論の頂点に立つダーウィンに対して、その理論の礎となる決定的発見をしながらもダーウィンの後塵を拝しならが、それでいて謙虚さを失わなかったウォーレスに惹かれるからなのだろうか?(「ダーウィンに消された男」という表現はキツ過ぎではないかとも思うのだが。)


 こうした旅行記を手にしていると、もっと本を読んでおけばよかった、もっと旅ができたらよかったと考えてしまうなぁ(アマゾンにもまだ行ったことがない)。せめて『アマゾン河の博物学者』と『ビーグル号航海記』だけでも、この機会にじっくり読んでみようか。いや、その前に読みたい本が多すぎる。






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by desertjazz | 2015-03-22 21:00 | 本 - Readings

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 アルフレッド・R. ウォーレスの『マレー諸島 オランウータンと極楽鳥の土地』(新妻昭夫訳/ちくま学芸文庫)上下巻を読了。通読するのは1993年に出た時以来のはず。それから約22年振りに、半年近くかけて、詳細すぎるほどの訳注含めてじっくり精読・再読した。

 『マレー諸島』は、英国ウェールズ出身の博物学者ウォーレスによる、アマゾン旅行に続くマレー諸島の旅の記録とその間の考察を集大成したもの。移動距離も(現在のインドネシアのほぼ全域)期間も(1854〜1862年の約8年間で、ほぼウォーレスの30歳代に当る)長大な正しくロング・ジャーニー。

 この旅は、彼の「進化の自然選択説」と「動物地理学」を確立する基盤となり、またダーウィンに『種の起原』を書かせる決定打ともなった。その点で生物進化を学ぶ上で最重要文献のひとつと言ってよいだろう。実際、正確に時系列な旅日記にすることよりも、マレー諸島に関する諸々を体系的に記述することを優先しており、その上で旅の記録が再構築されている。

 しかし個人的には、今回も自然科学の書というより、まずは紀行書として読み存分に楽しんだ。22年振りともなるとさすがに大部分を忘れてしまっている。正確な位置を覚えていない地名も次々に出てくるので、その辺りは昔インドネシアで買った詳細な地図を手元に置いて絶えず捲りながら。

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(参照したのはドイツ Nelles Atlas 社の "Road Atlas" 初版/1992年。極楽鳥の宝庫アルー諸島だけでもこれだけ細かい。)


 自分は旅行記の類が大好きだ。特にアフリカやインドネシアのものは貪るように片端から読んでいる。中でもとりわけ好きなのは19世紀から20世紀初頭の旅の記録。そうした文章を愛するのは、そこに書かれているような旅はもう絶対に再現不可能だからなのだと思う。自然環境も人々の暮らし振りも旅のスタイルもすっかり変わってしまった。自分が実際に体験できないのなら、過去の旅の記録を読むことによって追体験しようと思うのだ。これは古(いにしえ)の旅へのノスタルジーではあるが、とても心地よい楽しみ。

(スタンレーもリビングストンもコンラッドもミシェル・レリスもアンドレ・ジイドも読むのは好きだけれど、レイモンド・オハンロンやパトリック・マーンハムなどの旅行記も好きです。)

 それでも、アルーやテルナテといった地名を目にする度に、インドネシアの島々をもっと訪れてみたいという気持ちが募る。どこもウォーレスの時代からは激変してしまって、自分の期待に応えるようなものはもう何もないに違いない。それを分かっていながらも、インドネシアへの旅心は消え去らない。

 特にヌサテンガラの島々にはとても興味があるので、せめて1ヶ月くらいかけてジャワかバリから東の方へ行けるところまで行ってみたいとずいぶん前から思い続けている。2010年にマルセイユ〜ヴェニス〜モロッコ各地を1ヶ月弱の間巡った時にも、別のプランとしてこのインドネシアの旅についても再検討した。インドネシアにはこれまで13回訪れたものの、結局いまだにバリ(12回)とジャワ(3回?)とスラウェシ(2回)しか行けていない。フローレス島に行こうとした時にはデンパサールからのフライトがずっと先まで満席で断念。そして、インドネシアには 2009年11月を最後にもう5年以上行っていない。


 もちろんウォーレスによる探求(それは自然や生き物に限らず人々の生態にまで及ぶ)も圧倒的に面白い。特にオランウータンやトリバネアゲハや極楽鳥に関する部分は読みごたえたっぷり。当時、欧米人にほとんど知られていなかった虫や鳥と出会って興奮する様子が生き生きと伝わってくる。

 ちょっと話は脱線するが、トリバネアゲハや極楽鳥を収集する件は、アフリカなどでのレコード探しを連想させた。ウォーレスはどの滞在先でも、最初は不完全な極楽鳥しか手に入れられずガッカリしていたのだが、ついには完全な個体を、さらには生きたものさえ入手する。これって例えばダカールでのレコ掘りとそっくりなのだ。見たことのないレコードの山に毎日遭遇し興奮したものの、チェックするとレア盤はどれも不完全なコンディション。しかし連日探し続けると、やがてはミント盤やシールド盤がザクザク見つかり出したのだった。

(コンディションが良くなくても現在数万円で取引されているレア盤も、シールド盤でまだかなり持っている。自分はまだギリギリ良い時期にアフリカでレコード探しをできたのだと思う。この話の続きは改めて別のテーマで書いてみたいと思っている。)



