2011年 06月 08日
無価値化する世界(1): 読書メモ 『苦海浄土』、ほか

石牟礼道子の『苦海浄土』読了。フクシマ以後の日本について考えたくて読んだので、すでに確立しているだろうこの作品への評価に加えるものはない。
(方言を活かした独特な文体、喪われた日本の原風景に対する哀しみなど、感想は多々あるが。3.11 の後から読み始めたので結局3ヶ月近くかかってしまった。慣れ親しまない文体を時間をかけて読み解いた点では、一昨年の『日本文学史序説』、昨年の『メイスン&ディクスン』の再来だった。)
なので、どうしても現在の福島が重なってしまう。不知火を福島に、チッソを東電に、水銀を放射能に置き換えれば、かつて水俣を描いた文章がそのまま今の福島を活写する。企業と政府と役人が一体化する様、水俣病というだけで一般人から虐げられる不条理まで、まるで変わりがない。つまりは、これからの福島を予言する書でもある。数年後に巻き起こるであろう訴訟も数知れず、それらが全て決着するまでに半世紀以上は必要とすることだろう。
しかし、こうした前例がありながら、日本が、人類史上最悪の地球環境汚染企業たる東京電力を生み出してしまったのは、何という悲劇なのか。
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原発事故関連のテキストも毎日読み続けている。それらの中で、基本事項をおさらいする上で有益だったのは、週間朝日緊急増刊『朝日ジャーナル 原発と人間』と小出裕章の『原発のウソ』の2冊だった。特に後者は誰もが読んでおくべき書物だろう(それはとても辛いことなのだが)。
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最近ネットで読んだ中で、基本事項がよくまとまっていると思ったのはこれ。
・「捨てられた日本国民」政府は本当のことは教えない。国民がパニックになるから、だって
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考えたこと/感じたこと多し。取り急ぎ、数点だけメモ。
・原子力を取り巻く現状や今後想定されることが、自分の想像を遥かに超えたものであることが分かった。
・放射性廃棄物の最終処理・廃棄方法が確立されないまま原発が走り始めてしまったことが、私が原発に反対する一番の理由だった。『原発のウソ』を読むと、高レベル放射性廃棄物は今後100万年管理する必要があると書かれている。あまりにクレイジーすぎる!
・「最悪の事態」の答えが何かについて考え続けている。そのうちのいくつかは、とてもじゃないが恐ろしくて書けない。
・知らなかったことのひとつは、50歳以上になると発ガンリスクが急激に下がること。自分の年齢を考えると、被ばくをあまり心配しても意味がないようなのだが、裏返せばそれだけ若年層の発ガンリスクが高いということだ(高齢者が率先して被ばくした食料を食べるべきと指摘されているが、食べたとしても排泄することで放射線物質を環境に循環させてしまうことが気がかりだ)。
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これら3冊を読みながら、これからの時代、土地も、財産も、経済も、文化も、芸術も、そして生きることまでもが、無価値化することについて考え続けていた。
書いておくべきことが多すぎる(…ので、追記 or 続く)。
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