2009年 09月 17日
World Arbiter : Roots of Gamelan

自分が海外に繰り返し出掛けるきっかけのひとつはガムランに興味を持ったことだった。そのため、バリは10回以上訪れてガムランの実際の音を堪能してくることになる。しかし、地元のことを深く知るようになると、次第にバリに向かう足を鈍らせることにもなった。バンジャールという共同社会の中の繋がりが強すぎて、自分のような外部者が入っていくと無意識的に気疲れを生じてしまうのだ。もちろん毎度誰もがフレンドリーに迎えてくれて、何もトラブルはなかったのだが。
そうしたよそ者が溶け込みにくいバンジャール内の繋がりを体現している象徴がガムランだと思う。その音を聴くと言葉にできない心地よさに浸れると同時に、いつしかストレスも感じるようになった。その美しい音の背景にあるコミュニティー力に圧倒され、また村社会の難しい諸々が見え隠れもしてしまうのだ。
今でも最近のガムランはどこか心底楽しむことができないままでいる。それに対して、20世紀前半の古の音にはそのような意識をもつことがない。その柔らかな響きはどこまでも心に優しく、また時のフィルターを通って美しく昇華している。
(このシリーズ、詳細な解説にも定評がある。実は3作目以降の制作が大幅に遅延を生じている原因もその解説書作成が原因だと関係者から聞いている。前2枚はアオラ・コーポレーションがきちんとした日本語翻訳をつけたので、今回はその日本盤を待って買った方がいいのかも知れない。)