この春にクロ・ペルガグの来日が決まったと連絡を受けてからは、毎日毎日そわそわ。彼女が日本に到着してからも、間近でライブを楽しんで(撮影したステージ写真数枚は彼女のサイトやFBに使われて)、じっくりインタビューして、誘われて打ち上げにまで参加、、、、と、自分が今世界で一番気になっているミュージシャン(一番好きなのは誰かと問われると、ユッスー・ンドゥールかブルース・スプリングスティーンになるのだろうが)と数日間過ごせたことは、まさにファン冥利に尽きる。本当に毎日が至福のひとときだった。

(とは言え、クロ・ペルガグは仲間同志でいる方が楽しそうだったし、色々な理由から、話しかけて疲れさせてもいけないと思い、公式インタビューの場を除いて、基本的には彼女からはなるべく離れるようにしていたのだが。)

 しかし、クロが日本に滞在している間、彼女と会えるのもこれが最後になるだろうと、ずっと考え続けていた。ひとつ大きな期待を抱きながら。

 日本ではほとんど無名の頃から、私が惚れ込んで熱心に紹介し続けたアーティストは数多い。そのほとんどは未だにブレイクしないのだが、一方で気がつくと自分など手の届かない存在に大化けしてしまった人もいる。

 例えば、ダーラJ(現在は Daara J Family)のファーダ・フレディ Faada Freddy。11年前に仏アングレームで出会って意気投合。ダカールの自宅の電話番号まで教えてくれた。その後もシンガポール(WOMAD の片隅で疲れた顔で料理教室をやらされていたっけ)、東京(公式公演ができず、関係者だけ招いたライブのフロアで立ち話)、ロンドンのライブにも行って、一昨年にはパリで5回目の奇跡的再会。「これまで4回会ったよね」って話かけると、彼は大喜びで「絶対メールする」と言いながら、「忘れないように」と私の名刺を2枚ももらって行った。しかし、その後彼から連絡は来ていない。まあ、当然のことで仕方ないよな。

 それより、クロを見つめながら思い出していたのは、イダン・ライヒェル Idan Raichel のことだった。10数年前にイスラエルで「発見」し、世界デビューの日にパリでインタビュー(ってことはこれまで何度も書いたね)。その直後は、ワシントンでばったり再会し、本人からコンサートに招待されたり、突然メールが届いたことさえあった。でも、世界的スーパースターとなった今は、もうそんなことはあり得ない。直接の連絡先すら分からなくなってしまった。彼が日本に来る度に挨拶しに行っているが、私が誰なのかもう記憶にないようだった。それも仕方ないことだ。いや反対にファンとしては彼らの大成長を喜ぶべきだろう。

 クロ・ペルガルの音楽を聴いた人々からは、ビョークと比較する声すら聞こえてくる(今日読んだ『ラティーナ』最新10月号に掲載された吉本さんによるインタビュー記事には、ビョークのことを「敬愛する存在」と書かれていた。なるほど、そうなのか)。万人受けするポップさではビョークよりもクロの方が優っているかもしれない。ならば、彼女にはビョークを超えるくらいのポップ・スターになって欲しいと願う。(そのためには英語圏マーケットへの関心の無さがネックになるようにも思うのだが。)

 今回は「クロちゃん」と愛情こめて呼ばせていただいた。しかし、クロ・ペルガグの音楽をじっくり聴き直し、改めてライブで聴いて、ようやく気がつかされたことも多かった。これほど懐深く、凄みを感じさせるアーティストだったとは! なので彼女には、そんな気安い呼びなを許さない高みにまで登り詰めて欲しい。そう思って、彼女の公演後、自分は「クロちゃん」という呼称は封印した。

 クロ・ペルガグというアーティストには心底惚れ込んでいる。だから、彼女には自分など手に届かない遠い存在になって欲しいと心から願っている。正直それはちょっと寂しい気もするけれど、彼女の音楽の熱烈なファンとしては本望でもある。

 初来日公演を終え、早速、再来日を熱望する声が各所から聞こえてくる。少しでも早くそうなるといいな。でもその時には、もう私の出番はないだろう。自分ができることは今回でやり尽くした。一人のファンができることはこれが限界だと感じている。

