Chimamanda Ngozi Adichie

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 チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ Chimamanda Ngozi Adichie の短編集『アメリカにいる、きみ』(河出書房新社)を読了。

 C・N・アディーチェはアメリカ在住のナイジェリア人若手女流作家。最初に読んだ彼女の作品は長編2作目となる "Half of a Yellow Sun" (2006年) だった。ビアフラ戦争(1967-70)をテーマにした作品で、そのとてつもない緊張感の表現と展開のテンポの良さに圧倒された。1977年生まれの彼女がビアフラ戦争を実体験しているはずもなく、それでいながら内戦下右往左往する登場人物たちを描く筆致にリアリティーを感じさせられたことを記憶している。しかし苦手な英語とあって、話の筋が時々分からなくなり、また細かなニュアンスも捉えようがなかった。続いて長編1作目の "Purple Hibiscus" (2003年) に挑んだものの、こちらは全く歯が立たず。

( "Half of a Yellow Sun" では、途中、Rex Lawson の音楽のことが書かれていて、ニンマリした記憶がある。)

 これら2冊、いつか訳書が出ないものかと気にしていた。先日ふと思いついて検索してみたところ、すでに2年前に彼女の短編集が出ていたことを知り、それも当時結構話題になったらしく、慌てて購入。

 『アメリカにいる、きみ』は短編10本を日本独自に編纂したもの。これを読んで、彼女に対する驚きが一気に膨らんだ。 "Half of a Yellow Sun" と同様に、ナイジェリアの庶民の苦しみ(特殊な日常だ)を描いたり、アメリカやイギリスに渡ったナイジェリア人を主人公にしたりと、テーマは様々だが、書くべくして書いているという著者の明確な姿勢、意思や芯の強さといったものが、ひしひしと伝わってくる。 "Half of a Yellow Sun" で感じた緊張感やテンポの良さも、日本語になっても損なわれていない。登場人物は上流階級に属する者ばかりだが、決して嫌みにもなっていない。何より、人の心の少し深いところからふわっと浮いてくるような悲しみや暖かみの描写が絶妙だ。

 訳者の解説に紹介されたインタビューでの受け答えを読むと、彼女の頭脳の明晰さが伝わってくる。まだ32歳、これからが大変楽しみだ。"Half of a Yellow Sun" と "Purple Hibiscus" もじっくり味わいたいので、是非日本語版を出して欲しい。
by desertjazz | 2009-11-01 12:00

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