Readings - Pick Ups from Diary (May - August)

 読書メモ(5月〜8月の日記からの抜粋)。






5/1 (Fri)

 田中真知さんから新刊のご案内をいただく。買いに行かねば。

 『美しいをさがす旅にでよう』(白水社)

 ・王様の耳そうじ - 「美しい」新刊のお知らせ
 ・今年の3冊 - Best Books 2008 (参考)

5/3 (Sun)

 今週の読書。6冊読了。
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 『日本の難点』の宮台の鋭さと、辺見庸の新作『しのびよる破局』とも通じ合う「社会性」と「心」の問題について書こうと思ったのだが、その後に読んだ広瀬の『資本主義崩壊の首謀者たち』に衝撃を受ける。ある新書ランキングで昨年第1位になった『貧困大国アメリカ』よりもはるかに今の日本人が必要とする本だ。
 最初の方はよく知られたことをおさらいしただけで、いつもの広瀬の深みがないなと感じたのだが、その後のデータ分析の積み重ねから来る解析が、読んでいてじわじわと気を重くさせる。資本主義崩壊の構造だけでなく、オバマがユダヤ・マネーによって生まれた大統領であることから避けられない限界や、莫大な債務を減らすために日本の金融資産が奪われていくことが確実なシステムなどについても分かりやすく解説している。
 こうした本を読んで最近考えていること。アメリカの巨大会社が実質的に国営化されることで救済される事例が続いているが、実はこれは債務超過に陥った会社が国家予算を収奪しようという戦略なのではないか。つまりは主従関係が逆で、資本家たちが国家の金(税金)を私利のために吸収しようとしていると捉えた方が正しいように思える。巨大資本家たちの黒幕的な振る舞いは、まるで国家の中枢に忍び込み荒れ狂わんとするガン細胞かパンデミック・ウイルスのようにさえ見える。
 ふたつめ。天文学的数字の負債の解消方法。これについては、何らかのリセットを行うしかないだろうと、若い頃からもう何十年間も考え続けている。アメリカの資本主義が崩壊し「社会主義」化してしまい、日本の政界からも政府紙幣を検討する声が上がるなどの異常事態。禁じ手を打ってのハイパーインフレを誘因する可能性すらいよいよ否定し難くなってきた。
 日本の金融や食糧など、なにからなにまでもが、アメリカの勝手な都合で滅茶苦茶にされてしまったが、もうそれは取り返しがつかないレベルに至っている。そうした中で、自分の生活を守る術は残されているのかという戸惑いが強まるばかりである。

5/8 (Fri)

 銀座へ。バッグなどを探し歩いた後、書店で新刊のチェック。『美しいをさがす旅にでよう』(田中真知、白水社)を購入。炭火焼 荻(てき)にて会食。今日バリから一時帰国した知人のNさんや、その田中真知さんらと語らう。これだけ丁寧に仕込み、焼かれ、そして美味い串焼きはちょっと記憶にない。特にジューシーなツクネは絶品。
 食事後、真知さんがご持参下さった、写真家・横谷宣のオリジナルプリントを拝見させていただく。レンズから印画紙まで手作りするという独特な作風を味わう。

5/9 (Sat)

 今週の読書。
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 『資本主義崩壊の首謀者たち』も再読したかったのだが、酒を飲んでばかりで、3冊しか読み終えられず。
 『納棺夫日記』の3章にはちょっとイライラ。まあひとつの実験的試論ではあるだろう。人が間もなく死を迎えようとするとき、本来であれば「光」を感じながら穏やかに生命を終えられるはずが、残された人々の思いから延命措置が施されることで、その瞬間まで邪魔をされることになっているのではないかという、終末医療に関する疑問は重要だと思う。生命に死期がやってきたら、無理も邪魔もせずに死なせてやるべきだと、考えが改まった。ただ、話題の映画まで観る必要は感じられず。最近「死」に関する考察が復活しかけたこともあって、『死の民俗学』なども押し入れから引っぱり出して読み始める。
 『美しいをさがす旅にでよう』は著者の興味範囲の広さにも惹かれて一気に読み通す。西洋の価値観ばかりに捕われずにものごとを見るべきという指摘に頷く。

