2009年 10月 15日
Sam Karpienia

まず、Sam の声。彼の声は Dupain 時代から大好きだった。乾いていて、鋭い刺に毒気を含んだような独得な声質、そこに哀感とセクシーさを感じる。微妙なビブラートのかかった節回しも魅力的だ。そして、2本のマンドーラのコンビネーション。どちらも、10弦張るところを複弦4コースの8本のみで演奏しているのだが、それらの太い音の響きあいが美しい。
ステージではその Sam の歌と、2本のマンドーラが大爆発する。Sam の激情ヴォイス、それを覆い伏せるかのように掻きむしられるマンドーラ。特にマンドーラのサウンドが凄まじい。まるで爆音ロックで、それがドラムスと一体となってループするときのドライブ感がもう最高。マンドーラ2本+ドラムスというシンプルな編成であるだけに、そのドライブ感の効果は絶大である。
そして、エフェクターを足で叩いた瞬間、弾く腕のストロークに力がこもり、コンソールのヘッドアンプがオーバーレベルとなったかのような痛いディストーションノイズが響き渡る。歌も演奏もひたすら熱い。台北では1曲目で Sam のマンドーラの弦が切れたほどだ。もう、ただただ音塊を浴びるばかり。それが突然ブレイクする。これの繰り返しで、聴くこちらもエクスタシーの絶頂!
ただし、こうしたサウンドは好みがはっきり分かれるだろうと思う。台北では客席最前列、PAの真ん前で聴いていたのだが、マルセイユのときよりもやや音がおとなしく聞こえた。それでも1曲目が終わった途端に、最前列の客がほとんどいなくなった。恐らくはあまりの大音量に耐えかねたに違いない。それまでの出演者が弾き語りなど、穏やかなものが続いたために、期待に反して驚いてしまったという理由もあるのだろうが。
台北での演奏の流れはマルセイユのときとほぼ一緒だったと思う。いずれともマンドーラを中心とする美しい爆音を浴びているだけで気持ちが良かったのだが、その一方でこのユニットにはこれから先にやり方は残っているのだろうかという疑問も浮かんで来た。シンプルな編成で音楽をやっているだけに、限界も感じられ、この先の展望が想像できない。レコーディングは "Extatic Malanconi" 1枚だけで終わる可能性もあると思う(幸先よく、このアルバムはフランスで好セールスとなっているらしいのだが)。
こんなことを危惧していたら、Sam は現ユニット以外にも複数のプランを持っているとのことで、そのあたりについても Sam と Manu Theron が話してくれた。彼らが語ってくれたことについては、整理して改めて紹介したい。
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つい先ほどマルセイユから Moussu T に関する面白い情報(初耳!)が関係者から入ってきた。今夜もかなり酒が進んできたので、これについても後日とします。
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(追記)
Toshi さん、同じタイミングでライブの感想をアップしたのは奇遇ですね。
・ サム、もう一度弾いてくれ