 彼女のマネージメントからは、昨年の段階で「今後全てのコンサートに招待する」とメッセージをいただいている。しかし、彼女がビッグになっていけば、きっとそうはならないはずだ。気の早い話かもしれないが、来年はカナダに行きたいと考えている。5月には(二度目?の)オーケストラとの共演が発表され、6月にはクロとバンド・メンバーたちが楽しみにしていると熱く語っていたフェスへの出演も決まった。条件が揃えば、こっそり観に行きたいな。

 私が一人のアーティストにこれだけ惚れ込んだのは久しぶり。なので、クロ・ペルガグには、これからも素晴らしい作品を生み出し続けて評価をどんどん高め、自分自身でも芸術活動をたっぷり楽しんで欲しい。これからどんな作品を私たちにもたらしてくれるかとても楽しみだ。その結果、私からは遥かに遠い存在になってくれることを心から願っている。

 そんなワケで、「クロちゃん」にはさようなら。今度はよりスケールアップしたアーティスト、クロ・ペルガグの姿をまた観られることに期待しています。




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(クロ・ペルガグが日本に持って来たポスター2点も手に入れることができました。)







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by desertjazz | 2017-09-19 23:00 | 音 - Festivals

 シュールな歌を歌い、奇抜なパフォーマンスを繰り広げる、不思議に満ちた若き鬼才。クロ・ペルガグについてそんなイメージが先行したけれど、実際日本にやってきた彼女は、いつも明るく陽気。とても気さくでフレンドリーな人柄を、多くの人たちに強烈に印象付けていった。

 私は今回の初来日に際し、クロ・ペルガルを語る/クロ・ペルガグと語り合うに当たっては、基本的に謎は謎のままでいいというスタンスでいた(彼女は自分の中から自然と浮かんで来るものをメロディーや詩にしたり、衣装にしたりしているに過ぎない。その理由を問い続けることに意味はないし、そこから面白い話を引き出すことも無理だろう)。理解の及ばない部分については、それぞれが自由に解釈することに意味があると思う。

 ただ、ひとつだけ懸念していたのは公開インタビュー(スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドでのワークショップ)のこと。謎多いアーティストなので、どこまで本音で語ってくれるのか。かつてインタビューで質問への答えをはぐらかし続けた「前科」もあるらしい。そこで、まともに答えてくれないことまで想定してインタビューに臨んだのだが、いざ始まってみるとどんな質問に対してもストレートに答えを返してくれる。彼女にちょっと無理を強いているのではないかと感じ、突っ込んだ質問は取りやめたほどだった。

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 加えて、彼女はインタビューの最中「恥ずかしい」を連発。そういえば、フランスでライブを観た時も、スタンディング・オベーションを受けて、どうしたら良いのか分からないかのようにモジモジしていた。意外にも?彼女は結構シャイらしい。かつてのインタビューでのはぐらかしも照れ隠しだったのではないかという指摘も受けた。

 確かに2年前パリで会って話した時、彼女はとてもフランクに接してくれた。今回の公開インタビューに関しても、彼女自身「とても楽しみにしている」と言っていたと聞いた。彼女と会った誰もが、クロはよく笑う素直な良い子だと語る。どうやら私自身が神経質になりすぎてしまったようだ。そのことはクロ・ペルガグに対しても悪いことをしてしまった。

 とにかくクロ・ペルガグはステージ上でもサイン会でも上機嫌で、オフの時間もバンド仲間たちと楽しそうに飲み語らっていた(夜毎ホテル前での縁石には誰もがびっくり!まあ毎年のことなのだけれど、アーティストたちの名誉に関わる可能性があるので詳しいことは書きません)。クロは、音楽面、特に作曲に関して天与の才能を持っている一方で、普段は普通の若い女性。そうした等身大の姿に毎日接することができたのが、今回自分にとって大きな発見だった。



