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■生誕100周年を迎えた「モロカン・シャアビの父」

「モロカン・シャアビの父」として崇められ、その音楽がモロッコの人々から長年愛され続けてきたホスィン・スラウイ(フスィン・スラウイ)が、今年2021年、生誕から100年(そして、4月16日で没後70年)になる。私にとって彼の音楽は、2010年代に出会い聴いた中で最大の衝撃のひとつだった。そこで、日本ではほとんど知られていない、この素晴らしい音楽家について、たっぷり紹介しよう。



# by desertjazz | 2022-04-16 00:00 | 音 - Africa

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 キサールのイカットに魅入られてからは、この布が作られる現場を直に見てみたくなった。大洋に浮かぶ小島というだけでも、旅心がくすぐられる。それで、キサール島に行く方法を何度も探ることに。

 地図を見ると、キサール島はチモール島東北部に位置しており、チモールの肩にちょこんと乗っているように目に映る。ならば、チモールから船に乗れば島まで簡単に辿りつけそうだ。そう考えたのだが、東チモールは 2002年に独立したため、インドネシアとは別の国。ならば、国境越えの船など考えにくい(それ以前からポルトガルに実効支配されていたので尚更だ)。

 そこで調べてみると、キサールは行政的には何と遥か北方のマルク諸島に属するようだ。そのため、最も一般的なアクセス方法は、マルク諸島のアンボン Ambon からの船での移動らしい。しかし、この船での往復には一体何日必要なんだ?

 さらに調べると、飛行機も飛んでいることがわかった。この小さな島に滑走路があることは、全く念頭になかったので驚き。アンボン、あるいは西チモール最大の町クパン Kupang からも時折フライトがあるようだ。だが、それが定期便なのか不定期便なのか、そして今も運行しているのかどうかよく分からない。

 調べた限りでは、1週間に1本程度、船や飛行機が往復していた時期もあったようだ。たとえ今も同様だとしても、日本からキサールまで往復するには最低1ヶ月は必要だろう。

 キサールはどのような土地なのだろうと思って、動画を検索して見た。すると、いくつか見つかり、若い白人が観光で訪れた様子が記録されている。こんな場所にも観光で訪れる人がいるとはね。しかし、映像を見る限りは、何ら魅力を感じない変凡な島。まあ、それも当然だろう。

 もしキサールまでたどり着いたとして、問題なのは、泊まる宿があるのか、食事場所はあるのか、言葉は通じるのか、現金はどれくらい必要なのか。宿泊に関しては、宿がなくても、寝袋さえ持っていけば、まあ何とかなるだろう。昔だったら、バリでも初対面の人に「ウチに泊まって」と言われたこともあり、そんな出会いにも期待してしまう。食事に関しても、多分簡単な食堂くらいはあるに違いない。支払いについては、多分インドネシアルピアの現金しか通用しないだろうな。まあ、どんなことでも片言のインドネシア語で何とかなるはず。

 仕事に一区切りついたら、数ヶ月かけてインドネシアをゆっくり巡り、その間にキサールにも足を運んでみたいと思いながら、こうしたことを調べ思案していた。毎度旅のプランを練ることが個人的には大きな楽しみだ。しかし、新型コロナのために、それもしばらくは無理だろうな。



(2021/04/30 全面的に書き直し)







# by desertjazz | 2021-04-29 23:00 | 布 - Ikat and

キサール島の絣 Kisar Ikat(2)_d0010432_11081432.jpg


 前回(昨日)、「キサール・イカットに関する資料は本当に少ないのです。」と書いたが、とんでもないウェブサイトを見つけてしまった。

Asian Textile Studies

 この中のキサールのページの記述が実に詳しいこと。あまりに長大すぎて、とても読みきれない。


 ここまで徹底して研究している人がいるとは。驚くよりも、ため息しかない。とにかく凄いの一言!

 このウェブサイトを作ったイギリス人のリチャードソン夫妻 David and Sue Richardson は、豪華クルーズ船に乗ってインドネシアのイカットの産地を巡るツアーも企画している。


 昨年、次回の日程を調べたところ、2021年5月13日出発の数週間のツアーが発表になっており、予約を受け付けていた。その旅程にさすがにキサールは含まれていなかったが、こんなツアーに参加できたら効率よく産地を巡ることができるだろうなとは思った(楽しくはないかもしれないが)。ただし料金はおよそ 100万円。なので、とっても無理! それ以前に、新型コロナの流行が収束しないので、多分中止になっただろうと思う。


(続く)







