2010年 01月 08日
Readings - Africa

『南アフリカの衝撃』(平野克己、日本経済新聞出版社)読了。南アの政治、経済、歴史と、問題山積の現状についてコンパクトにまとめられている。そこから、アフリカの中での南アの特殊性も伝わってくる。自分の知らなかった事実、興味深い情報も、もちろんある。だが、何をもって「衝撃」と言おうとしているのだろう。
全体的に、著者の周辺から得られた細々した話を積み重ねた末に、大風呂敷なことを書いている印象を受ける点が気になる。そのために焦点が定まらない(『日本辺境論』よりはずっとマシかもしれないが)。新書サイズのためだろうが、用語の使い方や説明に不親切さも感じた。辛口になってしまうのは、白戸圭一の『ルポ資源大陸アフリカ 〜暴力が結ぶ貧困と繁栄〜』(東洋経済新報社)やセルジュ・ミッシェル+ミッシェル・ブーレの『アフリカを食い荒らす中国』(河出書房新社)を読んだ後だからということも否定しないのだが。
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二晩続けてアフリカの探求書を読んで思ったのは、日本のアフリカ戦略のこと。善戦している部分もあるし、見逃してしまった部分もあるのだろうが、政治・経済的には中国にとても敵わず、それはすでに手遅れとなっているのでもあろう。
(ところで、TICAD の有効性ってどうなのだろう。一昨年、TICAD市民社会フォーラムの石田洋子が書いた『アフリカに見捨てられる日本』(創成社)を読んでもどうもピンとこなかったし、TICAD IV の公式サイト/関連サイトがどれも拙く継続性もなかったことに、日本のアフリカに対する政治力の乏しさも感じさせられたのだった。)
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今年は「アフリカの年」からちょうど50年。せっかくのタイミングなので、アフリカ関連の蔵書を整理しながら、あれこれ読み返してみたい気持ちはある。特にW杯開催までは南アが注目されるだろうから、この機に『新版 南アフリカの歴史』(レナード トンプソン、明石書店)や、『南アフリカ金鉱業史―ラント金鉱発見から第二次世界大戦勃発まで 』と『南アフリカ金鉱業の新展開―1930年代新鉱床探査から1970年まで』(佐伯 尤、新評論)なども、読んでみてもいいかなとも思う。だけれど、そのような時間を確保するのは難しいことだろう。
今、調べてみたら、レナード トンプソンの本は第3版『南アフリカの歴史【最新版】』が昨年の11月に出ていた。何か内容が改められているのだろうか。だとしても、高い本なので買い直す気も(必要も)ないのだが。
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追記(コメントを受けて)
この本は日経だし、白戸圭一の本も東洋経済だった。日本では経済界が率先してアフリカに着目している?
著者は大使館で働いたこともある現ジェトロの人物なので、資料の再構成と伝聞の集積となってしまうのも仕方ないこと。ちょっとした伝聞の中にこそ、ビジネスチャンスの萌芽があるとも言えるのだろうけれど。