 クロ・ペルガグの、そんな素直さ、等身大さを感じさせられたエピソードをひとつ。

 クロ・ペルガグについて徹底研究して分かってきたのは、彼女が人間の二面性/多重性に関心を持っていること(それは以前このブログでも分析した通り)。そして、そこから生ずる被り物(マスク)好きだ。そのことに気がついて以来、ファースト・アルバム "L'alchimie des monstres"(邦題『怪物たちの錬金術』)のジャケットに描かれた怪物がナマハゲを被った姿に見えて始めた。怪物と向き合う少女?もお面を持っている。クロのポートレートには何かを被っているものが多いことからも、彼女は意識的にあるいは無意識のうちに一種の変身願望を持っていて、マスクに惹かれている、と見て間違いない。

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 そこで彼女にナマハゲの仮装衣装をプレゼントしようと思いついた。しかし、彼女に会うまでにどうしても手に入れられなかったので、その代わりに、ナマハゲのおもちゃのマスクと赤鬼のマスクをプレゼントすることに。もしかしたらライブで使ってくれるのではないかという、密かな読みも抱きながら。

 実際お面を渡してみると、彼女は思いの外喜んでくれた(ようだった)。これは本当にもしかすると、、、。

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 8月27日、スキヤキ、ヘリオスでのステージ冒頭、クロ・ペルガグは公開インタビューで予告?した通り、マスク(医療用の白い布マスク)をつけて登場。彼女のマスク好き/変身願望はこんなところにも現れているのかも知れない。

 実は、日本公演の舞台演出をどうするのか、ちょっとばかり楽しみにしていた。フランスやカナダでのライブではメンバー全員が奇抜な衣装を身につけ、時にはステージの上が所狭しと雑多な物で溢れる(これも以前リポートしましたね)。しかし日本には最低限度のものしか持って来られないはずで、どうするのか疑問を投げかけたところ、クロは「日本で代わりになるものを探す」とのことだった。なるほど、その答えがこのマスクだったのか。

 そんなことを思い出しながらステージを楽しんでいると、、、終盤の曲 "Taxidermix" で、プレゼントした赤鬼のお面を被って登場。期待していたとはいえ、さすがに驚かされた。(同時に心の中で歓喜!)そしてそのお面を使って楽しいパフォマンスを演じてくれたのだった。

 そして SUKIYAKI TOKYO(WWW X)では、公演スタートからマスク・パフォーマンス! 彼女の大ファンである自分にとっては感涙もの。(チェックした範囲では、福野で鬼のお面を被ったというコメントも写真も、東京公演前にネット上には皆無だった。それだけにあのオープニングに驚いた人は多かっただろう。クロの可愛い顔を楽しみにしていた人たちには申し訳ないことをしましたが、、、。)

 だけど、お面を被ってくれたのは、自分の読みが見事に当たった!というよりも、彼女なりの日本人へのサービスに過ぎなかったのかも知れない。それでも、自分の分析が(多分)ある程度まで的を得ていたのだと思うし、一人のファンがこんな形でアーティストのステージングに関われるというのも、自分にとって新鮮で貴重な体験となった。

 クロ・ペルガグの音楽世界は奇天烈とまで形容されるが(それには自分も多少の責任があるだろう)、本人は「自分の中から湧き上がってくるものを音楽にしているだけ。他人がどう言おうと気にしない」と来日中に語った。実際その通りに、ふとした思いつきや発想の積み重ねから彼女の作品は生まれているのだろう。

 赤鬼の面を目にした時も何かを感じて、ステージ演出を考えたのだろうか。私がプレゼントしたお面は単なるトリガーにしか過ぎず、それを使ったパフォーマンスは彼女自身の表現へと昇華していた。自分のプレゼントをこういう形で使ってくれたことは素直に嬉しいし感謝もするけれど、お面はすでに完全に彼女の一部に変わってしまっている。(実際、日本最後の夜にクロに "Thank you for using mask" って声をかけたけれど、特に反応はなく、誰からもらったかすらもう忘れてしまったかのようだった。)

 クロ・ペルガグは本当に素直な性格なのだと思う。何かを投げかければ、ストレートに反応が返ってくる。彼女は絶えず様々な物事に興味を持ち、気になったものは自然と自分のものにしてしまう。謎多い彼女の芸術の秘密も、そんなさりげないところにあるのかも知れない。

(東京公演で "Nicaragua" の前に始業ベルを鳴らしたことも、私との会話がきっかけだったのではないかと今でも思っている。また、深夜に渋谷の街を一緒に歩いていて、彼女のさりげない振る舞いから、最近のステージ衣装の謎の一つも解けた! それも彼女の素直な好奇心から生まれたものだったことを知ったのだった。)


 ところで、アルバム "L'alchimie des monstres" 裏ジャケットの絵、「クロのポートレートなの?」って訊いてみたら、「そう」だって。やっぱりクロは変身願望が強いな!

