レコードプレイヤー KENWOOD KP-9010 を2台化した(これ一度やってみたかったのだ)。1台は MC カートリッジ専用、もう1台は MM または Mono カートリッジ用。78回転専用にしている Thorens は置き場所がなくなったので、ベッドルームに移動し、使う時だけ繋ぐことにした。
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アンプと CDプレイヤーを Luxman に買い替え(L-507uXII と D-03X)、スピーカー B&W 805D4 を導入し、ラックを Quadraspire に変更し、カートリッジとヘッドシェルもいつくか新しいものに変えたので、次に見直すのはアナログ・プレイヤーだろうかと考えていた。しかし、ミドルクラスの現行機を探すと、LINN と Luxman くらいしか候補がない。レコードブームと言われ、高価なカートリッジも相次いで発売されているが、このレンジのプレイヤーの新製品がほとんど出ていないことを知る。
そんな訳で、まずは LINN LP12 を検討。一度は LINN を使ってみたいという願望を持っていたので。それで、ひとまず Majik LP12 をお試しに導入してみようかと悩んだのだが、どうしても踏み切れない。
その理由は、
・アームがヘッドシェルと一体型なので、カートリッジの交換が面倒(実際、頻繁な付け替えは非現実的)。
・現在のアームは見た感じ貧弱で、デザインも好きでない。
・SME などのユニバーサルアームを載せることも可能らしいのだが、かなりコスト高になりそう。コンディションの良い中古アームを入手できるかも問題。そもそも自分は SME についての知識を持っていない。
・カートリッジを選べない。Majik LP12/MC を選んだとして、そのカートリッジ Koil は audio-technica AT-OC9XML をベースに作られたらしいのだが、AT-OC9XML の定価 ¥77000 に対して、Koil の ¥154000 というのは割高に感じる。
・最低ランクの Majik LP12 だと、水平調整もできない(ベースボードを Trampolin に変更すれば可能になるのだが、それだけで数万円高くなる)。
・グレードアップが自在というが、その都度のコストが非常に高い。
・ダストカバーは別売り(5万円くらいするようなのだが、価格表には見当たらず)。また別途調整料(¥55000?)がかかるようなのだが、調べた限りそのことはどこにも明示されていない(ちょっと不信感)。
そして、とにかく高い! 最安のセットでも約60万円もするのに、水平調整できないというのはどうなのかな? 色々調べてみると、ユニバーサルアームにしたとしても、カートリッジを交換する度ごとの調整は素人では無理らしい。(現在の材料調達費や開発料を想像し、今の円安も加味すれば、決して高くはないのかもしれないが、やはり富裕層をターゲットにした価格設定なのだろうと感じてしまう)。このクラスのプレイヤーに合わせるフォノイコライザーは 10〜20万円くらいのものを選ぶことになると思うので、何だかんだでトータル 100万円前後になる。完全に予算オーバーだ。自宅のリスニング環境を考えると、とてもそこまでのものは必要ない。オーディオ資金は次のスピーカーの予算に回した方が賢明だろうとも考えてしまった。
一方の Luxman は、PD-191A も PD-151 MARK II も78回転にも対応しているので、どちらかを導入すれば、今使っている Thorens の SP 専用機を手放せるメリットがある。しかし、ダストカバーが高い。191 は ¥110000、151 は ¥66000。Luxman は1割引で買えるにしても、そうした値段を知っただけで気持ちが萎えてしまった(LINN はもちろん定価販売)。Luxman にすればアンプとの相性が良さそうだけれど、機能的にも見た目でもデザインが受け付けないんだよなぁ。
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現行機を見送るとなると、次なる選択肢は中古。Thorens や Garrard などのヴィンテージを探すか、80年代の日本製を探すか。だが、ヴィンテージだと状態の良いものはほとんど出回っていないだろうし、メンテナンスも大変そう。自分はオーディオマニアではないので、これはなし。
対して「黄金期」80年代の日本製は評価がすこぶる高い。中でも私が長年使っている KP-9010 が一番人気の名機らしい。ネットへの投稿を読むと、このプレイヤーに関する記事がとにかく多い(これまで長年使ってきたが、トラブルは全くなく、その点でも信頼できる)。実は KP-9010 をゴミに出して LINN に買い替える気でいた。危ない、危ない。
それで、KP-9010 の中古を探し始めたのだけれど、信用できそうな業者が調整・研磨した状態の良さそうなものを出したので、さっさと買ってしまった。35年前(1988年)の定価よりずっと高い分、それだけ状態が良いはずと推測したのも、選んだ理由のひとつ。速攻で届いたので(梱包も完璧)取り敢えずレコード数枚再生してチェックしてみたところ、問題なさそう。しかし、L-507uXII の内蔵フォノイコではもの足りない。昔買って一度聴いただけで、「これはダメだ」と押し入れに直行した Cambridge Audio AZUR651P を繋いでみたら、Luxman のアンプだとそれなりに良い音を出す。しばらくこれを使いながら、フォノイコを探そう。時々中古が出る Trigon Vanguard をもう1台買ってもいいのだが、それでは面白味がないので、Aurorasound VIDA prima か VERTERE PHONO-1 MK II あたりにしようかな?(届いた中古機、至るところピカピカに磨かれている。やればこれだけ綺麗になるんだ。35年使っているプレイヤーのダストカバーを磨こうと思って研磨剤を買ってあるので、近々クリーニングしよう)。
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高級なプレイヤーを選ばなかったのには、別の理由もある。それはレコードのコンディションに関すること。50〜70年代頃の名盤をレコードで聴く楽しみってあると思うのだけれど、自分が持っている盤はどれも聴き過ぎて、音溝が劣化しているように感じる。この時代の中古盤を買うにしても、状態の良いものはとても高価だ。レコード盤は、プレス時期や生産国による違いの方が、どんなプレイヤーで再生するかよりも音への影響が大きいようにも思う。また、80〜90年代の作品は CDフォーマット(再生周波数の上限 22.05kHz)に合わせたマスタリングのものが多いので、それらをヴァイナルでリイシューしても、その音には限界がある。
そして、最近の新譜やリイシューに関しても問題を感じている。音質が評価されているレコードをあれこれ買って聴いてみたのだけれど、音が良いと思ったものはほぼなかった。恐らく、マスターテープが劣化していたり、レコード制作の技術が失われてしまったりした結果なのだろう。たとえミックスが良くても、それを製品化する際のマスタリングやプレスする技術が伴っていないのだと思う。聴き親しんだ名盤を買い直しても従来の CD にはなかったノイズが入っていたり、音の良さを謳っているクリア・ヴァイナルでもノイズが気になったり、酷いものだと盤面に大きな傷が入っていて、今のレコードは品質管理が全然できていないのだと悲しくなった。
もうひとつ書くと、MC と MM 両方の再生環境を持っている必要を感じたことも大きい。繊細なサウンドは MC で聴いた方がいいのだけれど、ゴリゴリのモダン・ジャズなどは MM で聴きたい。また大量に所有しているアフリカ音楽のレコードもコンディションが悪い盤が多く、そうしたものは MM で力強く再生した方が楽しめるだろうと思った。
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長々書いたが、来月の値上げ前に LINN LP12 を買ってみようかと、まだ未練がましく迷っている。以前ハイエンド店で2度ほど試聴した時には特段特徴を感じなかったものの、実際使い込むとどんな鳴り方をするの、やはり興味がある。しかし自宅のリスニング環境を考えると、高級オーディオを導入しても、その真価は引き出せそうにない。ならば、KP-9010 2台で音楽を楽しむのが程よいように思える。
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