2011年 05月 28日
"Bruce Springsteen & The E Street Band / Live at the Main Point, 1975"
いやはや、とんでもない音源が CD 化されたものだ。"Born To Run" リリース前夜のライブとは。23日に書いたことと矛盾するようだが、これは例外。聴いていると元気になってくる。
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最後まで手元に置いておきたいレコードを絞り込んでいくと何が残るだろう。ロック(というジャンルの壁も自分の中ではすでに融解しているのだが…)ならば、Randy Newman と Frank Zappa とBruce Springsteen の3人でギリギリ十分かもしれない。Randy Newman は "Good Old Boys" までの全部、FZも全部と言いたいところだが、極論すればそれぞれ "Good Old Boys" と "Sheik Yabouti" だけあればOK。
だけど Springsteen は3枚必要だ。一番頻繁に聴くファースト "Greetings From Asbury Park, N.J. "、一番好きなセカンド "The Wild, The Innocent & The E Street Shuffle" 、そして彼の最高傑作のサード "Born To Run"。言い換えればこれだけあれば我慢できる(本音では "The River"、"Nebraska"、"Session Band" も外しがたいが)。
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そんなボスの初期の作品を溺愛する自分にとって、このライブ盤は気絶しそうなほどに嬉しいリイシューだ(非正規盤っぽいのだけれど…)。
まずセンチメンタルでとても美しい 'Incident on 57th Street' でスタート。ヴァイオリンが全面的にフィーチャーされた珍しいヴァージョンだ。ボスの音楽はこうした寂れた色彩の哀愁感が気にっている。聴いていて何故か、昔から大好きな刑事ドラマの Hill Street Blues を思い起こしてしまったのだが、確かに相通ずるところがあるかも知れない。
3曲目に早くも 'Born To Run' が登場。冒頭で轟く Max Weinberg のドラム・ロールが最高にカッコイイ! けれどもオーディエンスは無反応なのが面白い。今ならライブで一番盛り上がる瞬間なのにね。
続く 'The E Street Shuffle' と 'Wings for Wheels (Thunder Road)' もいいのだけれど(どちらも最終版とはかなり違ったヴァージョン)、興奮&感涙ものなのが Disc 1 後半〜 Disc 2 前半で連続する9曲。 'Spirit In The Night' 〜 'She's The One' 〜 'Growin Up' 〜 'It s Hard To Be A Saint In The City' 〜 'Jungleland' 〜 'Kitty s Back' 〜 'New York City Serenade' 〜 'Rosalita (Come Out Tonight)' 〜 '4th Of July, Asbury Park' と続くなんて信じられない( 'Jungleland' の終盤のハイライトが Clarence Clemons のサックス・ソロじゃなくてギターなのも聴きどころのひとつ)。どれか2曲外して、'Back Street' と 'Born To Run' と 'The River' と入れ替えたらほとんど自分にとってベストな10曲になってしまう(いや、 'The E Street Shuffle' と 'American Land' も外しがたい)。
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Springsteen には名曲が本当に多いのだけれど、特に好きなのは 'Jungleland' や 'New York City Serenade' のような長大な作品(後者はこのライブ盤では何と18分!)。人によっては大仰に聴こえてしまうのかも知れないけれど、このノスタルジックでセンチメンタルな囁き/叫びと、次第に色合いを変化させていく構成の素晴らしさにはただただ圧倒されてしまう。完璧な小説を読んでいる気分と言ってもいい。
だけどここ10年ばかりの間に最も惚れ込んでしまったのはファースト・アルバムに収められた 'Growin Up' なんだよな。3年ほど前にワシントンでこれを聴けたのは本当に嬉しかった。「成長すること」について60歳のジジイが歌い、それを聴いてプチ老人が感動するのって何だかなぁとは思うけれど…。
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呑みながらボスの音楽についての独り言を書き始めると止まらなくなる(ので、この辺で強制終了)。このアルバムに関する詳細は調べていないので、もし興味があれば彼のファンによる紹介を探して下さい。
それにしても、こんなライブ是非とも体験して見たかった。会場で聴いた人たちが羨ましい。
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