 気になる美麗な蝶や極楽鳥は随時ネット検索して画像も見ていった。こうした楽しみ方をできるのは 22年前からは大違い。しかし、スラウェシの蝶の森が今では観光化が進み過ぎて壊滅状態であることも知った。どうやら多くの種が絶滅してしまったらしい。何とも悲しい現実(できれば知りたくなかった)。

 興味深いのは、こうしたことも含めて、ウォーレスの主張が現代社会への警鐘にもなっていること。

「悲しむべきか、一方ではかくも精妙な生きものが、ひさしく希望のない野蛮を運命づけられている野生の荒々しい地域だけで生命をまっとうしてその魅力をふりまかねばならず、他方では文明人がかならずやこの遠隔地にも到達するにちがいなく、道徳と知性と自然科学の光でこの処女林の奥を照らすならば、かならずや生物的自然と非生物的自然とのあいだの微妙な均衡のとれた関係に混乱をもたらして、文明人にしか鑑賞し楽しむことのできない素晴らしい形態と美しさをもつこれらの生きもを追いやり、ついには絶滅させてしまうことだろう。このように考えたとき、すべての生きものとし生けるものは人間のために作られたのではない、と知るべきである。生きものたちの多くは文明人とはなんのかかわりもない。彼らの生存の輪廻(サイクル)は文明人のそれとは無関係にめぐり、人間の知性の発達が前進するごとに混乱がもたらされ、破壊される。」(下巻 P.215)

「いまや私たちは、少数者の富と知識と文化は文明を構成するものではないし、そのようなものが私たちを「完成された社会状態」に向けて前進させてくれはしないという事実を、はっきりと認識すべきである。今日の巨大な製造システム、膨れあがった商業、過密な都市、これらがかつて存在したよりもまちがいなく大きな無数の人間的な苦悩と罪を支え、また次々に生み出している。(…)この点からすれば、彼らは自分の部族とともに暮らす未開人より、はるかに悪い状態にあるといわねばならない。
 (…)私たちの文明のこの失敗がもっと広く認識されるようにならないかぎりーー(…)ーー、私たちが社会の全体として、すぐれた階級の未開人たちより、いかなる意味でも本当にまさる状態になることは、けっしてないだろう。」(下巻 P.440/441)



(長くなってきたので、続きは Part 2 で…)






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by desertjazz | 2015-03-20 22:00 | 本 - Readings

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 Dupain の新作 "Sòrga" は昨日16日に予定通りリリースされた模様。

 同じ16日に Daara J / Daara J Family のファーダ・フレディ Faada Freddy 初のソロ・アルバム "Gospel Journey" もリリースされた。試聴してみたら結構いい。Daara J Family のアルバムよりはずっといいかも? これは買って聴いてみようかな?

 ・ Faada Freddy - Gospel Journey (Sampler)


 ファーダとは、アングレーム(フランス)、ロンドン、東京、シンガポールと、これまで4度も会っている。これはちょっと珍しいかも。初めて会った時には、「ダカールに来たら連絡くれよ」とケータイ番号まで教えてくれた。気さくなナイスガイ。

 4月13日にパリの La Cigale でレコ発ライブが予定されている。






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by desertjazz | 2015-03-17 23:00 | 音 - Africa

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 ガブリエル・ガルシア=マルケスの自伝『生きて、語り伝える』を読了。昨年暮れから少しずつ読み進めていた。想像を超える面白さで、このままどこまでも思い出話が終わらないで欲しいと願ったくらい。こんな読書体験などそうそうない。それをとうとう読み終えてしまった。

 コロンビアのみならずラテンアメリカを代表する作家ガルシア=マルケスは、若い頃から何と濃密な日々を過ごしていたことだろう。ある意味で恵まれた家系に生まれた一方で、経済的には苦難の連続。そうした暮らし振りが連綿と綴られる。その行間からは自分が生まれ育った土地への、家族への深い愛情が浮き上がってくる。

 彼の若き日々の破天荒振りを初めて知った。殺されかけるほどに危なげな女性遍歴、万引きによる読書、酒とタバコ。女性好き、音楽好き(巧みな絵描きでもあった)の背景もよく分かった。

 そして、驚くべきエピソードの連続。どれも話ができすぎで、しかもそうした逸話が多すぎる。もしも全部が作り話だと明かされたとしても信じてしまいそうなほど。数例を挙げてみたいとも思うが、それは野暮だろう。

 後半第5章以降はコロンビアの内戦も含めた政治情勢の話が厚くなり、かの国の歴史に疎い自分には掴みきれない下りも多くなる。しかし、ガルシア=マルケスがその歴史の証人であり、また歴史を幾分か動かした当事者でもあったことを知ることになる。彼のジャーナリズム作品もいくつか読んできたが、ノーベル賞作家がなぜそうした文章も書いてきたかの経緯もようやく詳しく知ることができた。

 ギリギリ綱渡りのような生き様、とても深い人間関係に、羨望の気持ちも膨らんでくる。できればこれは学生時代に読んでみたかった。もしそれができたなら、自分の生き方も違っていたかも知れない。これは是非とも若い人たちに読んで欲しい1冊だ。

 ただ惜しむらくは、彼の自伝がこの1冊目で終わってしまったこと。ガルシア=マルケスは昨年亡くなったので、2冊目の刊行はないだろう。それでも、この続きをどうしても読みたい。続編の断片でも草稿でも残されていないのだろうか?


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 トマス・ピンチョン全小説を読み終えたので、次はガブリエル・ガルシア=マルケスの全小説を読み切ることにしよう。まずは『短編集 枯葉』の再読から始めようと思う。


 



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by desertjazz | 2015-03-15 21:00 | 本 - Readings

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