2010年 12月 14日
Dubai / Maroc 2010 (14)
マラケシュのスークの観光地性について、感じたことがもうひとつある。
滞在した7日間は連日快晴に恵まれ、空の深い青色が実に美しかった。それとコントラストをなす、城壁の土色や住居の壁面のパステルカラーもますます映える。これに似た景色を見たことがあるなと、咄嗟に記憶の奥から蘇ってきたのが中米世界。かつて旅したメキシコ南部のオアハカも、正にこうした色彩の街だった。
旅の記録として一枚収めておくかと、心の中で呟きながらカメラを取り出す。その瞬間、顔を手で隠すご婦人、俯いて通る過ぎる女性、そして全速で走り去る少年。たとえ被写体としてレンズを向けていなくても、この調子なのだ。思わず、構えかけたカメラを隠す。
イスラムの女性にレンズを向けるのは失礼なこと。モスクを撮影してはいけないとも言われた(そう言えば、メキシコのある教会では写真を撮るなと言われた)。それと同時に思い及んだのは、「観光地に暮らすことのストレス」である。彼らはムスリムとしての振る舞いとともに、日々被写体としてさらされることへの対処も求められているのかも知れない。
観光地の人の中には、逆に被写体としての立場を素直に受けとめ、自然に明るく振る舞う者も多い。しかしそうした人々は撮影慣れしてしまって、撮っていても面白くないのではないだろうか。結局は、観光地で息づかいの自然な写真を撮るのは難しいのか。
写真撮影の資質を持っている方なら、これらの問題も解決されるのだろう。自分の場合は、写真を撮ることが目的で来ている訳ではないので、素直に諦め、住人の姿を外してシャッターを押す。旅日記のメモとして。
スークの景色は美しい。しかし、そこに住まう人々の姿がないと、やはりどこか味気ない。
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