2011年 01月 31日
◆ Dubai / Maroc (30) : 2010年裏ベスト(続)
モロッコの謎の音楽家の話の続編。
先に紹介した<緑盤>に続いて「もう一枚入手」したと書いたのは、この<紫盤>。同じく Ouhmane Cassette からのリリースで、ジャケットの表記も一緒(フォントが異なるだけ)。ウード、カーヌーン?、笛、そして曲によってはラバーブ?やラッパ類、指シンバルらしき音も聞こえる大編成のアンサンブル。途中、ウーレーション(ユーユー)も入る(Tr.3, 7, 9)。無骨でだみ声たっぷりな歌い振りから受ける印象も含めて、「アラブアンダルース音楽を大衆化したもの」というよりは、シャービの一種と捉えた方がよいのかも知れない。
<緑盤>ほどの凄まじいインタープレイはないものの、こちらの方がバラエティに富んだ選曲となっている。中でも断然興味をそそるのは語り芸の面白さだ。全11トラック中、最初のトラックの冒頭と最後のトラックは完全無伴奏の語りである。とりわけ白眉なのがラスト。猛烈な早口で、龍が激しく昇降しのたうち回るような様。一体これは何なのだろう?
録音は決して良くないが、演奏と歌の厚みのある音質が、この音楽の力強さをしっかり伝えていることも大きな魅了である。
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他のアーティストで聴いた記憶があるような気のする曲もいつくかあるのだけれど、はっきり思い出せない。試しに iTunes で読ませてみても、2枚ともデータなしなので、相変わらずアラビア語のタイトル表記も曲名も読めないでいる。
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ところで昨年の「ベスト」はどんな結果だったのだろうか? 結局、雑誌やネットで発表されたその類のものは、個人ブログなども含めて一切見なかったので分からない。例外は、マガジンのベスト10(ベスト5?)にアマジーグが入ったことをメールで教えていただいたのと、Twitter の TL で Kanye West や Sufjan Stevens や Marewrew の評判の良いのを目にしたくらいだろうか。
他の方々のリストを眺める暇がなかったということもあるが、今回は敢えて情報をシャットアウトしてみた。例年だとあちこちチェックした上で、複数のリストに挙げられている盤や買い漏らし盤を聴いたり買ったりしていた。けれども、案外自分の好みがなく時間を無駄にしてしまっていた。これだけ聴く音楽の選択肢が増えてしまうと、「ベスト」の類は益々各人の好みを色濃く反映したものにならざるを得ず、共感しにくいものが多くなっていても仕方ないだろう。
とにかく今は情報が多すぎる。昨年は Twitter を始めてみたものの、Follows は最小限にしている。やるべきこと、やろうとしていることですら、全然消化できていないのだから、自分にとっての「雑音」は極力排除していきたいと考え続けている(「雑音」と喩えたが、断るまでもなくあくまで自分にとってのもの。反対に、このブログも多くの人々にとって「雑音」であると見なすことは当然正しい)。
勿論あらゆる情報に当たって気になる音楽を片っ端から聴いてみたいとは思う。しかし、何かを選択して何かを諦めることは不可欠。自分の場合、ほぼ全く YouTube を見ないのも同じ理由からだ。
世間からの評価・評価をさほど気にしなくなったのは、たいがいのジャンルの音楽とも(今もってジャンル分けが絶えず有効とは思わないが)聴くべきものは聴き終えているという安心感を持っていることと、やはり自ら探す行為が好きだということが大きいように思う。自分の求める音楽は放っておいてもいつか自分の耳に届くと思うので、それよりマイペースでのんびり音楽探しをしていたい。
今回この謎のCDに出会ったことも、例えば以前イスラエルで Idan Raicheal を、フランスで El Hadj Med El Anka のリイシューを、ニューヨークでナイジェリアの Jazzhole 盤を、ナイジェリアでカラバリのローカル・ミュージックを見つけた時の状況が再現された感覚でいる。情報もなく何だかよく分からないのだけれど、とにかく惹かれてしまう、気になって繰り返し聴いてしまう。こうした時が一番楽しい。
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