d0010432_20413478.jpg


 ビッグ・ニュース!

 セネガルの歌姫クンバ・ガウロの日本公演が、本日未明、突然発表になった。これにはさすがにビックリ!

 クンバ・ガウロは私が最も好きなアフリカの女性シンガーのひとり。これまでどうしても彼女のライブを観ることができなかったのに、それをまさか日本で体験できるとは(まだ実現していないけれど)。

 折角の初来日(ですよね?)ながら、2月26日(日)の東京1公演のみ。詳細はこちら。私は早速チケットを予約しました。

 拙ブログでも特設ページを作りたい。とにかく彼女の生の歌声が楽しみー!



 → 中止と発表になりました。残念! 再トライに期待しましょう。(2/12)







[PR]
# by desertjazz | 2017-02-03 20:00 | 音 - Africa


d0010432_15414520.jpg


 2016年11月、アムステルダム&デン・ハーグ、パリ、ロンドン、マルセイユ&ラ・シオタと巡ってきた旅もいよいよ最終盤。コンサートは、ユッスー・ンドゥール、ソナ・ジョバルテ、インディ・ザーラを観てきた。そしてそのラストは、フランス系カナダ人のクロ・ペルガグのライブだ。今回のヨーロッパの旅、後半にはイスタンブールに飛ぶ計画だったが、フランス北西部2都市で行われるクロ・ペルガグのコンサートを見つけて予定変更。ラ・シオタでタトゥーたちと過ごし、マルセイユではマグレブ人エリアなど思い出の場所を歩きながらアルジェリア盤を買い付けた後に、ナントへ移動してきたのだった。

 クロ・ペルガグの音楽を知ったのは、例えばトコ・ブラーズやストロマエと同様に、パリ在住の音楽ジャーナリスト、向風三郎さんのブログを読んでのこと。ファースト・アルバム "L'alchimie des monstres"(2013)が素晴らしくて、2015年4月パリでのコンサートを観に行き、彼女とも会って直接話して来るほど惚れ込んでしまった。

 そのクロ姫がセカンド・アルバム "L'Etoile Thoracique" 発表のタイミングに合わせてツアー開始。これは観逃せないと思ってナントまで飛んできた。会場は Salle Paul Fort という小さ目の箱。当然スタンディングなのだろうと思い込んでいたら、何と昨日のインディ・ザーラに続いてシート席。前でしっかり観るか?後方でじっくり聴くか? 少し迷ったが、幾分か音の面を犠牲にしても、彼女のパフォーマンスを食い入って観たいので、最前列中央の席を選んだ。

 それと、写真をどうするか? 事前にバックステージパスを申請していて写真撮影の許可は得ており、会場の受け付けでも撮影に問題なしと確認ができたのだが、こうしたシート席では撮りにくい。場内を前後に移動するのは全く難しくないのだけれど、他のお客さんたちには少しの邪魔もしたくない。一眼レフだとシャッター音も気になる。写真はこれからのコンサートでプロショットがたっぷり見られるだろうから、自分が撮る必要はないだろう。そう思って今日はステージに集中することにした(なので、音がマックスになった瞬間やトークの最中に10枚弱撮っただけ。照明が一番フォトジェニックになるのは静かに歌っている時ばかりで、美しい写真が撮れなかったことは、やっぱり少々残念だったが)。

 ステージの上を眺めると、中央に小型のエレピとキーボード。1年半前にパリで観た時にはグランドピアノと車椅子が置かれ、周りにはトランポリンなど意味不明な様々なブツが散乱していたのだが、それに比べると今日はずいぶんすっきりした印象だ。

 さて、公演がスタート。メンバーは下手に女性3人。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロというストリングス隊。上手にはドラムとベース。基本ユニットに変化はないが、ウッドベースを使わないなど、やはり今回は幾分コンパクトな印象だ。まだツアーが始まったばかり、しかも地方都市でのライブとあって(チケットは20ユーロ以下という信じられない安さ)、物量的にも工夫が加わっていくのはまだまだこれから先なのだろう。

 しかし、クロ姫の格好はなんなんだ?? 全身マジックテープが施され、フェルトでできた骨やら METALLICA のロゴやらマイケル・ジョーダン人形やらを貼付けて演奏。身体を動かず度に、それらがガサガサ音を立てたり、はがれ落ちたりで、一体何をやりたいのか。ステージ上に寝っころがったりといった破天荒なパフォーマンスも相変らず。中盤からはメンバーたちが透明な衣装を身につけ内部の電飾が光り、その色を様々に変化させる。こうした奇天烈さは変わっていない。

 ・・・といった具合なのだが、彼らの奏でる音楽はどこまでも美しい。

 新作 "L'Etoile Thoracique" の中の曲を次々披露していくコンサートだったのだが、ファースト・アルバムの楽曲群と同様に、とても独創的で美しいメロディー、繊細なピアノとストリングス、優しくかつ力のこもった歌声が素晴らしい。そう、今回は何よりクロ姫の歌が良かった。時に切なく時に心に染み入るような歌をじっくり聴かせる構成で、彼女はずい分大人になったという印象を受けた。これは、新作には大編成のストリングスを加えた曲が多いのだが、小さな会場でのライブではそれをそのまま再現できない分、歌を中心とするものになったからなのかもしれない。

 それにしても、彼女の音楽をどう文章で伝えたらよいのかいまだに分からない。本当にオリジナルな音楽だ。CDがリリースされる前だったので(フランスでのコンサート時点で新譜はカナダ盤しか出ていなかった)、Spotify でアルバムを毎日聴いていたのに、それでもなかなか曲を聴き分けられないのも不思議だ。どの曲もが美し過ぎるからなのか、タイトルも歌詞も馴染みのないフランス語だからなのか。本人が明かしている通り、フランク・ザッパからの影響も多々かいま見られるが、美と大胆さと狂気?とが同居する様には、最近はスフィアン・スティーヴンスやカニエ・ウエストにも似た捉えどころのなささえ感じている。

 そうした資質の最たる面が歌詞なのだろう。これも向風さんによると、相当シュールで変な歌詞らしい(ファースト、セカンドともに、ジャケット画もかなり異様だが)。だからフランス語が分かれば彼女の音楽をより楽しめるのかも知れない。(そう言えば、1年半前のライブでも今回もMCが爆笑を誘って大いに盛り上がっていた。やっぱりフランス語を聞き取れないのは辛い。)この新作、何と来月に日本盤が発売になるそうだ(2/12 予定で、邦題は『あばら骨の星』 )。これを買って日本語訳詞もじっくり読んでみる必要がありそうだ。

(セカンド・アルバム "L'Etoile Thoracique" は昨年1位に選んだが、ファースト "L'alchimie des monstres" の出来は超えられなかったように思っている。例えば切迫感に溢れるオープニング・ナンバー "Samedi soir à la violence" などはとても良い曲なのだが、デビューEP の "Les maladies de coeur" やファーストの "La Fièvre Des Fleurs" (←これは広島カープ・ヴァージョン。オフィシャルPV もあり。)のような弾けるような極上ポップ・レベルの曲がアルバムには欠けているのだ。また、ファーストと比べるとセカンドの歌い口はずいぶん落ち着いて聴こえる。そうした声の変化も、今回ナントで聴いた歌声が大人びて感じた理由のひとつだったのかも知れない。もはやあの弾けるような歌声が懐かしい。)

 ナントでのコンサートはファーストからの曲も交えながら、瞬く間の1時間半だった。誰もが聴き惚れ、アンコールの後も拍手が鳴り止まず。クロちゃんがひとり再々登場し、ピアノを弾き語り。これがまた心を打つ美しさだった。でもまだまだ聴き足りない。あー、彼女のライブがまた観たい。