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by desertjazz | 2017-09-18 21:00 | 音 - Festivals

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□ 8月30日(水)Sukiyaki Tokyo 2日目(東京・渋谷 WWW X)

 27日(日)ヘリオス(富山県南砺市福野)での演奏時間が80分予定だったのに対して、今夜は65分のセットとやや短め。しかし、本編でカットされたのは "Au Bonheur d'Edelweiss" くらいで、曲順含めて大きな違いはなかった。それより会場の環境や状態から判断したと思われる微調整に気づかされることに。

 彼らの音の秘密を探りたいという考えもあって、この日はサウンドチェック&リハーサルから見せていただいた。14時半から始められたサウンドチェック、驚いたのはモニターバランスの細かな調整まで含めてたっぷり1時間以上かけて丁寧に行われたことだった。反対にリハーサルは軽く数曲やったのみ。個人的には客入れする前の残響長い乾いた音が好きで、時々サウンドチェックを聴きに行くのだけれど、今回はそんな楽しみも短め。意外と多かった彼らの持ち込み機材を見て行くうち、きっかけ音のいくつかはマーク=アンドレが PAD を叩いて出していることにも気がついた。彼のパーカションは手作り感たっぷり(写真は撮り忘れた)。

 さて本番。前半はアンドレ・メマーリ&フアン・キンテーロ Andre Mehmari & Juan Quintero のデュオ(ピアノもギターもいいのだけれど、どうしても歌の伴奏という印象が強くなってしまって、インストのみの演奏をもっと聴きたくなった。アンコールで再び『ふるさと』を挟んだ Milton Nascimento の "Ponta de Areia" を聴けたのは嬉しかったなぁ)。

 続いて、クロ・ペルガグたちが今年のスキヤキの大トリとして登場。個人的関心のひとつは赤鬼のお面を再び被るどうか。ヘリオスでのオープニングではクロ・ペルガグはある演出を用意してきたのだが、正直さほど面白くはなかった。どうせ鬼の面を使うのなら冒頭からの方がいい。

 そう思いながらオープニング "Insomnie" のイントロを浴びていると、弦楽器やシンセ、ドラムの音が次第に盛り上がる中、クロが身を低くしてステージ中央に忍び寄ってきた(場内スタンディングなので、最前方でないと彼女の姿は見えない)。そのクロの顔には鬼の面が。「やっぱりな」と心の中で呟く。そしてクロが立ち上がった瞬間、大歓声!


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 クロはとにかく寝っ転がる。そのことに何か意味があるのかどうか、未だに理解が及ばないのだが。フランスで二度観たライブ会場はどちらも全席椅子席だったで( Paris 2015 / Nantes 2016 )、ステージ上でのたうち回る姿はどこからでも見ることができた。そのことは福野ヘリオスでも同様で、モニターの背後から鬼の面を見せるというような工夫もあった。しかし渋谷ではそうしたパフォーマンスは封印。福野では片足を上げたり揺らしたりしての演奏も集まった人たちの眼を引きつけていたけれど、ここではそれも控えめ。反対にピアノ椅子に立ち上がるなど、ハコに合わせた動きを見せていた。


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 "Insomnie" から6曲目 "J'arrive En Retard" までの構成はヘリオスの時と一緒。5曲目 "Les Instants d'Equilibre" のマリンバ状の音はマーク=アンドレが PAD を叩いて出していた。

 そのマーク=アンドレのドラムを中心とする短い JAM を挟んで、そのままの流れで移って行く "J'arrive En Retard"、今夜は離れた場所で聴いていた分だけ、ストリングスの艶やかな響きを一層味わえた。

