『オルタナティヴ・ミュージック』

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 石田昌隆さんの『オルタナティヴ・ミュージック』をさきほど読了。先日、サラーム海上さんと渋谷の国境の南で呑んだとき、海上さんは「面白い本だ」としきりに褒めていた。買って読んでみたら、本当に面白くてほとんど一気に読み通してしまった。

 以下、雑感。

・近年の音楽的トピックとその変化、自身の音楽遍歴、そして世界を旅した記録、これらを同時進行させたスタイルが面白い。過去の音楽を単純に振り返るだけの作業に対して個人的にはそれほど興味を持てなくなっていて、そうした考えが自分を多くの音楽書から遠ざけてしまっているのだが、こうした書き方もあるのかと感心させられた。

・石田さんの持つ豊富な情報量と記憶力には日頃から驚かされているが、一見無縁のような名前やトピックが彼の脳内でウェブのように結びついて、ひとつの結論にまで辿りつく様が読んでいてワクワクする。

・写真にはほとんど興味がなく、自分自身スナップショットしか撮れないという恥ずかしい身としては、この本を読んでも、最初のうちは、冒頭の写真120枚は文章に添えられたオマケのようにしか捉えられなかった。しかし文章を読みながら写真を見返していくと、写真と文章とが対等の関係にあること、あるいは写真こそが主であることがわかってきた。なのに、ひとつのテーマごとに1枚のみというのは、見事に潔よいと思う。

・聴き飽きるほど親しんだ音楽でも、苦手と感じた音楽でも、聴かずに通り過ぎた音楽でも、改めて聴いてみようと思わせる魔力がある本。また、こうして過去を語ることが今を語ることに繋がっていることを教えられた。
 自分は過去を振り返ることがあまり好きでなく、限られた時間を新しい何かを見いだすために費やしてきた面がある。それでもこのごろは過去を一度振り返って何らかの総括をする必要性も感じている。そのような意味でも刺激的な作品だった。

・これまで意識できなかったことに気がつかされることが多かった。自分がユッスーのチョサンでのパファーマンスにどこまでも拘るのには、それがコミュニティ・ミュージックの場であるからだと、今さらながら理解させられた。

・旅に出たくさせる本。読んでいるうちにベルリンの壁崩壊から20年であることに気がつく。さらに調べるとそれは11月。早速、ベルリン行きのフライトチケットを探す。20年の節目だからといって何かがあるとは全く思わないが。

・これまで読んだ音楽書で特に印象に残っている本。『大衆音楽の真実』、『音楽の未来に蘇るもの』、『黒いグルーヴ』の3冊。特に石田さんの『黒いグルーヴ』は、自分をドラムンベースやブリストル界隈の音楽にはめる契機のひとつとなった。再読しようと思い、書庫から取り出す。

・それにしても石田さんのスタンスは独得なものだと思う。次々と斬新なテーマを見いだして世界中に飛び出していき、その成果を発表することで、写真家としても音楽ライターとしても成功されている。

・サラーム海上さんや石田昌隆さんの文章を読んで、彼らのファンが多いのは当然だと思う。誰だって彼らのような旅には憧れるだろう。ならば、若者(に限らず、オヤジもオバンも)にはどんどん世界を旅して、現場を体感し、そうした中から彼らに続く語り手も現れて欲しいと願う。

 ・・・といろいろ書いたが、自分にとって一番大きな影響はもう一度音楽を聴き始めたこと(まだ少しだけだけれど)。そして、そのついでにまた何か書いてみてもいいかなと思ってしまったことだ。リハビリ的に、Massive Attack、Jeff Mills、Roni Size、Carl Craig、Goldie、Tricky、Caron Wheeler、それに Sandii や Faye Wong などを取っ替え引っ替えプレイヤーにセットして聴いてみた。ひと時代が過ぎて、正直少し古さも感じさせられたが、やはり名盤ばかりだ。アフリカ音楽のウェブサイトの方は、誰も書き手がいないから自分がやっていたような側面があって、その裏では実はこうした音楽に方により魅力を感じていったんだよなぁ。
by desertjazz | 2009-09-19 22:00

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