 何でもカナダでは30人編成のストリングスと一緒のコンサートも計画されているそうだ。(これも向風さん情報。その公演はもう終わった?)さすがにそんなコンサートまではなかなか観られないだろうけれど、今度の国内盤発売をきっかけにクロ・ペルガグの日本公演が実現することに大いに期待している。

 クロ・ペルガグは変化を繰り返し、アーティストとして成長し続けることだろう。これからも彼女を追い続け、その姿をずっと見つめていたい。


d0010432_16151053.jpg


d0010432_15420022.jpg


d0010432_15421176.jpg


d0010432_15422228.jpg


d0010432_15423388.jpg



d0010432_15424142.jpg




d0010432_15424612.jpg






[PR]
# by desertjazz | 2017-01-29 17:00 | 音 - Music

d0010432_23123321.jpg


 気まぐれに元旦から読み始めたトルストイ『戦争と平和』(新潮文庫版全4巻)約3000ページを読了。登場人物の名前が覚えられず(全巻通して描かれるのは559人!だとか)冒頭の50ページは読み直し。文章の密度に圧倒されながらも、2巻目を終えても「ダメ人間ばかりじゃないか?」と思いながら我慢して読み進めて行ったら、3巻目、4巻目はもうグイグイ来た。特に惹かれたのはプラトン・カタラーエフの話。泣ける! ただし、エピローグの後半は不要だと思う。理論を語るとくどいし稚拙だし、トルストイってまともな恋愛経験がないんじゃないか?なんてことも感じたのだけれど、そのあたりは19世紀の作品だってことを勘案しなくてはいけないんだろうな。

 正直なところ、現代人が読んでそれほど面白いと思える小説ではないかも知れない。しかしこの作品は一度読んでおきたかった。そして何より長大小説の醍醐味をたっぷり味わった。実際中盤から読書中毒が嵩じて、連日朝5時起きで読書。読む時間が潤沢にあるワケでもないので、横断歩道の信号待ちの間もエスカレーターに乗っている間も数行稼ぐ読み方だった。おかげで次第に加速がついて、とうとう4週間で読み切った。(第1巻:1/1〜1/10、第2巻:1/10〜1/17、第3巻:1/17〜1/23、第4巻:1/23〜1/28)やっぱり自分は長い小説が好きなんだなぁ。

 そこで、これまでに読んだ大長編の中で特に面白かった作品を選んでみよう(2分冊以上の長大なものに限定)。

・マルセル・プルースト『失われた時を求めて』(集英社文庫全13巻)
・プラムディア・アナンタ・トゥール『人間の大地』シリーズ(めこん、『すべての民族の子』『足跡』『ガラスの家』を含めて全6冊)
・ドストエフスキー『罪と罰』(新潮文庫全2冊)
・ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(新潮文庫全3冊)
・トマス・ピンチョン『メイソン&ディクソン』(新潮社全集2巻)
・トマス・ピンチョン『V.』(新潮社全集2巻)
・パール・バック『大地』(新潮文庫全4冊)
・ロマン・ロラン『ジャン・クリストフ』(岩波文庫全4冊)
・グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ『シャンタラム』(新潮文庫全3冊)
・スティーグ・ラーソン『ミレニアム』(早川文庫全6冊)

 1冊ものでは、ガルシア・マルケス『百年の孤独』もカズオ・イシグロ『充たされざる者』も最高だったし、ロベルト・ボラーニョ『2666』や石牟礼道子『苦界浄土』も強烈な印象を残した。村上春樹の長編は全て(繰り返し)読んだし、スタンダール『赤と黒』、メルヴィル『白鯨』、トーマス・マン『魔の山』なども読み終えた。古典では『マハバーラタ』も読了。(いや『ラーマナヤ』だったか? 対して、紫式部『源氏物語』はさっぱり進まずほぼ挫折?)

 こうして振り返ってみると、読みたいと思っていた長大な小説はほぼ読み終えているようだ。さて次は何を読もうか? ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』やトルストイ『アンナ・カレーニナ』には興味が湧かない。ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』は訳文が良くないと聞いて見送り中。今心待ちにしているのは、カール・オーヴェ・クナウスゴール『我が闘争』シリーズの残り5巻。全6巻中の、1冊目『父の死』に続く2冊目がどうやら年内に出るようだ。

 それまでの間、フローベル『ボヴァリー夫人』でも読んでみようかな?


(何かお薦めはあるでしょうか?)


(追記)

 反対に、面白いと思わなかった長編の筆頭は『坂の上の雲』(全8冊)。4冊目まではまだ良かったのだけれど、後半5冊目以降は感じるところが全然なかった。なので読後すぐに処分。長年基本的に本は捨てない主義だったのだけれど、これは数少ない例外(もう1冊、読み終えて速攻で捨てたのは『永遠のゼロ』。あまりに詰まらなくて呆れた。。。)






[PR]
# by desertjazz | 2017-01-28 23:00 | 旅 - Japan

Baobab Is Back !!

d0010432_14254458.jpg


 デヴィッド・ボウイ、プリンス、ジョージ・マイケル、、、そしてパパ・ウェンバ。昨年2016年は素晴らしいミュージシャンたちの突然の死が相次いだ印象の強い1年だった。そうした中、個人的に特に哀しい思いをしたことのひとつは、セネガルのオーケストラ・バオバブのリード・シンガー、ンディウガ・ディエン Ndiouga Dieng が11月に亡くなったことだった。彼とはフランスのアングレームで、パリで、東京で会って、いろいろ話をさせてもらった。彼の歌声をもう生で聴くことができないのは、とても寂しい。

 そして年明け早々、今度はアブライ・ンバイ Ablaye Mbaye の訃報が飛び込んできた。1990年代中頃からユッスー・ンドゥールのライブでバックコーラスも務めていた若手〜中堅シンガーの彼が、今年1月10日にスタジオで突然倒れて還らなかったとのこと。ちょうど次のソロ・アルバムをレコーディング中で、ステージで亡くなったパパ・ウェンバの悲劇も連想させる。まだ35歳。余りにも若過ぎる。

 昨年11月にパリでユッスー・ンドゥールの素晴らしいライブを観られた一方、セネガルから続いた悲報に少し心が沈んでいた。そんなところに、昨日嬉しいニュースが正式発表になった。3月31日にオーケストラ・バオバブの10年振りの新作がリリースされる。World Cuicuit からの復活3作目で、タイトルは "Tribute to Ndiouga Dieng"。ずばり昨年亡くなったンディウガに捧げるアルバムになっているようだ(その新作には Ndiouga Dieng の息子 Alpha が参加しているとのこと)。

 このニュースの発表と同時に、新曲 "Foulo" が試聴可能になっている。全く期待通り、想像通りのサウンド。バオバブ流、最高のアフロキューバン・ポップだ(コラを2本加えた試みもみられるが)。


 そして今月からはツアーも開始(まずはイギリス内3ヶ所を巡るミニツアー)。これで今年の目標がひとつ生まれた。何としてもバオバブのライブをまた観たい! メンバーたちにもまた会いたい!

