2010年 12月 20日
Dubai / Maroc 2010 (20)
11/24 (Wed) : One Day Drive - Part 3
そろそろ正午。高度2000mオーヴァーの「ハイウェイ・ドライブ」を終えて、車は坂を下って行く。しばらく走ると、美しい渓流が見えてきた。数10km続くそのウリカ谷 Vallée de l'Ourika を、今度は上流へと遡って行くと、集落が片寄せ合うような小村セティ・ファティマ Setti Fathma に辿り着いた。狭い路上にはマラケシュからのタクシーや観光バスがずらっと並ぶ。「週末はごった返す」と、ガイドブックには書かれていたが、ここはマラケシュの人々が憩う行楽地なのだろう。
セティ・ファティマの住人である若い男性ガイドに DH100(約1000円)払って、険しい崖を登ってみる。ガイドなしでは分かりにくい場所にある、5つ連なる滝の眺めがここの売りらしいのだが、滝など日本人にとっては何も珍しくない。記念写真を撮る人々の群がりを横目に、そろそろ戻ろうかと思っていたら、まだ先があるという。それもハシゴを使って登っていく、さらに危険そうな崖。ガイドの「さあ、行こう」という声に促され、ハシゴ屋(こんな商売には初めて出くわした!)に DH10 払って、気が進まぬままよじ登る。結構タフな道行きだったので、一瞬一眼レフのレンズを岩にぶつけてしまい、表面に傷がつく。プロテクター用のフィルターを付けていたおかげで助かった。
誰もここまで来ないじゃないかという不平を抑えて登り続けると、やがて案外良い眺めが広がり始めた。左右に深い谷が連なり、朝通り過ぎたオートアトラスの峰まで見渡せる。そして中央にはセティ・ファティマの集落。その周囲には土産物屋やタジン屋も数多くあって、ここの500人ほどの住民は観光を糧に暮らしている様子が伝わってきた。
眺望が最も良さそうな地点で小休止。軽やかで濁りのない空気をもう一度胸に溜込んで、喉を振るわせながら思い切り吐き出してみる。きれいに響き渡る山びこを久し振りに耳にした。
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海外旅行では土産物を容易には見つけにくいと、先に書いた。それを悟ってから心がけていることがある。ひとつは、無理して買わないこと。そしてもうひとつは、石や砂を持って帰ること。
我が家のリビングルームには、タイ・ピーピー島のビーチの砂、インドネシア・バリ島のクタ・ビーチの砂といった、特段珍しくもないものから、ボツワナ・カラハリ砂漠の砂、エチオピア・アファール砂漠の砂と岩、リフトバレーの砂といったものまでが飾ってある。
時々それらを手に取って愛でているのだが、そうしていると、辛かった記憶(文字通り、何度か死にそうな思いをした)でも懐かしく思い出され、生きて帰れたことに感謝する気持ちになる。そういった意味では、どれも自分にとって一生の宝物である。
今度の旅の途中でも、ウリカ谷の川沿いの石(赤)と、セティ・ファティマの崖の瓦礫(灰)を拾って帰り、スークで買った器に入れて飾ってみた。こうしておくと、旅の記憶のひとつひとつをずっと忘れずにいられるように思う。
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