# by desertjazz | 2021-04-18 11:00 | 布 - Ikat and

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 私がインドネシアのバリ島を最後に訪れたのは、一昨年 2019年12月のことだった(インドネシア15回目/バリ14回目)。目的はバリの芸術を創造したドイツ人画家ヴァルター・シュピース Walter Spies の足跡を辿ること。ご存知の通りヴァルター・シュピースは、現在まで続くガムランの演奏/舞踏形式や絵画の様式を生み出した人物。その彼のアトリエ跡2ヶ所(ウブド Ubud とシドメン Sidmen のイサ Iseh)に実際に宿泊して、彼の眺めた風景や浸った音を追体験しようというものだった。しかし、いろいろ成果を得られたものの、今に至るまでそれらを全くまとめることができていない。まあ、自分が体験することこそが目的だったので、何らかの形にまとめ上げる必要などないとも考えているのだが。

 ガムラン、絵画、音楽、食と酒(とりわけ、フルーツとバビグリンとアラック!)、ダイビング、等々と数多くの目的を持って訪れたバリ島なのだが、布に関して探求することも大きな目的だった。布の中でもイカット(絣)が興味の対象で、実は反対にバティックにはほとんど惹かれない。ウブドやクタの店々を訪ね歩いて店主たちと話していると、鍵のかかった金庫を開けて上等のものを出してくるまでになったので、ある程度目が効くと認められるようにはなったのだろう。

 さて一昨年暮れのバリでも、アンティーク店などを巡る一方、書店で布に関する文献を探した(これまでにも大量に買っている)。そこで目にした一冊にビックリ! キサールの布が表紙だ! しかも縦横の織りが反対だ!

・Peter ten Hoopen "IKAT TEXTILES of the INDONESIAN ARCHIPELAGO - from the PETER TEN HOOPEN COLLECTION"(香港大學美術博物館、2018)


 ・・・いや、こう書いても、さっぱり意味不明なことだろう。

 インドネシアのイカットとしては、バリ(ダブル・イカットもある唯一の島・・・と書いても分かりませんね)、フローレス、スンバ、スンバワ、チモールなどが有名だが、私がコレクションしているのはキサールのもの。

 ・・・キサール? ますます意味不明??

 キサール島 Pl. Kisar はチモール島の右肩にちょこんと乗るように位置する、とても小さな島。ここで作られた/作られるイカットの色合いやデザインにとても魅力を感じるのだ。特に、まるで宇宙人が踊っているような独特な織りの意匠がとても面白い。

 こんな小さな(インドネシア人の大半さえ知らない?)島で織られた布なので、探してもなかなか見つからない。20年ほど前に出会った布は買い集めた。しかし、その数年後には、ある店主に「いい買い物をしたね。今ではもう手に入らないよ」と言われた。実際その頃見かけた唯一の1枚(アンティークではなく、デザインもさほど面白くない)は 1000ドル以上したし、ちょっと良いものになるとネットで 30万円以上で売られていた。

 そんな超マイナーなイカットなので、その布を表紙にしているだけでも驚きだった。そして中を開くと、約600ページのうちの何と12ページもキサール・イカットに費やされている。たったの 12ページと思うことなかれ。キサール・イカットに関する資料は本当に少ないのです。

 しかもしかも、先に触れたように、表紙の布は織りの方向が縦/横反対なのだ。背景の布と比較して分かるだろうか? こんな織りのキサール・イカットは初めて見た!

 この本、キサールに限らず、掲載されている布がどれも実にいい。しかし、ずっしり重くて、ここで買うか迷った。ヴァルター・シュピースに関する新しい文献もかなり重かったので、帰国後にネットで買おうかと。しかし、やっぱり買って持ち帰ることにしたのだった。(往路はビジネス・クラスに切り替えられたが、復路はビジネス満席。手荷物が重量オーバーになるので、現地で着た衣類や新品の電池などはまとめて処分してきた。)

 帰国後、早速重量を計ってみたら、何と 4kgもある! これでは重いはずだ。だけれど、イカットに関する書物としては、これまでで最高の1冊なのではないだろうか。そんなわけで、時々美味い酒をチビチビやりながら、掲載されている布を眺めるのがこのところの楽しみになっている。


(続く)




(追記)

 ここで紹介した Peter ten Hoopen のコレクションがネット上にもあった。例えば Kisar のリストは以下の通り。これから内容をチェックします!








# by desertjazz | 2021-04-17 17:00 | 布 - Ikat and

Compilation Album : Houcine Slaoui \"The Father of Moroccan Chaabi\"_d0010432_10074108.jpg


■ホスィン・スラウイのアルバムが遂に完成!