 復帰1作目 "Specialist In All Styles" (2002) も、2作目 "Made In Dakar" (2007) も日本盤のライナーを書かせていただいた。でも今回は執筆の依頼はないだろう。(そもそも国内盤出るのかな?)ならば自由に書いてブログに公開しようかな?


d0010432_14561404.jpg
(Photo: Youri Lenquette)








[PR]
# by desertjazz | 2017-01-21 12:00 | 音 - Africa


d0010432_21551069.jpg


 インディ・ザーラのセカンド・アルバム "Homeland" は実に素晴らしかった。2015年のベストにも迷わず選んだ。ジャケット写真通りの陰りのあるアーシーな空気感と、ダークで妖艶な音世界が圧倒的だった。

 彼女を知ったのはファースト・アルバム "Hand Made" を通じてのこと。どことなくオリエンタルな雰囲気を感じさせる彼女の顔にまず惹かれた。ヒットした "Beautiful Tango" も勿論好きになった。しかし、"Homeland" はファーストを遥かに超える作品。まるで別人のアルバムかのように聴こえたほどだった。

 それ以来、これはライブでも体験すべきと思い続けることに。

 しかしその後、彼女のライブとはニアミス続き。昨年11月の旅行でもパリのアラブ研究所でのライブを見つけたものの、なんとそれはちょうどパリから日本に帰る日。彼女とはとことん縁がないのだろうか。

 今回の旅の後半は、イスタンブールに行こうか、モロッコに飛ぼうか、プラハとウィーンにしようかなどと散々迷う。それでも 24日ナントでのクロ・ペルガグをどうしても観たくて、南仏〜ナントを廻るスケジュールで確定。その前日23日はマルセイユでベニンのポリリズモ Le Tout-Puissant Orchestre Poly-Rythmo を観に行くことに。

 ところが同じ23日にナントの隣町レゼでインディ・ザラのライブがあることに気がついた。慌てて予定変更。正に粘り勝ちだ!(ポリリズモの新作 "Madjafalao" 一応買って聴いてみたけれど、退屈、、、いや物足りなかったなぁ。ネットで動画を観た限りではライブは盛り上がったようだけれど。)

##

(短い旅行記)

 20日朝、パリ出発。ユッスー・ンドゥールのライブに興奮した余韻を残しながら。ラ・シオタに住むタトゥーと奥さんのマニュさんが泊まりにおいでとかねてから誘ってくれていたので、マルセイユ経由で3度目のラ・シオタ訪問。タトゥーは父親のかつての持ち家を旅行者に貸し出していて、ここに2泊。(とっても素敵な家だった。南仏旅行する方にお薦めしたい!)

 タトゥーたちと二晩呑んで語り合って、それから22日にマルセイユに移動。港やベルザンスを散歩。マルセイユは6度目か7度目になるけれど、何度来てもいいな! できれば住みたいくらい好きだ。(シャウイのレア盤もどっさり買えたし。)

 翌23日、早起きして午前8時のフライトでナントへ。ホテルでひと休みしてから、街中を散策。

##

 夜、路面電車でレゼまで出かける。ナント滞在は初めてだったが、切符は簡単に買えたし、会場も難なく見つけられた。

 ライブは当然スタンディングなのだろうと思っていたら、箱はまるで映画館のような造りで全席指定席。Le Théatre Municipal という名前の建物なので、昔は映画館だったのだろうか? さて席はどこにしようと迷う。最前列に空きがあったのでそこを確保。中央列くらいの方が音的には良いのだろうけれど、折角なら間近で彼女のパフォーマンスを目に焼き付けたい。

(ブログ用の写真を撮りたくて、事前に彼女のマネージメントや仏ワーナーにコンタクトを取ろうとしたのが上手くいかず。しかし、ここなら許可など必要なさそう。一眼レフを持ってこれば良かったと思いつつも、隣の人の邪魔になってはいけないと考えて、コンパクトカメラでほんの数葉だけ。撮った写真は以下がほぼ全て。)


d0010432_21551527.jpg


 バックバンドは、ギター2人、ベース、ドラム、キーボード&トランペットの5人編成。ライブでも "Homeland" のあの独特なムードをじっくり醸し出すのだろうと思いきや、意外とロック寄りのサウンド。そのセカンド・アルバムにあったヘビーな要素を拡大した、結構ラウドな演奏が多い。とにかく、時折ジャジーになりながらもグイグイ押しまくるバックと蠱惑的なインディの歌声とのコンビネーションが印象的だった。(ギター2本のコンビネーションも良かったが、若い頃のエルビス・コステロみたいな風貌のベース奏者の自己陶酔的なプレイはちょっと…だな。)

 なので中盤で歌った "Beautiful Tango" は今の流れに沿わないと感じたほど。こんなアグレッシブなライブをやっているなら、もう "Beautiful Tango" を歌う必要はない? いや "Any Story" の暖かな歌も良かったけれど。

 さらにパワーアップしたのは、モロッコ風衣装を纏ってからの終盤〜アンコール。ほとんど歌わず、デザート・ブルース/デザート・ロック風の重いビートに合わせて、長髪を左右に振り乱してトランス状態を演出。これが一番忘れがたい。あくまでもステージ・パフォーマンスなのだろうが、煽られて熱くなるものがあった。歌ってもいないのに、サウンドの中心にあり続ける彼女の求心力は見事。さすがは 400回におよぶライブをこなしてきただけのことはある。

 "Hand Made" のポートレイトは何だかお嬢さんっぽく澄ました表情で、彼女には「隣のお姉さん」的な親近感のようなものを持っていた(よく見ると違うのだが)。しかし、これは全然勘違いだったな。ステージ上のインディは、気性の荒いじゃじゃ馬だ。

 今回フランスのレゼで遂に観たインディ・ザーラのライブは、想像とは全く異なっていた。けれども、よい意味で裏切られた。モロッコの女性ポップシンガーの中では、ウム Oum とインディ・ザラが2トップだろうと思って推してきたが、音楽的にはウムよりインディの方がずっと実力あると視た。

 インディ・ザーラ、ホントに凄い。誰か絶対日本に呼んだ方がいいよ!(プロモーションでの来日経験はあるようだが、本格的なライブを日本でもう一度観たい!)


d0010432_21552095.jpg


d0010432_21552902.jpg


d0010432_21553892.jpg


d0010432_21554531.jpg







[PR]
# by desertjazz | 2017-01-10 00:00 | 音 - Music


d0010432_20432162.jpg


 至高、緊張、寛容、温和、静寂、慈しみ、安らぎ、愛。なんと静謐な対話なのだろう。

 "Adana" は、2016年のベストに入れるかどうか迷った作品。調べてみると発売は2015年だった。しかしこれは、昨年巡り会った最高のアルバムの中の1枚。

 アルメニアのドゥドゥク Duduk 奏者ヴァルダン・ホヴァニッシアン? Vardan Hovanissian とトルコのサズ saz 奏者エムレ・ギュルテキン? Emre Gültekin が10年にわたる交友の末に、美しく結実させた成果。彼ら初のデュオ・アルバムは、まるで互いの魂を交感し合う会話のようだ。実際には多くのトラックがダブルベースやダルブッカなどの打楽器を含むカルテット編成であり、さらには数人のゲストも加わりもするのだが、ヴァルタンとエレム(彼は数曲で歌ってもいる)2人の対話のようにしか聴こえない。

 CD ブックレットの最後にはトルコの小説家オルハン・パムクの代表作『雪』の一節が引用されている。これはパムクの描く世界と通じ合う音なのだろうか。アルメニアのピアニスト、ティグラン・ハマシアン Tigran Hamasyan が奏でる音も連想させる幽玄さだ。

 
d0010432_20202231.jpg


 (2015年作ならば、New Disc と題するのはおかしいかな? でも、この作品は自分がこれまでに聴いた中で最高のトルコ圏/アルメニア圏の音楽です。)






[PR]
# by desertjazz | 2017-01-09 00:00 | 音 - Music

Sona Jobarteh Live in London 2016


d0010432_15043598.jpg


 昨年 2016年のベスト・ビデオ、個人的にはガンビアのシンガー/コラ奏者、ソナ・ジョバルテ Sona Jobarteh の "Gambia" だ。美しいメロディー、爽やかな歌声、自然と身体がスイングする心地よいリズム。シンプルな曲だけれど、その分だけ親しみやすい。そして、ソナの笑顔。人目見ただけで引き込まれてしまいそうなくらい美しい瞳。そんな彼女の美しさを抜きにしても、"Gambia" という曲とてもいいと思う。ガンビアの隣国セネガルの大地も懐かしくなって、このクリップを繰り返し楽しんだのだった。

