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 『ガラスの家』(プラムディヤ・アナンタ・トゥール、めこん)読了。『人間の大地』、『すべての民族の子』、『足跡』と続いた「ブル島4部作」の完結編。20数年がかりで刊行された翻訳書6冊を20年かけて読み終えたことになった。訳書『すべての民族の子』から『足跡』までの間に10年の間ができたので、最終巻の『ガラスの家』の翻訳書は出ないような気すらしていた(実際今回も8年を要した)。そのためか2年前に出版されたことに気がつかずにいたのだが、バリでN氏から「既に出ている」と指摘を受けて慌てて取り寄せ、ほとんど一気に読み終えてしまった。
 とにかく圧巻の構成力。19世紀末から20世紀初頭のインドネシア情勢を俯瞰する遠大な歴史絵巻であり、かつスハルト政権の問題点を鋭く糾弾する作品にもなっている。前作までの主人公ミンケがほとんど登場せずまま、終わり頃に犬死にし、今回の語り手のパンゲマナンが体制側の有力者でありながら、ひたすら苦しむ。良心を持つ者ほど救いが得られず、誰も勝者になれない悲しい時代が描かれている。
 自分にとって最高の長編小説のひとつなのだが、さすがに大部分を忘れてしまったので、4部作を始めから再読したい。彼にはノーベル文学賞を与えて欲しかった。



 帰国してからというもの体調が優れず、なぜか身体が全然暖まらない。そのために、読書も思うようには進まず。最近買った『ロビンソン・クルーソー』などをツラツラ捲る。
by desertjazz | 2009-12-07 23:00

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