5/18

 今週の読書。4冊読了。最近は知人の著書や軽めの本を多く読んでいる傾向あり。
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 池澤夏樹は、しばらく前に知人から「初期が素晴らしい」と紹介されて、『スティル・ライフ』『マシアス・ギリの失脚』に続けて、デビュー小説『夏の朝の成層圏』を読んでみた。一文一文の美しさに息を飲み、積み重ねられる文章の表現するものに心が共鳴する。自分の中にある、熱帯の島への憧れや持たない生活への願望が揺さぶられるようだ。どうして今まで見過ごしていたのだろう。彼の父・福永武彦は大学生時代に文庫で読みふけり、さらに箱装丁の全集まで買って夢中になったほどだったのに。
 大竹さんは、毎度全く異なる興味深いテーマを見つけてきて、それで本を書き上げてしまうことが信じ難い。対談を聞いていても思うことだが、彼女は大変なインタビューの達人だ。
 レイモンド・カバーを読み返して続けている。村上の翻訳はそれほど気に入っている訳でもないので、そろそろ原書で読んでみたいとも思う。そう言えば、カズオ・イシグロの新刊も出た(短編5編による "Nocturnes")。翻訳書を待ち切れないので、今回は原書で読んでみようかとも考えたのだが、最初の数ページを拾い読んだだけで、自分の英語力ではやっぱり無理だと思った。
 昨年後半あたりから、音楽に関する書籍を全然読んでいない。半年以上、もしかしたら1年くらい音楽関連の本を買ってもいないのではないだろうか。例外と言えるのは、フランスで手に入れたフリーペーパーと Youssou 関連の文献2冊(もちろん仏文)。自分が読みたいと思うもの、読む必要を感じるものが全く見当たらない。なので、音楽の本や雑誌を読む時間があるくらいなら、小説を読んでいたいと思う。しかし、Tadd さんの『スプリングスティーンの歌うアメリカ』だけは話が別だ。自分が Bruce Springsteen を好きな理由が全てここに書かれているように思う。これからもこの本を手にしながら、ボスの音楽に向き合い続けることだろう。 
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 今週はプレゼントされたセネガル料理本をめくって楽しんだりも。たまには本場物のヤッサやチェブゼンが食べたくなるが、セネガルにはもう行けないだろうとも思う。他には最近買ったイタリアンの本などで料理のネタ探し。
 しかし、最近一番読みふけっているのはロードバイク関連の書籍。ロードバイクに乗るのは久しぶりなので、メインテナンスについて勉強し直したり、最近のメカや情報について調べたり。さらには、2台目のバイクについても検討する。考え出すとついつい夢中になり、夜更かししてしまう。

5/23 (Sat)

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 今週の読書。

 このところずっと軽めの読書が続いた。そろそろ名著や古典作品とされるものに戻ろうと考え、あれこれ買い込んだり再読し始めたり。しかし、アルコール漬けで猛烈に機能低下した頭ではさっぱり読み進められない。来週からは猛烈に慌ただしくなりそうなこともあり、どれも一体いつ読み終えられることか。それともこの通り積ん読のまま?


5/27 (Wed)

 発売日29日の2日前の夕方には店頭に並ぶと言う話の通り、村上春樹の新作『1Q84』がすでに売られていた。早速、読み始める。今頃多くの人が「青豆」と検索していることだろう。

6/5 (Fri)

 『1Q84』を読了、したはず。構成力には舌を巻いて、ひたすら読み進めることとなり、一文一文の緻密な美しさにも納得。しかし、失敗作だと感じる。これが大ベストセラーになるならば、過大評価だと思う。

6/19 (Fri)

 カズオ・イシグロの『夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』を読了。ここにもヤナーチェクが出て来るという、シンクロニシティー?

6/27 (Sat)

 代官山へ。K氏とサカキマンゴーさんからご招待を受けたライブへ。会場では、サカキマンゴーさんの著書『親指ピアノ道場! アフリカの小さな楽器でひまつぶし』を購入。ほとんど読み終える。

6/28 (Sun)

 『親指ピアノ道場! アフリカの小さな楽器でひまつぶし』読了。マンゴーさんからの手紙を読んでも、この本を読んでも、確かに彼と自分とは日頃から同じことを考えていることが実感される

6/30
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 6月の読書。

7/11 (Sat)

 『音楽の聴き方 〜聴く型と趣味を語る言葉〜』(岡田暁生、中央公論新社)読了。

7/31
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 7月の読書。わずかに3冊。全く読めなかった。

8/9 (Sun)