  Sona Jobarteh "Gambia" (Official Video)

 ソナ・ジョバルテの "Gambia" はまだ CD になっていないが、彼女は 2011年に自身初のアルバム "Fasiya" をリリースしている。早速この CD を手に入れて聴きながら、いつかライブも観てみたいと考え始めていた。

 すると突然そのチャンスが巡ってきた。11月にユッスー・ンドゥールのパリ公演を観ると決めてから、同時期に予定されている欧州各国のライブ情報をチェックしていて、ソナのロンドン公演の情報をキャッチ。ちょっと強行軍になるが、ロンドンにも足を運ぶことにした。

##

 (短い旅行記)

 11月12日に日本出発。ヘルシンキ経由でオランダのアムステルダムへ。アムスの安宿に3泊し、アムスとデン・ハーグで美術館巡り。長年観たかった作品の数々をじっくり眺める。訪ねていく時間帯をしっかり図って行ったので、フェルメールの代表作群含めて傑作はどれも独り占め状態で鑑賞できた。
 オランダではユトレヒト在住のマイケル・ベアードの自宅に泊めてもらえる約束だったが、彼はザンビアでのフィールド・レコーディングにでかけていて不在。マイケルとは1月にサルバドールで13年振りに再会したんだったが、「今回はマジック起こらなかったね」とメールを交わし合う。
 15日に鉄道でパリへ。ユッスーのライブを観て、翌16日、再び陸路ユーロスターでロンドンへ移動。Brick Lane のデザインホテル Premier Inn にチェックイン。ここを選んだのは、予算内で条件良いホテルの中でソナのライブ会場に一番近かったから。

##

 さて、ロンドン初日。夕方、会場の Rich Mix へ。丁度リハーサルの真っ最中だったので、しばらく見せていただく。ソナの演奏を間近で観られて、まずはひと安心。日本からやって来て、ここまで辿り着けてよかった。

 実は事前にプロダクション側からは写真撮影とインタビューにOKをいただいていたのだが(「ビデオ・インタビューする?」とも)、迷った上でインタビューは諦めた。ロンドン入りが公演当日になったし、今回の旅の強行日程を考えると(約2週間で8ヶ所に滞在)インタビューするまでの余力はないと判断。

 それでも訊きたいことがいくつかあったので、リハ後ソナに「少しお話できますか?」と声をかけてみた。でも「ちっと忙しいの」と断られてしまった。残念。実際忙しそうだったし、少しナーバスになっているようにも見受けられたので、無理なお願いは遠慮することに。


 Rich Mix はキャパ 200〜300 くらいの小さな会場。彼女のロンドンでの知名度がどれくらいなのか分からないが、フロアはお客さんたちで一杯になった(ワールド系のライブでいつも思うが、ホント若い人がいないな)。そんなこともあって、撮影のポジション取りにも失敗。旅の精神的疲れが早くも出てしまい、今ひとつ音にも撮影にも集中し切れなかった。なので、気持ちを切り替えてビール飲みながら、ライブを自然体で楽しむことに決めた。

 バンドは5人編成。ソナ(歌、コラ、ギター)の他に、ギター、ベース、ドラム、パーカッションの4人。ソナの柔らかい歌と美しいコラ(さすがにテクニックは完璧)を中心に、柔らかい調べが奏でられる。なんともまろやかで心地良いサウンドだ。耳傾けていると自然と幸せな気分にさせられる音楽。もっとアグレッシブな面も見られるかと思っていたが、通して "Fasiya" で親しんだような優しいサウンドだった。これがソナの持ち味なのだろう。

 もっと大きな会場でよりライブな強いサウンドも聴いてみたいと思う一方、彼女のコラの音色を味わうにはアコースティックな響きの環境でゆったり聴くのがいいかなとも。"Fasiya" を紹介する時にも書いたが、「西アフリカ/マンディングの伝統音楽とモダンなポップミュージックとの良質なブレンド」が彼女の大きな魅力なのだと思う。

 今夜は約1時間のセットを2回。アルバム "Fasiya" のオープニング曲 "Jarabi" でスタートし(これもポップないいナンバーだ)、ファースト・セットの最後は "Gambia"(遂に生で聴けた!)。セカンド・セットでは終盤にギター演奏も披露し、"Musow" でシメ。

 と思ったら、息子がジェンベを持って登場! えーっ、ソナに子供がいるのー!? 確かにリハ中にも5歳くらいの男の子がいたな(ソナは1983年生まれなので、全然おかしくないか)。聞くとダンナさんも会場にいたそう。どの人か分からなかったけれど。その息子君、最初は心細そうにプレイしていたけれど、段々堂々とした姿勢に。フェラ・クティの横でプレイさせられたフェミやセウンの子供時代の姿をちょっと思い出したり。ミュージシャンの子供達はこうしたスパルタ教育を受けて育っていくんだな。

 ライブの合間には度々 MC が挟まった。まだアルバム1枚しか出していないので、レパートリーが足りないのかも知れない。でもそのトークも和気あいあいと進み、とても雰囲気が良かった。ソナが寄付のお願いについても随分語っていたことも印象的だった。

 ソナ・ジョバルテは 2014年にガンビアに The Amadu Bansang Jobarteh School of Music を設立。ここはガンビア初の音楽専門家を養成する学校で、8歳〜18歳を対象にジェンベやバラフォンの演奏、楽理など伝統音楽の教育を行っている。彼女はロンドンで暮らしているのだろうとてっきり思い込んでいたのだが、現在はガンビアに戻って生活しているのだそう。そのことに加えて、自身が母親であることから、子供達への音楽教育に熱心なのだろうかと勝手に想像したのだった。

 新曲 "Gmabia" を含むセカンド・アルバムは年内(2017年)にリリース予定。「3月に出る」と断言する音楽関係者にも会った。彼女はまだまだ可能性を出し切っていない状態で、今後の彼女はプロダクション次第だろうと感じた。ともかく新作が待ち遠しい。今度の新作で "Gmabia" と同程度の良質なプロダクションを揃えられたら、彼女は今年大ブレイクするのではないだろうかとも思っている。

 ソナ・ジョバルテは外遊続きで多忙そうだけれど、ガンビアで行っているワークショップも含めて、新作の曲を引っさげて日本にも来てくれないだろうか? そんなことを大いに期待している。


d0010432_15044882.jpg


d0010432_15053505.jpg


d0010432_15052422.jpg


d0010432_15055977.jpg


d0010432_15054524.jpg


d0010432_15045830.jpg


d0010432_15050850.jpg


d0010432_15060988.jpg


 ソナ・ジョバルテはとってもフォトジェニック。笑顔がいいので、ついつい笑っているショットばかり選んでしまうなぁ。


##

 かつて、世界デビューする前にイダン・ライヒェルの音楽と出会って彼にインタビューしに行ったり、ニョーヨークでユッスー・ンドゥールのでっかいライブがあると知って1泊5日で飛んで行ったり、海外で見たい美術展やイベントがあれば数日の休みを利用して駆けつけたり…。フットワークの良さがひとつの自分らしさなのだろう。今年もフットワーク良く行動して、面白いものをいろいろ見つけてきたいと思っている。







[PR]
# by desertjazz | 2017-01-08 17:00 | 音 - Africa


d0010432_17442894.jpg


 ここ数日聴いているコンゴの新作2枚。

 ・ Deplick "Ouverture"
 ・ Heritier Watanabe "Retirada"