(渋谷 WWW X では最初から最後まで DJ ブースから観ていた。クロ・ペルガグのライブは今夜が最後でもあるので、なるべく音の良いところでじっくり楽しみたいと思って。昨年11月にフランスのナントで観た時と同様、カメラのシャッター音が自分自身気になって仕方なく、音圧が上がった時と MC の時しかシャッターを切らなかった。アンドレ・メマーリ&フアン・キンテーロの時には一眼レフでは1枚も撮らなかった。そう考えると、ステージ撮影はすでにミラーレスの時代なんだなと思う。疲労で身体が悲鳴を上げていたため 2kg 近い望遠レンズを持ってこなかったこともあって、撮影エリアからのアップの写真は他の方々にお任せいたしました。)

 もう一つ、おやっ !? と思ったのは "Nicaragua" の演奏に入る直前に学校の始業チャイムを鳴らしたこと。恐らくこれは、ストリングス陣がリコーダーを吹くこの曲で小学校の音楽の授業を連想させる意図があったからだと思う。しかし、そのことに気がついた人はいただろうか。この演出は、もしかしたら福野での私との会話でクロが思いつたのかも知れない(これについても詳細後日)。



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 ラス前の "Taxidermix" では再び赤鬼のお面を被ってのパフォーマンス。この曲、後半のライブ・アレンジはカッコよくて何度聴いてもいいな。圧巻だった!

 そして最後は今夜も "Les Ferrofluides -Fleurs"。この曲でチャランゴを弾くフランソワは、ベース演奏以外に、クロたちが弾くハモンド(Roland VK-8)のセッティングをしたり、数曲でギターをプレイしたりと、結構マルチなプレイヤーだ。

(フランソワは、渋谷までバスで移動する途中「アフリカ音楽のレコードを集めているんだって?」と声をかけて来た。・・・誰がそんなこと話したんだ? それがきっかけで「ああ、アフリカには10回くらい行って、たくさんレコードを買ってきたよ」「ワオ! いつかアフリカに行くのが僕の夢なんだ。レコードをコピーしてくれない?」「今度ウチにおいでよ」などと会話が弾んだ。彼は日本のインダストリアル・ミュージックなどにも興味があってレコードを探していた。今度日本に来た時には一緒にレコ店巡りをしたいな。)


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 アンコールは "Incendies" の1曲のみ。この夜一番驚かされたのは、クロ・ペルガグの代名詞とも言える曲 "La Fievre des Fleurs" を演らなかったことだった。もしかしたらそれを残念に思った人もいたのでは? どうしてなのだろう? でも、最後の最後にこの曲をクロ一人による弾き語りで披露する気がないのなら、しっとり切ない "Incendies" で日本公演の幕を閉じることで、確かにジーンと心に迫って来るものがあった。


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 今回の日本公演の構成は、多分、昨年ナントで観たライブからさほど変化はなかったように思う。勿論、毎度爆笑を誘うクロの MC がなかったという差はあったが。SECURITE と書かれたバンド・メンバーのステージ衣装も基本的に一緒だったし。セカンド・アルバムのリリース後もライブを重ねて、現在はその流れが固まっている段階なのだろう。オフタイムも含めて、チームワークもとても良かった。

 富山県南砺でも東京渋谷でも、クロたちは、珠玉のメロディーを相次いで紡ぎだし、ストリングス3本を含むバンドによって美しい調べを奏で、そして繊細な囁きから爆発するインプロビゼーションまで幅の広いサウンドで私たちを楽しませてくれた。クロ・ペルガグは、詩や瞳からは一人の大人としての意識の強さと深い洞察を感じさせる一方で、少女のような笑顔や小悪魔的な仕草でも楽しませてくれた。

 しかし1時間程度では短すぎる。クロ・ペルガグは何度聴いても新鮮に響くので、全然聴き足りないな。できるだけ早く再来日を、それも単独公演の形で実現させて欲しい!


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♪♪♪


 私の写真はやや遠方からワイドレンズで撮ったのをトリミングしたものばかり。あまり良い写真がなく、同一方向からのためアングルも単調。そこで、音楽評論家の松山晋也さんとスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド実行委員長の橋本正俊さんにお願いして、公演の雰囲気がたっぷり伝わって来るナイスなショットを提供していただきました。どうもありがとうございます !!!


