2009年 12月 30日
2009年 (3) : 「音楽を聴く」
以下、他の方にはほとんど参考にならないであろう独り言、、、。
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2009年は聴いてワクワクする作品と全然出会わない年だった。こうなったのには、ほぼ1年を通して音楽を聴く余裕がなかった、ということが影響したのだと思う。入手枚数を数えてみると、昨年も数百枚増えているが、これでも例年の数分の1。日本で買った新録盤の枚数に至っては例年の10分の1程度だったし、海外でレコード店を巡る機会もほとんどなかった。「聴く時間がなかった」から「買わなかった」のであり、「買わなかった」から「出会わなかった」、とは言えるのかも知れない。しかし、自分自身の印象はこれとは逆で、「聴きたいものがない」から「買わなかった」と感じている。実際こうした状況がここ数年続いているのだが、それが決定的になったのが2009年だったと思う。実際、話題作を聴いても、ピンとこなかったり、自分の趣味でなかったりすることがとても多くなった。
(聴きたいものが見当たらないことについていろいろ考えた結果、その原因のいくつかが分かったのだが、取りあえずここでは触れないでおく。)
ということで、新録盤の「ベスト10」を選ぶことは今年は無理。その代わりに、最初に聴いた時に「優れた作品だな」と感じたものを中心に無理矢理10枚思い出してみることにした。その結果は以下の通り。
(1) PERNETT / ARBOL
(2) QUANTIC AND HIS COMBO BARBARO / TRADITION IN TRANSITION
(3) K'NAAN / TROUBADOUR
(4) TINARIWEN / IMIDIWAN: COMPANIONS
(5) OUMOU SANGARE / SEYA
(6) CAETANO VELOSO / ZII E ZIE
(7) KHALED / LIBERTE
(8) SAM KARPIENIA / EXTATIC MALANCONI
(9) LARBI DIDA / MALKOUM
(10) The Kankobela of the Batonga Vol.1
(1) : 独創的なクンビアで、個人的には今年最も面白かった作品。(2) : 様々なスタイルのサウンドを統合したラテンの好盤(ただし新しいことをやっている感はなかった)。(3) : 最初の印象は薄かったのだが、年末に聴き直して(これが2度目)ポップで贅沢なサウンドの楽しさに気がついたラップ作。(4) : 彼らの最高作であり、かつ今年最高のアフリカ音楽だと思う(2度しか聴いていないが)。 (5) : 近年のアフリカンポップを代表する素晴らしい作品(だが、眩しすぎてなかなか聴く気分になれなかった)。(6)〜(10) は正直言って数合わせに選んだもの。どうしても10枚に足らず、08年末の1枚も入れた。(8) はライブが素晴らしかったので、その余韻で聴いていた作品。言い換えるならば、2010年に時間ができたら、きちんと聴き返してみたいと考える10枚である(それが、無理矢理10枚リストアップしてみた理由でもある)。
ジャンルを問わずに10枚選ぶこともできないのだから、アフリカの新作のベスト10を選ぶことも不可能。昨年はいよいよアフリカ音楽を聴いたり語ったりする意味を感じなくなった年だった。リイシューも同様の理由から、昨年に続いて断念。アフリカのリイシューをほとんど買わないのには、それらの多くが、既に所有している音源だったり、聴くほどの内容とは思えなかったりするから。
近年気になっているのは、ロックでもジャズでも、'Out take' の収録をうたったり、あるいは 'Complete Set' と称したりして、「残りもの」で商売する傾向が強まっているように思えることだ(繰り返される Remaster や、無茶に思える Surround 化も含めてもいい)。またCD化の必要を感じないリイシューなども散見される(そして、そうした傾向はワールドミュージックでも進んでいるのではと思うことがある。このことは中途半端に書くと誤解を受けるかも知れないので、適当な機会に改めて綴ってみたい)。そうした発掘音源を聴くことに喜びを感じる人も多いのだろうが。だけれど、自分はそんな「残りもの」よりも、長年愛聴している音楽を聴くことの方に時間を使いたい。このような考えの強まったことが、「買わない」理由ともなっている。
(もちろん全てが「残りもの」とは思わない。また、手持ちのレコードばかり聴くというのも物足りなく、時々でも買わないと音楽を聴くトリガーがかからないことも事実。)
個人的に嬉しかったリイシューを1枚だけ挙げると、バリのガムランの最初期録音集(全5枚の予定)の1枚目、"BALI 1928 GAMELAN GONG KEBYAR : BELALUAN - PANGKUNG - BUSUNGBIU" 。長年待ってやっと発売に至ったこれだけは、時々聴いていた。とても良かったので、友人にプレゼントしてしまったくらい(なので、早く買い直さなくては、、、)。
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余談。ベストアルバムは選びにくいが、ワーストなら簡単。ブログでは BASSEKOU KOUYATE & NGONI BA のアルバムと OAI STAR とを酷評(?)したけれど、別にダントツでワースト1位のアルバムがある。ピアノは素晴らしいのだが、ベースが全然ダメという作品。聴いていて具合が悪くなってくるほどだった(自分で買ったレコードを聴いて体調が悪くなるというのは、稀な体験)。とにかくベースの音色が気持ち悪い。そしてただただ手数が多い演奏は、単にガサツなだけで、ひたすら耳障り。音楽が文字通り「音を楽しむもの」なのならば、これほど楽しめない音はない。2度我慢して聴き通そうとしたけれど、それすらできず、あえなくCDはゴミ箱行きに。レコード店や雑誌などでは好評のようだったが、このアルバムを本気で褒めている人とはきっと話が合わないだろうな。何かまでは書かないけれど、これだけがっかりさせられたアルバムも珍しい。これを聴いて「こんな音楽が褒められるなら、もう新譜は買わなくていい」と思ったほどので、これも今年CDを買わなくなった一因だった。
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ライブの方は、もう何といっても台北で観た Lo Cor de la Plana が最高だった(だけれど、以前マルセイユで観たときの方が、状況のローカル性が強かった分だけ断然良かったのだが)。そして、2度観た Sam Karpienia。
フランスでは、Amadou & Mariam、17 Hippies、Moussu T e lei Jovents、Novalima、Sayon Bamba、Houria Aichi、Kamel el Harrach、Yom、Les Bamtous de la Capitale、Kora Jazz Trio など、最近話題のアーティストをたくさん観てくることができた。Amadou & Mariam や Houria Aichi はもちろん良かったし、17 Hippies や Les Bamtous de la Capitale も結構楽しめた。また、王様然とした Yom に笑った一方(音楽的には趣味じゃない)、Novalima などは期待したほどではなかったかな。こうしたことをじっくりレポートする余裕がなかったことは残念だった。
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1年後には、今度こそ、また楽しく「ベスト10」選びのできるようになることに期待。
(※ 年明けに修正してアップ)