Youssou N'Dour : "I Bring What I Love"

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 ユッスー・ンドゥール Youssou N'Dour のドキュメンタリー映画 "I Bring What I Love" (2008) の DVD が届いたので早速鑑賞(4月6日発売のアメリカ版)。

 最初の20分間ほどはユッスーのバイオグラフィーとして作られていて、幼い頃の写真や80年代初頭に自身のバンドを結成した直後らしき映像(見たことないものばかり !!)が矢継ぎ早に登場しワクワクさせられる。おばあちゃん(06年に96歳?で逝去)やお母さんやお父さんや兄弟姉妹が次々出てくることも興味深い。
 個人的には、これを観ていていろいろなことを思い出してしまった。ダカールのチョサンに通ったことやニューヨークの大コンサートに駆けつけたこと(どちらも自分が体験したのと変わらないシチュエーションで、改めて冷静に見るとよくこんな中でライブを楽しんでいたものだと、我ながら感心。いや実際全然ストレスなんてなかったんだよな)、彼にインタビューした時のこと(自分が聞きたかった質問を遠慮したこと、結果彼の気分を害してしまったことは、一生の不覚だったことだろう)、などなど。

 それから後がこの映画の本題で、エジプトのオーケストラと共演してイスラム音楽に接近した作品 "Egypt" にまつわるストーリーに移っていく。インタビューからはユッスーの考えていたことがひしひしと伝わってくるし、この作品に関して実に様々なことが起こったことが語られ、そうして描かれる内容が興味深い。例えば、ダカールのファンたちからはソッポを向かれたことや、トゥーバでのパフォーマンスが誤解から取り止めになったことなども含めて。
 しかし、グラミー受賞が大成功であるかのような表現に至っては、途中から抱き始めた疑問がピークに達した。グラミーのトロフィーを携えてワッド大統領を訪問する映像を久しぶりに見たが、その前後にも大喜びするユッスーの映像が繰り返される。

 全編を通してナレーションは一切なく(アメリカ版なので、英語以外の仏語、ウォロフ語、アラビア語などは全てスーパーされるので、理解しやすい)、その分だけユッスーの思いに気持ちが入っていくし、構成も分かりやすく組まれている。しかし、幾分か安易な感動を強いる作品にもなっていると思う(その特徴は特に音楽のつけ方に顕著)。
 結局は、かねて一部から批判を受けていたように世界的な成功が彼の目標となってしまっているがために、(たかが)グラミーを受賞した程度のことそのものを大喜びしているのか、あるいはこの成功が長年尽力してきた社会活動やアフリカのステイタスアップへの願いを後押しすることを真っ先に歓迎しているのか、最後まで分からなかった。

 さらに言えば、セネガル内でも歓迎されず、個人的には今現在も失敗作だと考えている "Egypt" が彼の大成功作だと描かれていることに、複雑なねじれ具合を感じる。この映画は、様々な受容と様々な誤解が、積み重なり合い、ねじれ合っていることを記録している点に面白さが認められるドキュメンタリーだ。
by desertjazz | 2010-04-22 23:00

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