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(C) Matsuyama Shinya


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(C) Matsuyama Shinya


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(c) Hashimoto Masatoshi




♪♪♪


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(日付間違いは気にせずに、、、。)



(続く)







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by desertjazz | 2017-09-04 17:00 | 音 - Music

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 比類ない音楽的才能と独特な芸術性に惚れ込んで、3年間追い続けたカナダの奇才クロ・ペルガグ Klô Pelgag が、ついに日本にやって来た。彼女自身「日本に来ることが夢だった」と繰り返し語っていたが、日本で彼女と再会し、素晴らしいライブ・ステージを堪能できた私にとっても、正に夢のような時間が続くこととなった。

 まずは、今回日本での3回のステージについて簡単に振り返っておこう。

 来日メンバー(と主な担当楽器)は以下の6人。クロ・ペルガグ(ヴォーカル、ギター、キーボード)、ファニ・フレサル Fany Fresard(ヴァイオリン、キーボード、リコーダー)、ラナ・トムラン Lana Tomlim(ビオラ、リコーダー)、マリアン・ウレ Maianne Houle(チェロ、キーボード)、フランソワ・ゼダン François Zaidan(ベース、ギター、チャランゴ、キーボード)、マルク=アンドレ・ペテル Marc-André Pételle(ドラム、パッド、パーカション)。コーラスは全員が担当。


□ 8月25日(金)Sukiyaki Meets the World 初日(富山県南砺市福野)

 スキヤキ初日、無料解放された屋外のオープニング・ステージに最後に登場。まずステージ上でインタビューを受けた。その最中からクロ・ペルガグは超ゴキゲン! カナダのケベック州出身であることが紹介された後、「ケベックにはリルといった伝統音楽がありますが、私の音楽はそうした要素は取り入れていません。私は自分の中から沸き立つものを音楽にしており、そうした私の音楽がいつかケベックの新しい伝統音楽のような存在になれたら嬉しいです。」といったことを語っていた。爆笑しならが毛糸の玉で蹴鞠をして見せたりも。


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(中央のピンク&クリーンが毛玉。キャプチャー画像なので分かりにくいかな?)


 その後軽く3曲披露。1曲目はセカンド・アルバム "L'Étoile Thoracique" の中で最もダイナミックなナンバー "Le Sexe des Etoiles"、3曲目はチャランゴのイントロが印象的な "Les Ferrofluides-Fleurs"。まあご挨拶程度のパフォーマンスといったところ。ステージ上を駆け回る姿と毛糸をあしらった可愛らしい衣装が受けていた。


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□ 8月26日(土)Sukiyaki Meets the World 2日目

 日中、『クロ・ペルガグの美しくも不思議な世界 ~カナダの若き鬼才が語る自身の芸術~ 』と題してワークショップ(公開インタビュー)を開催。1時間の内容を全て録画/録音したので、別途詳しく紹介したい。


□ 8月27日(日)Sukiyaki Meets the World 3日目

 ヘリオスの屋内ステージでの80分。オープニングは "Insomnie"。フランソワのキーボードとストリングス3人のドローンっぽいサウンドが空間を埋めていき、それが高まったところでドラムがイン(タムの重いビートがますます気分を高揚させる)。そしていよいよクロ・ペルガグが登場。この妖艶な雰囲気のオープニングで、誰もが一気にクロ・ワールドに持って行かれたはず。クロがハモンドを弾きながら歌い出すまでの長い(数分間続く)ラウドなイントロはとても効果的だった。

 2曲目の "Le Sexe des Etoiles"。セカンド・アルバムでハイライトをなすこの曲、レコーディングではフルオーケストラが大々的にフューチャーされていたので、それをライブでどう再現するかが課題かと思っていた。しかし、アルバムのサウンドと比べても遜色ない迫力だった。真っ赤な衣装のクロが抱える純白のギターが眩しい。ヘリオスのホールはとにかく音が良いため、各楽器の分離と響きがクリアで、サウンドの作りまでじっくり観察できる。クロのギターもこれまで観た中で最もしっかり味わえた。