 サウンドとヴォイスが柔らかく優しくシルキーな歌物がお気に入り。「2人とも、ウェラソンのメゾンメールにいたシンガーです。」とのこと。(渋谷 Los Barbados の真弓さんにご教示いただきました。)

 以上。(長文が続いたので…。)







[PR]
# by desertjazz | 2017-01-07 17:00 | 音 - Africa

 2016年も世界各地で様々なライブを観たが、それらの中で圧倒的に良かったのは、ブルース・スプリングスティーンとユッスー・ンドゥールだった。

 2015年11月13日に凄惨なテロに見舞われたパリのライブハウス、バタクラン Le Bataclan が1年振りに営業を再開し、ユッスー・ンドゥールが出演すると発表された時、即座にパリ行きを決めた。新生バタクランのステージに真っ先に立とういうユッスーの心意気に惚れてしまったのだ。

 それでも一抹の不安はあった。それは、ここ何回か観たユッスーのライブを十分には楽しめなかったからだ。2007年のシンガポールの WOMAD も、最後の東京公演も(何年前だったか?)。1999年から2000年にかけてダカールのクラブ・チョサンやニューヨークのアフリカン・ボール The Great African Ball で浴びたサウンドと比較すると、欧米でのヒットナンバーを並べたインターナショナル仕様のライブはとても見劣りするからだ。

 そんな自分を後押ししたのは、3月にアメリカで観たスプリングスティーンのライブだった。先に書いた通り、彼のステージは自分の想像を遥かに超える充実振りだった。スプリングスティーンのコンディションは正に今絶頂に達している。もしかするとユッスーも? 何か良い予感を抱いたのだった。


 バタクランでの公演は11月18日と19日の2回。よく調べると、その前の15日にも同じパリで公演が組まれている。1週間にパリで3回も? パリの人たちはいったい何を考えているのだろう?(いやベルシー体育館でのグラン・バル Grand Bal では毎年数万人の観客を集めてきたのだから、これくらいはおかしくないか?)

 11月15日も含めて3回とも観に行くかは正直迷った。(この週パリで観たいライブは他にないし、パリには最近毎年訪れているので、美術館にもしばらくは行かなくていい。)3度とも同じ内容、それもインターナショナル仕様だったら後悔するだろうと考えてしまったのだった。


DAY 1 : Philharmonie De Paris (Nov. 15)

 久々のニュー・アルバム "Africa Rekk" のリリースに合わせてパリからスタートするツアー、今日がその初日。会場は現代的な建築物としても人気の高いクラッシックホールのフィルハーモニー Philharmonie de Paris。今日はステージ前の椅子席を取り払ってスタンディングエリアを設けている。音響を考えても椅子席の方が望ましいだろうと考えていたのだが、行くかどうかもたもた迷っているうちに指定席は完売になってしまった(その後スタンディングも完売)。

d0010432_13565630.jpg

 20時前に会場に着くとサバールのグループによるセッションが続いていた。それが終わって20時半、さて始まるかと思いきや、ステージに登場したのはドゥードゥー・ンジャイ・ローズ一族(今は息子が継承)。途中から Le Super Etoile de Dakar のパーカッション奏者、ババカル・フェイも加わってたっぷり30分。2015年8月に亡くなった師ドゥードゥーへのオマージュ的な内容だった。

d0010432_13570088.jpg

 20時半、ババカルの煽るような MC を受けて待ちに待ったユッスー達が登場。1曲目は "Li Ma Weesu"。かつて自分がライナーを書いたアルバム "Nothing's in Vain" の代表曲でスタートしてくれたのは素直に嬉しかった。フロアの周りはセネガル人たちで溢れていて、最初から大歓声&大合唱。ちょっとダカールでライブを観ている気分にもなる。もうこれだけで十分。

 "Set"、"Birima"、"7 Seocnds" など馴染みのヒット曲が相次いで繰り出される中、断然良かったのは "Immigres"。独特なメロディーといいアレンジといい、この曲が持つマジカルさは全く褪せていない。"New Africa" の絶唱でいったんシメ。こうした流れは以前と変わっていないようだ。

 もう1曲印象深かったのは "Hope"。静謐な歌声がひしひしと心に染み込んでくる。さりげないこの曲にどうしてこれほど心が震えるのだろう? このときは、まだその理由には気がつかなかった。何せ曲名すら浮かばず、ホテルに戻ってから Spotify で探したほどなのだから(1992年のアルバム "Eyes Open" に入っていたはず、ということだけは思い出せたので)。

 アンコールの最後にはドゥードゥー一派が再登場してまさかの "Chimes Of Freedom"(ボブ・ディランがノーベル賞を取ったからでもないだろうが)。サバール・アンサンブルが爆裂するアルバム・ヴァージョン通りのサウンドが再現された。最後の一打で興奮がマックス!

 でも、新作リリース・ツアーと言いながら、新曲は1曲もやらなかったな??

d0010432_18274593.jpg

d0010432_13570463.jpg

d0010432_13570927.jpg

d0010432_13571434.jpg



DAY 2 : Le Bataclan (Nov.18)

 ロンドンに2泊だけして(ソナ・ジョバルテ Sona Jobarteh のライブを観てきた)パリにとんぼ返り。ユーロスターに初めて乗ったが、パリ〜ロンドン間を約2時間で移動できるのは便利だ(チケットも早く買ったのでとても安かったし)。

 レピュブリック Répubulique のかつての常宿にチェックイン。その後まずバタクランに向う。道行く人たちは相次いで入口前で足を止めて、それぞれが複雑な想いに浸っているらしい様子が見られた(その一方で、レピュブリック広場には飾られる花やロウソクも少なくなり、テロから1年が過ぎて街はかなり落ち着きを取り戻しているようにも感じられた)。

d0010432_14033508.jpg

d0010432_14033836.jpg

d0010432_14034164.jpg

 夜。19時40分、ややゆっくり目に会場に到着。チケットは完売で、手書きのカードを持って余っているチケットを求める人たちが立ち並んでいるほどだった。やはりユッスーはセネガルの同胞たちからの人気が高い。

d0010432_14145638.jpg

 場内に入ると最前列に空きスペースがあり、ここを確保。セネガルの男性たちは身長があるので、スタンディングだとステージが見えにくい。なので、これはラッキーだった。

 ユッスーとババカル・フェイとジャン・フィリップ・リキエル(長年ユッスーと共演してきた盲目のキーボード奏者)の3人だけで3曲。静謐な "Yakaar (Hope)"、優しい旋律の "Fital (Useless Weapons)"、そして新曲 "Food For All"。冒頭この並びにまずビックリ。取り分け3日前に聴いて以降頭から離れない "Hope"。こんな穏やかな曲を最初にもってくるとは予想外だ。

 続いてゲストのアンジェリーク・キジョーが登場し、レエゲ・カバーの "Get Up Stand Up" を共演。場内はもうフィルハーモニーの時以上の盛り上がりだ。"Money Money" や "Be Careful" といった新曲でも大合唱になる。セネガリーズはみんな早くも歌詞を覚えてしまっているんだね。

 いつも通りに "New Africa" の高らかな声でシメた後のアンコールは大ンバラ大会。これが凄まじかった! 特に "Senegal Rekk" は最高だね!(この曲、2016年春頃に EP でリリースされた時点では "Begg Naa Leen" というタイトルだった。)しばらく政治活動が中心で本格的な音楽活動から離れていたユッスーだけれど、ステージ・パフォーマンスに関しては完全に復活している。地元ダカールでのライブも継続(再開?)しているのだろうか?

