2011年 01月 13日
◆ ノーベル賞作家が書いた昼メロ?
オルハン・パムク『無垢の博物館』、上巻をまず読了。トルコのノーベル賞作家がその受賞後、最初に書いた長編小説(2008年、邦訳は昨年暮に出版されたばかり)。
ここまでは、まるでハーレクイン・ロマンスかのような(読んだことないけれど)恋愛小説、というよりもドロドロの三角関係を描いた愛憎劇で、まるで昼メロのような話。さすがに途中で放り投げたくなった。富豪一族に生まれた主人公ケマルは、美麗才媛な婚約者がありながら、その影で美人の誉れ高い18歳の娘との情事・浮気に没頭。その二人との関係が悪くなると毎日泥酔して自己破壊の寸前。気恥ずかしくなるような妄想の数々。挙げ句の果てには事業に大損失を与える。…と、まるでどこかの歌舞伎役者のようなサイテー男。
800ページ近い大長編、思わせぶりな話を散りばめながら、詳細や核心はやたらとじらしまくる。『わたしの名は「紅」』や『白い城』のように、最後の最後で種明かしするのか、あるいは違った展開パターンなのか、まだ分からない。上巻だけで全50章あって、それぞれ2〜10数ページと、テンポ良く進む。中盤の「婚約式」だけが例外的に長く(62ページ)、ここが最初のハイライト。軽重切り替わるこのリズム感がいい。そして上巻の終盤がふたつめの山場で、最後のページに至って突然話が動き始める予感。さてさて、下巻での展開やいかに?
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