 3曲目は "Tunnel"。グランドピアノによる弾き語りが中心。こうした強い発声がビョークとも比較される一つの理由なのだろう(小柄な体型もビュークを連想させるだろう)。女性たちの声が重なり合う終盤のコーラスまで実に美しかった。

 ここでクロ、照れながら「ありがとうございます」と日本語で一言。その後英語に切り替え「英語も得意じゃないので、私は音楽で表現する、、、」と(言いかけて詰まり、笑ってごまかす)。

 4曲目はデビュー EP にも収録されていた(その後、ファースト・アルバム "L'archimie des Monstres" で再録音/再収録)"Comme des Rames"。とても軽やなクロ流チェンバーポップ。ストリングスとピアノとのコンビネーションもとてもいい。


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 5曲目 "Les Instants d'Eqilibre" で、ファニとマリアンヌがキーボードに移動。リズミックなサウンドに乗ってクロの小気味な動きも増えてくる。彼女はライブ間、片足を上げたまま演奏したり、脚を揺すったりする仕草をしばしば繰り返した。


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 続く6曲目の "J'arrive En Retard"。この日はやや離れたところからステージを観ていたのだが(彼女の音楽に集中し酔っていたかったので、写真もそれほど撮らず、動画を中心に撮影していた)、事前にセットリストを見て、どれか1曲だけフロア最前に移動して録画する気になり、この曲を選んだ。静謐なイントロが流れる中、クロはピアノの前で目をつむり精神統一しているかのよう。それから歌い出したのだが、その切々とした哀しい声が心を打つ。ピアノとストリングスとが一体となった美しさが、とにかく素晴らしかった。来日中の全ステージを通して、この歌と演奏が断然印象深く残っている。セカンド・アルバムでは実質最後に前曲 "Insomnie" からやや長めのインターバルを置いて収録されたし、最近この曲のオルゴールも作られた。きっとクロにとって何か思い入れの強い曲なのだろう。クロの書く曲は名曲ばかりだが、中でもこれは白眉だと思う。


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 その後 "J'arrive En Retard" の余韻に浸りつつ、穏やかな "Au Bohner d'Edelweiss"、ダイナミックな "Samedi Soir a la Violence"、弾むような "Rayon X"、リコーダーをフューチャーした "Nicaragua" など、聴き親しんだ曲の数々を無心で楽しむ。

 ステージ終盤の "Taxidermix" がもう一つのハイライトだった。アルバム・ヴァージョンとはかなりアレンジを変えてヒップな印象。後半に繋げられた長いインプロビゼーションでは、クロのハモンドを中心としたサウンドが場内に響き渡る。キング・クリムゾンに影響を受けたというクロのプログレ好きが垣間見られる大胆な演奏だった。この曲でクロは赤鬼のお面を被ってパフォーマンス。来場した子供にも受けていたようだった。(この赤鬼のことについても別途書く予定。)


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 ラストは一昨日のオープニングステージでも披露した "Les Ferrofluides-Fleurs"。フランソワが弾くチャランゴのイントロが可愛らしいナンバー。


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 アンコールは "Incendies" と "La Fièvre des Fleurs" の2曲。クロ一番の代表曲である後者は、最後の最後にソロでピアノ弾き語りを聞かせると思っていたが、その予想は外れメンバー全員での演奏だった。


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 終演後のサイン会は長蛇の列。クロ・ペルガグが一人一人の名前を聞いてサインに入れ、一緒の撮影にも応じ、会話も楽しんでいたので、何と最大1時間待ち! 初めて聴く人さえ虜にする彼女の音楽と可愛らしい動きは、今日もオーディエンスたちの心をしっかり捉えたようだった。



 翌日28日にスキヤキ一行は大型バスで東京へ移動。クロ・ペルガグは、8月30日(水)Sukiyaki Tokyo 2日目(東京渋谷 WWW X)に出演。そうした話は次回に。


♪♪♪


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(日付間違いは気にせずに、、、。)



(続く)







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by desertjazz | 2017-09-03 14:00 | 音 - Festivals

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