 最後は、これも今年の新曲 "I Love You"(不思議なことにインターナショナル盤には未収録)。曲名をコールした瞬間の反応の何とも大きかったこと。それほど良い曲だとは思えないのだが、これが人気を得ているのには何か特別な理由があるのに違いない。いまだに謎なのだが…。

 およそ1時間50分のライブ。ワイワイ、ガヤガヤ、大興奮のセネガル人たちとの一体感が楽しい。3日前に観たものよりはるかに良かった。( "Immigres" をまた聴きたかったけれど…。)やっぱりンバラは凄いね!

[ Set List ]

 1. Yakaar
 2. Fital
 3. Food For All
 4. Get Up Stand Up
 5. Li Ma Weesu
 6. Set
 7. Jeggel Nu
 8. Baykat
 9. Birima
 10. Seven Seconds
 11. Song Daan
 12. Money Money
 13. Be Careful
 14. New Africa

 15. Serigne Fallou
 16. Xaajalo
 17. Senegal Rekk
 18. I Love You

d0010432_14152527.jpg

d0010432_14153005.jpg

d0010432_14154582.jpg

d0010432_14155191.jpg

d0010432_14155539.jpg

#

DAY 3 : Le Bataclan (Nov. 19)

 バタクラン2夜目もチケット完売。2ステージ観てすっかり満足したから、今夜は後方でのんびり楽しもう。そう思って開演ギリギリに行く。しかしセキュリティーの前で長蛇の列が出来ていて、これならもう少し早く来るべきだったと反省。それでもPA席の真後ろにぽっかり空きスペースがあり、迷わずここを確保。ステージが最も見やすい絶好のポジションだ。

d0010432_14231155.jpg

 演奏曲は昨日とほぼ同じ順。"Get Up Stand Up" でアンジェリークが加わったのも一緒。ただ、次は "Set" だと待ち構えていたら、それはやらずに "Jiggel Nu" へ。なぜ?と戸惑っていたら、終盤でアンジェリークが再登場し、"Set" でも共演した。煽られて彼女も踊りまくっていたが、正直なところ彼女なしの方が良かったな。

 ユッスー、基本的には昔と大きく違わない。特別新しい試みもなかった。しかし、もうベテランの域なのでそれで構わないと思う。懐メロ大会に陥ることなく、活き活きしたサウンドで誰もを楽しませてくれたのだから。

 フィルハーモニーが欧米向けヒット曲のオンパレードだったのに対して、バタクランは "Senegaal Rekk" と "Africa Rekk" の新曲を折り込みながらのセネガル人たちをより煽るステージ。それぞれ良さがあったので、両方を観られて良かった。トラックリストを改めて見ると、メッセージ性の強い曲が多く並んでいるとも思った。

 フランスは相次いで悲惨なテロに襲われた。そのことで、観光業も飲食店もライブハウスも軒並み大打撃を受けた。エッフェル塔やルーブル美術館の周辺でさえ閑散としているという話すら耳にした。しかし、バタクランという最悪の悲劇を被った場にも、たくさんの人々が集い、笑顔に溢れているのを見られたのはとても良かった。人々は音楽を求めてまた集まり、そして勇気と活力を得ている。これが今回の3公演を通じて一番強く感じたことだった。

 (ただし、これが和解の象徴だという風に安直に考えることはできない。話が複雑になるので、今日は触れないでおく。)

d0010432_14231696.jpg

d0010432_14232373.jpg

d0010432_14232894.jpg

d0010432_14233477.jpg


 ユッスー・ンドゥールのライブを観たのはそろそろ20回になるだろうか。記憶しているのは、ダカール4回、ニューヨーク1回、シンガポール1回、東京6回?、横浜1回。あとどこで観ただろうか? セネガル人が多く暮らすパリでもセネガル人たちに取り囲まれて観てみたいと思い続けてきたが、今回それがようやく叶った。

 "Immigres" のもつ独特なムード、"Set" での大盛り上がり、"Senegal Rekk" の熱いンバラ。どれもをたっぷり堪能したが、中でも一番だったのは "Yakaar (Hope)" と "Fital (Useless Weapons)" だった。とにかく素晴らしかった。

 過去観たユッスーのライブの中で最高だったのは 1999年ダカールのチョサンでのもの。Le Super Etoile de Dakar がインプロビゼーションを徹底的に追求している印象で、そのインタープレイが長いものだから、確か2時間で8曲くらいしか演奏しなかったはず(翌年もチョサンで観たが、今度はポールダンス風のダンスなどエロチックな要素が多く、随分ユルい雰囲気だった)。次いで(もしかするとただ一度だけ行われた?)2000年11月ニューヨークでのグラン・バル。何と3部構成3時間半に及ぶ大パーティーだった(そういえばこの時も最前列で観ることができたのだった。2時間過ぎた頃にはさすがに辛くなって、3階席に移動して遠くからのんびりステージを眺めていたが)。

 そして3番目は 2003年の Tokyo Jazz。日中炎天下行われたユッスーたちによるステージはヒット曲を並べたもので、まあいつも通り。持ち時間も約1時間と短く、特別な印象も残っていない。このステージの後、ミュージックマガジンとワーナーミュージックから依頼を受けて、ユッスーに20分間だけインタビュー。それをどうまとめようかと思案しながら、夕方のスーパーセッションを観て、、、ぶっ飛んだ! この手の顔合わせはとかく企画倒れになりがち。事前情報を何も持っていなかったので、観ないで帰る気でいた。危なかった!

 ハービー・ハンコック Harbie Hancock を中心にスピーチ Speech などが絡むのだろうとてっきり思っていたら、ユッスーが歌いだしたのだ。1曲目は "Fital"。続いて "Yakaar"。どちらも 1992年のアルバム "Eyes Open" に収録されたナンバーだが、スタジオ録音とはあまりに印象が異なるものだから、しばらくどの曲なのか浮かばないほどだった。

 "Eyes Open" はサウンドが穏やか過ぎて滅多に聴かないアルバム。その中でもこれらの2曲はさほど目立たない。それがライブではこれほど素晴らしいとは。Joshua Redman とのバトルも凄まじくて、ユッスーにとってのベスト・アクトのひとつに挙げたいくらいだ。ユッスーの歌声は正しく絶唱。歌っている時間が短いのと、スピーチたちがハマっていないのが残念だが、この映像は入手して繰り返し観てきた。

 それをもう一度(いや二度?三度?)パリで観られた。オーバープロデュースだった "Eyes Open" から時を経て、"Fital" と "Yakaar" は熟成され完璧な音楽として生まれ変わった。パリでは、シンプルな伴奏はこの上なく美しく、ユッスーの歌は気合い入りまくりで正しく入魂の絶唱。音塊から伝わってくる説得力が凄まじい。"New Africa" のラスト・フレーズ、あるいは "No More" と同レベルと言えば幾分想像がつくだろうか。

 2003年にも2016年にもこの2曲を続けて歌った(順は逆だが)。この組合せは自分が知らなかっただけで、ユッスーにとっては定型化されたものなのだろうか? ライブ映像をネットで探しても見つからないので、これは久々のパフォーマンスだったのだろうか? "Yakaar (Hope)" は 2002年の "Live at Union Chapel" でも歌い、DVD化されているが、全然次元が違う。パリでのパフォーマンスは Tokyo Jazz と比べても数倍感動的だった。この連曲ライブは是非とも正式な形で映像作品を残して欲しいと願う。

 アフガン紛争からほどなく来日したユッスーは Tokyo Jazz で "Yakaar (Hope)" と "Fital (Useless Weapons)" を歌った。今また世界中至る場所で対立が激しくなるこの時代、ユッスーは再びこの2曲を歌う。優しく語りかけるように歌い始める "Yakaar"、湾岸戦争やベトナム戦争を折り込みながら戦争と武器に異を唱える "Fital"。そこにユッスーからの特別なメッセージを読み取ろうとするのは間違いだろうか?