 『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』(佐野眞一、集英社インターナショナル)読了。優れた取材力は相変わらず感じさせられ、これまで聞かされることのなかった沖縄の面も多々知ることができたが、今回は大上段に構えた文章が鼻についた。音楽/芸能パートは物足りない。

 沖縄には3度行っているが、いずれも硬派な取材だった。なので先島も含めて琉球をのんびり巡ってみたい。那覇の喜納昌吉さんの店に飲みにいった時のこと(遊びに行っただけなのに、いきなり名刺を渡され、延々話を続けられた。まさに教祖さまといった印象)、コザで喜屋武幸雄さんに話を伺ったことなども思い出す。

 『路上』(ジャック・ケルアック)読了。

8/21 (Fri)
 
 ひたすら読書。

 昨日買った『2011年新聞・テレビ消滅』(佐々木 俊尚、文春新書) 読了。とても的確な分析。巨大メディアが生き残り策を持てなくなっている状況を見事に図式化している。

 『アフリカ 動きだす9億人市場』(ヴィジャイ マハジャン、英治出版)読了。マーケット開拓を志す野心家向けのヒント集。都合の良すぎる一面的な分析が多い。が、アフリカに対して全てを否定的に捉えることは望ましくなく、前向きな視点は欠かせないことも思い起こさせてくれる。

 『家庭料理のすがた―旬は風土の愛し子、人も風土の愛し子』(辰巳 芳子、文芸春秋)読了。いろいろな意味で不親切な本。編集が悪いせいか、使えない本になっている。

8/23 (Sun)

 『アフリカの布』を読む。今日1日で半分ほど進む。学術研究をまとめたものなので、教科書をじっくり読んでいる気分。澤地久枝の『琉球布紀行』を読んでも同様だったが、布作りの作業の丹念さがひしひしと伝わってくる。

8/24 (Mon)

 『アフリカの布 〜サハラ以南の織機・その技術的考察〜』(井関和代、河出書房新社)読了。2000年に出版された時に買ってあったのだが、論文とあって読む機会を失していた。織機の機構やその操作について、文章と簡単な図とで説明されてもよくはわからず(しかたないことだが)、かなり読み疲れしたが、とにかく布は面白い。遠く離れたアフリカと日本の両方に、例えば藍染めがあり、砧打ちがあるなんてことは、不思議だと思う。

 『サバイバル時代の海外旅行術』 (高城剛、光文社新書) 読了。彼はホントによくいろいろ知っているようだし、他の誰もが持ち得ないような視点でアイディアを出してくることには感心させられる。実用書としては彼のこれまでの本以上の出来だと思う。実際真似しようと思うアイディアが満載。
 財布の中に絆創膏を入れたり、必ずダブルバックアップを取ったり、ネットをサーバー代わりにしてデータを保管していたり、ガムテープを短くして携帯したり、といったあたりは自分と全く同じことをやっている。旅慣れた人の中には他にもこうした人は少なくないのかも知れない。

8/26 (Wed)

 ジェンク堂へ。海外の小説を中心に見て回り、ブッカー賞受賞作の "The White Tiger" などを購入。建築やデザインなどの書籍もたくさん並んでいて、いろいろ読みたくなる。

8/28 (Fri)

 『素数たちの孤独』(パオロ・ジョルダーノ、早川書房)読了。読み始めた途端、一気に読み通してしまいたくなって、遅読な自分でも一日で読み終えた。終わりにかけてやや息切れした感があってか、終盤伝わってくるものはやや薄い。それと言うのも、前半部での、誰にでも心の傷として残っていそうな出来事の描写があまりにも見事だから。少年・少女時代の暗い過去を大人になっても引きずる同級生という同じ主人公設定で『1Q84』と無理矢理比較すれば、こちらの方が数百倍面白い。前後で張り巡らされたリンクが幾多も見つかる構成も興味深い。そうした理由を抜きにしても、再読すれば、読後感が深まっていくようにも思える。とにかく等身大な悲しみが心に響いてくる。しかし、これが処女作とは驚きだ。

8/29 (Sat)

 『ルポ資源大陸アフリカ 〜暴力が結ぶ貧困と繁栄〜』(白戸圭一、東洋経済新報社)読了。渾身のルポ。命がけで取材している姿勢が伝わってくる。こうしたものを読むと、『アフリカ 動きだす9億人市場』は楽観視しすぎ(能天気すぎ)で、金儲けの亡者のためのマニュアルにしか思えなくなる。

8/31
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 8月の読書。
by desertjazz | 2009-12-27 23:59
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