2011年 03月 30日
読書メモ
・村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』
村上春樹の全長編小説再読作業の8作品目。解釈自由な時空の歪み方で飽きさせないが、長編小説はこれ以前の7作の方が個人的には好きかな?例えば瞼を閉じた時の灰色の感じ方や、様々なシチュエーション下での音の響き方、あるいは暴力的な描写での、ささやかな体験や個人的記憶を呼び覚ます表現の巧みさを堪能。うまく説明できないのだが、長い独白などからは、彼が最も『カラマーゾフの兄弟』を意識した作品であるようにも感じた。
・佐々木俊尚『キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる』
ネット時代の情報の流れ方、つながり方について、ひとつの視座を与える。情報の取捨選択がセレンディピティーを呼ぶこと、グローバル化が画一化よりも文化のアンビエント化と多様性に結びつく可能性などの指摘は興味深い。
具体例の取り込み方のうまさがこの本を面白くしている。元カンバセーションの田村直子さんが企画奔走したエグベルト・ジスモンチの来日公演のことで本題が始まっているのにはちょっと驚き。
ネットが得意で活用することを絶えず考えている人たちにとっては、今の時代はとても面白いのだろう。逆に自分のように、ネットでCD1枚買うのも面倒だし、Foursquare のような情報の集まり方も好きでないという者にとっては、どことなく居づらい世にますますなってきたなとも思ってしまう。
一個人が対応可能な範囲を超えた世界に誰もが放り出されたことが人類最大の悲劇だと昔から考えており、戦争も貧困もそして今回の原発事故もその世界と個人とのアンバランスが招いたものだと思う。なので、少しでも「狩猟採集生活」的な部分を取り戻す必要があるのかも知れない。自分自身、なるべく小さな世界で暮らす心地よさにも憧れる。結局は理想論で話が大きなってしまうので、これ以上は書かないが。
明日は『GLOCAL BEATS』(監修・大石 始+吉本 秀純)の発売日。早速買いに行こう!
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読書の合間に、Kaushiki のディスコグラフィーを更新。
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(震災&原発事故関連のことを書いておこうと思ったが、同様な意見は探すと見つかるし、自分よりも他の方々の怒りの方が激しいので、今夜もツイート以上のことを書くのは止めておこう。)
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