 自分が体験した中で最高クラスのユッスーの絶唱がいつまでも脳内から離れない。ユッスーの歌声が毎日毎日頭の中で響き続けている。自分にとってこれはとても幸せなことだ。

d0010432_14252612.jpg


(補足)

1.
 当初バタクランに取材申請することを考えたが、一切受け付けないという。プロ用カメラの持ち込みも禁止だが、コンパクトカメラやスマートフォンはOKとのこと。なので一眼レフとレンズはホテルの部屋に置いていき、コンパクトカメラで少しだけ撮ったが、やっぱり限界がある。でも雰囲気くらいは伝わるかな?

2.
 11月18日も19日もオフィシャル・カメラマンはひとりも入っていなかった。なぜなのだろう?

3.
 11月18日には6カメ収録を行っていた。探してみたところ1曲分だけ公開されているのを見つけた。バタクラン再開最初のステージとなったスティングはフルで公開されたので、ユッスーのビデオも全編公開して欲しい。

 ・ Youssou Ndour & Angelique Kidjo - Get Up, Stand Up - Bataclan 2016 LIVE HD

4.
 11月19日の公演はほぼ全編 YouTube にアップされている。(特に 1h08m33sからの、スピード感に溢れエキサイティングな "Senegal Rekk" は必見!)ただ冒頭3人で演奏した3曲は撮っていなかったようで挙っていない。なので "Yakaar" も "Fital" もなし。残念。


5.
 Tokyo Jazz の映像は "Fital" から "Yakaar" の途中まで YouTube で観ることが出来る。


6.
 Le Super Etoile de Dakar と E Street Band はよく似ていると改めて思った。中央にとてつもないスーパースターがいて、それを支えるバンドは大人数で強者揃い。そしてそのリーダー格にはちょっとひょうきんなところがある(ババカル・フェイとマイアミ・スティーブのこと)。おまけに今 Etoile de Dakar には、ESB の Jake に似た若いサックス奏者もいるし。

7.
 Youssou N'Dour et Le Super Etoile de Dakar の Singapore Jazz Festival への参加が決定。出演するのは 4月1日。観に行きたいなぁ。でも無理だろうなぁ。


8.
 書き漏らしたので追記するが、ユッスーの喉の調子がとてもいい。ライブでこれだけ艶やかに響く声を聴いたのは記憶にないくらい。しばらく政界にいた分、喉を休めることができたのだろうか?



 (若干記憶に自信がないところもあるので、後日、一部追記/微修正するかも知れない。)






[PR]
# by desertjazz | 2017-01-03 17:00 | 音 - Africa

巻頭言 2017

 新年明けましておめでとうございます。気まぐれに時々個人メモをアップする拙ブログですが、よろしければ本年もどうぞおつきあいください。

 昨年の反省点のひとつは、アウトプットが少なかったことです。幸いなことに本業の方では、1年を通して評判作/話題作ばかりでした(『シン・ゴジラ』には関わっていないよ)。でも音楽に関する発信はあまり出来ませんでした。書きたいことが次々浮かんだものの、ほとんどどれも完成にまで辿り着けず。頭の中で最終形のイメージができていても文章にできなかったり、実際書き始めるとどんどん長くなって書き上げられなかったり、余りにパーソナルな内容だったり。必ず公にすると決めている論考もいろいろあるので、それらを今年こそはきちんと書き上げてブログなどで公開できればと思っています。

 新春なので、酒の勢いで?それらの中からひとつを紹介。呑みながら書いているうちに(酒が入らないと文章を書けないのです)収拾がつかなくなった予稿。なので、前半と後半で文体が違っているのです。全く知り切れトンボだし、自伝 "Born To Run" を読んでの感想も加えるべきなのですが、取りあえずは未完成のまま公開することにします。


###


Bruce Springsteen 2007/2016(極め付きの個人メモ)


 今年3月、ブルース・スプリングスティーンの "The River" Tour がどうしても観たくてアメリカに飛んだ。そこでは予想もしなかった大きな感動が待っていた。"Stolen Car" を聴いて、どうしてあれほど感動したのだろう。その理由をずっと考え続けている。



 スプリングスティーンのライブを前回観たのは 2007年11月のワシントン。この時はフランスを旅行中で、オーケストラ・バオバブ Orchestra Baobab、マジッド・シェルフィ Magyd Cherfi (Zebda)、マッシリア・サウンド・システム Massilia Sound System、レユニオンのゾング Zong などのライブを観るべくフランス各地を駆け回っていた。(バオバブは新作 "Made In Dakar" の発表ライブで、メンバー達と再会。こっそりサウンドチェックを観ていたら、サックス奏者のイッサが私の存在に気がつき、サウンドチェックを中断し歩み寄ってハグしてくれたり、バルテレミのギターを運ぶ役目を任されたり。彼らに楽屋で聞いた話も交えて、ライブを観た直後の深夜に新作CDのライナーを書き上げてメールで日本に入稿。マッシリアのライブではパスティス・ガールのサポートを頼まれ、気がついたらステージの上。打ち上げにも参加し、タトゥーたちと語り合う。そんな日々で、とても充実したフランス滞在だった。懐かしい。)その合間にスプリングスティーンのワシントン公演のチケットが取れたので、3泊の強行日程で仏〜米を往復することにし、ワシントンの Verizon Arena へ。

 しかしこのライブ、正直なところ、かなり期待はずれのものだった。スプリングスティーンをアメリカで観たら、それは素晴らしい体験で、きっと興奮を抑えられなくなるだろうとえ想像していたのだが。スタジアムの音が悪いからなのか、半数ほどの曲は楽しめた一方で、残りの半数は乗り切れない。どうにもサウンドが重くて、次第に心が冷めて行ってしまったのだった。それでも、ファースト・アルバムとセカンド・アルバムが特に好きな自分としては、"Growin' Up" (tour debut!) と "Kitty's Back"、それに "American Land" を聴けただけでもフランスから飛んで来て良かったと思ったのだった。


 余談になるが、このワシントンで一番強く印象に残っているのはライブが終わった後のこと。幾分余韻に浸りながらスタジアムの裏手をブラブラ歩いていると、前方からパトカーのサイレンが聞こえてきた。もしやと閃いて車道に駆け出すと(後で気がついたのだが、交通は完全に遮断されていた)すぐ目の前をパトカー数台が通り過ぎ、その後から、、、スプリングスティーンの乗った車が。彼は笑みを浮かべ手を振りながら瞬く間に通り過ぎて行った。その距離数メートル。咄嗟に車道に駆け出したので、自分の周りには誰もいない。こんな幸運ってあるのだろうかという信じられない思いを抱く。それと同時に、パトカーの一群に先導される「スーパースター」という余りにも巨大な存在。リアルさを感じない不思議な感覚。同じ人間でありながらも自分との違いの余りの大きさに圧倒されもしたのだった。

(さらに余談になるが、しばらく歩いて行くと、今度は全米ツアー中のイスラエルのイダン・ライヒェル Idan Raichel と路上でばったり。前年パリで会いインタビューしたことを憶えていてくれたようで「次のニューヨーク公演に招待するよ」と誘われる。皆から度々言われるが、自分が出かけると、ホント何かが起こる!!)


 ワシントンで観た2公演、不満が大きかったので、スプリングスティーンのライブはもういいかなとずっと思っていた

 けれども、今回心変わりしてスプリングスティーンを観に行こうと決めたのは、"The River" のフルセット20曲が聴きたかったから。The River Tour が始まって以降、毎ステージのセットリストをチェックすると、必ず前半はアルバム "The River" の全曲(レコード2枚分)をアルバムの曲順に演奏している。

 スプリングスティーンのアルバムの中で自分が好きなのは、ファースト "Greetings…"、セカンド "The Wild,…"、サード "Born to Run"、その次が5作目の "The River" だ。もう一枚選ぶとすれば、"The Rising" よりも "Nebraska" だろうな(4作目の "Darkness…" は個人的にはある意味過渡期の作品と捉えていて滅多に聴かない)。とにかく、"The River" は猛烈に好きなアルバムだ。その全曲を、今年アメリカに行けば生で聴ける!