 長らくお待たせしました。ホスィン・スラウイの CD がやっと出来上がり、彼の 70回目の命日である本日 4/16 にリリースです。

 Houcine Slaoui "The Father of Moroccan Chaabi" (Good Old Noise, DJ-001)


 モロッコの旅で出会ったこの素晴らしい音楽家のことを、少しでも広く知ってほしい、そして自分自身もっと知りたい。そのためには彼の代表曲をコンパイルしたアルバムを作って、いろいろな人に聞いてもらうことが有効なのではないか。そのことで新たな情報を得られるかもしれない。そのように考えたのは、今から8年前。これだけ偉大な音楽家なのに、世界のどこにもまともな CD がないなら、もう自分で作ってしまえと決めたのです。

 しかし、実際始めてみると、全てが初めてのことで、予想を超える大変さ。途中、何度も諦めかけることに。音源収集、資料探索、文献精読、楽曲考察、盤起こし、ノイズ・リダクション、マスタリング、選曲、翻訳、パッケージング、デザイン、ライナーノート執筆、等々、結局10年がかりの作業になりました。

(ノイズリダクション/マスタリングに至っては、繰り返すこと 50回以上。音処理は最小限にしたのだけれど、それでも納得が行かず、マスターを納品する数日前に、3曲ほど使用音源をノイズの多い方のレコードに変更して盤起こしからやり直し。マスタリングによって音の艶がわずかでも損なわれるのが嫌だったので、音に芯のあるものを最終的に選択。)

 時間はかかりましたが、多くの方々にご協力いただき、ようやく形になりました。デザインは、ジャケットの木版画の制作を依頼した福田新さんら、お三方にお願い。歌詞の聞き取りと曲名の日本語表記に関しては、ウアムリア奈津江さんとお仲間にご尽力いただきました。CD 制作全般については、たくさんの方々に相談。中でも、高橋政資さん、原田尊志さん、森田潤さん、井口寛さんからは、とりわけ多くのアドバイスをいただきました。

(デザインに関しても、細かな修正をギリギリまで何度も何度もお願い。みなさん、本当に根気強くお付き合いくださいました。

 その結果、ホスィン・スラウイの命日(没後70周年)の 4月16日までに、どうにか完成させられました。たくさんの友人たちが手助けして下さったおかげで、当初考えていたよりもずっと良いものになったと思います。改めて感謝申し上げます。

(勿論、心残りもあります。音の状態とアルバムの流れを考慮して落とした曲は多数。ライナーの内容に関しては、モロッコ音楽の基本情報について自信がないですし、ホスィン・スラウイの経歴と録音歴についても、どうしても特定に至たらなかったことが多々ありました。今もずっと検証中なのですが、「41年頃から50年までの約10年間の録音集」と捉える方が正しかったのかも知れません。ですが、まずはこれらの音源を世に出すことが優先と考えました。マスター制作からライナー執筆まで一人でやり切り、その上、DDP ファイルの制作やジャケット・デザインまでも自ら行う準備を進めていたため、力及ばず。とにかく、状態良い SP もライナーを書くのに十分な情報も集めきれなかったので、今回はこれが自分の限界。ですので、この CD は「現時点での中間報告」としてお聴きください。)

 現在、協力して下さった方々と友人たちに、完成した CD を順次お送りしているところです。お手元に届くまでしばしお待ちください。ホスィン・スラウイの音楽の面白さ、素晴らしさだけは、確実に記録できたと思っています。また、この音楽家の偉大さと重要さを伝えるものを、世界で初めて作れたことに満足し安堵しているところです。お忙しい中恐縮ですが、一聴いただけたら幸いです。






 余談を少々。ファースト・プレスのジャケットは手刷りの木版画。ですので、1枚1枚刷りの濃淡や印象が異なります。また、ライナーノートは大きな活字を採用。高齢で視力の衰えたワールド・ミュージック親父たちへ配慮した分、読みやすくなっていると思います。




(長旅にも出かけられなかった昨年、そうした時間を利用して何をしようかと考え、思いついて始めたのが「アフリカの記憶」でした。それを 210日間続け一区切りついた頃、次の目標について思案。そこで頭に浮かんだのが、ホスィン・スラウイの CD 制作に決着をつけることでした。その CD もひとまず完成したので、さて今度は何に取り掛かろうかな? ところで、この CD にはいくつかの仕掛けが施してあるのですが、気がついてくれる人はいるかなぁ?)



(続く)






# by desertjazz | 2021-04-16 00:00 | 音 - Africa
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