 しかし、そんな時間があるのだろうか? 1月はブラジル取材(マンゲイラなど)と北海道旅行、2月は中国取材とインドネシア旅行。そんなことで他の面倒な仕事が溜まりに溜まり、3月はとても身動きの取れる状況にはならないはず。・・・だったのだが、奇跡が起きた。3月中旬に数日なら休みが取れそう。しかも、サンフランシスコで重要な打合せも持ち上がった。

 思い返せば、昨年のこと。スプリングスティーンの "The River Tour" のチケット発売日、一応チケット購入にトライしてみようかと考えたのだった。ところが肝心のその日、急病にかかり、仕事も休んで寝込んでしまった。発売開始時刻が日本時間の未明だったので、当然ネットで手配することなどできず。結果チケットは瞬く間に完売。スプリングスティーンのライブにはやっぱり縁がないのかと諦めていた。

 しかし、サンフランシスコに行けば、ロス公演は無理でもオークランドならば可能性がある。これはもしかすると、アメリカが、スプリングスティーンが呼んでいる? そう勝手に信じ込んでサンフランシスコへ。3月にして今年5回目の旅行(出張含めて)。会社に申告したら「また行くの !?」などと、さすがに周囲からは呆れられたが…。


 そんなワケで?気がついたらサンフランシスコ。そして3月13日、サンフランの隣町、オークランドへ。音楽ファンには Tower Of Power で知られるこの街に来るのも3度目かな。会場の Oracle Arena まで往復する交通手段が心配だったのだが、サンフランとを繋ぐ鉄道駅が隣接することが分かりひと安心。終電時間もチェック。(でも終演ギリギリになりそう。乗れるのか?)サンフランシスコで公演がないのは、スプリングスティーンが演奏できるような大きな会場がないからなのだろうか?なんとことも考えながら。

 公演当日までチケットは未入手。アメリカまで来ながらも「まあ観られなくても仕方ないや」と思っていた。実のところ、そんな手抜き状態だった。それでも夕方に正式なチケットをネットで購入。なので、さすがに GA のチケットは取れなかった。残念。(そう言えば、2007年ワシントンの2日目は当日に GA を定価以下で買ったな。チケット発売時点で完売でも、後々買う方法はいろいろあるのです。)


 前置きがとっても長くなった。さてそのオークランド公演。

 お馴染みの「ぶる〜〜〜す」の大歓声による呼びかけを受けて、スプリングスティーンとメンバー達がほぼ定刻通りにユルユル登場し、3時間半ノンストップで全35曲。


 その前半21曲は待望の "The River" Set。さすがにレコード2枚分の曲の演奏を通して聴くと、アルバム後半には地味な曲も多いので、少しは飽きがくるかなとも覚悟していたのだが。それがどうして、全くもって素晴らしい絵巻物語りを見せてもらった。

 名曲揃いのアルバムの中でも特に好きな "The Ties That Bind" や "Ramrod" といったロックンロール・チューンは最高だった(勿論一番はタイトル曲の "The River" なのだが、ライブを観終えた夜に Facebook に書いた通り、こねくり回すような歌い方がどうしても好きになれない。この1曲に満足を得られなかったことは悔しい)。

 最後の "Wreck on the Highway" を演奏し終えた後、スプリングスティーンの深々と頭を下げる姿がとても印象的だった。ひとつの物語を真剣に聴いてくれてありがとうと感謝を伝えるかのようだった(そしてこれがもうひとつのショーをスタートさせる区切り)

 しかし、振り返ってみると、この夜、最も感動したのは "Stolen Car" だった。
 ロイ・ビタンのピアノとスプリングスティーンの歌とギター。
 美しく、切なく、圧倒的な説得力。
 完璧な名曲だ。
 そのことにこれまで気がつかないできた。
 これまで約40年間、自分は一体何を聴いてきたのだろう?


 そう思って、帰国後スプリングスティーン関連の文献を読み返し続けている。
 読みまくることで、彼のことをいろいろ思い違いしていたこと、誤解していたことも分かってきた。
 彼のキャリアを振り返る時、まだまだ凄い作品を残せたはずという忸怩たる思いも抱く。
 彼はずいぶん勿体ない道を歩んできてしまったようにも思っていた。
 しかし、今ではスーパースターの彼も、あくまで弱さをもった一人の人間であることを理解できた。

 幾多の文献を振り返って一番の収穫は、デビュー前の面白さだ。
 キャスティールズ、スティール・ミル、スプリングスティーン・バンド、等々。
 片っ端から音源を探して聴きまくった。
 The Who や Led Zeppelin のようなハードなロック・バンド/ギタリストになる可能性も持っていた。
 しかし、スプリングスティーンはそれを捨てた。
 そのことは、デビュー以来続き繰り返される変化の予兆でもある。

 ここ半年ほど、彼の作品群を聴き直している。
 聴いても聴いても彼の全貌を捉え切れない。


 "The River" Tour のセットリストを時々チェックしている。
 欧州〜全米2周目は "The River" 全曲の括りを外し、目玉であるはずの "The River" や "Hungry Heart" を演奏しなかった日もあるようだ。
 地元ニュージャージーでは4時間に及ぶ驚愕のセット。
 "Rosalita (Come Out Tonight)"、"New York City Serenade"、"Jungleland" という3大名曲/長曲が並ぶセットなんてあり得ない!
「あー、今年もう一度観に行くべきだった」と後悔。
 しかし、自分としては "The River" のフルセットをライブで聴けたことの方に満足している。

 ツアー終盤になって、ステージの始めの方にファーストとセカンドの曲をずらっと並べている。
 自身のキャリアを振り返るかのごとく、どんどん回顧的になってきている印象がする。
 これは今の自分とシンクロしている?(と勝手な一言。)
 そんなことを思っていたら、今度は新譜 "Chapter and Verse" と自伝 "Born to Run" を発表。
 これにはさすがに驚いた。
 自伝の内容に沿った選曲のアルバムには、デビュー前に録音された未発表曲が5曲。
 これらはここ半年狂ったように聴き続けてきたもの。
 やっぱりシンクロしているなー!


 スプリングスティーンがなぜ今 "The River" 全曲をライブで演奏したのだろう?
 自分がなぜ "Stolen Car" という曲にあれほどまでに感動したのだろう?
 その理由についてずっと考えて続けている。
 恐らくその答えにもう辿り着いているのではないだろうか。
 一言でまとめると、それは "The River" という作品が大人への分岐点だったから。
 その意味合いを象徴する1曲が "Stolen Car" だったのだろうと思う。

 ブルース・スプリングスティーンの自伝がいよいよ世界同時発売。
 自分がここ半年ずっと考え続けてきたことへの答えも明かされているに違いない。

 ブルース・スプリングスティーンを聴き続けたくて、ここ半年間 CD はほとんど買わず。
 この偉大なミュージシャンと同時代に生きてこられたことを心底幸せだと思う。
 彼は2016年をフルスロットで走り続けている。
 そのスプリングスティーンのライブをもう一度観たいと願う。


###


(以上が、3月に頭の中にメモしたことへ10月に書き加えた未完成原稿。その後、自伝を読んで「やっぱりそうだったんだな」と思ったのでした。)







[PR]
# by desertjazz | 2017-01-03 00:00 | 音 - Music

DJ
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31